システム開発やネットワーク・サーバーの構築などを請け負っているシシン。2011年に創業して以来、着実に取引先を増やしている。働きやすい職場環境づくりに力を入れる隅山太朗社長(40)は、給与計算にTKCの『PX2』を活用している。

月次の営業成績を報告し経営者意識を植えつける

シシン:隅山社長(右から2番目)

シシン:隅山社長(右から2番目)

──システム開発をメーンに事業展開されているそうですね。

隅山 お客さまのところに常駐して、システム開発やネットワーク・サーバー構築、運用保守などを行っています。業種は多岐にわたりますが、いまは金融機関や通信関係(携帯キャリア等)が多いですね。

──現在の社員数は?

隅山 20名です。平均年齢は28歳。私はいま40歳ですが、私より上は2人だけで、あとは新卒採用で増やした20代が多いですね。みんな基本的に情報システム部員で、私だけが営業(プラス総務・経理関係)を担当しています。
 ただ来期には、もう1人営業を増やして、新規開拓や既存の取引先へのルート営業を強化しようとも思っています。

──技術面の強みについて教えてください。

山中裕治取締役 PHPやJava等のプログラム言語を使ったウェブシステムの開発をはじめ、データベースのSQLやオラクルの知識に関するものを得意としています。

──会社設立は2011年4月とのことです。起業したいきさつは?

隅山 私はもともと大学卒業後、花き市場で競りをやっていました。しかし市場が移転することになり、通勤できなくなってしまったことから転職を考えました。で、そのときに経験のないコンピューターの世界で働いてみたいと思い、転職活動をしていたところ幸いにも拾ってくれる会社がありました。そこで営業をするうちにIT業界の労働環境というものがしだいに分かってきたんです。けっして前職の会社がそうだったわけではないのですが、人を使い捨てにする風潮が業界全体に漂っていました。それが個人的にはあまり好ましいものに感じられなくて「だったら自分が理想とする会社を作ってしまおう」と考えるようになりました。それで以前から親しかったシステムエンジニアの山中と2人でシシンを立ち上げたのです。

──そこから人を増やしたり、仕事を増やしていくのは大変だったのではないでしょうか。

隅山 ちょうど会社設立の準備を進めているときに東日本大震災が起きて、あてにしていた仕事が全部なくなってしまいました。当初の半年くらいは人も採用できないし、仕事も増えないしで苦労しましたね。
 その後、就職先が決まっていないまま学校を卒業した既卒者を採用できたのですが、本音を言えばある程度の知識や経験をもった人を採用したかった。でも、その社員は一生懸命頑張って、みるみる成長していった。それを見て、たとえ経験が浅くても会社の考え方や方向性に共感してくれる人を増やしていくべきだと考え方を改めました。結果的にそれが良かったのか、仕事もだんだん増えてきて現在に至っています。

──組織をマネジメントしていくうえで意識していることは何ですか。

隅山 役員(経営者側)と社員の区切りをなるべく取り払うように意識しています。だから会社の経営状況などの情報についてもできるだけオープンにして、みんなで共有するようにしています。毎月、会社の営業成績報告会を行っているのは、そうしたことからです。

──会社のフェイスブックを拝見しましたが、飲み会の写真などから社内の雰囲気の良さが伝わってきます。それを見て、この会社で働きたいと思ってくれる人もいるのではないですか。

隅山 そうですね。社員からの紹介も結構多くて、「知り合いが今仕事を探しているんです」みたいな感じで紹介してくれて、採用したケースも何度かありました。

「Web給与明細サービス」で社外からでも閲覧可能に

──TKCシステムを使いはじめたいきさつは……。

隅山 財務会計システム『FX2』と給与システム『PX2』を、会計事務所の勧めで会社設立当初から導入しています。吉川先生に税務顧問をお願いしたのは、以前からよくしてもらっているお客さまに紹介されたのがきっかけでした。

──実際に使ってみての印象は?

