鹿児島県志布志市産茶葉の卸販売を手がける株式会社堀口園。契約栽培による生産家との強いつながりを背景に大手飲料メーカーなどから高い信頼を獲得してきた。そんな同社が給与計算で活用しているのが『PX2』とアマノ社の勤怠管理システム『タイムパック』。堀口将吾専務ら経営陣に実務上の効果などについて聞いた。

女性目線の商品開発で自社ブランド展開

堀口園:堀口専務取締役(後列左から2番目)

堀口園:堀口専務取締役(後列左から2番目)

──茶葉の卸販売を手がけているとお聞きしています。

堀口将吾専務取締役 いわゆる「産地の問屋」ですね。地元志布志市には面積にして1200ヘクタールほどの茶畑があります。地元の生産家から直接仕入れた「荒茶」と呼ばれる原料を、顧客ニーズに合わせてブレンドし、必要に応じて形を整え、あるいは焙煎して香りを引き出すなどの加工を加え、大手飲料メーカーや静岡や福岡など他の産地問屋に卸すのを主な事業内容としています。

──産地問屋としての強みについて教えてください。

専務 市場では生産されたお茶しか買うことができませんが、生産家と直接つながっている産地問屋としての当社の一番の強みは、栽培や製造段階でこだわりを出せるところにあると思います。そこで当社は他社との差別化を図るため、生産家から全量を買い取る契約栽培方式での取引に注力しています。契約栽培にすることで、飲料メーカーが製造するドリンクに最も適した原料を生産家とともに供給していく体制を作り上げてきました。生産家も市場価格の低迷などで経営に厳しさが増しており、お茶の成分に着目するなど原料段階から新しい需要を創造していきたいと考えています。

──具体的には?

専務 たとえばお茶の成分では抗酸化作用のあるカテキンや生理活性作用のあるカフェインが有名ですが、それ以外にもテアニンといううま味成分が最近注目されています。これはお茶や一部の菌類に含まれているアミノ酸の一種で、リラックス効果や認知症改善に効果があるなど脳に対する作用があるといわれています。ここ志布志ではお茶の芽が芽吹いてから黒い布をかぶせる「被覆栽培」という栽培方法を実施している畑が多いのですが、その被覆栽培によってテアニンを多く含有するお茶ができることがわかっています。アミノ酸をためこみやすい品種を選択的に採用するなどこのテアニンの含有量に注目して積極的な商品提案を行っていければと考えています。

──小売りにも参入されたとか。

専務 今年3月から、オリジナル商品をネット通販する自社サイト「さんちカフェ茶のん」をオープンし、小売りビジネスに参入しました。当社は抹茶の原料となる「碾茶(てんちや)」の製造工場もあります。メーン商品は抹茶入りのティーバッグ煎茶ですが、煎茶のみならず抹茶も自社生産しているところが大きな強みになっています。また商品開発段階から女性によるプロジェクトチームが主体となり女性目線を大切にした製品づくりを心がけました。

堀口恵美子取締役 コンセプトづくりやパッケージデザイン、ターゲット層をどう定めるかといったマーケティングなどを女性社員中心で行うことにより、買う側の目線を強く意識しました。ペットボトル以外のお茶をなかなか家庭で入れる機会のない20~30代の女性が、手軽においしいお茶を飲めるような商品を目指したのです。将来的には家庭の子どもたちがお茶のある生活をより身近に感じてもらえるというのが理想です。

──どんな工夫を?

取締役 ベースとなるお茶にはテアニンを多く含んだ原料を使い、抹茶もかなり多めに配合しています。1個あたりの単価は廉価品に比べ確かに割高ですが、ティーバッグ製品としてはかなり高品質な味を実現しています。また量も通常の2グラムより多い3グラム入りで、2煎目、3煎目もおいしく飲んでいただけるようにしました。

専務 単純に価格帯で商品を区分するのではなく、リラックスしたい人向けには「リーフ緑茶 てきてき彩」、健康と美を求める方には「リーフ緑茶 てきてき笑」、手軽さが第一という人には「抹茶入り煎茶ティーバッグ てきてきリラティ」など飲用機会別に商品を探せるようにしたのも大きな特徴です。ちなみにティーバッグの糸の長さは一般的な製品よりもかなり長めですが、これは湯飲み茶わんよりもマグカップなどでお茶を飲むことが多くなった消費者の傾向を踏まえてのもの。細かな気配りですが、「お湯を入れてもつまみの部分がコップの中に入らなくてすむ」と評価をいただいています。

賃金BASTを参照し給与水準の適正値を把握する

──加治屋正樹(顧問税理士)先生が関与されるようになった経緯について教えてください。

加治屋税理士 創業者の堀口常弘社長が堀口園を設立して間もなくからおつきあいさせていただいていますので、かれこれ30年余りの月日がたちました。当時はいろいろ税理士を探されたそうですが、長く事業を続けていくにあたって年齢の近い私と一緒に仕事がしたかったという理由で当事務所に決めていただきました。

