左から富士みのりこども園の原島孝枝さん、堀川芳江園長、安部征吾顧問税理士、赤澤和枝監査担当

左から富士みのりこども園の原島孝枝さん、
堀川芳江園長、安部征吾顧問税理士、赤澤和枝監査担当

東京都羽村市で幼保連携型認定こども園「富士みのりこども園」などを運営している社会福祉法人聖実福祉会。「健康なカラダ。豊かなココロ。」をスローガンにした特色ある園づくりが注目を集め、保育施設関係者も見学に訪れる。園の運営を計数面で支えるTKCシステムの活用について堀川芳江園長を中心に聞いた。

業務と情報の共有化で有休100%消化を実現

──印象的な外観の園舎です。

2010年度「キッズデザイン賞」(フューチャープロダクツ部門)を受賞した園舎

2010年度「キッズデザイン賞」
(フューチャープロダクツ部門)を受賞した園舎

堀川 ご縁があって、建築家の安藤忠雄さんのお弟子さんにあたる、貴志雅樹先生に設計してもらいました。園内は壁を極力設けず、子どもたちを見渡せるつくりになっています。

──玄関正面にガラス張りの給食室があります。

堀川 食事を健康な体と豊かな心を育む源ととらえており、「食育」を重要視しています。野菜の栽培や調理保育などを行っているのもその一環です。給食は当園の自慢で、日々の献立には旬の食材をはじめ、20品目ほど取り入れています。また、ご自宅でもメニューを再現していただけるよう、レシピも配布しています。

──保育方針を教えてください。

給食のレシピを園内で配布しているほか、ウェブサイトでも公開

給食のレシピを園内で配布しているほか、
ウェブサイトでも公開

堀川 子どもたちの可能性と能力を引き出す心の力、学ぶ力、体の力をバランスよく育むことを目的に、「ヨコミネ式教育法」を導入しています。子どもには競争したがる、まねしたがる、少しだけ難しいことをしたがる、そして認められたがるという、4つのやる気スイッチがあります。読み・書き・計算・音楽・体操などを通して、これらのスイッチを刺激するのが、ヨコミネ式の特徴です。

──職員の有給休暇100%取得を15年以上実践されているとお聞きしました。

堀川 定時退勤、仕事の持ち帰りゼロを目標に、職員間の情報共有に力を入れています。毎年4月の時点で、向こう1年間の有給休暇取得計画を提出してもらっているほか、各自が抱えている業務内容を主幹クラスの職員に日々報告し、進捗(しんちょく)が遅れている場合には、助け合う体制をとっています。
 現在63名の職員が働いていますが、なかには子育て中の女性もいます。課題になるのが、子どもが熱を出したり、体調を崩したりしたときにどう対応するか。当園では特定のクラスを担当しない保育教諭を比較的多く置き、突発的な事態に備えています。経験豊富な職員が多く、70代の保育補助担当者も在籍しています。

──人材採用面で工夫されている点はありますか。

堀川 従来は求職者向けに「みのりフェア」という見学会を開催していました。入職1年目の保育教諭が園の特徴や仕事の内容などを紹介し、見学後に給食を味わってもらうイベントです。ただ時節柄、求職者と接点をつくるのは容易ではないと感じています。
 そんななか打ち手として実施しているのが、動画による園のバーチャル見学。ユーチューブに公式チャンネルを開設し、昨年以降、施設や園の様子を動画撮影して発信してきました。この取り組みは保護者の方々にも好評で、今年度も継続していく予定です。

──堀川園長が保育業界に入られた経緯は?

堀川 薬学系の大学を卒業後、情報サービス会社に就職し、医薬品の販売情報を集計する業務などに携わっていました。その後、結婚を機に当園で働くことになり、2003年に園長に就任しました。業務内容は畑違いでしたが、子どもや職員の体調がすぐれないとき相談にのったり、現在の仕事に役立っています。

信頼性と業務効率を高めたクラウド型会計システム

──安部先生の事務所と顧問契約を結ばれたいきさつを教えてください。

(上)木育の一環として設置されている遊具(下) 創造性あふれるイラストが園児の感性を刺激する

(上)木育の一環として設置されている遊具
(下)創造性あふれるイラストが園児の感性を刺激する

堀川 以前は本社が大阪にある社会福祉法人経営コンサルティング会社に顧問をお願いしていましたが、サポート面に疑問を感じていました。また私自身、数字にあまり強くないので、経営助言をしっかり行ってくれる会計事務所を探していたんです。TKC主催の研修会に参加し、社会福祉法人会計に精通する最寄りの税理士について問い合わせたところ、紹介されたのが安部先生の事務所でした。

安部 聖実福祉会さまとは5年のお付き合いになります。

──『FX4クラウド』を導入する前の経理体制は?

