アルバイト店員が、店内で不適切な行為に及んだ動画をネット上に公開する「バイトテロ」が頻発しています。バイトテロを防止するには、どのような対策を行う必要があるのでしょうか。(中華料理店)

 バイトテロを防ぐためには、まず、若者とITの現状について理解しておく必要があります。

 今の若者たちは、何らかのSNSを利用しています。特に、ツイッターやインスタグラムといったサービスは匿名性が高く、「バイトテロ」との親和性も非常に高い。

 SNSは仲間内のコミュニケーションだけではなく、広く世界中にメッセージや動画を発信することのできるツールです。ところが、そのような威力をしっかりと理解していない若者が、気軽なコミュニケーションのつもりで悪ふざけをし、その様子を公開することでバイトテロが起きてしまいます。してはいけない行為をSNSで発信することによって「仲間からウケたい」「目立ちたい」という気持ちが、バイトテロを引き起こすメカニズムなのです。したがって「やってはいけない」と教えるのではなく、不適切行為を起こさせないための行動変容を喚起させる仕組みを構築する必要があります。

 今の若者は、物心ついた頃からインターネット環境とともに育ってきた世代です。しかし、当たり前のようにIT機器に囲まれて育った若者の中には、ネットリテラシーが低い者も決して少なくありません。若者がみな、ネットリテラシーが高いわけではないということをしっかりと理解しておきましょう。

断固として許さない姿勢

 バイトテロを防ぐには、店や企業から「断固として許さない」という強いメッセージを発信することが重要です。

 例えば、アルバイト店員を採用する際、「店内での動画撮影やSNSへのアップロードを行わない」こと、さらには「違反した場合、厳しく処罰される」旨の誓約文を手書きで書かせます。事件が続発しているので、既存店員にも書いてもらうと良いでしょう。手書きさせることで、店員自身に不適切行為を絶対に起こしてはならないという気持ちを喚起させるとともに、店側の「断固として許さない」姿勢を伝えるというねらいがあります。また、スマートフォンを利用できる場所を休憩室だけに制限するなど、店内に持ち込ませないようにするルール作りも重要です。

 情報共有は、適切な頻度で行いましょう。ニュースなどで不適切行為が報道された時には、ミーティングなどの多くのアルバイト店員が集まる場所で情報共有し、スマートフォンの現場持ち込みや情報漏洩(ろうえい)がないかなどを確認します。発覚した場合、莫大(ばくだい)な賠償金を負うことや個人情報が暴露されるなどのリスクもしっかりと伝え、店側が目を光らせていることを認識させましょう。

 新しいアルバイト店員を雇用するたびに、長時間の研修を受けさせることは現実的ではありません。ただし、ネットリテラシーの啓発は欠かせないので、知識を付与する単なる教育ではなく、具体的な行動抑止に直結するような危機対応という視点を持って啓蒙(けいもう)を行うようにしましょう。

 特に、経営者や店舗の責任者に求められるのは、SNSの知識でも社員教育の技法でもなく、不適切行為を許さないという強いメッセージの発信です。行動管理も安全・衛生管理と同じく、店が断固として行うべき要件だと考えます。バイトテロは決して他人事ではなく、身近な脅威なのです。

掲載:『戦略経営者』2019年5月号