さまざまなキャッシュレス決済を導入したものの、レジまわりに読み込み端末が増えて困っています。QRコード決済の統一規格が設けられたそうですが、詳細を教えてください。(中華料理店)

 JPQRは従来混在していたQRコード決済をひとつのコードで実現する仕組みです。2019年8月に4県で先行導入され、今年4月から全国展開がスタートしました。

 来店客はこれまで、利用可能なQR決済の種類を店頭のポスター等で確認し、アプリを起動する必要がありました。JPQRを導入すると、こうしたわずらわしさから解放されます。店舗側にとっても、店頭に複数のQRコードを並べる手間がなくなります。

 導入方法は「キャッシュレス・消費者還元事業」と同じく、ウェブサイトから申し込み、審査終了後、QRコードなどの掲示物が届きます。年会費や初期費用は一切かかりません。店舗が実在し、経営実態を把握できれば審査はスムーズに行われますが、個人事業など経営実態をつかみづらい場合は、事業内容が分かる資料を提出する必要があります。ウェブサイトがある場合、URLを記入します。

入金サイクルを確認

 JPQRはメリットがある一方、留意しておくべき点もいくつかあります。

 キャッシュレス決済は決済手数料が発生し、入金まで日数を要します。また、決済手数料は各社一律ではありません。一部の決済事業者では、直接契約する方が安くなるように設定しています。さらに、入金サイクルも各社まちまちです。サイクルは短期化しているとはいえ、資金繰りを逼迫(ひっぱく)させる要因となる可能性もあります。

 キャッシュレス・消費者還元事業は6月に終了しましたが、キャッシュレス決済導入店舗は約115万店にのぼりました。これは対象となる約200万店の半数を上回る数字です。

 MMD研究所が公表した「2020年7月スマートフォン決済(QRコード)利用動向調査」によれば、34.3%の人々がQRコード決済を利用していると回答しています。もっとも、決済金額や利用頻度ではクレジットカード、電子マネーにおよびません。高額な買い物をするときはクレジットカードで支払い、交通機関や大手チェーン店等では電子マネーを用いるといった、使い分けが進みそうです。

 QRコード決済は他の決済手段に比べて利用コストが低いのが売りであるため、中小規模の店舗で普及が進んでいます。JPQRの決済手数料が抑制されれば、導入が一挙に進むでしょう。そして、導入店が広がればユーザーも増えるという、相乗効果をもたらすはずです。

 全国各地で事業者を対象にした「JPQR申込説明会」が開催されています。導入を検討されている方は、一度参加されてみてはいかがでしょうか。

掲載:『戦略経営者』2020年10月号