高松市で介護施設向けスキンケア商品の卸売りを手がけるエンチュレーは、この分野の草分け的存在として知られている。ネットによるBtoCも手がけ、11月にはアレルギー対応食品専門店をオープンした。矢野眞由美社長は「財務数値が経営判断のベースになっています」と話す。

顧客目線の品ぞろえで取引先の心をつかむ

エンチュレー:矢野社長(中央)

エンチュレー:矢野社長(中央)

──「介護のスキンケア」をキャッチフレーズに掲げられています。

矢野 介護施設や病院向けスキンケア商品の販売が当社のメーン業務です。ラインアップとしては自社企画のボディーソープやハンドソープ、リンス・イン・シャンプーなどを取り扱っています。アロエやシソの葉といった、天然由来の成分を豊富に含んだ商品が多いのが特徴で、ホームページでも販売しています。

──「馬油シリーズ」が人気だとか。

矢野 馬油とは馬のたてがみ等の油で、皮膚の新陳代謝を促進し、肌に潤いを与える効果があることで知られています。取引先の施設で働く従業員の方々にも当社製品をご利用いただければと思い、馬油を配合した馬油シリーズを発売しました。なかでも「馬油クリーム」は各地の道の駅、物産店でも販売しており、ご好評いただいています。馬油シリーズにはクリームのほか、乳液やシャンプーもあります。

──創業のいきさつは?

矢野 平成元年に前社長が高知県で事業を立ち上げたのがはじまりで、人件費を抑えるため電話注文に加え、FAXによる注文方法をいち早く導入しました。そのような業務用化粧品の卸売り会社は当時ありませんでしたから、斬新なビジネス手法だったようです。徳島県内に倉庫があり、アクセスを考慮して平成8年に高松市に移ってきました。

──その後ネット販売をスタートされたわけですね。

矢野 ネット販売は7年ほど前に始めました。一般のお客さま向け商品の売り上げはプラスアルファととらえており、自社企画商品の卸売りがあくまで主です。なるべく在庫を抱えないよう、メーカーから小ロットで仕入れるように心がけています。

──近年の高齢化の影響はいかがでしょうか。

矢野 大手企業も高齢者向けスキンケア商品市場に参入しつつあるため、競争が激しくなってきていると感じています。ただ四国をはじめとして全国に長年お付き合いさせていただいているお客さまがいるので、景気動向にそれほど左右されないかもしれません。
 四国4県に営業担当者がおり、小回りのきく点が当社の強みです。至急のご要望に対応したり、配達時に感想をおうかがいしたり、お客さまお一人お一人とお互いに顔の見える関係づくりを心がけています。

──ユーザーの声を反映して販売している商品はありますか。

矢野 化粧水「ホワイトローション」はそのひとつですね。5種類の漢方を配合していて、ヨクイニンエキスは疣贅(顔や首筋にできる小さなイボ)に効果があるといわれています。ボディーソープの泡立ちや保湿力についてご要望を頂戴することも多く、植物エキスやモモの葉エキスを用いた商品などが人気です。

──さきごろ高松市内に店舗をオープンされたそうですね。

矢野 ええ。特別名勝地として有名な栗林公園の近くにアレルギー対応食品の専門店を開きました。アレルギーを持つ人が身近にいるのですが「通販で購入できる商品はかぎられていて、送料もかかり大変」という声をよく耳にしていたのがこの店舗を思いついたきっかけです。
 たとえばアレルギーの方が食べられるケーキは通常ホール(全体)単位で販売されていますが、誕生日などに気軽にご購入いただけるよう、当店では1カットから販売しています。その他生鮮食品から調味料、クッキーまで豊富に取りそろえており、ほとんどがアレルギー対応食品専門メーカーでつくられている商品です。広告をつくり積極的にアピールしていきたいと思っています。

月例会議で業績を伝え社内のベクトルを統一

──村川先生が顧問に就任されたいきさつを教えてください。

矢野 高知県に本社を置いていたころからTKC高知支部の会員先生にお世話になっていて、こちらへの移転を機に村川先生を紹介していただきました。当時はパソコンを購入しTKCの自計化システムを利用しはじめたばかりでしたので、村川会計の皆さんにパソコンの操作や入力方法を手取り足取り教えていただきました。

──複数のTKCシステムを利用されていますが、運用形態は?

