西暦859年開山の歴史を誇る霊山(りょうぜん)の麓で、3つの施設を運営する一般社団法人りょうぜん振興公社。さまざまなプロジェクトを駆使しながら伊達市の振興に力を注いでいる。代表理事の齋藤義則氏と総務課長補佐の樋口和彦氏に、税務・会計を支援する税理士法人寺田共同会計事務所の三浦寿和部長を交えて話を聞いた。

──業容は?

齋藤義則代表理事

齋藤義則代表理事

齋藤 霊山こどもの村(アミューズメント施設)、りょうぜん紅彩館(宿泊施設)、道の駅 伊達の郷りょうぜんという三つの施設を福島県伊達市の指定管理者として運営しています。前身は霊山こどもの村管理会で1972年創業。2022年の7月で50周年を迎えました。

──収益の状況は?

齋藤 われわれの法人は、市民福祉の向上や地域活性化が第一の目的です。こどもの村は基本的に公益事業で紅彩館も年間の売り上げは1億円弱。そうしたなか、18年にオープンした道の駅伊達の郷りょうぜんは、年間5億6,000万円ほどを売り上げており、創設以来右肩上がりと好調です。

──好調の理由は?

齋藤「伊達食」をテーマに「宿場ビストロ」をコンセプトにした店舗づくりが受けているのだと思います。施設は伊達市のものですが、設計段階から当公社の「準備室」が担い、人を募集しつつ店舗デザインを練り上げ、地元の食材を前面に押し出した「宿場ビストロ」というひとつの形を作り上げていきました。

──設計段階からですか。

齋藤 通常、公的な施設だと建物をつくってから「どうぞ使ってください」という感じだと思いますが、それだとやはり使い勝手が悪くなりますからね。

──ビストロと言えば食事処のことですが、どのようなものがいただけるのでしょうか。

道の駅 “伊達の郷りょうぜん”外観

道の駅 “伊達の郷りょうぜん”外観

齋藤 地元の食材を生かしたお餅屋さん、パン工房、ジェラート&ピザ、うどん、伊達鶏をメイン料理としたレストランもあります。農産物直売所では、果物が評判です。伊達市は一年中、果物がとれるので、常に旬の味を楽しんでいただけます。たとえば「あんぽ柿」は伊達の名産として有名ですが、ほかにもサクランボ、プラム、桃、ブドウ、リンゴ、イチゴなどです。

──来店者数は?

齋藤 おかげさまで、2022年8月に累計600万人を達成しました。年間では100万人強です。ここは道の駅としては中規模なのですが、それにしては集客力は高いと思います。大観光地である猪苗代の道の駅と同程度の集客力があるとも言われています。店舗の内容ばかりではなく、無料の東北中央自動車道が開通し、アクセスが良くなったこともプラス要因だったと思います。

──遠くからの来店客も?

齋藤 はい。連休などには県外ナンバーの車が多くなります。とくに宮城県からのお客さまが増えている印象がありますね。県内でいえば、郡山、会津、いわきなどからのお客さまはもちろん、近隣のリピーターの方々にも数多く利用していただいています。伊達の中心市街地からでも、高速道を使えばものの数十分で来ることができますからね。家族でちょっと買い物を、食事をといったニーズをうちで満たしていただいているのだと思います。

地域の農産品がずらりと並ぶ(左)、伊達鶏を前面に……(中)、レストランやカフェも(右)

地域の農産品がずらりと並ぶ(左)、伊達鶏を前面に……(中)、レストランやカフェも(右)

TKCシステムフル活用で業務の効率化と標準化を実現

──寺田共同会計事務所とのご関係は?

齋藤 2013年に社団法人霊山こどもの村管理会から現在の法人に移行する際に、収支計画の作成や県との会計的なやりとりをしなければならず、これらを自前でこなすのは難しいので専門家の寺田共同会計さんに顧問をお願いしました。

──ということは、それまでは経理関係は自前で?

齋藤 はい。業種的に伝票が膨大な数に上るため、以前は大変な作業でしたが、『FX4クラウド(公益法人会計用)』を導入(22年4月)したことで、経理事務の効率化が飛躍的に進みました。

──とくにどんなところが?

