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2021.07.20
損害賠償請求控訴事件(SMBC日興証券インサイダーを巡る執行役員に対する損害賠償請求控訴事件)
LEX/DB25590025/東京高等裁判所 令和 3年 3月25日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第1325号
控訴会社(証券会社)の執行役員で投資銀行本部副本部長であった被控訴人が、株式公開買付けが実施される予定の会社3社についてのその実施に関する情報を、その公表前に控訴会社内の会議で知ったところ、3社の株式公開買付け実施に関する情報(本件インサイダー情報)を、知人のBに漏洩し、Bが知人のF名義でそれらの会社の株式を購入したとして金融商品取引法167条3項違反の罪で逮捕され、地方裁判所で懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受け、控訴審の高等裁判所は控訴棄却の判決をし、最高裁判所は上告棄却の決定をして、被控訴人に対する有罪判決が確定したことから、控訴会社が被控訴人に対し、不法行為(又は債務不履行)に基づき、控訴会社が被ったと主張する6億1191万1411円の損害の一部である5991万1411円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審は、被控訴人の犯罪行為の事実を否定し、控訴会社の請求を棄却したため、控訴会社が控訴した事案で、原判決を取消し、控訴会社の請求は、被控訴人に対し、1500万円及びこれに対する不法行為又は債務不履行の後である平成24年8月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、その余の控訴人の請求は棄却した事例。
2021.07.13
報酬等請求本訴,不当利得返還請求反訴,民訴法260条2項の申立て事件
LEX/DB25571614/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月29日 判決 (上告審)/令和2年(受)第205号 等
本件本訴は、被上告人が、上告人に対し、無免許者が宅地建物取引業を営むために宅地建物取引業者からその名義を借り、当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の本件合意に基づいて被上告人に支払われるべき金員の残額として1319万円余りの支払を求めるなどするものであり、本件反訴は、上告人が、被上告人に対する1000万円の支払は法律上の原因のないものであったと主張して、不当利得返還請求権に基づき、その返還等を求めたところ、原審は、本件合意の効力を否定すべき事情はなく、本件合意の効力が認められると判断して、被上告人の本訴請求を認容し、上告人の反訴請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件合意は、公序良俗に反し、無効であるとし、原判決中、上告人敗訴部分を破棄し、本件合意の効力等について更に審理を尽くさせるため、上記部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき、本件を原審に差し戻した事例。
2021.07.13
常習特殊窃盗被告事件
LEX/DB25571619/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 6月28日 決定 (上告審)/令和2年(あ)第919号
前訴で住居侵入、窃盗につき有罪の第1審判決の宣告を受け、控訴及び上告が棄却されて同判決は確定したが、その後、起訴された本件の常習特殊窃盗を構成する住居侵入、窃盗の各行為は、いずれも前訴の第1審判決後、その確定前にされたものであることが認められ、前訴で住居侵入、窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において、後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する住居侵入、窃盗の各行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときは、前訴の訴因が常習性の発露として行われたか否かについて検討するまでもなく、前訴の確定判決による一事不再理効は、後訴に及ばないとし、本件について刑事訴訟法337条1号により判決で免訴の言渡しをしなかった第1審判決に誤りはないとした原判決の結論は正当として是認できるとした事例。
2021.07.13
相続税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25571598/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 6月24日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第103号
被上告人が、上告人(国)を相手に、被上告人の本件申告に係る課税価格及び相続税額が本件調停により遺産分割が行われたことを基礎として計算した場合における課税価格及び相続税額と異なることとなるとして、課税価格を49億0410万9000円、納付すべき税額を23億2567万1800円とする増額更正処分のうち、それぞれ納付すべき税額が4億4689万9300円を超える部分の取消しを求め、原審は、本件通知処分に係る請求及び本件更正処分のうち本件申告に係る納付すべき税額を超える部分の取消請求を認容したため、上告人が上告した事案で、本件更正処分がされた時点で国税通則法所定の更正の除斥期間が経過していた本件においては、税務署長は、本件更正処分をするに際し、前件判決に示された本件各株式の価額や評価方法を用いて税額等の計算をすべきものとはいえず、本件申告における本件各株式の価額を基礎として課税価格及び相続税額を計算することとなるから、本件更正処分は適法であると判示し、これと異なる原審の判断には法令違反があるとし、また、相続税法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われた場合における特定の相続人による同法32条1号の規定による更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分と当該相続人に対する同法35条3項1号の規定による増額更正は、いずれも当該遺産分割による各相続人の取得財産の変動という相続税特有の後発的事由を基礎としてされた同一相続人に対する処分であり、上記増額更正は、一旦確定していた税額を当該遺産分割が行われたことを理由に増額させて確定する処分であるから、当該遺産分割に伴い税額を減額すべき理由はないという上記通知処分の内容を実質的に包摂するものということができ、加えて、上記更正の請求がされているため、当該相続人は、上記増額更正の取消訴訟において、上記更正の請求に係る税額を超える部分の取消しを求めることが可能であると解され、本件通知処分については、その取消しを求める利益はなく、本件訴えのうち本件通知処分の取消しを求める部分は不適法であるとして、却下すべきであるとした事例。
