左から砂川峰子事務主任、大泊浩仁施設長、宮城信也総務係長

左から砂川峰子事務主任、大泊浩仁施設長、宮城信也総務係長

沖縄県石垣市で唯一、法人内で「障害者支援施設・就労支援事業所」を運営する社会福祉法人若夏会は、活発なイベント開催と生産品の販売を通して、住民との関係を深めてきた。足元ではITツールを活用し、組織運営の新たなかたちを模索している。コロナ禍における取り組みとTKCシステム導入による効果について、大泊施設長に語ってもらった。

多彩な石垣特産の生産品が評判を呼ぶ

──組織の概要と特色を教えてください。

大泊 障害者支援施設「おもと学園」、多機能型事業所「八重山育成園」の運営を主とした、障害者就労支援事業を展開しています。利用者の皆さまが安心かつ安全に福祉サービスを享受でき、職員が楽しく働ける環境づくりに日ごろから取り組んでいます。
 現在はコロナ対策として、入所施設については外部との面会を原則禁止にしています。通所事業についても職員の日々の検温とこまめな手指消毒を徹底し、保護者の方との情報交換を緊密に行っています。また、地域の方々とのつながりを重視しており、とりわけ生産品はご好評いただいています。

──どんな商品を販売していますか。

大泊 法人設立時から30年以上販売しているのが、園で飼育しているニワトリの卵です。それとおととしから、パンの製造販売も開始しました。パプリカなど、島内で収穫された旬の野菜を具材に用いています。当事業所や各地域の売店で販売しているほか、近隣住民の方々への宅配も手がけています。

──年間を通して、いろいろな行事を実施されているとか。

人気生産品のひとつである「若夏たまご」(上)<br>正月用のしめ縄づくりも行う(下)

人気生産品のひとつである「若夏たまご」(上)
正月用のしめ縄づくりも行う(下)

大泊 法人全体の大きな行事として例年9月に開催している「若夏会祭り」があります。コロナ禍以前は、地域の皆さまにも参加を呼びかけ、盆踊りを楽しんでもらっていました。行事の開催が昨年以降むずかしくなりましたが、なんとか継続するべく規模を縮小し、事業所単位で開催している状況です。
 そのほか月例の行事では、利用者さまの誕生日をお祝いする「誕生会」や、歩行トレーニングコースの清掃ボランティア、隔月ですが避難訓練も実施しています。

──職員の働き方で工夫されている点は?

大泊 直近の取り組みのひとつとして、同一労働同一賃金のルールが今年度から施行されたのにあわせて、「リフレッシュ休暇制度」を新設しました。この制度により、通常の有給休暇とは別に、年度につき最大5日間の連続休暇を取得できます。
 若夏会には60名ほどが勤務していますが、多くの職員が気分転換を目的に制度をすでに活用しています。また、コロナ禍以降、事務担当職員は週3日を上限とするテレワークを実施しています。

──採用活動はどのように?

大泊 基本はハローワーク経由ですね。口づてで評判が広がる土地柄から、求職者を個別に紹介してもらうケースもあります。利用者さまの高齢化にともない介護度合いが高くなっているため、職員がより安心して働けるよう、夜間勤務職員の増員を図っているところです。

──巷間(こうかん)、デジタル化が叫ばれていますが、ITツールを活用していますか。

大泊 大半の職員向け研修会がオンライン形式に移行し、職員が施設内や自宅から視聴する機会が増えています。顧問税理士の冨田先生に毎月出席いただいている「月次報告会」も、オンライン会議システムを活用して開催しています。

オンライン報告会で最新の財務情報を共有

──冨田税理士と面識を得られた時期を教えてください。

大泊 冨田先生と出会ったのは2004年で、当時は税理士事務所の職員としてスポットで指導いただいていました。正式に顧問契約を結んだのは、2012年4月です。

冨田将孝税理士

冨田将孝税理士

──冨田先生の事務所は浦添市にあるそうですが、毎月の監査はどのように行われていますか。

冨田 コロナ禍以前は那覇空港から飛行機に搭乗し、石垣島に毎月訪問していました。周囲からよくうらやましがられましたが、石垣空港から若夏会さまの施設にそのまま直行して、終日カンヅメ状態(笑)。監査後、月次報告会に出席し、日帰りもしくは翌日に事務所へ戻るという流れでした。現在はもっぱらオンラインでご相談いただいたり、打ち合わせを行ったりしています。

