5月の第2日曜日は「母の日」。例年、10万鉢をこえるカーネーションを全国に出荷している花のギフト社。ワインやスイーツなどと花をセットにしたコラボ商品の開発により、毎月コンスタントな売り上げが見込めるようになった。書き入れ時を間近に控えた、同社の野上耕作社長と益子博美取締役に話を聞いた。

異なる業種の展示会に 意欲的に出展し商機つかむ

花のギフト社:野上社長(左から2番目)

花のギフト社:野上社長(左から2番目)

──一度聞いたら忘れない印象的な会社名ですね。

野上 生花や造花、プリザーブドフラワーを加工しギフト商品として販売しています。ご注文いただくルートは楽天などのショッピングサイト、カタログ、当社へのお問い合わせのおもに3つです。オフィスに置く観葉植物や社員へのプレゼント用など、スポット企画にも対応しています。法人のお客さまが売り上げの7割を占めますが、個人のお客さまがネット経由で注文されるケースが増えています。

──その要因は?

野上 スマートフォンの普及が大きいですね。スマホでも見やすいように、販売サイトをつくり込んでいるのが功を奏しました。昨年の夏ごろ急激にスマホによる受注が増えた気がします。

──繁忙期はいつですか。

野上 例年5月第2日曜日の母の日の出荷準備がもっとも忙しくなります。プレゼント用のカーネーションひとつとっても、バスケット、ラップ、リボンなど色と形の組み合わせは膨大にあります。300人弱の従業員を臨時で雇い、小山市にある倉庫を借りて作業をおこなっています。まさに戦争状態です(笑)。
 商品を全国から1カ所に集めているのは、仕入れたお花の鮮度を自ら確かめるためです。商品を加工し、10トントラックに積んでいくわけですが、積載効率が命。何段積みにするかによって、運送コストに如実に差が生まれます。取締役の益子は空間認識能力に長けていて、男性が数人がかりで収納できなかった箱を、1台のトラックにすんなりと納めてしまうんです。

益子 われわれが手がけているのは予測のビジネスです。母の日の出荷にそなえ、前年の10月には海外からカーネーションの苗を仕入れ、バスケットは年内に発注しないと間に合いません。

──花の仕入れルートを教えてください。

野上 カーネーションなどの花の苗を当社が買い付け、全国の契約農家に育てていただいています。契約を結んでいる生産者のほか、一部は卸売市場からも仕入れています。契約農家の方々と信頼関係を築くのに10年ぐらいかかりました。お花のギフトビジネスは儲かるらしいと大手企業も一時期参入してきましたが、数年ほどで撤退してしまいましたね。

──花の種類にも、はやりすたりがあるのでしょうね。

野上 以前は花束や花鉢の中につぼみがあったほうが育てがいがあると喜ばれましたが、いまはカタログの写真どおり満開にちかい状態のほうが好まれます。物流の進歩と品種改良により日持ちするようになったため、八分咲きでも出荷できるようになりました。

──購入客を増やすためにおこなっている活動は?

野上 さまざまなビジネス向け展示会に出展しています。近年ではドラッグストアショー、ホームセンターショーといった、異業種の展示会にチャレンジしています。自分たちが営業のため出歩くのではなく、お客さまが自然と集まってくる自動営業装置がほしいと以前から考えていました。同業者が多数出展する展示会に参加してもあまり意味がないため、「こんなマーケットでお花を販売したら面白いのでは」と思えるジャンルに絞っています。コーヒーの木とコーヒーのセット、フラワーアレンジメントと香水のセットなどのコラボレーションギフトを商品化できました。おかげさまで母の日のシーズン以外の売り上げ比率が年々高まっています。
 昨年10月には3300坪の用地を購入しました。そこに倉庫を建設し、年間通してフル稼働できる生産体制を目指しています。

益子 個人のお客さまが参考にするのは、ネット上の口コミです。安心感につながるため、生産者の方の情報を開示するようにしています。プレゼント用として明日届けてほしいといった突然のご依頼にもできるかぎり対応しており、電話応対、メールの返信内容にはとくに気を配っています。

銀行からの信頼感を高めた独自の業績レポート

──顧問税理士の久野豊美先生とは長いお付き合いをされていると聞いています。

野上 平成18年3月に税務顧問をお願いしましたから、丸8年になります。その前年に税務調査が入り、修正申告をすることになったのですが、当時の顧問税理士は当社の側に立って支援してくれませんでした。日ごろの経理をしっかりしていかないとまずいと感じ、知り合いの経営者に相談したところ、紹介されたのが久野先生でした。

