集団予約客が現れず損害を被ったというSNSの投稿が話題になるたびに、「うちで起こったらどうしよう」と怖くなります。予防策について教えてください。(飲食店経営)

 ドタキャンは予約した日時の間近になってキャンセルすること、ノーショーはキャンセルの連絡すらしない無断キャンセルのことを指します。ドタキャンとみなされる時間は飲食店によって異なりますが、半日前から3日前が一般的でしょう。

 ドタキャンやノーショーによって、飲食店は大きな損害を被ります。準備していた食材や料理が無駄になる金銭的な被害はもちろん、大きな社会問題となっている食品ロスも発生します。人気店であれば本来は他の客が利用できたかもしれず、機会損失にもつながるでしょう。その飲食店の利用希望客にとっても非常に迷惑な話です。

 飲食店の損害として見過ごされがちなのが、スタッフの心理的なストレスでしょう。楽しんでもらえるよう一生懸命料理を用意したのに、予約客が訪れないとあっては気持ちが折れてしまいます。ドタキャンであればまだ連絡がありますが、ノーショーの場合には全く音沙汰がないので、精神的にとてもつらいところです。

 なぜドタキャンやノーショーが起きてしまうのでしょうか。大きな理由の一つに、日本では飲食店の予約が契約であるという認識が薄いことが挙げられます。ホテルの宿泊や飛行機のチケットであれば、予約日の数日前からキャンセル料が発生することは周知の事実です。しかし飲食店はこれまでキャンセル料をとってこなかったこともあり、消費者は予約した日時に席と食材と料理、サービスを準備してもらっていることをあまり意識していません。

 また接待ではドタキャンやノーショーが起きやすくなります。接待では飲食店を予約できなければ大変なことになるので、幹事がよさそうな複数の飲食店を予約して押さえておくことがあります。その後で相手の都合や好みに合わせて、どこに訪れるかを決めるのです。しかし飲食店が決まると、安心して当日のことだけを考えてしまい、キャンセルするのを忘れがちになります。

フードテック活用で対策も

 では飲食店は具体的にどのような対策を講じればよいのでしょうか。まず予約時のキャンセルポリシーを明確に伝えることが重要です。いつからがドタキャンとなるのか、ドタキャンやノーショーとなった時にはいくら支払うのか最初に明示しておきます。それだけで予約客は身が引き締まり、不要に損をしないよう注意するものです。

 1週間前や数日前に確認の電話やメールを入れることも効果があります。飲食店は開店前の準備中の時でさえ仕込みに追われて忙しいので、全ての予約を確認するのは難しいと思いますが、せめて1日の売り上げを左右するような貸し切りや団体の予約くらいは注意深く確認しておくべきでしょう。

 またフードテック(FoodTech)を活用したドタキャン・ノーショー対策も有効です。「トレタ(Toreta)」「テーブルチェック(TableCheck)」といった予約台帳サービスを利用すれば、事前決済にしたり、ドタキャンやノーショーが起きた際に、キャンセルポリシーに従って代金を回収したりすることができます。

 ドタキャンやノーショーに関しては、確かに飲食店が被害者です。しかしただ怖がるだけではなく、毅然(きぜん)とした態度をとり、紹介したような能動的な対策を実施することをおすすめします。

掲載:『戦略経営者』2018年7月号