注目の判例

刑法

2021.02.16
わいせつ電磁的記録記録媒体陳列、公然わいせつ被告事件
LEX/DB25571273/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 2月 1日 決定 (上告審)/平成30年(あ)第1381号
インターネットのサイトに投稿されたわいせつ画像データを、サーバに記憶、蔵置させて視聴者が閲覧可能な状態を設定し、又は、映像配信システムを利用して視聴者に配信して閲覧させたとして、同サイトの管理者らに投稿者との共謀によるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪や公然わいせつ罪が成立するか否かが争われた事案の上告審において、電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し、同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に、国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことは許されると解すべきであるとした上で、被告人両名について、サイト会社代表者及び本件各投稿者らとの共謀を認め、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪の各共同正犯が成立するとした原判断は正当であるとし、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2021.02.09
殺人,殺人未遂,傷害被告事件
LEX/DB25571265/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 1月29日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第96号
被告人は、傷害罪のほか、Aに対する殺人罪、B、C、D及びEに対する各殺人未遂罪で起訴され、被告人は、上記5名に対する殺意を争い、第1審判決は,各殺意を認定し、上記各罪により被告人を懲役24年に処したため、これに不服の被告人が控訴し、控訴審判決は、事故の相手方であるB及びEに対する殺意を認めた第1審判決には事実誤認があるとして第1審判決を破棄し、本件を地裁に差戻しを命じたことにより、検察官側、被告人側の双方が上告した事案で、被告人が、A及びDに対し、ひそかに睡眠導入剤を摂取させて自動車を運転するよう仕向けたことにより、同人らが走行中に仮睡状態等に陥って自車を対向車線に進出させて対向車に衝突させ、対向車の運転者であるB及びEに傷害を負わせたという殺人未遂被告事件について、B及びEに対する殺意を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、第1審判決について、論理則、経験則等に照らして不合理な点があることを十分に示したものとは評価することができず、第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があり、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められ、検察官の上告趣意第5は、第1審判決に事実誤認があるとした原判断を前提とするものであるから、この点について判断するまでもなく、刑事訴訟法411条1号により原判決を破棄することとし、Aに対する殺人罪並びにB、C、D及びEに対する各殺人未遂罪の成立を認めた第1審判決の判断は是認することができ、また、訴訟記録に基づいて検討すると、本件各犯行時における被告人の完全責任能力を肯定し、懲役24年に処した判断を含め、第1審判決を維持するのが相当であり、被告人の控訴を棄却した事例。
2020.12.22
殺人,窃盗,住居侵入,会社法違反被告事件
LEX/DB25571193/最高裁判所第一小法廷 令和 2年12月 7日 決定 (上告審)/令和1年(あ)第1843号
被告人は、自宅で、被害者をその嘱託を受けることなく殺害した後、この事実が捜査機関に発覚する前に、嘱託を受けて被害者を殺害した旨の虚偽の事実を記載したメモを遺体のそばに置いた状態で、自宅の外から警察署に電話をかけ、自宅に遺体があり、そのそばにあるメモを見れば経緯が分かる旨伝えるとともに、自宅の住所を告げ、その後、警察署で、司法警察員に対し、嘱託を受けて被害者を殺害した旨の虚偽の供述をしたことが認められ、被告人は、嘱託を受けた事実がないのに、嘱託を受けて被害者を殺害したと事実を偽って申告しており、自己の犯罪事実を申告したものということはできず、刑法42条1項の自首は成立しないと判示し、これと同旨の第1審判決を是認した原判決は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2020.12.15
道路交通法違反、電子計算機使用詐欺被告事件
LEX/DB25567115/名古屋高等裁判所 令和 2年11月 5日 判決 (控訴審)/令和2年(う)第141号
2件の無免許運転(道路交通法違反)と自動改札機を介したキセル乗車1件(電子計算機使用詐欺)の事件につき、原判決は、無免許運転2件については有罪としたが、キセル乗車については構成要件該当性がないから無罪とし、被告人を懲役1年2月、3年間執行猶予に処したため、無免許運転2件については、被告人が控訴し、キセル乗車1件については、検察官が控訴した事案において、弁護人の控訴は理由がないとし、検察官の控訴については、原判決が、本件自動改札機が旅客の入場情報それ自体を事務処理の対象としていないことを前提にして、自動改札機による事務処理システムが予定している事務処理の目的を実質的に検討することなく限定的に解するという誤りを犯し、その結果、被告人の行為が、虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供したと認められるにもかかわらず、これを否定するという誤認に至ったものであり、判決に影響を及ぼすことは明らかであるとし、原判決を破棄したうえで、被告人は、利欲的動機からキセル乗車に及んだと推察され酌むべきものはなく、また、平成28年9月及び平成29年4月に無免許運転によりいずれも罰金刑に処せられたのに、その後2回も無免許運転に及んだものであり、無免許運転の常習性及び交通規範意識の薄さは顕著であるとして、被告人に懲役2年に処し、執行猶予4年を言い渡した事例。