──顧問契約と同時に『FX2』を導入されていますが、以前はどんな経理体制でしたか。

野上 おもに手書きで伝票をつけていました。市販の会計ソフトにも一応入力していましたが、後で画面で何かを確認するということはありませんでしたね。母の日向けのギフトで年間売上高の8割ぐらいを占めていましたから、業績をチェックするのはその前後だけという状態。どんぶり勘定でした。

──『FX2』を導入した効果はいかがでしょう。

野上 数字をチェックする習慣がつきましたね。経理担当者が月に700から800枚ほどの仕訳を入力していますが、翌月7日前後には当月の実績がわかります。月次監査のあと、《変動損益計算書》の画面を開いて、変動が著しい勘定科目があれば、仕訳にさかのぼり確認しています。ひと目でわかるため、グラフで推移を見ることが多いですね。業績を客観的に眺め続けていると数字が語りかけ、心も鎮まっていく感じがするのは不思議です(笑)。

益子 さきほど予測のビジネスと言いましたが、実績データをタイムリーに把握できるため、予測精度がより高まりました。

──用地取得に際して、金融機関との交渉もあったかと思いますが。

野上 毎年、中間期と決算後に銀行を訪ね、会社の概況を説明しています。『FX2』のデータをもとにレポートを作成していて、決算書を見せるだけで安心してもらえますから、これまで融資で困ったことは一度もありません。

久野 「感動の花を世界に」という経営理念のもと、お花を中心に他の商品とコラボしながら、毎月の売り上げを平準化するべく努力されています。その成果が実り、利益が安定して見込めるようになりました。

──会社の業績は社員にも伝えていますか。

野上 週間ミーティングや朝礼の場で伝えています。毎朝8時から自由参加の勉強会を開いていて、どうすれば売り上げを伸ばせるのか打ち手を話し合ったり、新商品のアイデアを発表してもらったりしています。日常会話の中からいいアイデアが生まれてくることもあるため、社内のコミュニケーションを活性化するよう努めています。定期的にイベントを開催したり、他社の見学会に社員を参加させているのもその一環です。

──抱負をお聞かせください。

野上 1年のあいだには母の日以外にも父の日や敬老の日、バレンタインデーなどもあり、ギフトを贈る機会には事欠きません。それらを商機として売り上げを毎月コンスタントにあげるため、オリジナルのコラボ商品の開発に力を注いでいるところです。お花とセットにして販売できる商材は無限にあると思います。年間を通して業務を受注できる体制づくりをすすめ、地域の人びとに働く場を提供していきたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 花のギフト社
設立 2000年3月
所在地 栃木県小山市乙女2-20-23
TEL 0285-45-0023
売上高 3億7000万円
社員数 12名(パート・アルバイト含む)
URL http://www.087gift.co.jp

CONSULTANT´S EYE
グラフをうまく活用し未来を楽しく語りあう
監査担当 鳥居良充 税理士法人Dream24
東京都江戸川区西葛西5-6-2第28山秀ビル7F TEL:03-5675-0831
http://www.hisanokaikei.jp/

 花のギフト社様とのお付き合いは8年ほど前、現在も関与させていただいている経営者の方からのご紹介により始まりました。税務調査時の対応や、経理面のアドバイスを重視して会計事務所を探しているというお話をうかがい「うちの税理士さんは厳しいけど、だめなものはだめとしっかり言ってくれる。毎月会社に来訪してくれて経理処理のチェックやアドバイスもきちんとしてくれるよ」という、とてもありがたい推薦により関与させていただくことになりました。

 いまでは事務所の場所や社員の方々、取引先や販売形態など当時から大幅に変わりましたが、確固とした経営理念のもと、常に成長を目指していく姿勢、従業員やお客さま、生産者の方々など会社を取り巻く「人」を重んじる社風は、変わっていないと感じています。

 今後の展望を重視されている花のギフト社様においては、月次巡回監査時に『FX2』から出力したグラフを活用し、業績報告をおこなっています。経理処理の確認や節税対策、企業防衛の提案等はもちろんのことですが、事業展開や新商品のアイデア、他業種企業での成功・失敗事例のお話をする際には、「数字」ではなく「グラフ」というビジュアルによる説明の方がイメージしやすいと感じるためです。野上社長、益子取締役に『FX2』の画面を見ていただき「グラフのこのあたりを目指しましょう」、「この時期はこのあたりが着地点ですね」といったことを話し合いながら、楽しく有意義な報告会を実施しています。

 花のギフト社様は、「花」を用いたギフトを主軸にさまざまな商品とのコラボ企画や、独自商品の開発・販売を手がけていますが、メーンイベントは5月の「母の日」です。母の日の出荷業務は「新人研修にはもってこい」といううわさが立つほどハードかつ、勉強になるそうです。今年も無事に大一番を乗りこえられることを願っています。微力ながら会社の発展に貢献できるよう、今後も努めてまいります。

掲載:『戦略経営者』2014年4月号