自社のロゴマーク制作を検討しています。デザインの盗用を指摘されないためには、どんな点に気をつければよいでしょうか。(ガラス加工業)

 ことしの夏、東京五輪エンブレムの盗用疑惑問題が報じられました。一連の報道でロゴマークについて関心を持たれた方も多いのではないでしょうか。企業名を表示するロゴマークは日常的に使用されていますが、さまざまな問題が隠されています。

 もちろん、他人のデザインを盗用するのは許されることではありませんが、盗用しなくても問題が生じる場合があります。さらに、自社のロゴマークが最初は他人の権利を侵害しなくても、後々、問題が発生する場合もあります。

 ロゴマークの落とし穴について順を追って説明します。ロゴマークは特許庁に登録することで商標権が得られます。商標権の侵害が生じた場合、侵害者が商標権の存在を知っていたかどうかに関係なく、商標権の権利行使が可能です。

 具体例で示します。Aさんの使用しているロゴマークはAさん独自のデザインであり、他人の商標権を侵害するか否か本人は知らなかったとします。この場合でもAさんの行為が他人の商標権侵害に該当する事実があっただけで、そのロゴマークの商標権者はAさんを商標権侵害で訴えることができます。Aさんにとっては寝耳に水の話ですが、他人の商標権の存在を知らなかったという言い訳は法律上は通じません。

 つぎに、他人の商標権を侵害しないよう調査を実施し、その時点で問題となる他人の商標権は存在しなかったとします。このような場合でも、後発的に問題が生じることがあります。というのは、商標権は先にロゴマークを使用した者に与えられるのではなく、先に特許庁にロゴマークの申請手続きをした者に与えられるからです。

 つまり、ロゴマークの使用を開始した時点で障害となる商標権が存在しなかった場合でも、後日他人に商標権を取られてしまう場合があるのです。そうしたことに陥らないよう、必要な商標権は早期に押さえておくべきです。

 商標法上、正式な会社名には商標権の効力はおよばないという規定があります。しかし、この規定には「普通に表示されているものに限る」との一文があるので、正式社名にデザインを加えたロゴマークにこの規定は適用されないことになります。したがって、ロゴマークについては他人の商標権の影響がおよぶ点に注意が必要です。

 商標権を侵害した場合、懲役10年以下、罰金3億円以下の刑事罰の適用もあり得ます。

 企業ロゴは記憶に残りやすく、企業理念を反映させる等の条件がありますが、以下、法律上の観点から注意すべき事項について説明します。まず素材選びですが、インターネット上に掲載されている素材の中には、商用利用に制限があるものや、商標登録が認められないものもあるので利用条件を確認しましょう。

 デザイナーにロゴマークを制作してもらう場合は、デザイナー側に「作品を勝手に改変しないこと」等の権利が残る点に注意してください。これらの権利が後で問題にならないように、デザイナーと契約書を取り交わすことが大切です。

 デザイナーからロゴマークの案が上がってきた段階で商標の専門家に調査を依頼します。問題がなければ商標登録により権利を確保しましょう。商標権の効力は同一のものだけでなく類似したものにもおよぶため、あらゆるバリエーションについて申請する必要はありません。

掲載:『戦略経営者』2015年11月号