2021.07.13
詐欺被告事件
LEX/DB25571604/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月23日 決定 (上告審)/令和2年(あ)第1528号
被告人が人を欺いて補助金等又は間接補助金等(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律2条1項、4項)の交付を受けた旨の事実について詐欺罪で公訴が提起された場合、被告人の当該行為が補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条1項違反の罪に該当するとしても、裁判所は当該事実について刑法246条1項を適用することができると解するのが相当であるとして、これと同旨の原判断は正当として是認できるとし、本件上告を棄却した事例。
2021.07.06
市町村長処分不服申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和3年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571588/最高裁判所大法廷 令和 3年 6月23日 決定 (特別抗告審)/令和2年(ク)第102号
婚姻届に「夫は夫の氏、妻は妻の氏を称する」旨を記載して婚姻の届出をしたところ、国分寺市長からこれを不受理とする処分(本件処分)が不当であるとして、戸籍法122条に基づき、抗告人らが、同市長に上記届出の受理を命ずることを申し立て、本件処分は、上記届出が、夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称するとする民法750条の規定及び婚姻をしようとする者が婚姻届に記載しなければならない事項として夫婦が称する氏を掲げる戸籍法74条1号の規定が憲法14条1項、24条、98条2項に違反して無効であるなどとして、抗告人らが不服申し立てをしたが、原々審は却下決定をし、原審も抗告棄却決定をしたため、抗告人らが特別抗告をした事案で、民法750条の規定が憲法24条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁平成26年(オ)第1023号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2586頁(平成27年大法廷判決))、上記規定を受けて夫婦が称する氏を婚姻届の必要的記載事項と定めた戸籍法74条1号の規定もまた憲法24条に違反するものでないことは、平成27年大法廷判決の趣旨に徴して明らかであり、平成27年大法廷判決以降にみられる女性の有業率の上昇、管理職に占める女性の割合の増加その他の社会の変化や、いわゆる選択的夫婦別氏制の導入に賛成する者の割合の増加その他の国民の意識の変化といった原決定が認定する諸事情等を踏まえても、平成27年大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められないとして、本件抗告を棄却した事例(反対意見、補足意見、意見がある)。
2021.07.06
過誤納付金還付等請求事件
LEX/DB25571587/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月22日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第337号
市長は、上告人(原告・控訴人)の市民税及び道民税のうち平成21年度分から同23年度分までのもの(本件市道民税)並びにその延滞金等につき、順次、納付を受け又は滞納処分により徴収したが、その後、本件市道民税の税額を減少させる各賦課決定をするとともに、これにより過納金が生じたとして、上告人に対し、過納金の還付及び還付加算金の支払をした。本件は、上告人が、市長による上記過納金の額の計算に誤りがあるとして、被上告人(市。被告・被控訴人)に対し、不足分の過納金の還付及び還付加算金の支払を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、原審は、上告人の請求をいずれも棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案で、市長は、複数年度分の市道民税を差押えに係る地方税とする本件各滞納処分において、当該差押えに係る地方税に配当された金銭であって、本件各減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の市道民税に充当されていたものにつき、当該差押えに係る地方税のうちその配当時に存在していた他の年度分の市道民税に充当されたものとせず、それぞれ直ちにその金額に相当する過納金が生じたものとして、本件各減額賦課決定により生じた過納金の額を計算したものであるから、市長の当該計算には誤りがあると判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人が上告人に還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2021.07.06
売却不許可決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571597/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 6月21日 決定 (許可抗告審)/令和3年(許)第7号
