エイネットは法人向けウェブ会議システムの開発をいち早く展開した業界の草分け的存在。特にフレッシュボイス、ライトフレッシュボイスは“純国産システム”としてユーザーからの評価も高い。両製品の特徴と強みについて西畑博功社長に聞いた。

西畑博功 氏

西畑博功 氏

──フレッシュボイス(FV)とはどのような製品でしょうか?

西畑 最大200拠点まで同時接続できるウェブ会議システムで2000年にリリースして以来、これまでに4000社以上に導入した実績があります。持ち味は何と言っても音質の良さと強固なセキュリティー。ネット環境や接続台数にかかわらずクリアな通信ができると多くのユーザーから評価いただいています。

──まさに「名は体を表す」というわけですね。

西畑 そのとおりです。片やセキュリティーも堅固で、リリース以来、乗っ取りや情報流出といったシステム事故は一度も起こしていません。

ルーツは「音声通信」

──2000年といえばIT(情報技術)という言葉が出回り、コンピューターが各家庭に普及し始めた時期です。この頃にFVの開発と販売を始められたわけですが、勝算はありましたか。

フレッシュボイス画面

フレッシュボイスはウェブ会議システムの草分け的存在

西畑 当時のFVは、遠隔地にいる相手とネット回線を使って音声通信ができるというシンプルなシステムでした。簡単な音声コミュニケーションであれば電話で済んでしまうので、これをビジネスとして売り出すのは難しいと周りから散々言われましたが、法人向けであれば商機があるだろうと思い、販売に踏み切りました。

──どのような企業が導入したのでしょう?

西畑 最初にFVを導入いただいたのはオンラインショップの運営会社です。当時、インターネットの黎明期でしたからPCやウェブサイトの操作に不慣れな方が多く、FVはこのような人向けの音声ナビゲート機能として活用されていました。その後2003年にウェブ会議システムへとバージョンアップ。法人向けの会議システムとして販売を始めました。

システム事故が一度もない

──先日、ある市販のウェブ会議システムで個人情報が流出するという事故が起こりました。FVは「システム事故を一度も起こしていない」とのことですが、具体的なセキュリティー対策について教えてください。

西畑 FVは「個人情報や機密情報を預からない」ことをポリシーに掲げています。例えば、一般的なウェブ会議システムであれば、資料をアップロードするとそのままシステム上に保存されますが、FVでは資料をシステム上で共有しても会議を終えた段階でサーバーから削除します。そのため、社内資料が外部に流出するおそれはありませんし、そもそも通信データには高度な暗号化を施しているので外部からのハッキング対策も万全です。
 また、FVを利用するにあたりメールアドレスや実名を登録する必要がなく、個人情報に紐づいていないIDとパスワードを用いてログインする仕組みになっているので個人情報が漏れる心配もありません。

──会議システムとしては珍しくサーバータイプの製品も取り扱っています。

西畑 FVにはクラウド(ASP)タイプとサーバー(オンプレミス)タイプの2種類があり、特にセキュアな環境を構築したい場合にはサーバータイプを、遠隔地にある拠点と手軽に接続したいというニーズに対してはクラウドタイプをお勧めしています。
 サーバータイプの場合でもイントラネットのような閉塞ネットワークで利用することができますし、基本的にファイヤーウォールの設定変更も必要ありません。

──実際の導入事例をご紹介ください。

西畑 ある政令指定都市では災害発生時のテレビ会議としてFVを活用いただいています。本庁に設置される災害対策本部と各区役所、支所をFVで接続し、被災状況の共有から対策の検討まで参加者全員で議論されているようです。
 そのほか、教育機関や民間企業の導入も進んでおり、とりわけセキュリティー面で高い評価をいただいています。

──機能の特徴は?