──給与計算はどのような流れでされていますか。

取締役 アマノ社のタイムレコーダーパッケージ『Time P@ck(タイムパック)』で集計したデータをいったん自社の業務管理ソフトで抽出し、それを『PX2』に連動させることでデータの自動連携をしています。実はタイムレコーダーを導入したのは、24時間稼働で夜勤が発生する碾茶工場がスタートしたときでした。それ以前は各自が管理している出勤簿を20日で締め、元に私が電卓で勤務時間計算をし、再度入力ミスがないか確かめた後、『PX2』に打ち込んでいました。今ではそうした手間が省けるようになり、業務効率は大きく改善しましたね。

──便利に感じられている機能は?

取締役 「中小企業の賃金指標」(賃金BAST)はよく活用しています。当社は6項目の経営理念のひとつに「社員の物心両面の幸福を追求しよう」と掲げていますが、賃金が地域内で低い水準にとどまっていてはそれが実現できません。賃金BASTは、全国平均だけでなく当社がある南九州地域に限定するなど細かく分類されているので、給与の適正な配分を決定する際の判断材料として非常に有効だと考えています。

──月次監査ではどんな議論を交わされていますか。

竹山康一郎監査担当 同社では計画をかなり厳密に立てられているので、月次監査は毎月の計画と実績の比較が主な作業になります。数字にずれが生じていればその要因を分析し、次月以降の打ち手をともに考えていきます。またここ数年は大きな設備投資もあり、公的制度の利用可能性や必要準備書類についての打ち合わせも増えています。

専務 当社では計画作りを全社員で行っています。開示できない数値はもちろんありますが、なるべく経営指標をオープンにして、現場で勤務している従業員ひとりひとりが自ら考えながら目標を決め、それを全社的にまとめてひとつの経営計画に仕上げています。また計画作りをする過程でそれぞれの部門で課題が浮かび上がってきますが、その解決のためにプロジェクトチームを複数走らせているのも当社の大きな特徴で、それぞれのチームが期限を定め、具体的な行動計画を定めています。現在は碾茶の品質向上やコスト削減、JGAP認証の取得、小売り部門の販促など6つのプロジェクトチームで活発な議論を行っています。

──今後の抱負についてお聞かせください。

専務 柱となる大手飲料メーカー向けをしっかり伸ばしていきつつ、契約栽培を中心とするわれわれ産地問屋しかできない取り組みをさらに推進していく考えです。小売り部門との相乗効果を通じ、お茶の素晴らしさを一人でも多くの人に伝えていければうれしいですね。

(本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社堀口園
設立 1987年3月
所在地 鹿児島県志布志市有明町野神3451-8
社員数 18名
URL http://www.horiguchien.co.jp/

CONSULTANT´S EYE
TKCシステムで業績のスピーディーな把握を支援
税理士法人九州総合会計 監査担当 竹山康一郎
鹿児島県志布志市志布志町志布志2255番1
TEL:099-473-1606
http://kyuusyuusougoukaikei.tkcnf.com/

 株式会社堀口園様の担当となり9年目を迎えております。私が担当となる以前から『FX2』『PX2』を導入していただいており、現在は「電子納税簡単キット」までご利用いただいています。専用の仕入れ・在庫管理システムを用いた各倉庫データの集約やタイムレコーダーから『PX2』へのデータ読み込みシステムの製作など、事務処理のIT化にとても積極的です。

 また、社員教育にも熱心に取り組まれており、当社の公認会計士工藤篤による全5回の経営理念を理解するための研修や、熊本県人吉市の中小企業大学校での知識・教養を身につける研修のほか、倫理法人会に加入し、精神面の教育も実施しています。

 会計処理については、毎月10日までには前月分の処理を終え、監査が完了するようにしていただいています。それは、堀口社長の「成長する会社は、自社の業績をスピーディーに把握できているのが当然である」という考えに基づいています。監査の際には、事業計画と実績とを比較し、差異の発生原因や今後の計画について検討をし、事業計画の修正を行っています。また、TKCシステムで出力した財務三表をもとに金融機関へ業績の説明を毎月実施しており、高い評価を得ているようです。

 現在、業績は順調に伸びてきており、ここ数年で大きな設備投資も実施してきています。今後も新たな設備投資の計画があるので、財務の面から協力していきたいと考えています。

 社長の経営に関する意識が高いこともあり、当社に対する質問や要望も高度な内容のものが多いですが、それらの対応をする中で自分もさまざまなことを学べていると考えています。これからの堀口園様の成長に少しでも寄与できるように努力していきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2015年10月号