屋根を中心に住宅の外装工事を手がける高岡工業。創業来培ってきた独自工法を武器に、年々業績を伸ばしつづけている。元サラリーマンという高岡幸博社長(41)に利益を生む組織マネジメント術を聞いた。

独自工法をマスターした一体感ある人材力が強み

高岡工業:高岡社長(左から2番目)

高岡工業:高岡社長(左から2番目)

──工事業を手がけられているそうですね。

高岡 一戸建て住宅の屋根や外壁、雨どいなどの外装工事をおこなっていて、屋根工事にとくに力を入れています。協力業者さんを含め、総勢35名の従業員で毎月300棟ほど手がけています。埼玉県を中心とした関東一円が主要エリアです。

──独自工法で業績を伸ばしておられるとか。

高岡 屋根工事には現地調査、資材の搬入、作業、材料の引き揚げなどさまざまな工程があり通常、資材の運搬や処分を担当する業者さんも現場に出入りします。当社では自社社員と専属業者さんだけで2日以内にすべての工程を完了する仕組みをつくりました。ひと現場当たりの人数は多くて2人。業務の効率化を図り、屋根工事を一貫しておこなえる体制をとっています。
 メリットとしては支払先が少なくなるためコストを抑えられるのはもちろん、工期を大幅に短縮できました。資材を現場に残さないため、クリーンな状態に保てるのも利点と言えるかもしれません。この独自工法が当社の大きな武器になっていると思います。

──社員の方は一人で複数の役をこなされているわけですね。従業員教育が重要です。

高岡 ええ。社内で定期的に実技・学科講習を開き、スキルアップを図っています。倉庫の一角にあるやぐらを用いて訓練したり、屋根材のメーカーさんと共同で作成したテキストを活用し知識習得に努めています。協力会社の社員の方向けに、事故やクレーム対応といったテーマで勉強会を開いたこともあります。

──どのようにして独自工法を開発されたのですか。

高岡 創業前、修行させていただいた会社で採用していた工法をベースに、会社員時代に学んだ点を取り入れ改善してきました。このやり方が当たり前だと思っていたんですが、業界では特殊だったと後になって気づきましたね。所沢は縁もゆかりもない場所でしたので、他社とおなじ仕事の進め方をしていたら差別化できないと考えたのです。

──創業のいきさつについて教えてください。

高岡 僕自身熊本県の出身で、愛知県にある大手自動車部品メーカーに就職し、いわゆる「トヨタ方式」を学びました。その後、独立したいと思い、埼玉県内の知り合いの職人さんの仕事現場を数カ所見学させてもらいました。なぜ屋根工事業をメーンに選んだかというと、いろいろな現場を目にしたうち職人さんが一番楽しそうに働いていたからです。屋根の上は異なる職種の人が誰もいない、いわば自分だけのフィールド。そこに魅力を感じました。

──手がけられている工事の新築、リフォームそれぞれの割合は?

高岡 新築が9割以上ですね。創業当初、あえて条件のきびしい工事を率先して引き受けることを心がけていたため、おのずと新築物件が大半を占めるようになりました。 

──屋根材にも、はやりすたりがあるのでしょうか。

高岡 地震や突風など自然災害に対する関心の高まりから、日本瓦より軽い屋根材が好まれる傾向にあります。なかでも粘板岩を板状に薄く加工したスレート瓦が人気です。

──受注ルートの開拓はどのようにされていますか。

高岡 取引先をまわって図面や物件を紹介していただくような営業活動は取りたてて行っていません。建築会社さんからお客さまを紹介いただくことがほとんどです。現場における作業を一種のショーとしてとらえており、従業員の仕事ぶりが評価され、工事の受注につながっているのではと考えています。突発的なご依頼にも対応できるようにするため、手がける業務は許容量の8割までと決めていて、繁忙期には一部お断りをしている状況です。今後はお客さまのニーズにいっそうお応えできる体制にするべく、従業員を新たに募集しているところです。

コミュニケーションを図りコスト意識を植え付ける

──法人化と同時に『FX2』を導入されたとうかがっています。

高岡 平成18年4月に有限会社化したとき、吉川(透顧問税理士)先生におすすめいただきました。

──社長ご自身が日々取引を入力されているのですか。

高岡 正直アナログ人間なものですから、僕はもっぱら入力結果を確認するだけです(笑)。

吉川 伝票入力は社長の奥さまが一手に担われています。毎月500枚ほどですが、好調な業績に比例して枚数は年々増えてきています。

──チェックされている指標を具体的に教えてください。

高岡 毎月20日前後に吉川先生に監査のためお越しいただいていますが、その際《変動損益計算書》の画面で確認するポイントは決まっています。売上高、利益額の順に直近の業績と当月までの累計実績を見ていきます。
 前年同期の数字とくらべて変動が大きいときは、接待交際費、材料費、人件費など思い当たるふしのある科目をさかのぼり、どの取引に原因があるのか追究しています。経費の無駄を削減するとき、どうしても金額の大きな項目に目が行ってしまいがちですが、日ごろからコストダウンを心がけていれば、利益はついてくるものです。

