注目の判例

刑法

2023.12.26
軽犯罪法違反被告事件 
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和6年2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25596259/大阪高等裁判所 令和 5年 8月 1日 判決 (控訴審)/令和5年(う)第146号
大阪市内の路上で、自転車に乗って交差点の横断歩道で、赤信号を無視して横断したところを、警察官から現認され、職務質問を受け、路上に停止したパトカー内で、所持品検査を受けた際、肩に掛けていたかばんの、チャックで閉じている外ポケットの中に、大刃等を折り畳んだ状態の本件十徳ナイフ1本(刃体の長さ約6.8cm)を携帯していたとして、原判決が、軽犯罪法違反の罪で有罪としたため、被告人が控訴した事案で、弁護人の「隠して」に関する法令適用の誤り、事実誤認の主張について、被告人が、自己の意思により同ナイフを隠された状態にして携帯していた以上、軽犯罪法1条2号所定の「隠して」携帯したことに当たり、「隠すことについての積極的な意思」というものが、それ以上の何らかの主観的な要素を必要とするという趣旨であれば、根拠がなく、採用できないとし、「隠して」携帯したとの事実を認定し、同号を適用した原判決に、事実の誤認はなく、法令の適用の誤りもないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.12.19
公職選挙法違反被告事件 
LEX/DB25573164/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月20日 判決 (上告審)/令和5年(あ)第976号 
被告人が、第49回衆議院議員総選挙に際し、選挙運動期間前に35か所にわたって法定外選挙運動用文書を頒布した公職選挙法違反の事案で、第1審判決は、公職選挙法129条にいう「選挙運動」に当たるなどとして、原告を罰金30万円に処したため、被告人が控訴し、原判決は、本件行為のうち本件選挙はがきの宛名書きを含む推薦依頼の部分は、投票を依頼するのと同様の効果を目的として行われた、すなわち得票目的で行われた実質的な投票依頼行為であって、選挙運動に該当し、本件行為は全体として選挙運動に該当するなどとして、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、弁護人らの上告趣意のうち、公職選挙法129条、142条1項の各規定について憲法21条、31条違反をいう点は、公職選挙法の上記各規定が憲法21条、31条に違反しないから、理由がなく、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却した事例。
2023.12.19
傷害被告事件 
LEX/DB25596304/大阪地方裁判所  令和 5年 1月17日 判決 (第一審)/令和3年(わ)第2757号 
被告人が、深夜、ビル5階の飲食店で、被害者(当時32歳)に対し、右手の拳骨でその左目付近を1回殴る暴行を加え、同人に通院加療約2か月間を要する左眼窩底骨折、左眼網膜震盪の傷害を負わせたとして、傷害の罪で懲役1年6月を求刑された事案において、被告人に殴られた旨の被害者証言は採用できず、被告人以外の者の行為によって被害者が傷害を負った可能性が否定できない上、被告人供述も排斥できないから、被告人が、被害者に暴行を加え上記傷害を負わせた犯人であると認めるには合理的な疑いが残るとして、本件公訴事実(訴因変更後)については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人に対し無罪を言渡した事例。
2023.12.12
各監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25596133/松江地方裁判所 令和 5年 9月27日 判決 (第一審)/令和5年(わ)第32号 等
(第1)被告人両名は、共謀のうえ、被告人Aの長女であるBが18歳に満たない児童であることを知りながら、29回にわたり、Bにその乳房又は陰部を露出した姿態をとらせ、被告人Aが、これらを撮影したうえ、各静止画データ合計29点をそれぞれ保存し、もって児童ポルノを製造し、(第2)被告人Aは、Bを現に監護する者、被告人aは、被告人Aの交際相手であるが、被告人両名は、共謀のうえ、Bが18歳未満の者であることを知りながら、被告人aがBと性交をすることを企て、被告人A方において、同人がBを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、被告人aがBと性交をし、(第3)被告人aは、前記被告人A方において、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態の静止画データ66点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台を所持したとして、被告人両名が、各監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