西畑 FVでは会議の主催者が参加者を招集できる「一斉呼び出し機能」を搭載しています。ユーザーの意見として「全員が揃うまで待つ時間がもったいない」という声が多く寄せられていますが、FVでは定刻に参加者全員が揃って会議を始められるように、各拠点にいる参加者をワンクリックで呼び出すことができます。例えば、「10時になったら会議を始める」と事前にアナウンスしておき、時間が来たら主催者が各拠点を一斉に呼び出すことで時間を無駄にすることなく会議をスタートすることができます。
 そのほか、資料の画面共有機能や録画・録音機能など一般的な会議システムに搭載されているような機能はFVにも標準で装備されています。

手厚い顧客サポート

──昨年ライトフレッシュボイス(LFV)の提供を開始されました。FVとの違いについて教えてください。

西畑 LFVはブラウザで起動するタイプのウェブ会議システムです。会議の主催者のみ有料のアカウントが必要となりますが、PCやスマートフォンにアプリをインストールする必要がなく、会議室のURLを参加者に共有するだけで最大で5拠点のウェブ会議を始めることができます。ただし、ブラウザがグーグルクロームとサファリでないと起動できないため、インターネットエクスプローラーやマイクロソフトエッジなどでは動作しない点に注意が必要です。

セキュリティー対策

──LFVのセキュリティー対策は?

西畑 基本的にはFVと同等のセキュリティー対策を講じていますし、クロームベースでの暗号化もなされているので万全です。

──導入実績はいかがでしょう?

西畑 発売開始から現在までで500社に導入いただいています。新型コロナ感染症の影響もあり、社内会議や社外の打ち合わせ、オンラインセミナーなどさまざまな用途で活用されています。

──導入後のアフターサービスにも力を入れているとか。

西畑 FV・LFVともに開発から販売、アフターサービスをすべて自社で行う「純国産ウェブ会議システム」を標榜しているので、緊急の対応を要するようなトラブルが発生したり、操作で不明な点が生じたりした場合も当社のスタッフが迅速に対応します。ネットワーク等の技術的な要望からコンサル的な相談まで幅広く受け付けています。

──ユーザーにとっても頼もしい存在ですね。

西畑 当社では「会議ができるまで」をモットーに、FV・LFVがしっかりと稼働するように顧客サポートに重点を置いた活動を展開しています。販売スタッフによるサポートはもちろん、導入から1・3・6カ月おきに当社のコールセンタースタッフがお客さまに電話をかけ、問題なく会議ができているか、操作上の疑問や困りごとがないかをヒアリングしています。いざというときに頼れる存在が身近にいることも当社の強みです。

──3月からTKC会員事務所向けの販売も開始し、評判も上々のようです。

西畑 先ほど説明したとおり、FV・LFVでは高度なセキュリティー対策を施しているので、機密情報を取り扱う機会の多い会計事務所の業務にフィットしている点が導入の決め手になっていると思います。また、ウェブ会議に慣れていなくても簡単に操作できることや、当社によるサポート体制を評価する声も多いです。コロナ禍でも日々中小企業の経営をサポートするTKC会員の皆さまのお役に立てればと考えていたので、積極的に活用いただけているようでうれしく思っています(※)。

(※)TKC会員事務所と顧問企業は割引価格で提供している

──バージョンアップ等、今後の展望について教えてください。

西畑 喫緊の課題として取り組んでいるのがLFVの多拠点接続の充実です。ユーザーからも「参加拠点数を増やせないか」という声が多く寄せられているので、5拠点超の会議でもご利用いただけるよう今年中のバージョンアップに向けて取り組んでいます。加えて、引き続き安心して利用してもらえるようセキュリティー面のさらなる強化を進めていきます。

(インタビュー・構成/本誌・中井修平)

会社概要
名称 エイネット株式会社
設立 1997年7月
所在地 東京都千代田区神田佐久間町3-23 スタウトビル3F
売上高 約5億円
社員数 30名(パート・アルバイト含む)
URL https://www.anets.co.jp/

掲載:『戦略経営者』2020年8月号