右から3人目が前島正樹社長、その左隣が西田裕幸監査担当

右から3人目が前島正樹社長、その左隣が西田裕幸監査担当

不動産の販売・仲介、リフォーム、内装工事など「住まい」に関する事業を多彩に繰り広げるLiv art(リヴ アート)。今年1月には新事業を立ち上げるなど、地域に不可欠な会社を目指して突き進んでいる。前島正樹社長と税理士法人プロスタッフ和の西田裕幸監査担当(巡回監査士※1)に、同社の経営・財務戦略を聞いた。

会社設立から現在まで立て続けに新規事業に挑戦

──白を基調としたスタイリッシュな外観が目立ちます。

前島正樹社長

前島正樹社長

前島 集客力を強化するべく、新型コロナが流行する直前に今の場所に移転しました。手前味噌になりますが、当社の強みは住まいに関する困りごとをオールインワンで対応できるところ。多くのお客さまに当社の強みをアピールするべく、移転先は車が出入りしやすい県道沿いを選びました。店内にはオフィス、打ち合わせスペースのほか、キッズスペース、カーテンのショールームを設けています。最近は子ども連れのお客さまが多く来られるので、キッズスペースはとても喜ばれていますね。

──ショールームを併設したのはなぜですか。

前島 目的はもちろん販売促進です。安中市でカーテンを専門に取り扱っている店舗はここ以外にないので、地元住民のほか、近隣のホテルやレストランなど法人のお客さまも買いに訪れます。

──創業当初はクロスの張り替えを専業としていたとか。

前島 もともと私がクロス職人で、クロスの張り替えを長くなりわいとしていました。その後個人事業主として独立し、2014年に法人化。当初は弟と2人で切り盛りしていましたが、次第に業務が回らなくなってきたので、受注した仕事を下請けの職人に紹介する形にビジネスモデルを一新しました。一方で、かねて目標に掲げていた宅地建物取引士の資格を取得し、不動産事業に参入。現在は安中市を中心に一戸建て、マンションなどあらゆる物件を取り扱っています。その後、リフォーム、カーテン・ブラインドの販売と事業の幅を着々と広げていきました。

──なぜ不動産事業に関心を?

オフィスの奥にはカーテンのショールームを構える

オフィスの奥にはカーテンの
ショールームを構える

前島 利益率の向上が課題だったからです。クロスの張り替えは材料費や職人への報酬など大きなコストが発生します。受注が増えて売り上げが伸びても、手元に残る利益は小さいのです。会社を発展させていくなかで、クロス事業1本では利益が伸びないと考え、比較的利益率が高く、昔から身近だった不動産事業に挑戦しました。

──最近では、事業再構築補助金を活用して不動産管理システムを開発されたと聞きました。開発に着手した経緯を教えてください。

前島 いろいろありますが「中小規模の不動産事業者でも手に取りやすいシステムを提供したい」と考えたことが一番の着手した理由です。不動産管理システムは世間に数多く出回っていますが、どれも機能が充実している分、多額の初期費用とイニシャルコストがかかります。かつて当社でも不動産管理システムの導入を検討したことがありますが、費用が高額だったために見送りました。中小企業にとっては機能がシンプルでも価格が安い方が導入しやすいのです。この経験から、中小企業に照準を合わせた不動産管理システムはニーズが高いと思い、知り合いのエンジニアと共同で開発を進めることにしました。

──セールスポイントは?

前島 代表的なもので言うと、「レインズ」という不動産会社専用の物件サイトにある情報をインポートできるので、自社が管理していない物件もスピーディーに紹介することができます。例えば群馬から遠方に引っ越すといった場合でも、顧客の希望に合った現地物件をすぐにピックアップすることが可能です。
 システムは今年の1月に完成し、現在はIT化で顧客サービスの充実を図りたい中小不動産事業者をターゲットに営業攻勢をかけているところです。リリース直後ということもあり、売り上げはほとんど立っていませんが、ゆくゆくは収益の柱となるようユーザーを増やしていきたいですね。

「証憑保存機能」の活用で証憑書類のデータ保存に対応

──税理士法人プロスタッフ和とは会社設立以来の関係と聞きました。

前島 法人成りのタイミングでメインバンクから紹介されたのがプロスタッフ和さん、当時の山田会計事務所さんでした。担当の西田さんが毎月当社を訪問してくださるので、税務や会計に限らず経営全般で悩んでいることをいつも相談しています。不動産管理システムを開発するにあたり、事業再構築補助金の申請を考えたときも真っ先に西田さんに相談しました。