の罪で、被告人aにつき懲役9年、被告人Aにつき懲役6年を求刑された事案で、Bが被った身体的、精神的苦痛は多大であり、本件事案の性質上、被告人Aの精神障害等について、情状面で考慮するほどの各犯行への影響はなかったと認められるところ、被告人aの刑事責任は重大であり、被告人Aの刑事責任は、被告人aほどではないが相応に重いとしたうえで、被告人両名にはさしたる前科がないこと、被告人aについて、Bに対し300万円の被害弁償を行い、反省の言葉を述べていること、母親が更正に協力する旨証言していること、被告人Aについて、Bが重い処罰を求めているとまではいえないこと、反省の言葉を述べ、更生環境の整備に着手しつつあること等の各被告人に有利な事情があるが、被告人両名のいずれについても酌量減軽をすることは相当ではないとして、被告人aを懲役6年に、被告人Aを懲役5年に処した事例。
2023.11.28
監禁、恐喝未遂被告事件 
LEX/DB25506585/大阪高等裁判所 令和 5年 8月25日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第446号
被告人が、〔1〕令和3年7月28日午前9時31分頃から30分弱にわたり、b(当時18歳)を兵庫県姫路市内の路上に駐車中の自動車(c車両)のトランク内に閉じ込め、あるいは、トランクから外に出たbを同車両のボンネット上に乗せた状態でcをして同車両を発進、走行させるなどして、bを同車両内から脱出することを不能にして、不法に監禁し、〔2〕〔1〕の犯行によりbが被告人を畏怖しているのに乗じ、bがc車両のボンネット上に乗った際に、同車両に傷がついたことに因縁をつけてbから現金を喝取しようと考え、同日午前10時46分頃から同日午後1時14分頃までの間に、走行中のc車両内において、bに対し、「3日以内に修理するんやったら、俺のところで修理したるから、今日中に17万円用意しろ。」などと申し向けて現金の交付を要求したが、同人が知人に相談するなどしたため、その目的を遂げなかったとして、原判決は、具体的な恐喝文言を一部変更するなどしつつも、各公訴事実とおおむね同旨の原判示第1及び第2の各事実を認定し、被告人を有罪とした上、被告人を懲役1年10月の実刑に処したたため、被告人の弁護人が事実誤認、量刑不当及び法令適用の誤りの主張して控訴した事案で、本件各公訴事実に沿うb及びcの各証言は少なくとも信用性に疑問が残る上、これら証言以外に本件各公訴事実を認めるに足る証拠はない一方、本件各公訴事実を争う被告人供述の信用性は排斥することができず、本件については、犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法336条により被告人に対し、無罪を言渡した事例。
2023.11.21
宅地建物取引業法違反被告事件 
LEX/DB25573110/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月16日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第1752号
検察官は、第1審において、「被告人は、免許を受けないで、」とあるのを、「被告人は、株式会社Aの代表取締役であるが、同会社の業務に関し、免許を受けないで、」に改める旨の訴因変更を請求し、第1審裁判所はこれを許可して変更後の訴因に係る事実を認定したもので、変更前と変更後の両訴因は、被告人が、個人として宅地建物取引業を営んだのか、法人の業務に関し法人の代表者としてこれを営んだのかに違いはあるが、被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する行為を内容とするものである点で事実が共通しており、両立しない関係にあるものであって、基本的事実関係において同一であるとして、両訴因の間に公訴事実の同一性を認めて訴因変更を許可した第1審の訴訟手続に法令違反はなく、第1審判決を維持した原判決は正当であるとし、本件上告を棄却した事例。
2023.11.14
窃盗被告事件 
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LEX/DB25596115/東京高等裁判所 令和 4年12月13日 判決 (差戻控訴審)/令和3年(う)第1581号
被告人が、スーパーマーケットで、店長管理の大葉2束等10点(販売価格合計1614円)を窃取したとして起訴され、原判決は、被告人が、本件犯行時、心神耗弱の状態にあったと認めるのが相当であると判断した上で、被告人を懲役4月に処したため、検察官が控訴し、心神耗弱を認定した原判決の判断には事実誤認がある旨を主張したことに対し、控訴審判決は、被告人が、本件犯行時、窃盗症にり患していたとしても、犯行状況からは自己の行動を相当程度制御する能力を保持していたといえるのであり、行動制御能力が著しく減退してはいなかったといえるから、被告人は完全責任能力を有していたと認められ、被告人は重症の窃盗症により心神耗弱の状態にあったとした原判決の認定は論理則、経験則等に照らして不合理であるとして、事実誤認を理由に原判決を破棄し、完全責任能力を認めた上で、被告人を懲役10月に処したため、弁護人が上告した。