電力会社の見直しを検討していましたが、市場連動型プランの電力料金が高騰しているというニュースを見てしり込みしています。新電力の料金プランの選び方について教えてください。(飲食店経営)

 2016年に始まった電力自由化により、新しく電気の小売り事業をはじめた企業を新電力と呼びます。電力自由化以前は、関東エリアには東京電力、関西エリアには関西電力というように、地域ごとに存在する大手電力会社としか契約できませんでしたが、新電力の登場により自由に電力会社を選んで契約することができるようになりました。一方で消費者は、電力会社や料金プランの特徴をしっかり理解して選ぶ必要性も出てきました。

 この冬、電気代が何倍にも膨れ上がったというニュースが飛び交い、契約している電力会社は大丈夫なのか、新電力と契約して大丈夫なのかと不安に思われた方も多いでしょう。電気代高騰の影響を受けたのは「市場連動型プラン」というプランに契約されていた方で全体の1.8%程度にとどまっています。

 なぜこういったことが起きたのでしょうか。新電力の多くは自社で発電設備を持っていません。そうした新電力の電気の調達方法のひとつとして、日本卸電力取引所(JEPX)からの調達があります。電気にも市場が存在し、日々売買されています。市場の取引価格は需要と供給のバランスにより30分単位で決まるため、時期や時間帯によって取引価格が変動します。「市場連動型プラン」はJEPXの市場価格に連動して電気料金単価が決まるため、市場価格が高騰すれば利用者の電気料金にも反映される仕組みになっています。

 この冬の市場価格高騰の主な要因としては、「寒波などによる電力需要の増加」と「火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)の不足」の二つが重なったことがあげられます。

 市場連動型プランを提供している各電力会社の対応です。いち早く対応を発表したのが自然電力です。大手電力の電気料金を基準とし、それを超える分の電気料金は3万円を上限に値引きするという措置をとりました。ダイレクトパワーは、通常契約切り替え時期以外の切り替え時にかかる解約手数料を無料とし、他の電力会社への切り替えを促しました。日本テクノは、同社が提供する市場連動型ではないプランへの切り替え措置を行っています。

 ハルエネでんきは、市場価格に基づいて算出される調達調整費に36回の分割払いを適用するとしています。分割支払いの場合、高騰分が薄まるため、契約者が市場連動型プランを契約していることに気づいていないケースも多くみられます。また、F-Powerのように対策を講じていない電力会社もありますので、今一度契約内容を確認していただくことをおすすめします。

 電力会社の切り替えによる固定費削減は、コロナ禍において有効といえます。市場連動型プランは仕組みやリスクを理解した上での契約なら、市場価格が安い春や秋には電気代がお得になるというメリットもありますが、料金構造が複雑なため理解が難しいことも事実です。そうした場合は、無料で事業者向けの切り替え支援を行う「エネチェンジBiz」などを利用してみましょう。現在の契約に関する相談から、電気料金の仕組みの説明、新電力への切り替え手続きまでを電気代削減のプロが一貫してサポートしてくれるので、安心・安全に切り替えたい方におすすめです。

掲載:『戦略経営者』2021年5月号