西田裕幸監査担当

西田裕幸監査担当

西田 前島社長はチャレンジ精神が旺盛で、一度掲げた目標は何としてでも成し遂げるという高い志をお持ちです。事業再構築補助金を活用する際も、申請に必要な事業計画書一式をすぐさま準備されるなど、事業成功に懸ける情熱は群を抜いている印象です。

──今年の1月に『FX2クラウド』を導入されました。導入の経緯を教えてください。

前島 やはりインボイス制度と電子帳簿保存法(電帳法)への対応が一番の理由ですね。あとは事業別の最新業績を見たいという願望もありました。西田さんからは「『FX2クラウド』なら制度対応はもちろん、部門別の業績管理もばっちりです」と勧められたので、「これだ!」と思いました。

西田 24年1月以降、PDF等の電子データで受け取った書類はデータのまま保存しなければなりません。Liv artさんが制度改正にしっかりと対応できるよう、「証憑保存機能」が搭載されている『FX2クラウド』をお勧めしました。

──インボイス制度、電帳法への対応状況はいかがでしょう?

前島 西田さんが話されたように、データで受け取った書類はすべて「証憑保存機能」で管理しているので、電帳法への対応は万全です。一方、インボイス制度はゴールデンウイーク明けごろから本格的に対応に向けて動き始めました。仕事柄、個人事業主との取引が多いので、取引先がインボイスの発行事業者登録を行ったかを確認する文書を、つい先日発信したところです。

──話題を『FX2クラウド』に戻します。部門別に業績を管理しているとのことですが、帳表はどのように活用されていますか?

前島 各部門の社員が参加する月次会議で、直近1年間の業績グラフと部門別の売上高や限界利益の額・比率などのデータを記載した資料を配布し、現状報告と今後の打ち手を話し合っています。毎月の業績目標と現在の実績を比較し、乖離があればその原因と今後の行動計画を議論するなど、会計数値を参考に販売戦略を練っています。

──仕訳はどのように入力していますか?

前島 現金取引は「レシート入力機能」を、預金やクレジットカードの取引は「銀行信販データ受信機能※2」を、販売に関する取引は「証憑保存機能」の仕訳計上機能を活用して、それぞれ仕訳を起こしています。導入して間もないですが、分からないことがあれば西田さんが丁寧にサポートしてくれるので、滞りなく経理業務を実施できています。

西田 「証憑保存機能」はただ証憑書類を保存するだけでなく、仕訳を簡単に起票できる機能があるので、経理担当の山下由佳さんも入力業務を難なくこなされている印象です。そのほか、頻繁に利用する仕訳は「仕訳辞書」に登録してあるので手入力はほとんどされていません。

新規事業の底上げを図り社員の裕福度を高める

──創業以来、新しいビジネスに果敢に挑戦されてこられました。今後の事業展開をどのように構想されていますか。

前島 私自身、経営者として常に心に留めている思いがあります。それは「社員が裕福になれる会社を目指す」ということ。これを実現するには既存事業をブラッシュアップしつつ、新事業を軌道に乗せなければなりません。この2つを両立し、社員の裕福度を高めるためにも、まずは当社の中核を担う若手スタッフの知識習得や販売スキル向上など、人材育成に注力していきたいと考えています。

※1 巡回監査士…コンサルタント系の民間資格認定団体では最も権威のある公益社団法人全日本能率連盟の登録資格。これは、主に税理士事務所及び税理士法人に勤務する職員を対象とした資格で、事務所職員の育成及びその資質向上を図ることを目的としている。

※2 銀行信販データ受信機能…複数の金融機関(銀行や信販会社)から、インターネットを利用して取引データを自動受信し、その取引データをもとに仕訳ルールの学習機能を利用して仕訳を簡単に計上できる機能

(取材協力・税理士法人プロスタッフ和/本誌・中井修平)

会社概要
名称 株式会社Liv art
業種 内装工事、不動産販売・仲介、インテリア販売など
設立 2014年1月
所在地 群馬県安中市安中4015-2
従業員数 10名(パート含む)
URL https://www.liv-estate.co.jp/
顧問税理士 税理士法人プロスタッフ和
代表社員 山田利和
群馬県甘楽郡甘楽町白倉61-1
URL: https://prostaff-nagomi.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2023年6月号