賃貸アパートを運営している者です。賃貸住宅の更新料がとれなくなる可能性があると聞きました。詳細を教えてください。(建設業)

 平成21年以降、大阪高裁の2件の判決は、更新料を法令に違反しないものと認定し、1件は更新料を消費者契約法に違反すると認定しました。3件はいずれも上告されており、平成23年3月4日、最高裁が同年6月10日に3件一括して弁論を開くことが報道されました。最高裁が弁論を開くのは、高裁の結論が覆る可能性がある場合と考えられています。本件は、類似の事件でありながら結論が分かれていたため、統一的な判断ないし判断基準を示そうとしたものと思われます。

 更新料を違法としたのは、平成21年8月及び平成22年2月の大阪高裁判決です。(1)契約書及び契約過程において、更新料の性質や何を目的として授受されるのかについて、全く説明がなかったこと(2)契約期間が1年であったこと(3)更新料が高額であったこと(平成21年8月判決では、賃料1ヵ月4万5000円、礼金6万円に対し、更新料10万円、平成22年判決では、賃料1ヵ月3万8000円に対し、更新料7万6000円)に着目されています。

 貸主側からは、更新料は貸主の更新拒絶権放棄への対価であるという主張がありましたが、もともと貸主からの更新拒絶は、契約期間満了の1年前から6ヵ月前までの間にされなければならないため、契約期間が1年である場合には、更新拒絶権放棄の利益は、契約期間開始から6ヵ月分に過ぎません。

 また、更新拒絶の際には正当事由を備えなければなりませんが、正当事由は容易には認められないため、借主が貸主に更新拒絶権を放棄してもらわなくても、更新拒絶が認められる可能性は低いといえます。そのため、更新料を更新拒絶権放棄の対価と見ることはできないと、大阪高裁は認定しました。

 また、更新料は賃料の2ヵ月分で、しかも平成21年8月判決の事件では礼金より高額ですから、毎年更新するより毎年新規に契約し直した方が借主に有利なのに、何の説明もなく更新料を支払わせるのは、借主の利益を一方的に害するものであるとされました。さらに、更新料を定めることで、見かけ上の月額賃料を低く設定できるのですが、大阪高裁はこの手法も不当であるとしました。

更新料の減額も

 ただし、平成21年8月高裁判決は、消費者契約法の施行日である平成13年4月1日以前の更新料の返還を認めませんでした。更新料を適法とした平成21年10月29日大阪高裁判決は(1)契約期間が2年であったこと(3)更新料が高額とはいえないこと(賃料1ヵ月5万2000円、礼金20万円に対し、更新料10万4000円)に着目しています。すなわち、2年ごとに新規に契約し直せば、礼金20万円を支払わなければならないが、契約更新なら2年ごとに10万4000円で済むので、これは借主の利益を一方的に害するものとはいえない、というのが、判決の主な理由です。

 なお、更新料により見かけ上の月額賃料を低く設定できる点については、大阪高裁はむしろ貸主側の事業戦略として肯定。上記のように、更新料については、近く最高裁が結論を出すと思われるため、明確なことは言えません。

 ただ、上記3つの高裁判決を比較すると、現時点では、契約期間が1年なのに、礼金と変わらない金額の更新料を設定し、更新料について何の説明もない場合は、違法と認定される危険性があります。

 そこで、貸主からの更新拒絶が可能な期間(契約期間満了の1年前から6ヵ月前まで)が終了するまでに、更新料について十分な説明を行うべきであり(月々の賃料が安価になっていたなど)、また場合によっては更新料の減額も検討するのがよいでしょう。

掲載:『戦略経営者』2011年4月号