2020.10.13
建造物侵入,埼玉県迷惑行為防止条例違反被告事件
LEX/DB25571088/最高裁判所第一小法廷 令和 2年10月 1日 判決 (上告審)/平成30年(あ)第845号
被告人が、共犯者と共謀の上、盗撮用の小型カメラを設置する目的で、パチンコ店の女子トイレ内に、共犯者において侵入した上、用便中の女性の姿態を同所に設置した小型カメラで撮影し、公共の場所において、人を著しく羞恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような卑わいな行為をしたとする事案の上告審で、数罪が科刑上一罪の関係にある場合において、各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり、軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときは、刑法54条1項の規定の趣旨等に鑑み、罰金刑の多額は軽い罪のそれによるべきものと解するのが相当であるとし、原判決及びこれと同趣旨の第1審判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため本件を第1審裁判所に差し戻すこととした事例。
2020.10.13
傷害、強盗、窃盗被告事件
LEX/DB25571089/最高裁判所第二小法廷 令和 2年 9月30日 決定 (上告審)/令和1年(あ)第1751号
A及びBは、被害者に対し暴行を加えることを共謀した上、被害者のいるマンションの部屋に突入し、被害者に対し、カッターナイフで右側頭部及び左頬部を切り付け、多数回にわたり、顔面、腹部等を拳で殴り、足で蹴るなどの暴行を加え、被告人は、Aら突入の約5分後、自らも同部屋に踏み込んで、被告人は、被害者がAらから激しい暴行を受けて血まみれになっている状況を目にして、Aらに加勢しようと考え、台所にあった包丁を取出し、その刃先を被害者の顔面に向け、この時点で,被告人は被害者に暴行を加えることについてAらと暗黙のうちに共謀を遂げ、その後、同部屋で、被告人及びAは、脱出を試みて玄関に向かった被害者を2人がかりで取り押さえて引きずり、リビングルームに連れ戻し、こもごも、背部、腹部等を複数回蹴ったり踏み付けたりするなどの暴行を加え、また、Aらは、被害者に対し、顔面を拳で殴り、たばこの火を複数回耳に突っ込み、革靴の底やガラス製灰皿等で頭部を殴り付け、はさみで右手小指を切り付けるなどの暴行を加え、Aが、千枚通しで被害者の左大腿部を複数回刺した結果、被害者は、全治まで約1か月間を要する傷害を負ったとした事案において、被告人が共謀加担した前後にわたる一連の暴行は、同一の機会に行われたものであるところ、被告人は、右第六肋骨骨折の傷害を生じさせ得る危険性のある暴行を加えており、刑法207条の適用により同傷害についての責任を免れないと判示し、原判決には、被告人が同傷害についても責任を負うと判断した点で、同条の解釈適用を誤った法令違反があるといわざるを得ないが、この違法は判決に影響を及ぼすものとはいえないとして、本件上告を棄却した事例。
2020.09.08
殺人被告事件
LEX/DB25571011/最高裁判所第二小法廷 令和 2年 8月24日 決定 (上告審)/平成30年(あ)第728号
被告人は、生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患している幼年の被害者の治療をその両親から依頼され、インスリンを投与しなければ被害者が死亡する現実的な危険性があることを認識しながら、医学的根拠もないのに、自身を信頼して指示に従っている母親に対し、インスリンは毒であり、被告人の指導に従わなければ被害者は助からないなどとして、被害者にインスリンを投与しないよう脅しめいた文言を交えた執ようかつ強度の働きかけを行い、父親に対しても、母親を介して被害者へのインスリンの不投与を指示し、両親をして、被害者へのインスリンの投与をさせず、その結果、被害者が死亡に至ったとした事案の上告審において、被告人は、未必的な殺意をもって、母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ、被告人には殺人罪が成立するとし、これと同旨の第1審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2020.09.08
業務上過失致死被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和2年11月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25566440/東京高等裁判所 令和 2年 7月28日 判決 (控訴審)/平成31年(う)第791号
