消費者契約法が改正され、6月に施行されると聞きました。店頭のほかネットショップでも商品を販売していますが、どんな点に留意すべきでしょうか。(家具小売業)

 消費者契約法は、事業者と消費者の契約に関する法律で、昨年5月25日に改正され、本年6月1日から施行されます。改正項目を以下、説明します。

 消費者は不当な勧誘で締結した契約を取り消すことができますが、この「取消権」の範囲が拡大されます。改正前は、以下の10のケースが該当していました。

 ①うそを言われた
 ②不利になることを言われなかった
 ③必ず値上がりすると言われた
 ④通常の量を著しく超える物の購入を勧誘された
 ⑤お願いしても帰ってくれない
 ⑥帰りたいのに帰してくれない
 ⑦就職セミナー商法等の不安をあおる告知
 ⑧デート商法等の好意の感情の不当な利用
 ⑨判断力の低下の不当な利用
 ⑩霊感等による知見を用いた告知

 改正法ではこれらに加え、以下の3つのケースが追加されます。

①退去困難な場所へ同行(旅行に行こうと告げて、山奥の別荘に連れていき商品を販売する等)

②威迫する言動を交えて相談の連絡を妨害(商品を買うべきか第三者に相談したいとの申し出を妨害して勧誘する等)

③契約締結前に債務の内容を実施して強引に代金を請求する(貴金属買い取りの際に、鑑定のためといって指輪を取り外し、相手に戻すことを著しく困難にして勧誘する等)

免責範囲を明確に

 次に、免責範囲が不明確な条項は「無効」となります。

 従来、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項や、故意・重過失の時でも一部免除する条項などは、無効とされていました。ただ、契約書に「当社は、法律上許されるかぎり、○万円を限度として責任を負います」等の記載があると、消費者は賠償額が分かりません。

改正法では、こうした条項は無効です。軽過失の場合だけ免責条項が適用されることを明記する必要があります。軽過失だけ免責されるとの条文が明記されていない契約書については、施行日までに「軽過失の場合は○万円を上限として賠償します」といった文言を追加してください。

 あわせて、契約締結時等における事業者の「努力義務」が拡充され、解除時には、消費者から解約方法に関する質問があれば、ウェブサイトの解約ページに案内するといった対応の努力義務が設けられました。また、消費者が支払う解約料等について説明を求められたとき、算定根拠の概要を説明する努力義務も新設されました。事業者は施行日までに、算定根拠の概要を説明できるよう準備してください。

 これらはあくまで努力義務であり、消費者の要望を無視しても問題ないと思う方もいるかもしれません。しかし同法10条では、消費者の利益を一方的に害する条項が無効になると規定され、最近も、最高裁判所が家賃保証会社の追い出し条項を、同法10条の規定に違反するため、無効であると判断しました。努力義務であっても軽視することは望ましくなく、他の改正事項と同様、消費者と向き合う姿勢が求められます。

掲載:『戦略経営者』2023年5月号