株式会社SPEC

内外装工事および服飾品販売を手がける、スペック。さまざまな現場で培ってきた技術力を武器に、売り上げを伸ばしつづけている。業容の拡大にともない会計システムを『DAIC3クラウド』へ移行。顧問税理士による緊密な経営助言を受けつつ、黒字経営へ転換を果たした。

固定観念を排除し新領域に果敢に挑戦

──得意とされている内外装工事のジャンルを教えてください。

武富昭宏社長

武富昭宏社長

武富 飲食店、アパレル店、美容室をはじめとする店舗工事が主軸で、住宅施工、工場のメンテナンスにいたるまで幅広くこなしています。工場のメンテナンスは機械設置のための工事や、空調設備の調整など。メンテナンスで培った技術を店舗工事にフィードバックできるところが強みです。

──ハウスクリーニング業からスタートされたと聞いています。

武富 母がもともとハウスクリーニングを行っていて、28歳のとき会社を退職し、事業を引き継ぐ形でスペックを設立しました。最初の2年間はハウスクリーニングをもっぱら手がけていましたが、腕が良かったんでしょうね(笑)。通常のレベル以上の仕事ぶりが評価され、単価の高い案件をだんだん受注できるようになりました。
 営業活動を始めてわかったのは、クロスやフローリングの張り替え等、内装工事全般をこなせる会社が求められているということ。じゃあ工事もやってみようかと。集合住宅の原状回復、一戸建て住宅のリフォームに着手し、2015年には建設業許可を取得。店舗、住宅工事に進出し、2棟目の新築工事を行っているところです。

──顧客に提案を行う際、心がけている点は?

武富 店舗工事では繁盛店をつくるという目標を共有し、お客さまと同じくらいの熱量を注いでいるつもりです。店舗のスタッフに話を聞いたり、来店客の動線を調査したり、オープン時にチラシを配ったりしたこともあります。
 異業種から参入したため、業界の常識にとらわれないことをモットーにしています。例えば住宅のクロスには職人が作業しやすく、もうけのある程度見込める定番商品があり、広く用いられています。でも、より薄い素材のクロスに張り替えるだけで、部屋の雰囲気がガラッと明るくなる。そうした工夫で入居者が決まり、新たな受注につながるケースもよくあります。

──仕事を請け負う判断基準は何ですか。

武富 内外装工事というと、1年を通して同じ仕事をしているイメージがあり、それでは社員が成長を実感できる場がありません。だから新しい分野にどんどんチャレンジしていきたい。ご相談いただいた案件は社内会議に議題として上げ、社員から賛同の得られた仕事を積極的に請け負っています。他社から断られた案件が持ち込まれる場合も結構多いですね。
 これまではただ面白そうだからという理由のみで仕事を引き受け、勢いで突っ走ってきたきらいがありました。顧問税理士の土生谷(はぶたに)博之先生の指導を受けるようになってからは、判断基準に採算や計画性の観点が加わった感じです。

店舗の施工を手がけたセレクトショップ「グラフペーパー」(渋谷区神宮前)

店舗の施工を手がけたセレクトショップ
「グラフペーパー」(渋谷区神宮前)

──服飾品の販売も手がけられています。

武富 兄が中心となり「グラフペーパー」というセレクトショップを展開しています。直営店が渋谷区神宮前にあり、店舗の設計、工事を当社で行いました。洋服や雑貨などの商品をあえて売り場の奥に隠す斬新な陳列が売りです。ただ、当社の立ち位置は、あくまで内外装工事を本業にしています。

週次で業績を確認し計数意識を根付かせる

──3年前に市販の会計ソフトからTKCシステムに移行されたそうですね。

武富 土生谷先生と顧問契約を結び、程なく『DAIC2』に切り替えました。先生と知り合ったきっかけは、金融機関からの紹介です。

土生谷博之顧問税理士

土生谷博之顧問税理士

土生谷 2015年でしたね。知り合いの融資担当者から「先生、SOSです」と連絡があったのを覚えています。

武富 当時は赤字で、融資審査が通らないこともありました。金融機関の支店で土生谷先生と初めて面会しましたが、信用できそうな方だなというのが第一印象でした。日ごろ単刀直入にアドバイスしていただき、進むべき方向が明確になるのがありがたいです。顧問税理士との関係が一変しましたね。

──具体的には?