特別養護老人ホームに准看護師として勤務し、同施設の利用者に対する看護及び介護業務に従事していた被告人が、食堂で、利用者に間食を提供するに当たり、決められた形態と異なる食事を利用者に提供して摂取させれば、利用者に窒息事故等を引き起こすおそれがあるから、各利用者に提供すべき間食の形態を確認した上、これに応じた形態の間食を利用者に配膳して提供し、窒息等の事故を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、ゼリー系の間食を提供するとされていた被害者(当時85歳)に対し、提供すべき間食の形態を確認しないまま、漫然と常菜系の間食であるドーナツを配膳して提供した過失により、同人にドーナツを摂取させ、喉頭ないし気管内異物による窒息に起因する心肺停止状態に陥らせ、病院で、心肺停止に起因する低酸素脳症等により死亡させたとした事案の控訴審において、原判示の過失の成立を認めた原判決の結論は是認することはできず、本件公訴が提起されてから既に5年以上が経過し、現時点では控訴審の段階に至っている上、有罪の判断を下した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして原判決を破棄し、被告人が、自ら被害者に提供すべき間食の形態を確認した上、これに応じた形態の間食を被害者に配膳して提供する業務上の注意義務があったとはいえないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2020.09.01
各贈賄被告事件
LEX/DB25565997/大阪高等裁判所 令和 2年 6月17日 判決 (控訴審)/平成30年(う)第1000号
a社の常務取締役及び営業部長の被告人両名は、共謀の上、国立大学法人b大学の教授であり、講座専任教授として、同大学と外部機関等との共同研究に関し、同大学の研究代表者として外部機関等と協議し、その受入れの可否を決した上、受け入れた研究を実施するなどの職務に従事していたP3に対し、3回にわたり、a社との共同研究の受入れを決した上、同研究を実施し、その結果について情報を提供してくれたことなど、a社のため有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、a社の経理担当職員を介して、f銀行本店に開設されたa社名義の当座預金口座からf銀行g支店に開設されたP3が管理する株式会社h名義の普通預金口座に、現金合計194万4000円を振込送金し、同人の職務に関して賄賂を供与したとして起訴され、原判決が、被告人両名を有罪としたことに対し、被告人両名が控訴した事案において、原判決には、賄賂ではないものを賄賂と認めた事実の誤認があり、これが被告人両名の関係で、判決に影響を及ぼすことが明らかであるとし、原判決を破棄し、被告人両名に対し無罪を言い渡した事例。
2020.08.18
準強制わいせつ被告事件
LEX/DB25566316/東京高等裁判所 令和 2年 7月13日 判決 (控訴審)/平成31年(う)第624号
非常勤の外科医として勤務する被告人は、執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者A(当時31歳)が同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあることを利用し、同人にわいせつな行為をしようと考え、病室で、ベッド上に横たわる同人に対し、その着衣をめくって左乳房を露出させた上、その左乳首を舐めるなどし、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたというもので、原判決が被告人に無罪を言い渡したため、検察官が控訴した事案において、Aが麻酔からの覚醒時のせん妄状態にあった可能性があるなどとし、その原審証言の信用性に疑義を差し挟む余地が広がり、これと独立した、証明力の強い、Aの原審証言の信用性を補強する証拠が必要であるとした点、本件アミラーゼ鑑定及び本件DNA定量検査について、信用性があるとしても証明力が十分であるとはいえないとした点は、論理則、経験則等に照らして不合理であり、Aの原審証言の信用性や、これを支える証拠の評価を誤ったものであって、是認することができないとし、被告人は、Aに対し、本件公訴事実のとおりのわいせつ行為をしたことが認められるのに、これが認められないとした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、破棄をし、被告人を懲役2年に処した事例。
2020.08.11
有印私文書偽造,同行使,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
LEX/DB25570972/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月30日 判決 (上告審)/平成30年(あ)第1528号
被告人が、別居中の当時の妻が使用する自動車にGPS機器をひそかに取り付け、その後多数回にわたって同車の位置情報を探索して取得した行為は、ストーカー規制法2条1項1号の「通常所在する場所」の付近における「見張り」に該当しないとして、控訴審判決は、上記行為に同号を適用した第1審判決には法令適用の誤りがあるとしたため、検察官が上告した事案において、ストーカー規制法2条1項1号の「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには、機器等を用いる場合であっても、特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものであるとし、「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができるとし、刑訴法410条2項により、引用の判例(福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決)を変更し、原判決を維持するのを相当と認め、所論の判例違反は、結局、原判決破棄の理由にならないとして、本件上告を棄却した事例。
2020.08.11
ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和2年10月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570973/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月30日 判決 (上告審)/平成30年(あ)第1529号
