「安全で安心して安らげる福祉施設の創造」を基本理念に掲げ、特別養護老人ホームなどを展開する社会福祉法人久寿会。地域に根ざした組織づくりで、ケアハウスやデイサービスなど事業を拡大させてきた。計数面の把握には『FX4クラウド』を活用し、多岐にわたる事業の収支状況を詳細に分析できるようになった。

さまざまな行事を通じ地域との交流を促進

──「特別養護老人ホーム中の郷(ごう)」をはじめ、さまざまな施設を運営されていますが、組織の大まかな沿革を教えてください。

中央が萩原秀男理事長。右から2人目は安部征吾顧問税理士

中央が萩原秀男理事長。
右から2人目は安部征吾顧問税理士

萩原 1997年10月に特別養護老人ホーム、ショートステイ、ケアハウスを開設したのが始まりです。その後、デイサービスセンターやグループホームなど、地域で暮らす高齢者の方々のニーズに合わせ、事業を広げてきました。

──立地の特色はありますか。

萩原 施設の近くには相模川が流れ、丹沢山系をはるかに望む自然環境に恵まれた場所です。入居者やご家族の皆さまから「緑や畑がそばにあっていいですね」とよく言われます。周囲に高層の建物がないため、夏の晩にグループホームの屋上で食事会を催すときは、花火大会の花火を間近に眺めることもできます。

──季節ごとのレクリエーションや行事も盛んだとか。

萩原 クリスマス会やひな祭り、花見などの行事を開催しており、なかでも一大イベントなのが創設以来毎年開催している「中の郷納涼祭」です。施設の敷地内に、盆踊りスペースや屋台を設け、地域のボランティアや住民など、例年300人ぐらいの方々に来場いただいています。

──近年、地震や水害等の自然災害が相次いでいますが、防災対策は行っていますか。

萩原 2015年に事業継続計画(BCP)を策定し、毎年11月に内容を見直しています。想定しているのは大規模地震で、震度6弱以上の地震発生時には、職員は原則として所定の場所に参集するよう定めています。また、地域のハザードマップを確認し、職員全員の緊急連絡網やLINEグループも設けました。
 従来は3日間分の食糧を施設に備蓄していましたが、前回のBCP改定時に1週間分に改めました。熊本地震の被災地支援ボランティアとして現地に赴いたスタッフから、福祉施設には近隣住民も避難してくるため、備蓄量を増やした方がよいとアドバイスされたのです。そのほか年に4回、消火・避難訓練も実施しています。

経理業務省力化の要フィンテックサービス

──職員の採用で工夫されていることがあればお聞かせください。

萩原 近隣の高校に通う生徒を招き、定期的に施設の見学会を開いています。なかには夕方の時間帯に配膳のアルバイトを行っている生徒もいて、卒業後、職員として採用したケースもあります。入所後は相模原市介護初任者研修などで、介護技術を身につけてもらっています。

──介護の仕事は一般的にハードワークのイメージがあります。残業削減の取り組みは?

萩原 職員をメンバーとする小委員会で1日の残業時間を2時間以内に抑え、有給休暇を取得しやすくするための方策を話し合ってもらっているところです。施設入居者がベッドから起き上がると介護職員のいる部屋に音で通知するセンサーを設置している部屋もあり、見守り業務の負担軽減につながっています。職員の定着化を図るため、いろいろな手だてを講じていかなければならないと考えています。

──顧問税理士の安部先生とは10年以上のお付き合いをされていると聞いています。

萩原 「グループホーム中の郷」の施設長に就任したとき、経理業務を担当していた職員の1人が結婚退職したため、会計業務の後ろ盾になっていただける方を探していました。そんななか、理事をつとめていた他の施設の理事会に参加した際、安部先生と面識ができ会計のサポートをお願いしました。

安部 すでに会計ソフトで自計化されており、経理体制は確立していました。そのため、仕訳方法を指導するというよりも、集計結果に誤りはないか、不正はないかといった観点から監査業務を行っています。
 当時、社会福祉法人の会計基準が頻繁に改正され、われわれの事務所でも対応に苦慮していました。TKCの社会福祉法人経営研究会(社福研)という組織で最新情報を入手でき、会計基準に則したシステムを利用できると聞き、TKCに入会した経があります。

──『FX4クラウド』に移行され、どんな点が変わりましたか。

萩原 会計基準や社会福祉法の改正に応じて、システムがタイムリーにレベルアップされるので安心感がありますね。社会福祉事業として「特別養護老人ホーム中の郷」をはじめ10の事業をシステムに登録しており、事業ごとの資金収支状況を詳細かつ早期につかめるようになりました。職員が日々の仕訳をスムーズにおこなってくれているおかげだと思います。

──仕訳入力などの使い勝手はいかがでしょう。

佐藤経理担当 ふだん2人で仕訳を分散入力していますが、従来の会計ソフトと比べて入力作業の負担が減り、時間短縮につながっていると感じています。フィンテックサービスである「銀行信販データ受信機能」の活用により、支払い、入金など銀行口座に関わる取引を自動で受信できます。さらに仕訳ルールの学習機能も付いており、候補となる仕訳を提示してくれるので、大変助かっています。

赤澤監査担当 経理担当の職員の方々はTKC主催の研修会にも熱心に参加されていて、システムの使い方を率先してマスターしていただいています。

──毎月の巡回監査ではどんな相談をされていますか。

佐藤 月初に訪問していただく場合が多く、会計処理の仕方についてよく質問します。例えば、特別養護老人ホームに仕切りを設置する場合、修繕費または資産のどちらで計上するべきか、修繕積立金はどのように取り崩せばよいかといったことです。
 『FX4クラウド』の操作面に関しては、安部先生の事務所でもシステムを起動してクラウド経由で仕訳などを閲覧できるため、赤澤さんに電話で質問したり、TKCスタッフによる電話応対サービス「TKCシステムまいサポート」を利用し、疑問点を解消しています。

赤澤 展開されている事業が多いため仕訳もそれなりの数にのぼりますが、勘定科目の選択など入力ミスはほとんどありません。事務所で事前に入力済みデータを確認してから訪問できるので、監査業務の効率化に役立っています。

──定期的に確認している帳表はありますか。

萩原 巡回監査後に毎月提出してもらっている資料がいくつかあり、《資金収支予算実績表》はそのひとつです。システムの画面では事業ごと、あるいはさまざまな期間ごとに実績と予算を比較して、進捗(しんちょく)状況を確認しています。従来の会計ソフトを利用していたときは、スプレッドシートで予算実績表を作成していましたが『FX4クラウド』では、数字が自動集計されるので省力化を図れ、重宝しています。

──今後の運営方針をお聞かせください。

萩原 最近、組織を挙げて取り組んでいる事柄として、「アドバイス・ケア・プランニング」(ACP)があります。人生の最終段階の医療、ケアについて前もって考え、共有することをACPと呼び、入居者の9割の方々からみとりに関する書類を提示していただいています。
 最寄り駅である橋本駅付近に、リニア中央新幹線の新駅ができる予定になっており、人口の増加が期待できます。これからも地域の方々のニーズに耳を傾けながら、安全かつ安心して過ごせる施設づくりに取り組んでいきます。

(首都圏統括センター・奥村良輔/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 社会福祉法人久寿会
設立 1996年12月
所在地 神奈川県相模原市緑区大島1556
職員数 148名
URL http://www.nakanogou.com/
顧問税理士 税理士 安部征吾
税理士法人アドベ・アカウンティング・ファーム
東京都町田市中町3-3-13 アドベビル
URL:http://www.abex-firm.com/

掲載:『戦略経営者』2019年1月号