業務時間をうまく管理することは仕事の生産性を高め、職場を活性化するために必須の方策である。また、必然的に残業削減などの効果も生み出す。そんな「タイムマネジメント」の実践事例を紹介する。

みるみる組織が活性化するタイムマネジメント

 介護経営サポートシステムの販売や人材派遣を手がけるセントワークス。その本社が、東京メトロ八丁堀駅から歩いて3分ほどの場所にある。人事サービス部で働く一之瀬幸生さんは毎朝会社に着くと一息ついた後に、マイクロソフトのアウトルックを立ち上げる。このメールソフトには15分単位の「予定表」の機能があり、それを使って1日のスケジュールを組むのが日課となっている。例えば【9:00~10:00メールチェック/10:00~11:00電話営業/11:00~12:00会議の準備~】といった具合だ。

 完成したら、その予定表を同じチーム(部署)のメンバーにメールで発信。一之瀬さんの1日のスケジュールが上司や同僚たちにも共有されることになる。

「スケジュールを公開するということは、『この仕事はこの時間内に終わらせる』とチーム内のみんなに宣言しているようなもの。仕事の〝おしり〟が決まることで、いやが応でも集中力が増します」

 こうした朝のメールをしているのは、一之瀬さんだけに限らない。セントワークスではすべての社員がその日の予定表をメールで送信している。全社でルール化されているのだ。

 さらに朝だけでなく、帰宅前の夜についても「今日1日、どんなスケジュールで働いたかの実績」をメールで送る必要がある。朝のメールと夜のメールを見比べれば、朝の段階で予定したとおり働けたかどうかの〝差異〟がすぐに分かる。

残業時間はほぼ半分に

 同社では、朝と夜に送る2つのメールを総称して「朝・夜メール」と呼んでいる。この制度がスタートしたのは、2012年5月のこと。最大の目的は、チームのタイムマネジメント能力の向上にあった。ワーク・ライフ・バランスの推進に取り組み始めた同社にとって、残業削減は重要な課題だった。

「ムダな残業を減らすためにはタイムマネジメントをしっかり行う必要があります。そのための施策として朝・夜メールをスタートしました」

 朝メールを書くことは、仕事を分解してそれぞれに所要時間を見積もるきっかけになる。さらに夜メールも書くことで所要時間の予測違いを自覚することができる。朝に予定した帰宅時間よりも実際の帰宅時間が遅くなった場合は、なぜ予定通りにいかなったか等を「気づき・反省」のコメントとして記さなければならない。

「朝・夜メールをチーム内のみんなで共有することにより、上司が部下に対して『優先順位の付け方はそれでよいのか』とアドバイスできたり、仕事を抱え込んでいる社員が誰かといったことが分かるようになります。つまり、非効率な働き方をチーム全体で見直していくきっかけになるのです」

 同社ではワーク・ライフ・バランス推進の一環として、毎月第3水曜日を「必達ノー残業デー」にしたり、業務改善やムダ取りの話し合いをする「カエル会議」を部署ごとに開催するなどの取り組みもおこなっている。

「必達ノー残業デーの日にどうしても残業しなければならない社員については、ペナルティーとして、奇抜なデザインの『恥ずかしいマント』の着用が義務づけられています」

 これらの施策が功を奏し、残業時間はかつてのほぼ半分に減っている。それでいて売上高も経常利益も前期を大幅に上回っているというからすごい。組織の生産性は確実に高まっている。

(本誌・吉田茂司)

掲載:『戦略経営者』2015年12月号