工場勤務のスタッフとして特定技能の在留資格を持つ外国人の採用を検討しています。特定技能の特徴、注意点を教えてください。(金属製品製造業)

 特定技能は在留資格の一種で、特に人手不足が顕著な12業種限定で、外国人労働者が今まで認められていなかった現場作業等に従事することができるようにしたものです。12分野は①介護②ビルクリーニング③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業④建設⑤造船・舶用⑥自動車整備⑦航空⑧宿泊⑨農業⑩漁業⑪飲食料品製造業⑫外食業です。この12分野を特定産業分野と呼びます。

 特定技能は1号と2号があり、1号は12分野すべてで受け入れできますが、通算で5年しか日本に在留することができません。2号は現在④建設と⑤造船・舶用のみで運用されており、在留期間の上限がないため、期間の更新をすることで日本に永続的に在留することが可能になっています。

 現在、先進国を中心に世界的な人手不足が加速しており、海を越えての労働者の取り合いが始まっています。優秀な人材を確保するためには、できるだけ早く受け入れの準備を整えておきたいところです。

 特定産業分野12分野では、それぞれの受け入れ人数の上限が定められています。③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業と⑪飲食料品製造業はその中でも順調に受け入れ人数が増えている業界なので、受け入れを検討した時にすでに枠がなくなっている可能性もあります。受け入れが進んでいない分野の人数を減らし前述の2つの製造業の枠を増やす手当てがなされていますが、特定技能全体の人数枠は変わらないままとなっています。

 言及しておかなければならないのが、技能習得のための制度である技能実習との関係です。特定技能は本来ならば日本語試験と技能試験をクリアする必要があるのですが、技能実習を良好に3年間修了していれば、ほぼ無条件で特定技能に移ることができます。いわゆる元・技能実習生は日本での生活にある程度慣れていますので、技能実習を経てから特定技能に移行した人材のほうが、新規入国者を雇うよりも安心でしょう。

労働関係法令の順守は必須

 企業が外国人を受け入れるための基準として①外国人と結ぶ雇用契約が適切②機関自体が適切③外国人を支援する体制あり④外国人を支援する計画が適切、という基準が設けられています。①の雇用契約を確実に履行することは企業の義務となっており、労働基準法をはじめとする労働関係諸法令の法令順守は必須です。出入国在留管理庁への各種届出を確実に行わない場合、罰則などが課される場合がありますので社内で体制を整えておく必要があります。③と④については、自社で基準をクリアすることが難しい場合には登録支援機関が助力してくれます。12分野に対して所轄の官庁が多岐にわたり、分野ごとで上乗せの規制があります。受け入れる企業もしっかりと制度を理解しておかないと、行政処分や刑事罰の対象となる可能性がありますので、ご注意ください。

 外国人の雇用については、言葉の問題、文化や風習の違い、国民性の違いといったひと筋縄ではいかない問題も出てきます。弁護士、社会保険労務士や行政書士といった専門家と連携をし、進めていただければと思います。

掲載:『戦略経営者』2022年12月号