──日々のコスト把握が肝であると。ふだんどのような流れでコスト管理をされているのでしょうか。

高岡 現場から戻ってきた社員にその日使用した材料等を日報に記入してもらい、原価を計算しています。受注金額から材料費、人件費を引けば、1棟あたりのおおよその利益がわかります。使用した材料の分量や現場に赴いた社員数が適正だったかも判断できます。金額が大きい場合次回から改善するよう、すぐに従業員に指示を出しています。ですから社員と毎日会議をしているような感覚ですね。

──毎期、予算を組まれているそうですね。

高岡 吉川先生と話し合い、翌期の予算を決めています。目標売上高を『FX2』に登録し、毎月進捗状況を欠かさずチェックしています。

吉川 月次監査で伝票をひと通り確認させていただいた後、前年比、目標比での業績の推移をくわしく説明しています。屋根工事業に属する他社の数値、とりわけ優良企業との比較に気を配るようにしています。

──経営面では他にどんなアドバイスを受けられていますか。

高岡 建築業界や法改正に関する情報を教えていただいたり、創業当初からさまざまな相談に乗っていただきました。創業したてのころは、なぜこんなに税金を払うのかといったことを吉川先生によく質問していたのを覚えています。決算が近づくと領収書を集めたり、資産の購入を考えたりといったことはよく聞く話です。でも先生の指導を受けるうちに、それが意味のないことだと気づきました。期末になってあわててもおそい。日々の数値管理の積みかさねが大事なんです。

──従業員教育で心がけていることは?

高岡 仕事をするのが楽しい、会社に行きたいと感じてもらえるような雰囲気づくりを心がけています。バーベキューや旅行など、2カ月に1回開催しているイベントもその一環です。

──抱負をお聞かせください。

高岡 当社では見学に来られる同業の方にもノウハウを公開しています。業界全体の景気が上向き、取引先とウインウインの関係を築いていきたいからです。中小の建築会社では従業員が社会保険に加入しているところはまだ少ないものですが、一般企業のような姿に衣替えを図っていきたいと思っています。ゆくゆくは子供たちから、あこがれの職業として屋根工事業が挙がるようになればうれしいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 高岡工業
設立 2006年4月
所在地 埼玉県所沢市糀谷408-5
TEL 04-2947-1755
社員数 15名

CONSULTANT´S EYE
日々のカイゼン活動で財務基盤が強固に
税理士 吉川透 吉川会計事務所
東京都豊島区南池袋2-18-9マ・シャンブル南池袋401 TEL:03-5953-3788
http://www.yoshikawa-kaikei.com/

 高岡工業様と当事務所のお付き合いは、高岡社長が起業して間もないころ共通の友人から紹介され始まりました。当時はまだ個人事業者として事業を営まれていましたが、高岡社長は創業以来、コツコツと会社の業績を伸ばしてこられています。経理担当者の方々には『FX2』への入力はもちろんのこと、債権・購買管理まで毎月しっかり作業を進めていただいており、巡回監査における正確な業績報告につながっています。

 早期に正確な情報を提供するため、事務所をあげて翌月巡回監査に取り組んでいるところです。

 社長が『FX2』の機能の中でとくに評価されているのは《変動損益計算書》です。前年同期および当期予算と比べて最新業績を把握し、業績評価ボタンで表示される「会計で会社を強くする(黒字決算のための5原則)」を熟読されています。さらに同業他社の統計データである「BAST値」も確認いただいており、優良企業の数字を目標に置き経営をかじ取りされています。

 高岡社長は取引先とウインウインの関係を築くことをモットーに掲げられています。取引先とは販売先、仕入元のみならず、外注先、社員とその家族の方々など、会社に関わる方すべてです。徹底した社員教育により内部牽制も確立されており、日常業務のムダを日々チェックし、改善を図られています。財務面では債権・債務の管理方法が浸透しているため、不良債権等もありません。

 最近では取引先ごとに損益管理をおこないたいとのご要望をいただいており、部門別損益管理機能の活用を検討中です。今後は事業拡大により支店の開設なども予想されます。事業動向をしっかり把握しつつ、『FX4クラウド』の導入も視野に入れ磐石なサポート体制を築いていきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2013年11月号