大輪英史社長(右)と小川孝顧問税理士

大輪英史社長(右)と小川孝顧問税理士

シーエスエンジニアズは30年を超える業歴を持つ建設コンサルタントである。近年は社会インフラの更新需要を追い風に、堅実に成長し続けている。若手人材の採用に意欲的な大輪英史社長に、『FX2』をはじめとしたTKCシステム活用による業務効率化の中身について語ってもらった。

マンホール浮上を防ぐ独自技術の保有が強み

──大まかな事業内容を教えてください。

大輪 いわゆる建設コンサルタントとして、公共事業関連の設計業務をメインに手がけています。その内訳は下水道が6割、上水道が3割、その他1割といった状況です。さいたま市を地盤に、関東一円を営業エリアにしています。

──足元のニーズは?

大輪 上下水道インフラの老朽化にともなう維持管理、更新の案件が増えています。それと地震対策ですね。大地震発生時に液状化現象が起こり、マンホールが浮上してしまう映像をメディア等で目にします。その浮上を防ぐ独自技術を有しているところが当社の強みです。

──どのような技術ですか。

大輪 マンホールは内部が空洞になっているため見た目より軽く、液状化によって発生する非常に強い浮力にあらがえません。その浮力に対して重さで押さえつける技術が、当社で特許を保有している「ハットリング工法」です。
 仕組みを簡単に述べると、マンホールに特殊なブロックと固定バンドを取り付け、マンホール浮上時のみ荷重がかかるようになっています。比較的安価に設置できるのも特長で、数多くのマンホールで採用されています。

──昨年10月に社長に就任されたそうですが、どんな経営方針を掲げられていますか。

マンホールの浮上を抑制する「ハットリング工法」

マンホールの浮上を抑制する「ハットリング工法」

大輪 近年、若手社員が増えていることもあって、チャレンジ精神の重要性を日ごろから伝えています。30名の設計担当者のうち、半数は20~30代。入社まもない時期は勝手がわからず戸惑う場面があるものですが、ベテラン社員が率先してコミュニケーションをとり、風通しを良くするべく取り組んでいます。

──人材採用面で工夫されている点は?

大輪 企業説明会を定期的に開催しているほか、大学生をインターンシップ生として受け入れ、現場での測量や図面作成などを体験してもらっています。また、専門学校で講師を務めている社員もおり、接点づくりに力を注いでいます。こうした取り組みにより、昨年は2名の新卒者を採用できました。

──働き方改革の進捗(しんちょく)はいかがでしょうか。

大輪 働き方改革は建設コンサルタント業にかぎらず、設計業界が苦労している課題です。とはいえ、時代の変化にあわせて、われわれも対応していかなければなりません。当社には「自由出勤」という制度があり、グループ内でメンバーが調整して、有給休暇を取得しやすい環境を整えています。
 おととしから残業削減に注力しはじめたところへ新型コロナが広がり、リモートワークと時差出勤制度を急遽(きゅうきょ)取り入れました。定着するか当初心配でしたが、社員はメールでの連絡や、ウェブ会議による打ち合わせにすぐに慣れ、目からうろこが落ちる思いでした。若手社員の比率が高まっていることによる効用かもしれません。

正確な業績数値の把握が将来の見通しを高める

──小川孝顧問税理士と創業来のお付き合いをされているとか。

大輪 創業者である一場駿(現相談役)が当社を設立して以来、小川先生に税務顧問を務めていただいています。30年を超えるお付き合いになりますね。

小川 一場相談役の先輩と私がたまま同級生だった縁から、起業の相談にのってほしいとの依頼を受け、顧問契約を結びました。一場さんが社長を退任されたのは58歳のとき。気力、体力ともに充実しているうちに引き継ぎたい意向があったようです。シーエスエンジニアズさまでは比較的若い方がこれまで社長に就任されており、大輪さんも51歳で4代目社長に就任されました。会社のチャレンジする姿勢が人事面でも現れていると思います。

──月次巡回監査で話し合われる内容は?

