地方創生の一環で「中小企業需要創生法」が制定されると聞きました。制度の概要について教えてください。(食品加工業)

 安倍政権発足後、賃上げの動きが広まっており、長引くデフレも解消に向かいつつありますが、経済の再生は道半ばにあります。今後はアベノミクスの効果を全国津々浦々に広げ、地方創生を実現していくことが大切です。経済産業省としては、「ローカルアベノミクス」を確実に実行し、経済の好循環を確かなものとするため、地域の経済・雇用を支える中小企業・小規模事業者に対する需要を掘り起こし、地方創生に向けた取り組みを進めていくことが重要と認識しています。そこで、①政府調達への参入を促進することで創業間もない中小企業・小規模事業者の商品・サービスに対する初期需要を創出する②地域資源を活用した「ふるさと名物」をテコに地域を挙げて需要を掘り起こすことを目指し、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)と中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律(地域資源法)等の改正を本年の通常国会に「中小企業需要創生法」として提出します。

「新規中小企業者」を定義

 それではまず官公需法の主な改正内容をご紹介しましょう。創業間もない中小企業・小規模事業者は、優れた商品・サービスを有していても、一般に実績が少なく、販路の拡大が課題です。そのため、官公需(8兆円)において実績を得ることはその後の市場の確保、信用向上に極めて有効です。一方、実績の少ない企業はそもそも国等の発注者にその商品・サービスについて知られる機会が少なく、また企業の信用が十分でないなどの理由から敬遠される傾向にあり、受注機会が限られています。このため、官公需法を改正し、創業10年未満の中小企業者を「新規中小企業者」として定義し、新規中小企業者等との契約目標の設定、受注機会の増大のための措置等を盛り込んだ基本方針を策定しました。また各省各庁に契約の方針を策定させ、契約実績の概要を公表することも定めています。

 次は地域資源法の改正です。同法では、平成19年の制定以来、国が地域資源を活用した案件を認定してきました。そのうち約1割が1兆円超の売り上げをあげるなど一定の成果を挙げた半面、個者の取り組みにとどまり、地域の関係者を巻き込んだ面的な取り組みには至らない計画も数多く見られました。このため、今回の法改正には、①市町村が地域資源の指定に積極的な関与ができることを法定。そして市町村による「ふるさと名物応援宣言」を後押しし、市町村が旗振り役となって、商工会・商工会議所、農協、観光協会、地銀・信金等と連携して、地域資源を活用する取り組みを促進すること②地域資源を活用して事業を展開する中小企業、消費者との接点を有する小売事業者やNPOとの連携を応援するため、地域産業資源活用支援事業計画の認定制度を新たに設け、中小企業信用保険法の特例等の支援措置を講じること③地域資源の対象を拡大し、リンゴ狩りや機織り体験等、農業体験や産業観光等も支援対象とすることなどを盛り込みます。全国津々浦々で地域資源を活用した事業活動を進め、地域のブランド力向上を図ります。

掲載:『戦略経営者』2015年3月号