堀川 長年、社会福祉法人経営コンサルティング会社の会計ソフトを用いて、経理処理を行っていました。レベルアップする頻度が少なく、見た目もクラシックな感じでしたね。

原島 伝票入力や画面展開に時間がかかり、もう少しスムーズに動くシステムを利用したいとかねて考えていました。

──新システムへの移行を決めた理由は?

堀川 他の会計ソフトの機能も比較しつつ、『FX4クラウド』のデモを拝見してシステム移行を決めました。日常の使い勝手の良さが大切なのはもちろんですが、第一は信頼のおけるシステムであること。同業の方から紹介された会計ソフトもひと通り確認しましたが、過去の数字を変更できるなど、不安が残りました。その点、『FX4クラウド』は信頼性が高く、顧問税理士事務所のサポートを毎月受けられるところに魅力を感じました。

──システム移行で何が変わりましたか。

原島 日々の伝票入力をスムーズに行えるようになったのがひとつ。「銀行信販データ受信機能()」を用いて過去の取引データを受信し、金額等を補正入力すれば仕訳が完成するので、入力項目がかなり減りました。一度入力した取引を学習して、仕訳を提示してくれる点も便利です。
 それから、誤りのあるデータを入力しようとすると、エラーメッセージが表示され、入力ミスを容易に発見できるようになりました。

堀川 昨今、社会福祉法人の不正会計に関するニュースを耳にするようになり、会計数値の信頼度が揺らいでいます。以前利用していた会計ソフトでは、内部牽制(けんせい)をここまで十分に築けていなかったと思います。『FX4クラウド』という信頼性の高いシステムに、タイミングよくめぐり合えたのは幸運でした。

──クラウドならではのメリットはいかがでしょう?

原島 新型コロナウイルスの影響で休園となり、自宅にパソコンを持ち帰って経理業務を行った時期がありました。テレワークをふだん行うのはなかなか難しいですが、緊急時に経理業務を継続できる点は、リスク対策として有効だと感じています。また、パソコンのハードディスクではなく、クラウドサーバに仕訳データが保管されるのも、停電時等への備えとして安心です。

──顧問税理士事務所との関係は変わりましたか。

堀川 以前よりコミュニケーションを取りやすくなり、関係が濃くなったと感じています。月次監査時には、会計データの確認に加え、直近で対応が迫られている事柄や他の市区町村のこども園の事例など、園の運営全般について相談しています。日ごろ、システムの操作等に関して電話やメールで質問すると、監査担当の赤澤さんが親身に対応してくれるのもありがたいです。

赤澤 『FX4クラウド』は事務所にいながら関与先さまの会計データを確認し、重点的に監査する項目を調べられる点が便利です。堀川園長自ら『PX2(戦略給与情報システム)』の入力を担当されており、電子納税システムやウェブ給与明細閲覧機能も活用して、ペーパーレス化を進めているところです。

──抱負をお聞かせください。

堀川 超が付くほどの少子化の進展をここ数年感じていますが、今後も地元羽村市に根付いた組織運営を図ることに変わりありません。園の魅力を高め、保護者の方にお子さんをぜひ通わせたいと思っていただけるこども園を目指します。

※銀行信販データ受信機能…複数の金融機関(銀行や信販会社)から、インターネットを利用して取引データを自動受信し、その取引データをもとに仕訳ルールの学習機能を利用して仕訳を簡単に計上できる機能

(首都圏統括センター・奥村良輔/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 社会福祉法人聖実福祉会
設立 1978年3月
所在地 東京都羽村市五ノ神2-12-10
職員数 63名
URL https://fuji-minori.or.jp/
顧問税理士 税理士法人アドベ・アカウンティング・ファーム
顧問税理士 安部征吾
東京都町田市中町3-3-13 アドベビル
URL: https://adobe-firm.com/

掲載:『戦略経営者』2022年6月号