矢野 本社で財務(『FX2』)、販売管理(『SX2』)、給与(『PX2』)システムを利用していて、ピア・ツー・ピア機能により『SX2』には2台のパソコンで伝票を分散入力できるようになっています。『SX2』から『FX2』に売上仕訳を連動できるのはとても効率的ですね。

──『FX2』のどんな機能を活用していますか。

矢野 監査時に村川会計の木村さんと《科目残高推移表》を確認しながら損益の動きを話し合っています。たとえば前月にくらべて広告宣伝費がかさんでいる場合は、伝票にまでさかのぼって原因をさぐるといった具合です。当社では全社員が出席する会議を毎月開いていますが《変動損益計算書》を回覧し、目標への進捗を確認しています。あわせて『SX2』の《担当者別売上月報》や《得意先別売上月報》の対前年売上高をチェックしています。業績をオープンにするのが当社の方針です。

──日ごろ注目されている勘定科目というと?

矢野 売上高、限界利益、固定費の三つを前年同期、目標と対比してチェックしています。卸売りの売上高はわりと安定していますが、例年夏場にはいるとクリーム商品の売り上げが落ち込むんです。新店舗がそれをカバーする存在になればと思っています。

──計画も立てられていると。

矢野 取り扱う商品構成や行動計画をふまえ、村川先生のご指導をいただきながら毎年立てています。今期は店舗の売り上げ予測を織り込み、翌期と5カ年計画の2種類をつくる予定です。

村川 経営計画を策定するさいは、私もエンチュレー様におうかがいしています。販売チャンネルの拡大という点で、新店舗には期待を寄せています。

──ネット販売では1回かぎりの購入客もいると思います。『SX2』では6桁の得意先コードを付番できますが、番号は足りるのでしょうか。

矢野 当社ではお客さま全員にコードを入力して管理しています。数カ月後におなじ商品を続けてご購入される方が結構いらっしゃるんですよ。まだ5000番をこえていないので、当面いまの運用方法で大丈夫だと思います。

新店舗には連動機能を備えた『ネットレジ』を導入

──こちらの店舗ではカシオの『ネットレジ』で日々の売り上げを管理されるそうですね。

矢野 『戦略経営者』7月号の記事(※編集室注『ネットレジ』は中小店舗を救えるか?)を読んだのが導入のきっかけです。『ネットレジ』を選んだ理由として大きかったのは、入力した売り上げデータを本社で運用している『FX2』にインターネット経由で連動できる点。一般的なPOSレジと異なり、店舗以外の場所からもリアルタイムで売り上げを把握できる機能は、今後活用していきたいと思います。入力が簡単で扱いやすいのもいいですね。

──今後の展望をお聞かせ下さい。

矢野 アレルギー対応食品の販売事業をもう一本の柱に育てていければと思っています。軌道にのれば四国各地への支店展開やインターネットによる販売なども検討したいです。お客さまからいただいたご意見を品ぞろえに反映させ、馬油クリームにつづく新たな定番商品をつくりたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 エンチュレー
設立 1991年3月
所在地 香川県高松市郷東町649-6
(店舗)高松市亀岡町20-8亀岡ビル1F
TEL 087-881-8554
(店舗)087-813-2038
社員数 11名
URL http://entre-k.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
自計化システムの活用を段階的にサポートする
監査担当 木村真由美 村川税理士事務所
香川県高松市亀岡町2番17号3階 TEL:087-835-8530

 より安く、いい商品を──。エンチュレー様が掲げる経営のモットーです。故矢野務社長が創業して以来、エンチュレー様は介護施設向けなどの業務用スキンケア商品を扱われています。アロエクリームやボディソープは、この分野における先駆け的存在の商品です。

 当事務所とのお付き合いが始まったのは、平成8年に本社を高松市に移転されたことがきっかけでした。現在は『FX2』『SX2』『PX2』『ネットレジ』とTKCシステムをフルに活用していただいていますが、もっとも早く導入されたのは『SX2』でした。導入直後の商品・得意先登録といった立ち上げ作業を支援させていただき、得意先への請求書発行はもちろんのこと、通信販売による購入客へのダイレクトメール機能の活用など、日常業務には欠かせないツールになっています。売り上げの上昇にともない年々伝票枚数が増えていたため、ピア・ツー・ピア機能の利用を提案し、2台のパソコンから入力できる体制に改められました。

 財務管理面では、日々タイムリーに伝票入力されており、巡回監査でおうかがいするさいは「最新業績」タブから業績データを確認し、的確な期末に向けた推移予測に役立てています。かつ最新の会社業績を社員の方々にもオープンにされていて、社内会議で経営状況を共有されているのがエンチュレー様の特徴です。『SX2』から売上データを自動連動できる点は、入力の手間を省きミスも防げるとの評価をいただいています。黒字経営を長年続けられており、15年連続で書面添付も実践されています。

 11月にはアレルギー対応食品の専門店を出店されました。今後、店舗では『ネットレジ』で売り上げを入力していただきます。別の場所にある本社で運用いただいている『FX2』への仕訳読み込みなど、活用を支援していきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2013年12月号