昼食後に短時間の昼寝をとると、午後の仕事がはかどるという話を聞きました。「パワーナップ」と呼ばれるそうですが、その効果とおすすめの取り方を教えてください。(労働者派遣業)

「会社で昼寝するなんてとんでもない!」と思っている方は多いと思います。しかし、管理された昼寝は仕事の能率を高めるとあって、世界的に知られる企業も取り入れています。

 食事をしてお腹がふくれると、脂肪細胞から「レプチン」というホルモンが分泌されます。レプチンは消化・吸収をよくするために、脳の働きを抑制します。そのため、食後は眠気が少し強くなります。 昼食後の眠気には、体内時計も関係しています。体内時計がつくり出す眠気のピークは、1日に2回。一番大きなピークは午前2〜4時で、もうひとつの小さなピークが午後2〜4時にあるのです。

 午後の眠気に対処するには、眠気に対抗してがんばって起きているか、眠気に身をゆだねて眠るかです。眠気に身をゆだねる=昼寝で有名なのは、南欧の「シエスタ」でしょう。しかしシエスタは、長時間の昼寝は仕事の効率を悪くするということで、廃止されるケースが増えています。

 シエスタにかわってビジネス界で注目されてきたのが、短時間の昼寝である「パワーナップ」です。昼食をとりながらの商談を「パワーランチ」といいますが、この「パワー」と昼寝や仮眠を表わす「ナップ」をつないで、ビジネス力を高めるための意図的な短い昼寝のことをパワーナップと呼びます。

 パワーナップの効果として、午後の眠気が減り、脳の働きが活発になることが挙げられます。その結果、集中力や計算力、判断力、意欲が高まって仕事がはかどるようになります。福岡県のある高校がパワーナップを取り入れたところ、難関大学への進学者数が増加したともいわれています。

 パワーナップは、夜の睡眠にも良い影響を与えます。パワーナップで眠気が減ると活発に動くので、脳と体は疲れます。そのため、パワーナップをとった日の夜はぐっすり眠れるようになります。

 パワーナップとして推奨される時間は、10〜20分です。これより短いと効果が不十分で、長いと睡眠が深くなって起きられなくなるからです。ただし、高齢者では睡眠が深くなるまで時間を要するので、30分眠っても問題ありません。

 午後の仮眠は、その日の夜の睡眠の先取りになります。遅い時間に仮眠をとると夜の睡眠に悪影響がおよぶため、昼寝は夕方より前にとっておく必要があります。眠気の強い午後2時〜4時ごろにとるのが望ましいですが、一般的な職場では難しいでしょう。よって、昼休み時間中の昼食後にパワーナップをとるのが現実的です。

 パワーナップの取り方ですが、ソファや長椅子に寝そべって眠るのはおすすめしません。横になると深い眠りに入ってしまい、20分で起きられなくなる場合もあるためです。椅子にもたれかかるか、机に突っ伏して眠りましょう。椅子にもたれかかって眠るときは、首を痛めないようにコの字枕などを使ってください。机に突っ伏して眠るときも、顔にあとがつかないように昼寝用枕を使ったり、よだれが垂れても大丈夫なようにハンカチを口に当てたりしましょう。

 また、パワーナップの前にカフェインをとると、睡眠効果が高まります。カフェインには覚醒作用がありますが、効果が出るまでには20〜30分かかります。そのため、パワーナップの直前に飲んでも睡眠には影響がなく、起きる予定時間ごろに覚醒効果が発揮されて気持ちよく目覚められます。

掲載:『戦略経営者』2024年2月号