上告審判決は、弁護人の上告趣意はいずれも刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとした上で、職権判断により、控訴審判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した。その後の差戻控訴審判決の事案で、被告人は、本件犯行時に重症の窃盗症の影響により、行動制御能力は著しく減退していた合理的疑いが残るとして、心神耗弱の状態にあったと認定した原判決の判断は、論理則、経験則等に照らして不合理であって、事実誤認があるといわざるを得ず、この誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとし、検察官の論旨には理由があり、原判決を破棄し、本件犯行の背景には、被告人が、当時、重症の窃盗症にり患し、窃盗の衝動性は強かったものと認められることを十分考慮しても、被告人の刑事責任は決して軽視することはできない一方で、被告人は、以前から、家族の協力を得ながら窃盗症の専門的治療を受けるなどしており、最終的には本件犯行に至ったものの、被告人なりに再犯防止に努めてきたこと、被告人が現行犯逮捕されたためとはいえ、被害品が全て被害店に還付されていること、本件犯行は確定裁判前の余罪に当たることなど、被告人のために酌むべき事情も認められるとして、被告人に対し、懲役8月に処するのが相当であると判断した事例。
2023.11.07
ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25596007/東京高等裁判所 令和 5年 9月20日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第1538号
被告人が、Aに対する恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的で、Aから拒まれたにもかかわらず、令和3年7月4日頃から同月29日頃までの間、11回にわたり、A方宛てに、愛しているなどと記載されたはがき合計11通を発送し、同月5日頃から同月30日頃までの間、これらをA方に到達させ、その頃、これらをAに閲覧させ、連続して文書を送付し、もってAに対し、つきまとい等を反復して行い、ストーカー行為をしたとして、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪で起訴され、原審が犯罪の事実を認定したところ、被告人が控訴した事案で、原判決の「罪となるべき事実」においては、はがき合計11通の各送付行為について、1つの「連続して」行った行為であると認定したのか、各行為間の日数の多寡等を踏まえて、複数の「連続して」行った行為であると認定したのかが判然とせず、仮に前者であれば、「ストーカー行為」の判断に必要な複数の「つきまとい等」、すなわち、構成要件に該当する事実を認定していないことになるし、後者であるとしても、個々の「つきまとい等」の内容を明確に区別して示しておらず、「罪となるべき事実」の認定として不十分であるところ、原判決は、「罪となるべき事実」において、「反復して」行うことが必要な複数の「つきまとい等」の個々の内容を明示していないといわざるを得ず、「ストーカー行為」に該当する具体的事実の記載を欠いており、この点において、原判決には理由不備の違法があるとして、原判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2023.11.07
殺人、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、逮捕監禁被告事件(遺体なき殺人事件) 
LEX/DB25573085/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 7月 3日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第855号
被告人が、いずれも共犯者の指示を受け、約2年の間に、殺人2件、逮捕監禁致死・生命身体加害略取1件、逮捕監禁2件の各犯罪を、時に並行しながら、連続的に犯したとする、殺人、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、逮捕監禁の罪で起訴され、第1審判決は、被告人に死刑を言い渡したため、被告人が控訴し、原判決も控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、被告人は、首謀者である共犯者の犯行計画に沿った準備や他の共犯者への指示等を中心となって行い、また、各殺人の実行行為やA及びCの遺体の焼却処分は専ら被告人が担ったものであるとし、本件各犯行を立案し、被告人らに実行させた首謀者は別の共犯者であることを踏まえても、被告人は、首謀者の共犯者の指示の下で動く実行役の中では中核的な存在で、その果たした役割は重要かつ不可欠なものであり、被告人の刑事責任は極めて重大であるとして、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.31
