「らしく」の実現をサポートする会社として2006年に誕生したLASSIC(ラシック)。システムの受託開発に加え、近年は「心の病」に対する予防・再発防止を支援するメンタルタフネス研修サービスの提供も行っている。若山幸司社長(39)に『FX2』を活用した財務戦略などについて語ってもらった。

ITエンジニアの心身を癒す研修サービスを展開

ラシック:若山社長(右)

ラシック:若山社長(右)

――2つの事業の柱をもっていると聞きました。

若山 ひとつは(1)システム開発事業で、もうひとつは(2)メンタルタフネス研修事業です。
 (1)については、業務支援システムの受託開発や、ホームページ制作などを請け負っています。首都圏の大手企業や、地元である鳥取県内の企業などが主なユーザーです。

――(2)のメンタルタフネス研修事業というのは?

若山 簡単にいうと、「心の病」の予防・再発防止をねらいとした研修サービスです。特に都会の大手企業では、ストレスやうつ病で休職と復職を繰り返すエンジニアが増えていて問題になっています。そうした人たちに自然豊かな鳥取県に来てもらい、農業体験をしたり、古民家での共同生活をするなかで心身を癒してもらうのと、ストレスに打ち勝つためのメンタルタフネスを身につけてもらう研修です。
 もともとはうちの会社で心の病を抱えたエンジニアを中途採用したのが、このサービスを始めるきっかけでした。半分IT、半分農業という働き方をしてもらったところ、状態が徐々に良くなっていった。これをもっと体系化してメンタルタフネス研修として提供すれば、取引先である大手IT会社のお役に立てるのではないかと考え、今から3年前にサービスの提供を始めました。これまでに約50名を受け入れています。

――若山社長はラシックに入社する以前は別の会社にいたそうですね。

若山 大手人材会社インテリジェンスの社員として働いていました。ラシックの創業者である西尾(知宏)副社長とはそのときの仲間で、彼に招聘されるかたちで09年にラシックの社長に就任しました。
 インテリジェンスを辞めて独立しようかと考えていたとき、たまたま西尾副社長と話す機会があって、そのときに2人が目指す方向性がいっしょであることがわかったことから、ラシックの経営に参画することを決めました。
 要するに私がやりたかったのは、地域をうまく活用しながら、地域とともに歩むビジネスでした。それまで携わっていた人材サービスは、いわば首都圏型のビジネスで、仕事を求めている人に東京の職場を紹介するケースが大半を占めていました。雇用の受け皿の多くが東京に限られていたためです。しかし「働き口があるなら地方で働きたい」という人は結構多かったし、私自身、東京一極集中型の働き方にはかねてから疑問を抱いていた。IT業界ではシステム開発を海外企業に委託することを「オフショア」といい、首都圏の企業が地方の下請け企業に仕事を出すのを「ニアショア」と呼びますが、そのニアショアでの開発を実践していたラシックは、私にとって魅力的な企業に感じられました。

――最近は自社開発したパッケージ商品の販売もしておられるとか。

若山 簡単フォトコンテストシステム「パシャコン」がそうです。これはフォトコンテストの主催者向けの商品で、写真データの投稿→投稿写真のチェック→写真の公開・投票→当選者への商品発送といった作業をウェブ上で簡単に行えます。鳥取自動車道活性化協議会が主催したフォトコンテストなど、地域振興を目的としたイベントでたびたび利用されています。
 フォトコンテストは紙焼きの写真で投稿するものがいまだに多いですが、「パシャコン」の普及によってデジタル写真での投稿がスタンダードになる日が来るのではないかと思っています。

システムの“部品化”を通じ限界利益の向上に努める

――業績管理には『FX2』を活用されています。導入のいきさつをお聞かせください。

若山 導入したのは、私が入社する前の08年10月。西尾副社長がソフトウエア業界の実情をよく知る会計事務所を探しているなかで偶然知り合ったのが小谷会計で、小谷先生の提案を受けて他社システムから『FX2』に移行したと聞いています。

小谷昇顧問税理士 『FX2』を提案するにあたり西尾副社長にデモしたところ、それまでの他社ソフトとは違い、さまざまなかたちで経営判断に役立つ数字がつかめるところがいいと言ってすぐに導入を決めてくれました。

――若山社長は『FX2』のどんなところを評価されていますか。

若山 《変動損益計算書》を通じて、限界利益の推移を毎月タイムリーに確認できるところがいいですね。当社では、従業員1人あたりの生産性(労働生産性=限界利益÷従業員数)が他の同業他社に比べて少し低い傾向がみられるので、その改善に努めています。その成果を知る意味からも、限界利益の動きは気になるところです。

――部門別管理はされていますか。

若山 (1)システム開発部門(2)研修部門(3)本社管理部門の3つに分けて、部門別の業績管理をしています。各部門ごとの限界利益や売上高、あるいは人件費を知るためにも部門別管理は欠かせません。