横浜地方裁判所は、平成25年12月27日、Aが所有する本件土地建物につき、Aを債務者とする根抵当権の実行としての競売の開始決定(本件競売事件)をし、Aは、平成26年6月18日、破産手続開始の決定を受け、同年9月18日、破産手続廃止の決定を受けた。Aは、同日、免責許可の決定を受け、同決定はその後確定した。上記根抵当権の被担保債権は、上記免責許可の決定の効力を受けるものである。その後、Aは、平成27年2月23日に死亡し、その子である抗告人等がAを相続した。執行官は、令和2年12月1日午前9時に開かれた本件競売事件の開札期日において、抗告人を最高価買受申出人と定めた。そして、執行裁判所は、令和2年12月21日、本件競売事件の債務者であったAの相続人である抗告人は上記土地建物を買い受ける資格を有せず、民事執行法188条において準用する同法71条2号に掲げる売却不許可事由があるとして、抗告人に対する売却不許可決定をしたため、抗告人が執行抗告をしたところ、原審は、抗告人の執行抗告を棄却したため、抗告人が許可抗告をした事案で、担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け、同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合には、当該債務者の相続人は被担保債権を弁済する責任を負わず、債権者がその強制的実現を図ることもできなくなるから、上記相続人に対して目的不動産の買受けよりも被担保債権の弁済を優先すべきであるとはいえないし、上記相続人に買受けを認めたとしても同一の債権の債権者の申立てにより更に強制競売が行われることはなく、上記相続人に買受けの申出を認める必要性に乏しいとはいえず、また、上記相続人については、代金不納付により競売手続の進行を阻害するおそれが類型的に高いとも考えられず、上記の場合、上記債務者の相続人は、民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらないと判示し、これと異なる見解の原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消した上、その他の売却不許可事由の有無につき審理を尽くさせるため,本件を原々審に差し戻すこととした事例。
2021.06.29
情報不開示決定取消等請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年9月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571573/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月15日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第102号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた上告人(原告・控訴人)が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、東京矯正管区長に対し、収容中に上告人が受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報(本件情報)の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから、被上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等の支払を求めたところ、原審は、本件情報については、本件決定は適法であるとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が控訴した事案で、被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないから、同法12条1項の規定による開示請求の対象となるとして、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差戻した事例(補足意見がある)。
2021.06.29
遺言確認申立却下審判に対する抗告事件
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和3年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25569562/東京高等裁判所 令和 2年 6月26日 決定 (抗告審)/令和2年(ラ)第560号
遺言者がした危急時遺言について、その証人となった抗告人A(原審申立人)が、民法976条4項に基づき遺言の確認を求め、原審が原審申立人の申立てを却下したところ、原審申立人及び利害関係人(遺言者の長男)である抗告人Bが即時抗告した事案で、本件遺言の際における原審申立人と遺言者とのやりとりの内容については、原審申立人を含む3人の証人が一致しているところ、これらの証人がいずれも弁護士からの依頼に基づいて証人となった行政書士であることからすると、各供述の信用性は高いというべきであり、また、本件遺言の内容は遺言者の状況からみて合理性を有する内容といえることからしても、本件遺言は遺言者の真意に適うものであると考えられるところ、原審申立人の申立てを却下した原審判は失当であるとして、原審判を取り消したうえで、遺言者が本件遺言をしたことを確認した事例。
2021.06.29
新株予約権無償割当差止仮処分決定認可決定に対する保全抗告事件(日本アジアグループ事件)
LEX/DB25569527/東京高等裁判所 令和 3年 4月23日 決定 (抗告審)/令和3年(ラ)第798号
抗告人の株主である相手方が、抗告人に対し、抗告人が取締役会決議に基づいて現に手続中の株主に対する甲種新株予約権の無償割当ては、〔1〕株主平等の原則に反し、〔2〕著しく不公正な方法によるものであると主張して、会社法247条1号及び2号に基づき、これを仮に差し止めることを求め(基本事件)、これに対し東京地方裁判所が、上記新株予約権の無償割当てを仮に差し止める旨の決定をしたところ、本件仮差止決定を不服とする抗告人が保全異議を申し立て、原審が本件仮差止決定を認可する旨の決定をしたため、原審決定を不服とする抗告人が保全抗告を申し立てた事案で、本件新株予約権無償割当ては、抗告人の経営支配権に現に争いがある場合において、抗告人株式の敵対的買収によって経営支配権を争う相手方らの株券等保有割合を低下させ、経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持・確保することを主要な目的とするものであり、新株予約権の無償割当てに類推適用される会社法247条2号の「新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合」に該当するというべきであるところ、それにより相手方が不利益を受けるおそれがあると一応認められるのであるから、相手方はその差止請求権を有するとして、抗告人の本件新株予約権無償割当てにより、債権者が著しい損害を被ることが一応認められるとして、本件抗告を棄却した事例。
