日本政策金融公庫に、中小企業に対して無担保無保証人の資本性資金(資本性劣後ローン)を供給する「挑戦支援資本強化特例制度」というものがあると聞きました。詳細を教えてください。(部品加工業)

 「挑戦支援資本強化特例制度」とは、政府系金融機関の日本政策金融公庫(中小企業事業)が新規事業や企業再建などに取り組む中小企業に対して、資本性資金(資本性劣後ローン)を供給する制度です。

 同資金の主な特徴は、(1)企業の財務体質が強化されると同時に民間金融機関からの借入が受けやすくなること、(2)借入期間中の資金繰り負担が軽いこと、(3)企業の利益状況に応じて低利益のときは低金利を適用することの3点です。

 特徴(1)は、借り入れた資金が金融検査上、自己資本とみなされ、法的倒産時には他の金融機関の債務に比べ返済順位が劣後するため、民間金融機関からの追加借入が受けやすくなるものです。特徴(2)は、返済条件が15年間金利支払いのみで元金は期限到来時の一括返済ですので、期間中の返済負担は軽くなります。特徴(3)は、借入後1年ごとに直近の決算状況に応じて適用利率を見直す仕組みで、3区分の利率の中で利益が少ないほど低利率を適用するものです。さらに、無担保・無保証人と借入手続きの負担も軽くなっています。

 借入を受けるためには、取組み事項、収支計画、資金繰り計画等を盛り込んだ事業計画書を作成すること、日本公庫の新企業育成貸付制度又は企業再生貸付制度の対象として一定の要件に該当することが必要になります。

 日本公庫では、事業計画の実現可能性と財務状況、資金繰り、収益力等からみた償還可能性について金融審査を行い、融資可否を判断します。

 借入契約時には、四半期ごとの業況報告、真実の情報開示等の表明保証、業績悪化時の経営指導の受入れなどを含む特約を締結し、日本公庫とともに事業計画の実現を目指していきます。

 本制度は平成20年4月から始まり、20年度は52社、49億円、21年度は204社、206億円と急激に利用が伸びており、22年度(4~10月)も197社、133億円と利用社数は前年同期比50%増となっています。

 利用した企業からは、「新規事業への取組みにあたって、当面の元金返済が不要なので事業に集中できる」、「大規模設備投資の際の担保不足問題を解消できた上に資本増強効果があった」、「実質的に債務超過から脱却でき、メーン銀行からの追加借入を受けられ事業再建に取り組みやすくなった」などの感想が寄せられています。

 本制度の概要を上記(〔『戦略経営者』2011年1月号30頁〕参照)にまとめましたので、参考にしてください。

 なお、借入申込みの詳細などについては、各都道府県にある日本政策金融公庫の支店(中小企業事業)に相談してみてください。

掲載:『戦略経営者』2011年1月号