大輪 小川先生が当社に毎月訪問し、『FX2』に入力した財務データを監査されています。監査後に『FX2』から出力した《変動損益計算書》の中身を確認しながら、将来の計画について話し合うことが多いです。直近では、新社屋建設に際しての金融機関からの借り入れをはじめとする、資金計画を打ち合わせたりしました。

──リモートワークの導入で経理業務や、巡回監査の流れは変わりましたか。

大輪 当社では『PX2』(戦略給与情報システム)も利用していて、財務、給与データは機微なデータであるため、社外への持ち出しは念頭になく、経理担当者が出社時に入力しています。社外での安全な環境でのシステム利用は、今後の検討課題です。

小川 巡回監査前に事務所で財務データに目を通したうえで、うかがうようにしています。時節柄、顧問先さまでの滞在時間を極力短くするよう心がけています。

──『FX2』で特に注視されているポイントを教えてください。

大輪 最も注視しているのは、前年同月比での売上高の推移です。公共事業では年度末、工事代金が完了前に入金される場合があり、売り上げの計上時期をシビアに判断しています。加えて外注費、修繕費の増減や、消耗品費の中で資産計上するべきものがあるかといった点も確認しています。外出先で業績が気になるとき、スマートフォンで手軽に確認できる「スマート業績確認機能」を活用しています。

小川 売り上げの計上時期は、税務調査時によく説明を求められる項目です。もちろん、ルールにのっとって仕訳入力されているので、指摘される事項は特段ありません。書面添付(※)を長年実践されていることもあり、事前の聴取のみで現地調査にいたらないケースもありました。

──TKCシステムの活用による効果をどのように感じられていますか。

内定者向けに昨年開催した現場見学会

内定者向けに昨年開催した現場見学会

大輪 計画を立案するには、現在と過去のデータをしっかり把握しておく必要があります。『FX2』を利用していると、何より数字という客観的な指標をもとに、会社の状況を正確に見極めることができます。ですから将来の見通しを立てやすい。新社屋の建設にあたっても、詳細な資金計画を作成することで金融機関から融資をスムーズに受けられました。
 また、『PX2』で特に便利だと感じているのが「電子納税機能」です。40名以上の社員が在籍していますから、提出先の市区町村数が多数あり、納付書の作成が煩雑な作業となっていました。電子納税機能を活用して以降、用紙の納付書が不要になり、手続きを大幅に合理化できたと感じています。

──金融機関に対する業績報告はどのように?

大輪 以前は金融機関の担当者に紙の決算書を渡して、業績について説明していましたが、昨年、小川先生から「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)の活用を勧められ、データで報告する方法に変更しました。現在は融資を受けている金融機関に、決算データを送信しています。電子納税やMISは、DX推進の一環だと考えています。

──新社屋の竣工(しゅんこう)が楽しみですね。

大輪 社員数が増えオフィスが手狭になってきたため、近隣に土地を購入し、ビルを建設してもらっている最中です。新たな資産も増えるので、『FX2』でしっかり管理していきたいと思います。

──今後の展望をお聞かせください。

大輪 当社に対する評価として取引先さまからよく聞くのは、小回りが利くという声です。これからも地元に強く、要望に柔軟に対応できる会社でありたいと考えています。地震対策や、上下水道インフラの老朽化による更新ニーズは継続して見込めるため、適切な提案を行えるよう技術の研鑽(けんさん)に努めていきます。

※「書面添付制度」とは

 税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。

  1. 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
  2. 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
  3. 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
  4. 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。

 書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。

日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社シーエスエンジニアズ
設立 1987年11月
所在地 埼玉県さいたま市南区根岸4-8-6
売上高 3億9,000万円
社員数 45名
URL http://www.cseng.co.jp/
顧問税理士 小川 孝
小川税理士事務所
埼玉県東松山市上野本74番5
URL: https://ogawazeirisi.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2021年5月号