住居侵入、殺人、死体遺棄被告事件 
LEX/DB25573097/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月11日 決定 (第二次上告審)/令和4年(あ)第655号
被告人が、A及びBを殺害する目的で、両名方に侵入し、A及びBをいずれも頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した上、両名の死体を遺棄したとして起訴され、第1次第1審判決は、被告人が各殺人及び死体遺棄の犯人であると認定する一方、侵入時にはAを殺害する目的を有していたにとどまり、Bを殺害する目的もあったとは認められないとした上で、被告人を懲役23年に処したため、検察官及び被告人の双方が控訴し、検察官はB殺害の計画性等に関する事実誤認及び量刑不当を、被告人は訴訟手続の法令違反及び被告人の犯人性に関する事実誤認をそれぞれ主張したところ、第1次控訴審判決は、検察官の事実誤認の控訴趣意並びに被告人の訴訟手続の法令違反及び事実誤認の控訴趣意をいずれも排斥した上で,第1次第1審判決は、不適切な量刑資料を用いたため、量刑傾向の把握を誤り、その結果、不合理な量刑判断をしたものであって、検察官の量刑不当の控訴趣意はこの限度で理由があるとして、同判決を破棄し、事件を第1審裁判所に差戻しを命じたため、被告人が上告の申立てをしたが上告棄却の決定がされた。差戻後の第2次第1審判決は、第1次控訴審判決の拘束力が、量刑に関する消極的否定的判断に加えて、少なくとも犯人性に関する判断に及んでいるとの見解に立って審理を行い、量刑判断の論理的前提となっている各殺人及び死体遺棄の犯人性について第1次控訴審判決の拘束力が及んでいるから、これに抵触する判断は許されないと判示した上で、被告人が、Aを殺害する目的で、A及びB方に侵入し、、A及びBをいずれも頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した上、両名の死体を遺棄したとの事実を認定し、被告人を無期懲役に処した。これに対し、被告人が控訴し、法令適用の誤り、訴訟手続の法令違反、量刑不当を主張し、原判決(第2次第一審判決)は、第1次控訴審判決の拘束力について、同判決は、第1次第1審判決の量刑判断が不合理であるとしてこれを破棄しているところ、被告人が各殺人及び死体遺棄の犯人であるなどとした第1次第1審判決に事実誤認がないという判断部分についても、上記破棄の判断の論理的な前提となっている以上、当然に拘束力を有するものと解され、第2次第1審判決の判断に不相当なところはないなどと判示して、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、第1審判決について、被告人の犯人性を認定した点に事実誤認はないと判断した上で、量刑不当を理由としてこれを破棄し、事件を第1審裁判所に差し戻した控訴審判決は、第1審判決を破棄すべき理由となった量刑不当の点のみならず、刑の量定の前提として被告人の犯人性を認定した同判決に事実誤認はないとした点においても、その事件について下級審の裁判所を拘束するとし、同旨の原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.10
わいせつ電磁的記録等送信頒布被告事件  
LEX/DB25573074/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月26日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第1407号 
刑法175条1項の規定が、憲法21条1項に違反するものでないことは、当裁判所の累次の判例(最高裁昭和28年(あ)第1713号同32年3月13日大法廷判決・刑集11巻3号997頁、最高裁昭和39年(あ)第305号同44年10月15日大法廷判決・刑集23巻10号1239頁等参照)により極めて明らかであり、刑法175条1項にいう「わいせつ」の概念は、所論のように不明確であるとはいえないから、いずれも前提を欠き、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.03
傷害致死、傷害、証拠隠滅教唆被告事件  
LEX/DB25573051/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月13日 決定 (上告審)/令和5年(あ)第134号 
犯人が他人を教唆して自己の刑事事件に関する証拠を隠滅させたときは、刑法104条の証拠隠滅罪の教唆犯が成立すると解するのが相当であり、被告人について同罪の教唆犯の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当であるとした事例(反対意見がある)。
2023.09.26
入院決定に対する抗告申立事件  
LEX/DB25595824/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 5年 8月 8日 決定 (抗告審)/令和5年(医ほ)第2号 