2021.06.29
保全異議申立事件の決定に対する保全抗告事件(日邦産業事件)
LEX/DB25569526/名古屋高等裁判所 令和 3年 4月22日 決定 (抗告審)/令和3年(ラ)第138号
相手方の株主である抗告人が、相手方の取締役会決議に基づく新株予約権無償割当ては、株主平等の原則(会社法109条1項)に違反し、著しく不公正な方法によるものであるとして、相手方に対し、会社法247条(類推適用)により、当該新株予約権無償割当てを仮に差し止めることを求め、保全裁判所が、抗告人の上記仮処分の申立てを認容する決定をしたので、相手方が保全異議を申し立てたところ、原審が原々決定を取り消し、基本事件に係る抗告人の申立てを却下する旨の原決定をしたことから、これを不服とする抗告人が本件抗告をした事案で、抗告人の本件仮処分の申立てについては、被保全権利の疎明がないから、原々決定を取り消し、基本事件に係る抗告人の申立てを却下するのが相当であると判断するとして、本件抗告を棄却した事例。
2021.06.22
強盗致傷,犯人隠避教唆,犯人蔵匿教唆被告事件
LEX/DB25571572/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 6月 9日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第54号
犯人が他人を教唆して自己を蔵匿させ又は隠避させたときは、刑法103条の罪の教唆犯が成立すると解するのが相当であり、被告人について同条の罪の教唆犯の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例(反対意見がある)。
2021.06.22
入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25571570/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月 9日 決定 (再抗告審)/令和3年(医へ)第5号
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による処遇制度が、憲法14条、31条、34条の規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかであるとし、本件抗告を棄却した事例。
2021.06.15
被災者生活再建支援金支給決定取消処分取消請求本訴,不当利得返還請求反訴,不当利得返還請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年8月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571555/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 6月 4日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第133号
本件本訴は、上告人(宮城県から被災者生活再建支援金の支給に関する事務の委託を受けた被災者生活再建支援法人)が、本件各支援金の支給決定(本件各支給決定)を支給要件の認定の誤りを理由に取り消す旨の決定(本件各取消決定)をしたことから、被上告人(上告人から支援金の支給を受けた者又はその相続人)らが,本件各支給決定を取り消すことは許されないと主張して、上告人を相手に、本件各取消決定の取消しを求め、本件反訴は、上告人が、本件各取消決定により被上告人らが本件各支援金を保持する法律上の原因を失ったと主張して、被上告人らに対し、本件各支援金相当額の不当利得返還を求めたところ、原審は、本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとは認められず、本件各支給決定には違法があるとしたものの、本件各取消決定は違法であるとして、その取消しを求めた本訴請求を認容するとともに、不当利得返還を求めた反訴請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、上告人は、本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定に誤りがあることを理由として、本件各支給決定を取り消すことができると判示し、原判決中被上告人らに関する部分(原判決主文第1項)は破棄し、本件各取消決定は適法であるから、その取消しを求めた本訴請求は理由がなく、また、本件各支援金に係る不当利得返還を求める反訴請求は理由があるとして、本訴請求を棄却するとともに反訴請求を認容した第1審判決は正当であるから,被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.15
憲法53条違憲国家賠償請求事件
LEX/DB25569359/岡山地方裁判所 令和 3年 4月13日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第163号
衆議院議員である原告が、平成29年6月22日、憲法53条後段に基づき、内閣に対して臨時会の召集を要求したところ、内閣が、同要求後98日が経過した同年9月28日まで臨時会を召集しなかったことにつき、内閣は合理的な期間内に臨時会を召集するべき義務があるのにこれを怠ったものであって、憲法53条後段に違反し、その結果、国会議員としての権能を行使することができなかったとして、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求に対して、内閣は、召集手続等を行うために通例必要な合理的期間内に臨時会を召集すべき憲法上の法的義務を負うものと解されることから、同条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定が同条に違反するものとして違憲と評価される余地はあるといえるものの、他方、内閣が、憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求をした国会議員に対して、国家賠償法1条1項所定の職務上の法的義務として臨時会の召集義務を負うものとは解されないから、内閣が召集要求をした個々の国会議員に対し、同法1条1項所定の損害賠償義務を負う余地はなく、政治的責任を負うにとどまるものといわざるを得ないとして、原告の請求を棄却した事例。
