円安などによる企業収益の改善と、安倍政権の賃上げ要請が大企業のボーナス増額を後押しするとの声も聞かれますが、中小企業の夏季賞与の相場はどうでしょう。(家具製造)

 日本経済は2013年から回復基調が続いています。昨年度は、雇用者にとってわずかながらも景気の持ち直しを実感できる1年となりました。厚生労働省によれば、13年度は、ボーナス算定の基礎となる所定内給与(月給)の減少は続いたものの、ボーナス等を含む特別給与は前年比(以下同)+1.9%と3年ぶりに増加し、1人当たり名目賃金は+0.1%と3年ぶりに増加しました。今年3月に発表された13年の冬の1人当たりボーナスは、+0.3%と5年ぶりに増加し、夏のボーナス並みの伸びになりました。

 冬の1人当たりボーナスを規模別にみると、事業所規模30人以上は+0.6%と増加したものの、5~29人の小規模事業所(みずほ総合研究所による推計値)は1.5%減少しました。中小企業を中心に、相対的に賃金の低い非正規労働者の従業員比率が大きく上昇したことが背景にあると考えられます。

 また、13年度上期は、大企業(日銀短観の経常利益:+45.6%)に比べて、中堅企業(+14.4%)や中小企業(+13.8%)の利益改善ペースが緩やかであったことも背景にあると考えられます。1人当たりのボーナスを業種別にみると、製造業(全規模、+2.5%)が増加したものの、非製造業は小幅減となりました。非製造業では、建設、金融・保険、不動産・物品賃貸などが大きく増加したものの、サービス業が落ち込みました。

小規模企業は小幅な伸び?

 さて、14年夏のボーナスを取り巻く環境についてみると、昨冬より明るさが見られます。円安に伴う輸出採算の改善、高額品を中心とした個人消費の堅調さなどから13年度下期の経営環境は改善が続いているためです。

 夏のボーナスを見通すにあたっては、①所定内給与(月給)の動向と、②企業収益と連動する傾向のある支給月数(=ボーナス支給額÷所定内給与)の二つがポイントとなります。まず、6月2日時点の連合集計ベースの14年の春季賃上げ率(定期昇給とベースアップを含む)をみると、大企業で+2.12%(昨年は+1.75%)、中小企業で+1.78%(昨年は+1.55%)と上昇しています。これを受けて、雇用者全体の平均でみた所定内給与は前年比+0.3%と9年ぶりに増加する見込みです。さらに、同じ連合の集計によれば、夏季賞与の支給月数は2.37カ月と、前年(2.16カ月)を0.21カ月上回っています。

 以上を踏まえ、みずほ総合研究所では今夏の1人当たりボーナス(民間企業・5人以上事業所)を前年比+1.6%と、03年以来の高い伸びになると予測しました。支給対象者も増加し、支給総額は+3.6%と92年以来の高い伸びとなる見込みです。ただし、規模別にみると、中小企業(5~29人)の1人当たりボーナスは、+0.3%(支給総額は+0.6%)と小幅な伸びにとどまりそうです。中小企業では、大多数の企業が4月以降にボーナスの支給額を決定するため、消費増税後の需要減を反映して支給額が抑制されることが予想されます。

 なお、14年の冬のボーナスは、春闘で通年の賞与水準を決定した企業では、夏のボーナス並みの伸びが期待される一方、中小企業などでは上期の景気・業績悪化を受けて支給額が抑えられることが予想されます。

掲載:『戦略経営者』2014年7月号