対象者が、道路で普通乗用自動車を運転中、大麻使用による幻覚、妄想から、普通自動二輪車の運転手は悪魔であると思い込み、そのまま進めば同車に衝突することを認識したうえで自車前部を上記二輪車後部に衝突させ、同車もろとも上記運転手を路上に転倒させて、同運転手に全治約3か月を要する見込みの傷害を負わせたことについて、原審が、本件行為は刑法204条に規定する傷害の行為に当たる旨判断し、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に基づき、本件対象者に対し入院決定をしたところ、これに対し抗告がされた事案で、原決定が最高裁決定(最高裁平成20年(医へ)第1号同年6月18日第三小法廷決定・刑集62巻6号1812頁)の示した判断手法を採用した点に誤りはなく、さらに、その判断方法に則り、本件対象行為が傷害行為に当たるとした原決定の認定、判断にも、論理則、経験則等に照らして不合理なところはないとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.09.19
脅迫、強要未遂被告事件  
LEX/DB25573036/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月11日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第125号 
C労働組合D支部執行委員である被告人A及び同組合員である被告人Bは、E社取締役のF(当時58歳)を脅迫して、同社が日雇運転手であるD支部組合員のGを雇用している旨の就労証明書を同社に作成・交付させようなどと考え、共謀の上、京都府木津川市所在のE社の事務所において、Fが高血圧緊急症によって体調不良を呈した後もなお、そのような状態のFに対し、同社がGを雇用している旨の就労証明書を作成等することを執ように求め、さらに、D支部執行委員であるHと共謀の上、4回にわたって事務所に押し掛け、Fに対し、同社がGを雇用している旨の就労証明書を作成等することを執ように求めた上、事務所周辺にD支部組合員をたむろさせて同社従業員らの動静を監視させ、被告人A及びHが事務所に押し掛け、Fに対し、被告人Aが怒号しながら、Fに示していた就労証明書の用紙を机にたたき付け、Hが怒号して、Gを雇用している旨の就労証明書の作成等を要求し、もしこの要求に応じなければ、F及びその親族の身体、自由、財産等に危害を加えかねない旨の気勢を示して怖がらせ、もってFをして義務のないことを行わせようとしたが、Fがその要求に応じなかったため、その目的を遂げなかったとした事件で、第1審判決は、被告人両名について強要未遂罪の共同正犯を認定し、被告人Aを懲役1年、3年間執行猶予に、被告人Bを懲役8月、3年間執行猶予にそれぞれ処したため、被告人両名が控訴し、原判決は、第1審判決が、強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したとして、被告人両名について第1審判決を破棄し、HがFに対して怒号したことに関し、被告人Aについて脅迫罪の共同正犯を認定し、被告人Aを罰金30万円に処し、被告人Bに対して無罪を言い渡したため、検察官及び被告人Aが上告した事案で、第1審判決が強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したと説示しつつ、第1審判決が前提とする事実のうち、就労証明書を作成等すべき義務の有無について事実の誤認を指摘しただけで、強要罪の成立を基礎付けるその余の事実関係について、その認定の不合理性を検討しないまま、強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできず、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した事例。
2023.09.12
殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、現住建造物等放火被告事件  
LEX/DB25573010/東京地方裁判所立川支部 令和 5年 7月31日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第244号 
自暴自棄になって自殺を決意した被告人が、確実に死ぬためには少なくとも二人以上殺害して死刑になるしかないと考え、不特定多数の者を殺害する目的でナイフや燃料を購入し、ナイフの刺突力を確認したり、燃焼実験を行ったりして周到に準備をした上で行った、殺人未遂、銃刀法違反の事案(判示第1、2)及び、殺人未遂、現住建造物等放火の事案(判示第3)の罪で、懲役25年、ナイフ1本(刃体の長さ約29.6cm)の没収を求刑された事案において、被害者DないしMについては、殺人未遂罪が成立することが認定できるものの、被害者B及びCについては、死亡結果が発生する具体的な危険性のある場所である特急電車両内で、被告人がライター用オイルを撒くなどした後、ジッポーライターを点火した時点で、5号車の優先座席前のおもいやりゾーン付近及び5号車と6号車の連結部分にいたことが証拠上明らかでないから、殺人未遂罪は成立しないと認定したうえで、被告人の刑事責任は極めて重大であり、社会的な影響の大きさも併せて考えると、単独で行われた通り魔無差別的な殺人未遂事件という同種事案の中でも特に重い部類に属する事案で、懲役23年に処し、ナイフ1本を没収した事例(裁判員裁判)。