2021.06.08
執行判決請求、民訴法260条2項の申立て事件
LEX/DB25571523/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 5月25日 判決 (上告審)/令和2年(受)第170号 等
被上告人らが、上告人に対して損害賠償を命じた米国カリフォルニア州の裁判所の判決について、民事執行法24条に基づいて提起した執行判決を求め、原審は、本件外国判決のうち上告人に対して14万0635.54米国ドル及びこれに対する本件外国判決の言渡し日の翌日である平成27年3月21日から支払済みまでの利息の支払を命じた部分についての執行判決を求めた被上告人らの請求を認容したため、上告人が上告した事案で、本件弁済が本件懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして本件外国判決についての執行判決をすることはできず、本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分は民事訴訟法118条3号に掲げる要件を具備すると認められ、本件外国判決については、本件弁済により本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分に係る債権が本件弁済の額の限度で消滅したものとし、その残額である5万0635.54米国ドル及びこれに対する利息の支払を命じた部分に限り執行判決をすべきであるとして、原判決中、主文第1項及び第2項を破棄し、被上告人らの請求を認容した第1審判決は正当であり、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.08
損害賠償請求事件
LEX/DB25571503/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第290号 等
屋外の建設現場における石綿(アスベスト)含有建材の切断、設置等の作業に屋根工として従事し、石綿粉じんにばく露したことにより、中皮腫にり患したと主張するAの承継人である被上告人らが、〔1〕上告人国に対し,建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために上告人国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、〔2〕上告人株式会社ケイミュー及び同株式会社クボタ(上告人建材メーカーら)に対し、上告人建材メーカーらが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことによりAが中皮腫にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、上告人建材メーカーらが、平成14年1月1日から平成15年12月31日までの期間に、屋外の建設作業従事者に対し、上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、被上告人らの上告人建材メーカーらに対する請求は理由がなく、被上告人らの上告人クボタに対する請求を棄却した第1審判決は正当であるとして、原判決中、被上告人らの上告人ケイミュー及び同国に対する請求に関する部分を主文第1項のとおり変更し、被上告人らの上告人クボタに対する請求につき、同上告人敗訴部分を破棄し、同部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.08
保有個人情報不開示決定処分取消請求控訴事件
LEX/DB25569195/大阪高等裁判所 令和 3年 4月 8日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第133号
大阪刑務所収容中の控訴人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律13条に基づき、処分行政庁に対し、控訴人の診療情報(本件情報)の開示を請求したところ、処分行政庁から、本件情報は同法45条1項により開示請求の規定の適用が除外されている情報に該当するとして、その全部を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから、本件決定は同項の解釈を誤ったものであるなどと主張して、本件決定の取消しを求め、原判決は控訴人の請求を棄却したので、控訴人が、不服であるとして、控訴した事案において、刑事施設において保有する診療情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項による開示請求の対象となるから、刑事施設の被収容者(又は被収容者であった者)からその開示請求がされた場合、当該診療情報の全部又は一部に同法14条所定の不開示情報があるかを検討した上でその開示の可否が検討されなければならないとし、本件情報が開示請求の対象外であることを理由としてされた本件決定は、同法45条1項の解釈適用を誤った違法があり、これを適法として控訴人の請求を棄却した原判決を取消し、控訴人の請求を認容した事例。
2021.06.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571501/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第491号 等
〔1〕原告X1が、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために被告国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、〔2〕原告X2らが、被告積水化学工業に対し、被告積水化学工業が石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより、屋外の建設現場における石綿含有建材の切断、設置等の作業に従事していたBが肺がんにり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、原判決中、原告X1の被告国に対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻しを命じ、また、原判決中、原告X2らの被告積水化学工業に対する請求のうち、被告積水化学工業敗訴部分を破棄し、同部分につき、原告X2らの控訴を棄却した事例。