――限界利益を高めるために意識していることは何でしょうか。

若山 「稼働率」と「生産性」を高めることです。1つ目の「稼働率」については、営業活動の強化を通じて、受注数、時期の平準化を行うようにしています。
 2つ目の「生産性」については、開発効率を上げるためにシステムの「部品化(=再利用率のアップ)」を進めています。要は、過去に作ったシステムをカスタマイズして再利用する頻度を高めていくということ。そうした「部品」を社内でたくさんストックしておけば、自ずと生産性は高まっていきます。ホームページ制作の分野については、かなり部品化が進みつつありますね。

「褒める」制度で社員の士気向上を図る

――ラシックさんが作るホームページの特徴を教えてください。

若山 一言でいえば、「成果につながるホームページ」ではないでしょうか。あるホテルからは「予約数があがった」というお言葉をいただけましたし、あるメーカーからは「ウェブからの問い合わせが増えた」と評価してもらっています。ホームページの役割は結局、どれだけ売り上げに貢献できるかにありますから、そうした「費用対効果」の面でうちが選ばれていると思っています。

――業績に貢献した社員を表彰する制度を取り入れているそうですね。

若山 表彰制度という名前で半年に一度、「業績に貢献した社員」や「ラシックの行動原理を最も体現した社員」を表彰しています。当社の行動原理は「自主性」「ベストを尽くす」「チームプレー」「誠実」「人から学ぶ」「忍耐」の6つからなります。
 また、感謝の気持ちを伝えたい社員に名刺大のカードをわたす「サンキューカード」の制度もあり、社員のモチベーションアップを図るうえで一定の効果を得ています。

――『FX2ドットネット(.NET)版』に興味をお持ちとのことですが、それはどんな理由からですか。

若山 『FX2』をインストールしたパソコンは鳥取本社にあるため、東京にある営業所にいるときは、会社の最新業績を気軽に確認するわけにはいきません。しかしドットネット版なら、他のパソコンからでもブラウザー上で「社長メニュー(ASP版)」を見ることができるといいます。私は東京の営業所にいることが多いため、こうした機能があれば助かるんですよ。

――今後の展開は?

若山 地域密着型のITサービスをもっと広げていきたいです。いまは鳥取市内が中心ですが、それを山陰地方全体に広めていければと考えています。そのためにも「顧客満足の向上」と「組織力の強化」がいっそう重要な課題となります。
 また、鳥取環境大学と国立病院機構鳥取医療センターとの産学連携で進めている、ストレスを早期発見するソフトウエアの研究開発も今後力を入れていきたい分野です。血圧や心拍数、顔の表情や温度などから、ストレス度合いなどを数値化できるシステムを目指しています。社員のメンタルヘルスの管理などに役立てられる、モバイル機器向けの商品にすることも視野に入れています。

(本誌・吉田茂司)

会社概要
名称 株式会社LASSIC(ラシック)
業種 システム開発など
代表者 若山幸司
設立 2006(平成18)年12月
所在地 鳥取県鳥取市若葉台南7-5-1
売上高 約1億8000万円
社員数 23名
URL http://www.lassic.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
多方面の活躍を毎月の巡回監査で支援
監査担当者 小谷好男
小谷昇税理士事務所
鳥取県鳥取市富安2-79-1 電話0857-30-2800
URL:http://kodanikaikei.tkcnf.com/

 ラシックさんに勤めていた同級生の結婚式の2次会で、当時社長だった西尾副社長と知り合ったのが、小谷会計事務所とラシックさんのお付き合いが始まったそもそものきっかけでした。ちょうど会計事務所を探されていた時期だったそうで、話はとんとん拍子に進みました。

 当初、私がラシックさんに対して感じた印象は、「プライバシーマークを取得しているだけあって、セキュリティーがしっかりしている」というものでした。しかし、セキュリティー強化の意味合いから、USBメモリーの使用制限があり、『FX2』のインストールの際などには苦労しました。

 西尾副社長とは毎月の巡回監査のなかでときどき難しい質問を投げかけられ、回答に困る時があります。そのたびに勉強不足を痛感し、日々精進しないといけないと気持ちを引き締めています。

 ラシックさんの主力事業は「システム開発」で、首都圏企業に対して鳥取からサービスを提供するほか、地元の行政や企業に密着したサービスも提供されています。その一方で、都会での仕事に疲れた心身を鳥取の田舎生活で癒してもらうサービスとして「活性化支援サービス」を提供されています。その両方のサービスが鳥取県の活性化につながるもので、たいへん素晴らしい事業モデルだと感心しています。

 最近では、ストレスを計測するシステムの開発にも着手されるといいます。その内容に関しては先日、新聞でも紹介されました。現代のストレス社会では必要なシステムだとおおいに期待しています。

 平成22年1月から『FX2』の部門別管理機能を用いて、(1)システム開発(2)活性化支援サービス(3)共通部門の3部門で業績管理するようになりました。経営戦略の立案により磨きがかかったと実感しています。今後も、ラシックさんの多方面への活躍を期待しつつ、全力で支援していきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2012年7月号