2023.07.04
窃盗未遂被告事件
LEX/DB25572908/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 6月20日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第680号
被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、市役所職員及び金融機関職員になりすましてキャッシュカードを窃取しようと考え、氏名不詳者らが、被害者方に電話をかけ、被害者(当時76歳)に対し、過払金を還付する金融機関口座のキャッシュカードが古く、使えないようにする必要があるので、同キャッシュカードを回収しに行く旨のうそを言い、さらに、金融機関職員になりすました被告人が、被害者名義等のキャッシュカード在中の封筒をすり替えて窃取するためのトランプカード在中の封筒を携帯し、同人方付近路上まで赴いたが、氏名不詳者らと通話中の被害者が不審に思って電話を切るなどしたため、その目的を遂げなかった窃盗未遂の事件で、第1審判決は、「被告事件が罪とならないとき」に当たるとして、刑事訴訟法336条により、被告人に対して無罪を言い渡したため、検察官が控訴し、原判決は、第1審判決に事実誤認はないが、窃盗未遂罪の成立を否定した点において刑法43条本文の解釈適用を誤った違法があるとして、法令適用の誤りにより第1審判決を破棄し、自らは何ら事実の取調べをすることなく、本件公訴事実と同旨の犯罪事実を認定して、被告人を懲役3年、4年間執行猶予に処したため、被告人が上告した事案で、本件公訴事実記載の事実の存在については、第1審判決によって認定されており、原審において第1審の無罪判決を破棄して有罪判決をしたことは、第1審判決の法令の解釈適用の誤りを是正したにとどまるものというべきであるから、原審が事実の取調べをすることなく、訴訟記録及び第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって、直ちに本件公訴事実と同旨の犯罪事実を認定して自ら有罪の判決をしたことは、刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとして、本件上告を棄却した事例。
2023.06.20
弁護人選任権侵害等国家賠償請求事件 
LEX/DB25595142/前橋地方裁判所 令和 5年 3月24日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第259号
脅迫罪の被疑事実で逮捕され、弁解録取手続し、罰金5万円の略式命令を受けた後、原告が正式裁判の請求をし、本件請求1は、〔1〕被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である警察官が、原告の逮捕の際の弁解録取手続において、原告の弁護人選任権を阻害する言動をしたこと、〔2〕被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である留置担当の警察官が、原告の逮捕中、原告が弁護人選任の申出をしたにもかかわらず、弁護士に対してその申出があったことの通知を怠ったこと及び〔3〕被告国の公権力の行使に当たる公務員である副検事が、原告の勾留請求前の弁解録取手続の際に、原告が弁護人選任の申出をしたにもかかわらず、弁護士に対してその申出があったことの通知を怠ったことにつき、被告らに対し、精神的損害と弁護士費用等の連帯支払を求め、本件請求2は、被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である警察官が、原告の逮捕中、原告の真意に基づく承諾や捜査の必要性がなかったにもかかわらず、本件採尿及び本件DNA型資料採取を行ったことにつき、被告群馬県に対し、精神的損害と弁護士費用等の支払を求め、本件請求3は、被告国の公権力の行使に当たる公務員である副検事が、原告が正式裁判の請求をして原告刑事被告事件の審理期間中、原告に対し、同請求を取り下げるように強要し又はこれを迫り、あるいは原告において同請求を取り下げるように要求をされたと受け取るような行為につき、被告国に対し、精神的損害と弁護士費用等の支払を求めた事案で、本件請求1は、被告国の副検事による勾留請求前の弁解録取手続における原告の弁護人選任権に係る行為について国家賠償法上違法な点があるとは認められないとして、棄却し、本件請求2は、被告群馬県の警察官らによる本件DNA型資料採取は、警察官らが負っている職務上の注意義務に違反するものとして、国家賠償法上違法なものであり、また、担当した警察官らに過失があることも明らかであり、被告群馬県には、当該行為によって原告が被った損害賠償責任があるとして、一部認容し、本件請求3は、副検事の原告に対する各発言は、その内容やこれらが複数回にわたって行われたことに加え、各発言がされた時の状況や原告と副検事との関係性などに照らせば、原告の裁判を受ける権利を侵害するものというべきであるから、副検事の当該行為は、職務上の注意義務に違反するものとして、国家賠償法上違法なもので、副検事に過失があることも明らかであり、被告国には、原告が被った損害賠償責任があるとして、一部認容した事例。