隅山 前職の会社ではY社のパソコン会計ソフトを使っていました。それと比べると『FX2』は使いやすいという印象があります。特にBAST(TKC経営指標)を使った同業他社比較ができるところが気に入っています。

吉川 透・顧問税理士 隅山社長は『継続MAS』で策定した経営計画をもとにした「予実管理」をしっかり行っており、業績を着実に伸ばしています。

──『PX2』についてはいかがでしょうか。

隅山 《勤怠状況一覧表》や《支給控除一覧表》など、便利な帳表類が充実しているところがいいですね。《勤怠状況一覧表》については、社員たちの勤務表と比較して、差分がないかどうかをチェックするのに役立てています。

──「Web給与明細サービス」を利用しているとお聞きしました。

隅山 以前は紙ベースで給与明細を社員に配布していましたが、ウェブ化されたことでスムーズに処理が進むようになりました。紙のときはプリントアウトしたものを月に1回、社員に手渡ししていました。しかし、当社の場合お客さまのもとに常駐して働いている社員も多く、なかなか会えるタイミングがない場合もあります。そのときは社員の自宅に郵送したりしていましたが、いまは『PX2』からワンクリックするだけで、社員が自分のスマホなどを通じて給与明細を閲覧できるようになるわけですから、とても便利になりました。

──社員のみなさんからの反応は?

隅山 システム開発という業種的な理由もあるかもしれませんが、紙よりもデータのほうがいいという人間が圧倒的に多いですね。うっかり明細を紛失してしまう心配がなくなったという点からも好評です。

オープンな人間関係が仕事のやる気に直結する

──従業員の賃金額はどのように決めていますか。

隅山 うち独自の給料表があって、それをベースに社員の給料を決めています。昇給については、勤続年数や勤務態度、それから会社の取り組みに対して積極的に取り組んでいるか等を考慮して判断しています。おおむね年に1回のペースで昇給しているイメージです。

──『PX2』からは「労働分配率等の推移」や「1人当たり支給総額の推移」の数字が簡単に入手できますが、それらについては参考にされていますか。

隅山 1人当たり人件費は高く労働分配率は低い、という理想の経営を目指すうえでも参考にしています。

──残業時間削減の取り組みについてはどうでしょう。

隅山 特別な対策はしていませんが、なるべく無駄に長い残業はしないように伝えています。仕方がない残業や休日出勤があった場合には、振替休日の取得を奨励しています。

──従業員のモチベーションを高めるために工夫していることがあれば教えてください。

隅山 「教育」と「福利厚生」の充実がまず挙げられます。教育については、ITスクールに通う費用を会社が全額負担するなどして積極的にサポートしています。福利厚生については、食事補助(「チケットレストラン」に加盟するコンビニや飲食店での代金を半額負担)などを行っています。あとはやはり、私を含めた社内の人間全員がフラットな関係のもとに働ける職場環境を作ることが、社員のモチベーション向上に直結すると思っています。「友だち」と表現するとベタベタな感じがするし、「家族・身内」というのも何だか違うし、うまく言葉では表現できませんが、困ったらお互い助け合えるような関係づくりができたらいいなと考えています。

──スポーツチームみたいなイメージですか。

隅山 そうですね……でも、けっして体育会系ではないんですが。どちらかというと、あまり人と話したがらないタイプが多いかも(笑)。ただ会社の飲み会にはみんなよく来てくれて、ゲームとか趣味の話で盛り上がっています。

──社長の薫陶を受けるような飲み会とはまるで違う感じですね。

隅山 そういうのは苦手なんですよ。社員を強力なリーダーシップのもとに引っ張っていこうなんてつもりはさらさらないし、そういうタイプでもありません。

吉川税理士 しかしそれが社長の求心力になっている不思議な会社です。こんなIT企業も私はアリだと思っています。

──今後の目標は?

隅山 シシンという社名には、至信(誠実であること)、指針(進むべき方向を考えて行動すること)、視診(自分の目で見て判断すること)、私心(自分の気持ちを大切にすること)、私信(自分から周囲へコミュニケートすること)という意味を含めています。その名前に恥じないような会社にしていきたいですね。

(本誌・吉田茂司)

会社概要
名称 株式会社シシン
設立 2011年4月
所在地 東京都新宿区新宿5-11-2 新宿岡田ビル507
売上高 1億1000万円(今期見込み)
社員数 20名
URL http://www.sishin.com/
顧問税理士 吉川 透
吉川透税理士事務所
東京都豊島区南池袋2-18-9
マ・シャンブル南池袋401
TEL:03-5953-3788
URL:http://www.yoshikawa-kaikei.com/

掲載:『戦略経営者』2015年4月号