被告人が、被害者が使用している自動車にGPS機能付き電子機器を密かに取り付け、同車の位置を探索して被害者の動静を把握した行為について、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反で、被告人が、共犯者と共謀の上、多数回にわたり、元交際相手が使用している自動車にGPS機器をひそかに取り付け、同車の位置を探索して同人の動静を把握した行為は、ストーカー規制法2条1項1号所定の「見張り」に該当しないのに、これに該当するとした第1審判決には法令適用の誤りがあると控訴審判決が判断したため、検察官が上告した事案において、ストーカー規制法2条1項1号の「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには、機器等を用いる場合であっても、特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものであるとし、「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができるとし、刑訴法410条2項により、引用の判例(福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決)を変更し、本件を第1審裁判所に差戻した原判決を維持し、本件上告を棄却した事例。
2020.08.04
私印偽造・同使用被告事件
LEX/DB25566235/京都地方裁判所 令和 2年 6月25日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第1288号
被告人は、甲野花子宛ての宅配荷物を受領しようと考え、マンションの一室(当時の)被告人方で、行使の目的をもって、宅配会社の配達員が配達した前記甲野宛の宅配荷物の配達票の受領印欄に「甲野」と記入し、他人の署名を偽造した上、配達員に対し、これをあたかも真正に成立したもののように装い提出して使用したものである」という公訴事実につき、被告人及び弁護人は、被告人が「他人の署名を偽造・使用」したとの部分以外の部分はそのとおり間違いないが、上記甲野花子とは被告人自身を指す呼称であるから、被告人が自己の署名を使用したに過ぎず「他人の署名を偽造・使用」したとはいえないから無罪を主張した事案において、被告人が「甲野」と配達票に署名し、本名を用いなかったことにより、社会通念上、作成者と名義人の人格の同一性に齟齬を来たすものとはいえないから、被告人が、刑法167条1項にいう「他人の署名を偽造した」とはいえないとし、また、署名が偽造でない以上、当然これを使用する行為が偽造した署名を使用したということはできないとして、証明された事実が法解釈上犯罪を構成せず、罪とならないときに帰着するから、無罪を言い渡した事例。
2020.07.28
わいせつ電磁的記録等送信頒布、わいせつ電磁的記録記録媒体頒布被告事件
LEX/DB25570954/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 7月16日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第829号
漫画家兼芸術家である被告人が、被告人の作品制作に資金を提供した不特定の者6名に自己の女性器をスキャンした三次元形状データファイル(本件データ)をインターネットを通じて送信して頒布し、被告人が販売する商品を購入した不特定の者3名に本件データが記録されたCD-Rを郵送して頒布した事案の上告審において、本件データがわいせつな電磁的記録に該当し、本件CD-Rがわいせつな電磁的記録に係る記録媒体に該当するとした第1審判決の認定、評価を是認した原判決の判断に誤りがあるとはいえないとし、また、被告人の本件各頒布行為は、正当行為として違法性が阻却されるものではないとして、本件上告を棄却した事例。
2020.07.14
過失運転致傷被告事件
LEX/DB25565713/福岡地方裁判所 令和 2年 5月 7日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第585号
被告人が過失運転致傷の罪で禁錮1年を求刑された事案で、主位的訴因について、被害者車両が本件防犯カメラ映像の見切り地点からほぼ直進して衝突地点で停止したとは合理的な疑いなく証明されているとはいえず、本件事故の原因は被告人が前方をよく見ていなかったからであるとの被告人の捜査段階の供述もそのまま信用することはできないから、そのような事実関係を前提とする主位的訴因の被告人の過失は、その余の点について検討するまでもなく認められず、また、予備的訴因について、仮に被告人が本件道路を進行するにあたり、前方左右を注視し、進路の安全を確認しながら進行していても、被害者車両が本件道路の第一車両通行帯の歩道寄りにいったん停止し、その後急加速して第二車両通行帯に車線変更してくることを予見し、同車両と被告人車両とが衝突地点で衝突することを回避することは困難であり、主位的訴因との関係でも、被告人に、本件事故に関し、予見可能性、結果回避可能性があったというには合理的な疑いが残ることから、主位的訴因、予備的訴因のいずれについても、本件の証拠関係を前提にする限り、各訴因の特定に欠けることはないが、本件では、被告人車両が進行していた車線の左側の車線を進行していた被害者車両が、被告人車両が進行していた車線上にある衝突地点に向けて、急加速して車線変更してきた可能性があり、本件事故に関して被告人に過失があると認めるには合理的な疑いが残り、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるとして、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをした事例。
2020.06.30
道路交通法違反被告事件
LEX/DB25565700/大津簡易裁判所 令和 2年 5月27日 判決 (第一審)/令和2年(ろ)第1号