武富 以前お世話になっていた会計事務所の担当者は、定期的に訪ねてくることもなく、決算申告時期が近づいてくると慌ただしくやって来て、書類を回収していました。そして申告期限間際に申告書を携えてきて、ハンコを押してくださいと言われるんです。利用していた会計ソフトも入力したデータをただ集計しているだけ。会計データを元に相談する機会はまったくありませんでした。いまは土生谷先生に毎月訪問いただいているため、業績数値をベースにした会話ができるようになりました。先生からのお勧めもあり、昨年『DAIC3クラウド』にレベルアップしたところです。

──経理体制を教えてください。

武富 建設部門と小売り部門に分けて、2人の担当者が仕訳入力しています。レベルアップ以降、仕訳を交代で入力する必要がなくなり、工事の進捗(しんちょく)状況をスピーディーに把握できるようになりました。現場担当者のパソコンでもシステムを起動できるので、社員から業績について質問されると、自分のパソコンで確認しなさいと話しています。

──業績を社員にオープンにされていると……。

各担当者のパソコンから最新業績を確認

各担当者のパソコンから最新業績を確認

武富 現状を正確に把握できなければ、対策を施しようがありませんから。毎週水曜日に開いている会議では、担当者に各現場の進捗状況を聞くとともに、『DAIC3クラウド』で《現場別工事台帳》の画面を開き、実行予算進捗率を確認し着地予測を行っています。
 予算をオーバーしている場合は、見積もり精度が甘かったのか、材料原価が高かったのか、人件費がかかったのか等の原因を追究しています。こうした会議を繰り返すことで社員にも計数意識がだいぶ浸透してきたと感じます。

──数字が経営判断のベースになっているわけですね。

武富 《受注先別粗利益順位表》で受注先ごとの利益額も把握し、利益が見込めない取引先は取引をお断りするケースもあります。工事が進行中だと、利益が出ているだろうと何となく楽観的に見込みがちで、いざ集計してみると、予想より利幅が薄かったりする。新築工事に力を入れているのも、最新業績を土台においた経営判断によるもの。曖昧だった業績を数値として提示されると本腰になるものです。前年対比や同業他社の数値もチェックし、削減すべき費用を絞り込み、黒字化に役立てています。希望的観測を排除して、シビアに業績予測ができるようになりました。

──金融機関からの評価は変わりましたか。

武富 月次の数字を締めるのが早いですねとよく言われます。融資を申し込む際も土生谷先生の後ろ盾があるので心強いです。

土生谷 スペックさまでは『TKCモニタリング情報サービス』を活用し、月次試算表を金融機関に毎月送信しています。『DAIC3クラウド』にまもなく搭載される予定の仕訳連携機能を活用すれば、月次決算のサイクルをいっそう早められると思います。

──今後の事業展開をお聞かせください。

草加市にある営業所

草加市にある営業所

武富 エンドユーザーから仕事を請け負う機会をつくるため、まずはオフィシャルウェブサイトを開設する予定です。物件オーナーさまから直接ご要望をうかがうことができれば、当社の特色を最大限生かせると考えています。
 土生谷先生と知り合い、会計事務所に対して抱いていたイメージが一気に変わりました。以前は進むべき方向がわからず、どん底で苦しんでいました。中小企業経営者には気軽に相談できる相手が必要です。ひとりで悩まないで、顧問税理士の方に一度相談してみてくださいと言いたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社SPEC
設立 2010年6月
所在地 (本社)千葉県流山市名都借15-82
(営業所)埼玉県草加市稲荷4-7-13
売上高 約4億円(2017年6月期)
社員数 7名
TEL 04-7136-7030
顧問税理士 土生谷博之
土生谷会計事務所
千葉県野田市野田808-2
URL:http://tkc-nf.com/habu/

掲載:『戦略経営者』2018年7月号