左から森田浩史監査担当、小宮山武郎経理担当、武藤五郎社長、越川利明顧問税理士

左から森田浩史監査担当、小宮山武郎経理担当、
武藤五郎社長、越川利明顧問税理士

就労支援を軸に、埼玉県内で多彩な事業を展開しているチャレジョブ。7月には鴻巣市に交流拠点を開設し、新たな雇用とにぎわいを生む施設として話題を呼んでいる。成長意欲あふれる武藤五郎社長を中心に、業績報告会をベースに置いた財務マネジメント手法を聞いた。

専門性を有するスタッフによる手厚い支援体制

──事業の全体像を教えてください。

武藤 障害のある方の就労支援や生活支援、障害者雇用を検討している企業に対するコンサルティングおよび人材紹介を手がけています。埼玉県内5カ所で就労移行支援事業所「チャレジョブセンター」を運営しているほか、生活介護事業所、障害者向けグループホームも展開しています。

──チャレジョブセンターにおける就職率は、90%を超えるそうですね。

武藤 当社では、3つの支援による「トリプルサポート」を掲げています。1つ目は、資格取得に向けたサポートです。情報処理系、会計・金融系から医療事務系まで、多様な資格に関する情報を提供し、専門知識を持つスタッフが資格取得のための学習支援を行っています。
 2つ目は、キャリアカウンセラーによる将来を見据えた働き方の助言等のサポート。求人開拓スタッフがテレマーケティングや企業訪問により、タイムリーな求人情報を収集して、障害特性や能力に適した職を紹介しています。一般向けに公開されていない、オリジナルの求人も少なくありません。
 そして3つ目は、障害者雇用を行うことを目的とした、サテライトオフィスにおけるサポートです。各自の能力にあわせた仕事を企業に抽出してもらい、障害のある方が入力業務などに携わっています。サテライトオフィスにはスタッフが常駐しているのに加えて、オフィス内をバリアフリー化するなど、安心して働ける環境を整えています。
 これらの施策を通して、しっかりとした職業訓練を受けた方を企業に紹介できるところが、われわれの強みです。

──埼玉県鴻巣市に新たな施設を開設されたとか。

7月に開設された交流拠点「Bista花のまち こうのす」

7月に開設された交流拠点「Bista花のまち こうのす」

武藤 JR鴻巣駅から徒歩10分ほどの場所に、交流拠点「Bista(ビスタ)花のまち こうのす」をオープンしました。多様な雇用と、にぎわいの創出による地域活性化を目的とした複合施設です。私自身鴻巣市生まれのため、地元に貢献したいとの思いがありました。多様な人々が働けるサテライトオフィスを備え、併設のテイクアウト専門のカフェでは、主に育児中の女性スタッフが働いています。

──施設内に植物工場も設けていると聞きました。

「Bista 花のまちこうのす」で栽培されているエディブルフラワー

「Bista 花のまちこうのす」で
栽培されているエディブルフラワー

武藤 鴻巣市は花の町といわれています。当社では、エディブルフラワー(食用花)の栽培エリアを設け、新たな雇用創出を図っています。栽培しているのはビオラやパンジー、マリーゴールドなど。その一部は、カフェで販売しているクレープに添えて提供しています。

──チャレジョブ創業のいきさつは?

武藤 創業前に籍を置いていた人材派遣会社が、障害のある方を対象とするサービスを手がけていて、部門責任者を務めていました。将来の事業可能性を見越して、分社化により設立されたのが当社です。

業績管理体制を構築し新基準の優良企業に該当

──顧問税理士の越川先生と創業来のお付き合いをされているとか。

武藤 チャレジョブ創業前に勤務していた企業でも越川先生は顧問税理士を務められており、毎月開催されていた業績報告会などで顔を合わせる機会がありました。事業内容を熟知されている先生なら、適切な経営助言を受けられるのではと考え、税務顧問をお願いしました。

越川 武藤社長の以前の勤務先である人材派遣会社でも、TKCシステムを有効活用されています。そのため、チャレジョブさまと顧問契約を結ぶ際、使い慣れておられる『FX2』の利用をおすすめしました。

──複数ある拠点をどのように管理していますか。

サテライトオフィスやカフェで雇用を創出

サテライトオフィスやカフェで雇用を創出

武藤 基本的に各拠点をひとつの部門とみなし、『FX2』に登録しています。具体的には「チャレジョブセンター浦和事業所」、「チャレジョブセンター鴻巣事業所」、「Bista花のまちこうのす」など、12部門に分けています。Bistaに関しては、サテライトオフィスとカフェに分けて業績管理する予定です。

──毎月の入力仕訳数は?