被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで、大津市内の道路で、原動機付自転車を運転したとした事案において、被告人を罰金20万円に処し、少年法54条により労役場留置の言渡しをしないとした。なお、本件公訴事実中、信号機の表示する赤色の灯火信号を看過し、これに従わないで原動機付自転車を運転して通行したものであるとした公訴事実においては、法定刑が道路交通法119条2項で罰金刑のみが定められているので、当時少年であった被告人に対し、少年法20条により、検察官への送致をすることができない事案であったのに、大津家庭裁判所は、刑事処分相当として大津地方検察庁検察官に送致し、同検察官は公訴を提起して略式命令請求をしたことが認められ、上記の事実については刑事処分として公訴を提起することが許されないものであり、公訴を棄却した事例。
2020.06.23
各損害賠償請求事件
LEX/DB25565690/札幌地方裁判所 令和 2年 3月10日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第1187号 等
原告らが、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波の影響で、被告東電が設置し運営していた福島第一原子力発電所1~4号機において放射性物質が放出される事故が発生したことにより、本件事故当時の居住地(本件事故後出生した者については、その親の居住地)から避難することを余儀なくされ、財産的損害及び精神的損害を被ったなどと主張して、被告東電に対しては民法709条又は原賠法3条1項に基づき、被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償を求めた事案において、被告国は、国家賠償法1条1項により、本件事故によって原告らに生じた損害を賠償する責任を負うとし、また、被告東電は、本件事故による原子力損害について、原賠法上の責任を負うとして、原告らの請求を一部認容した事例。
2020.06.16
過失運転致傷被告事件
LEX/DB25565650/東京高等裁判所 令和 2年 5月 8日 判決 (控訴審)/令和1年(う)第1029号
被告人は、夜間、普通乗用自動車(被告人車両)を運転し、越谷市内の信号機により交通整理の行われている交差点をさいたま市方面からα方面に向かい直進するに当たり、同交差点の対面信号機の信号表示に留意し、これに従って進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、同信号表示に留意せず、同信号機が赤色の灯火信号を表示しているのを看過したまま漫然時速約40キロメートルで進行した過失により、折から左方道路から信号に従い進行してきたV運転の中型貨物自動車(V車両)に気付かず、同車前部に自車左前部を衝突させ、同人に加療約15日間を要する頚椎・腰椎捻挫の傷害を負わせたとして、原判決は、赤色信号看過の過失があったと認定し、有罪判決をしたため、被告人が控訴した事案において、目撃者であるW及びVの各原審証言に依拠して本件信号機の信号表示を認定するだけの信用性を認めることはできず、原審証拠によって、被告人の赤色信号看過の過失を認定するには、合理的な疑いが残るというべきであり、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるとして、原判決を破棄し、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、被告人に対し、無罪を言渡した事例。
2020.05.26
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25565331/佐賀地方裁判所 令和 2年 4月14日 判決 (第一審)/令和1年(わ)第211号
被告人が、法定の除外事由がないのに、令和元年11月2日から同月10日までの間、佐賀県内、福岡県内、山口県内、広島県内、岡山県内、香川県内又はその周辺において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン又はその塩類若干量を自己の身体に摂取し、覚せい剤を使用したとする覚せい剤取締法違反の罪で、懲役4年6月を求刑された事案で、被告人が自らの意思で覚せい剤を使用したことを疑わせる特段の事情がないとはいえず、合理的な疑いが残るというべきであるとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2020.05.19
監護者性交等被告事件
(令和1年7月18日福岡地方裁判所判決(平成30年(わ)第716号)の控訴審)
LEX/DB25565259/福岡高等裁判所 令和 2年 3月11日 判決 (控訴審)/令和1年(う)第282号
被告人は、養女である被害者A(当時14歳)と同居してその寝食の世話をし、その指導・監督をするなどして、同人を現に監護する者であるが、同人が18歳未満の者であることを知りながら、平成30年1月中旬頃から同年2月12日までの間に、被告人方(当時)で、被害者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をしたとして、懲役9年を求刑されたが、原判決は、被告人を無罪としたため、検察官が控訴した事案で、原審は、被害者の原審供述の補充立証として、被害者が母親に被害を告白してから児童相談所へ行って被害の具体的内容を詳細に申告した経緯等について、検察官に立証を促し、必要に応じて職権で証拠調べをし、場合によっては、さらに、性的虐待を受けた児童の供述特性等に関する専門家証人について、検察官に立証を促し、必要に応じて職権で証拠調べをするなど審理を尽くした上で、関係証拠を総合して被害者の原審供述の信用性を吟味すべきであったとして、原判決を破棄し、更に原審において審理を尽くさせ、改めて本件公訴事実の有無を判断させるため、本件を地方裁判所に差し戻した事例。