──3年前に『FX4クラウド』を導入されたと聞きました。

大泊 冨田先生が社会福祉法人を対象とした研修会を主催され、そこでシステムのデモを拝見したのがきっかけです。伺書作成から承認、未払仕訳の計上まで連動している点に利便性を感じました。
 ランニングコストを試算したところ、当時利用していた財務ソフトより安価だったのも、切り替える決め手になりました。従来のソフトは事務所内にサーバーを設置する必要があり、ユーザーごとに月額利用料金が課金される仕組みで、高額な費用が発生していたんです。

──財務システムを移行されて、どんな点が変わりましたか。

大泊 未払仕訳の自動計上機能により、経理業務が省力化され、財務数値をタイムリーに把握できる体制に変わりました。その結果「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を活用して精度の高い独自資料を作成し、月次報告会に提出できるようになりました。以前利用していた財務ソフトでは、提出用資料をスプレッドシートで一から作成する必要があったので、業務効率化につながっています。

──伺書の作成はどのように行っていますか。

大泊 20名以上の職員が3カ所の拠点から行っていて、タイムリーな入力と会計担当者との業務分担の明確化に役立っています。インターネット回線があれば、事務所以外の場所からでもブラウザーでシステムを起動でき、便利です。私も財務データの確認や、月次報告会の資料づくりを自宅で行う機会もあります。離島とはいえ、回線速度が気になる場面はほとんどありません。

──仕訳入力などの使い勝手はいかがでしょう?

宮城 ふだん利用しているパソコンにかぎらず、他の拠点のパソコンから入力でき助かっています。以前は事務所内にあるサーバーに、財務ソフトのデータを保存していました。『FX4クラウド』に移行後はクラウド上で自動的に保存されるので、安心感が高まりました。入力方法をマスターして以降、残業時間も着実に減っています。

自然豊かなバンナ岳のふもとにある養鶏場

自然豊かなバンナ岳のふもとにある養鶏場

──月次報告会はどのような内容で開催されていますか。

大泊 最新の予算執行状況や、障害者就労支援、グループホーム、訪問介護事業所の運営など、事業ごとの利用状況をまず報告します。報告を受けて冨田先生から課題点の指摘があり、参加者が打ち手を討議するというのが大まかな流れです。主な参加者はサービス管理責任者、調理担当者などです。

冨田 特別支援学校への食事提供や弁当事業をはじめ、若夏会さまでは厨房部門の活動が活発で、提供されているメニューから食材の原価率まで、多岐にわたる内容を話し合われています。現場責任者が財務データをしっかり把握し、判断を下されているのが大きな特徴で、現場に権限委譲し、現場が経営に積極的に参画されている法人です。

──月次報告会をオンライン形式に変更された時期は?

大泊 昨年の5月以降です。決算処理も昨年、今年と2年連続で、冨田先生にオンライン経由で実施してもらいました。

──組織運営の方向性についてお聞かせください。

大泊 現場を担う職員が働きやすい環境を整備しつつ、多様な研修会への参加を通して、スキルアップを図っていきたいです。同時に、石垣市で唯一の障害者支援施設・就労支援事業所として、地域の皆さまとのつながりをいっそう大切にしていきたいと考えています。RKCシステムの活用面では、『PX2(戦略給与情報システム)に搭載されている、給与支払明細書のウェブ閲覧機能の導入を検討したいですね。

(九州統括センター・小山育伸/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 社会福祉法人若夏会
設立 1989年4月
所在地 沖縄県石垣市字大川581番地
職員数 64名
URL http://www.wakakusakai.jp
顧問税理士 冨田将孝税理士事務所
税理士 冨田将孝
沖縄県浦添市内間2-6-3

掲載:『戦略経営者』2021年9月号