介護で苦労している社員が年々増えてきています。そうした社員が仕事との両立をしやすくする仕組みづくりのポイントや支援制度などについて教えてください。(建築材料卸売業)

 総務省の調査によると、家族の介護や看護で離職する人は年間10万人を超えています。重要なポジションを担っている働き盛りの従業員が、ある日突然介護離職してしまわないよう、できるだけ早く取り組みを進めることをお勧めします。

 企業が行うべき仕事と介護の両立支援は、大きく分けて2つあります。1つ目は、自社の両立支援制度を整備し、介護に直面する前の従業員に「仕事と介護を両立するための知識」を持ってもらうこと。2つ目は、介護に直面した従業員が、仕事と介護を両立しながら安心して働く事ができるように、面談をして実情を把握した上で、自社制度の利用支援や職場内のカバー体制を整えることです。

 育児・介護休業法では、対象家族1人につき、通算93日の範囲内で合計3回まで分割して介護休業が取得できるようになっています。対象家族は、①配偶者②父母③子④配偶者の父母⑤祖父母⑥兄弟姉妹および孫。平均的な介護期間が5年1カ月と言われる中で、休業期間が93日と短いのは、自分で介護をするのではなく、今後仕事と介護を両立していくための準備期間にあてるという考え方があるからです。1回目は要介護認定の申請や介護施設の見学などに、2回目は介護の状況が変わった時、3回目は看取りの際など分割利用も可能です。

 従業員から介護の相談を受けた際には、「地域包括支援センター」を案内してください。社会福祉士や主任ケアマネジャーなど介護の専門家がいて、介護についてなんでも相談に乗ってくれる地域の窓口です。「両親が介護施設を利用したがらない」という悩みもよく聞きますが、それこそ専門家であるケアマネジャーの出番。ケアプランを作るだけでなく、介護者の悩みや不安を発見することも仕事なので、介護者である従業員自身の働き方の希望を伝えることが、無理なく両立を行うコツともいえるでしょう。「プロに任せる」「自分でしすぎない」など、従業員が介護に関する知識をあらかじめ持っていると、「仕事と介護は両立できる」と考えられるようになります。

介護支援プランを策定しよう

 厚生労働省は、介護に直面した従業員が両立しながら安心して働けるよう、「介護支援プラン」の策定を推奨しています。面談シートを使って総務、上司、本人の三者で面談を行い、対象家族の状況、利用したい両立制度や働き方の希望を聞いて、職場の状況と照らし合わせながらフォロー体制を考えていくプランです。利用する制度に合わせ、9つのモデルプランが用意されていて、カスタマイズしながら策定することが可能です。介護の状況によって両立体制は変わることが想定されるため、フォロー面談をしながら見直しや再構築を行っていく必要があります。

 また中小企業を対象とした「両立支援等助成金・介護離職防止支援コース」という助成金制度もあります。「介護支援プラン」を作成し、プランに沿って介護休業や両立支援制度の取得・職場復帰に取り組んだ企業に対して助成する制度です。これらの制度も活用しながら両立できる職場環境を整えていきましょう。

掲載:『戦略経営者』2023年11月号