小宮山経理担当 月間の仕訳数は事業拡大にともない増加傾向にあり、ざっと1,000件前後です。売り上げにしろ支払いにしろ、イレギュラーに発生する取引は少数にとどまるため、定型の仕訳を「仕訳辞書」に登録して、入力効率を高めています。

森田監査担当 小宮山さんは『FX2』の操作にくわしく、「マネジメントレポート(MR)設計ツール」や「電子納税」をはじめ、さまざまな機能を活用されています。

──MR設計ツールを日ごろどのように活用していますか。

小宮山 オリジナルのエクセルファイルを作成し、部門ごとの業績を把握しています。MR設計ツールによりエクセルファイルを起動して、『FX2』から最新のデータを読み込めるのは便利ですね。『FX2』の科目残高をエクセルファイルに入力する手間が省け、転記ミスを防げるようになりました。

──独自に作成した資料を使用する場を教えてください。

武藤 月次巡回監査後に実施している業績報告会で参照しています。重点的に確認するのは、予算と実績の差異。チャレジョブセンターやサテライトオフィスの利用者さまの人数の推移が、売り上げに如実に反映されます。予算や前年同期の実績との差額を確かめつつ、変動の要因を探ったりしています。当社の場合、現状では変動費に設定している勘定科目はありませんが、Bistaにカフェを開設したので、今後は仕入れ科目を変動費に設定して管理する必要があるでしょう。

──コンスタントな業績確認が定着していると。

武藤 月次巡回監査で森田さんに計数面を入念にチェックしてもらっているおかげです。森田さんが担当になって7年ほどになりますが、監査後の面談を欠かしたことはありません。また最近は、越川先生に資金の借り入れに関する相談をする機会も増えています。決算期末には「TKCモニタリング情報サービス」を活用して、3行の取引金融機関に決算書データを送信しています。

森田 『FX2』のデータTKCインターネット・サービスセンター(TISC)に定期的にアップロードされており、消費税課税区分など監査時に確認すべき点を、訪問前にひと通りチェックできるので、監査時間の短縮につながっています。仕訳の入力漏れや誤りもほとんどなく、将来に向けた打ち手に関する話し合いに時間を割いています。

──書面添付(※1)を毎期実践されているそうですね。

武藤 設立後第3期以降、続けています。書面添付の際には、月次決算データがタイムリーに送信されたことを表す「記帳適時性証明書」も送付されていると聞いています。

越川 チャレジョブさまの記帳適時性証明書には、巡回監査と月次決算が翌月に行われたことを示す二重丸が並んでいます。月次巡回監査を行っている関与先さまは、もれなく書面添付を実践しています。令和4年版「TKC経営指標(BAST)」では、優良企業(※2)の定義が変更されました。われわれの事務所では、優良企業に該当する関与先さまが複数ありますが、チャレジョブさまもその1社です。

──将来に向けた抱負を。

武藤 今期はテレビCMをはじめ、広告宣伝に投資してきました。その効果もあり、当社の社名は埼玉県内で浸透しつつあると感じています。次のステップとして株式市場への上場を果たし、首都圏各地に拠点を開設していきたいです。

※1「書面添付制度」とは

 税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。

  1. 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
  2. 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
  3. 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
  4. 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。

 書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。

日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用

※2…①法人税申告時に税理士法第33条の2第1項に規定する書面が添付されている ②中小会計要領(中小指針)に準拠している ③限界利益額が2期連続で増加している ④自己資本比率が30%以上である ⑤税引き前当期純利益がプラスである という5つの条件全てを満たす企業

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社チャレジョブ
設立 2013年4月
所在地 埼玉県さいたま市浦和区北浦和4-3-4オキナヤ北浦和ビル1F
従業員数 103名(2022年7月末時点)
URL https://www.challe-job.com/
顧問税理士 越川利明
税理士法人キャンバス
埼玉県上尾市上町1-1-15市川ビル5F
URL: https://www.koshikawakaikei.com/

掲載:『戦略経営者』2022年9月号