三浦(寺田共同会計事務所部長) たとえば、伺書申請と支払管理の機能は大きく効率化に貢献していると思います。こどもの村、紅彩館、道の駅という3つの事業それぞれの担当者が、システム上で伺書を申請し、それを承認者が最終承認、そのデータを受け取った本部がインターネットバンキングで支払うという仕組みです。

──具体的にどのような支払いがあるのでしょう。

樋口和彦総務課長補佐

樋口和彦総務課長補佐

樋口(総務課長補佐) 野菜や果物、食材、消耗品の仕入れ、委託料など多種にわたります。それらを、3つの施設の担当者がそれぞれ入力して、一気通貫で支払いにまで持っていくわけです。以前は、各担当者がエクセルに入力して、それを集計してインターネットバンキングで支払っていたので金額の「ずれ」や「もれ」を確認するのが大変でした。

──経理事務の生産性が上がったと。

樋口 経常的な取引は、先ほどの伺書もそうですが、仕訳辞書機能や銀行信販データ受信機能()などにより標準化されているので担当者はとても楽になったと思います。

三浦 偶発的な支出に対しても、システムに標準装備されている証憑保存機能を使ってストレージに入れてもらえば、私がそれを見て仕訳を起こすことができます。

銀行信販データ受信機能…複数の金融機関(銀行や信販会社)から、インターネットを利用して取引データを自動受信し、その取引データをもとに仕訳ルールの学習機能を利用して仕訳を簡単に計上できる機能

──部門別管理は?

三浦寿和部長(寺田共同会計事務所)

三浦寿和部長
(寺田共同会計事務所)

三浦 もちろん行っています。既述の通り、当社は大きくは3部門に分けられますが、そこに枝をつけて重層的に管理しています。こどもの村事業が「遊具」「キャンプ」「コテージ」など5部門、紅彩館は1部門、道の駅部門は「直売所」「ジェラート」「パン工房」「レストラン」「餅屋」など7部門に分かれています。

──緻密ですね。

樋口 以前も同様の部門別管理は行っていたのですが、エクセルを使って手作業で集計していました。あくまでも内部資料だったものを、会計の段階で明確に分けたわけです。これによって、タイムリーにそれぞれの事業の現状が分かるようになりました。

──入力は何人で?

三浦 こどもの村2名、紅彩館1名、道の駅1名、計4名です。複数人入力ができるのも、『FX4クラウド』の大きなメリットですね。

──システム導入のメリットをもう少し。

樋口 とにかくデータが見やすくなったことで、支払い忘れなどがなくなりました。それから「マネジメントレポート(MR)設計ツール」は便利ですね。クリック一つで、各施設の最新のデータが並んだ帳表が打ち出せますから。毎月の経営会議では、これらの資料は必須です。

三浦 以前使っていた会計ソフトは数値の修正が容易にできたのですが、TKCシステムは過去のデータの訂正・加除が基本的にはできません。やむをえず行う場合は、はっきりと訂正履歴が残りますから、常に高い信頼性が担保されています。

──今後について一言。

齋藤 われわれは伊達市の振興を担う公社なので、これからも3つの施設を連携させながら地域貢献を行っていきます。
 霊山は、中尊寺の9年後、西暦859年に開山され、南北朝期には陸奥の国府が置かれました。そうした歴史を含めた地域の魅力を訴えながら、積極的にプロジェクトを企画して実行していきたいと思っています。たとえば、林道「大霊山線」などの自然の観光資源を利用してEV-TUKTUKでの散策プランを提供したり、紅彩館の宿泊とセットで霊山のトレッキングを楽しんでいただいたりと、その都度、新たな企画にチャレンジしていきたいですね。

(本誌・高根文隆)

会社概要
名称 一般社団法人りょうぜん振興公社
設立 2013年11月1日
所在地 福島県伊達市霊山町石田字宝司沢9-1
売上高 約6億5,000万円
従業員数 80名
URL http://kodomo-ryozen.org/corp/
顧問税理士 税理士法人寺田共同会計事務所
所長 深瀬善太
福島県福島市浜田町12-15
URL: https://teradakaikei.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2023年2月号