2023.06.13
(プレサンス事件付審判請求) 
LEX/DB25595157/大阪地方裁判所 令和 5年 3月31日 決定 (第一審)/令和4年(つ)第14号
請求人が大阪地方検察庁検事の職にあった被請求人Bを特別公務員暴行陵虐罪で同庁に告発したところ、同庁検察官が、被請求人を不起訴処分にしたが、その処分に不服があるから、事件を大阪地方裁判所の審判に付することを求めた事案において、威迫を上回る脅迫について特別公務員暴行陵虐罪の実行行為から除かれた立法経緯、被請求人の身上関係やこれまでに前科等がないことなども総合すると、被請求人を不起訴処分とするのが相当であり、嫌疑不十分を理由に検察官が行った不起訴処分は結論において正当であるとして、本件請求を棄却した事例(なお、本件においては刑事処分として不起訴処分が相当であると判断したというにとどまり、被請求人の行為を許容したわけではないことを付言した。)。
2023.05.23
保護責任者遺棄致死、詐欺、窃盗被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和5年6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572757/福岡高等裁判所 令和 5年 3月 9日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第284号
Aのママ友であった被告人がAに対し虚言を重ねて現金や預金通帳を交付させ、その預金通帳を使ってATMから現金を引き出すという経過の中で、A及びその子供3人の生活全般を実質的に支配していた被告人が、Aと共謀の上、被告人を信じ切っていたAにおいてAの三男である被害者に十分な食事を与えず、被害者を飢餓死させた保護責任者遺棄致死の事案の控訴審において、原判決は、A証言の信用性判断に当たり、その証言の核心部分が被告人とAとの間のSNSのやり取り等やAの多額の収入とそれに反する生活困窮状態といった客観的な証拠等によって裏付けられていると説示しているが、当裁判所においても、A証言の信用性を認め、原判示の事実を認定した原判決の認定・説示には、論理則、経験則等に照らして不合理な点はないと判断するとして、原判決には判決に影響を及ぼす重大な事実誤認があるとの弁護人の主張を斥けるなどして、本件控訴を棄却した事例。
2023.05.02
各威力業務妨害、強要未遂被告事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25594774/大阪高等裁判所 令和 5年 3月 6日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第469号
被告人P1はA支部の書記次長、被告人P2及び被告人P4はいずれも執行委員、P5は組合員であるが、被告人3名及びP5は、他のA支部組合員らと共謀の上、大阪市α区所在のA支部事務所周辺に和歌山県内から元暴力団員らが来ていたことから、B協の実質的運営者であるP6を脅迫するなどして、P6が元暴力団員らを差し向けたなどと認めさせて謝罪させようと考え、B協の業務を妨害することをいとわず、和歌山県海南市所在のB協事務所前において、P6らに対し、本件各発言を言うとともに、他の組合員らが、B協事務所周辺に集結し、P6を誹謗中傷する演説を大音量で繰り返し、元暴力団員をA支部事務所に差し向けた旨認めて謝罪するよう要求して、P6らにその対応を余儀なくさせて約4時間30分間にわたりB協の業務の遂行を不能にするとともに(威力業務妨害)、前記要求に応じなければP6の身体、自由、名誉等に対し危害を加える旨告知してP6を脅迫し、P6に義務のないことを行わせようとしたが、P6がこれに応じなかったためその目的を遂げなかった(強要未遂)として起訴され、原判決は、被告人らに威力業務妨害罪及び強要未遂罪が成立するとして、被告人P1を懲役1年4月・執行猶予3年に、被告人P2を懲役10月・執行猶予3年に、被告人P4を懲役1年・執行猶予3年にそれぞれ処したため、これに不服の被告人3名が控訴した事案で、被告人らの行為の強要未遂罪及び威力業務妨害罪の各構成要件該当性の判断、さらには、正当行為に当たるか否かという判断において、原判決は、事実の認定やその評価を誤ったものであり、各構成要件の該当性に疑問が残るとともに、被告人らの行為が労働組合法1条2項、刑法35条の正当行為となることも否定できない以上、上記事実誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人らの行為は、正当行為として罪とならないから、刑事訴訟法336条により被告人らに対し無罪の言渡しをした事例。