2023.05.02
排除措置命令取消、課徴金納付命令取消請求控訴事件(マイナミ空港サービス(株)による排除措置命令等取消請求控訴事件)
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LEX/DB25594716/東京高等裁判所 令和 5年 1月25日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第70号
被控訴人(原審被告。公正取引委員会)が、控訴人(原審原告)は、八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して〔1〕自社の取引先需要者に対し、S航空から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨等を通知し、〔2〕S航空から機上渡し給油を受けた自社の取引先需要者からの給油に係る依頼に応じる条件として、S航空の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する事故等が発生した場合でも控訴人に責任の負担を求めない旨等が記載された文書への署名又は抜油を求めることにより、自社の取引先需要者にS航空から機上渡し給油を受けないようにさせており、これが令和元年法律第45号による改正前の独占禁止法2条5項の私的独占に該当し、独占禁止法3条に違反するとして、令和2年7月7日、独占禁止法7条1項に基づき、排除措置を命じるとともに、令和3年2月19日、控訴人に対し、令和元年法律第45号による改正後の独占禁止法7条の9第2項に基づき、課徴金として612万円を国庫に納付することを命じたのに対して、控訴人が、被控訴人に対し、上記排除措置命令及び上記課徴金納付命令の各取消しを求め、原判決は、上記〔1〕及び〔2〕の行為は、独占禁止法2条5項の「私的独占」に当たり、同法3条の規定に違反すると判断し、控訴人が主張するその余の取消事由の存在も認められないとして、控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決をしたため、控訴人が原判決を不服として控訴した事案で、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.04.25
傷害被告事件
LEX/DB25594344/福岡高等裁判所 令和 5年 1月25日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第277号
被告人は、Aと数年来同棲していたものであるが、令和4年4月25日夜、同人と2軒で飲酒するなどして共にタクシーを降りた同日午後11時頃から、自ら119番通報した同日午後11時30分頃までの間に、当時の居住先である北九州市内のA方において、A(当時40歳)から馬乗りになられて首を絞められたりする暴行を加えられたのに伴い、自己の身体を防衛するため、防衛の程度を超え、Aに対し、手に持ったペティナイフ(刃体の長さ約11.8cm)で、その左腹部を1回、背部を3回刺す暴行を加え、よって、同人に加療約43日間を要する左腹部刺創、背部刺創、鋭的肝損傷、左外傷性血気胸、第12肋骨骨折及び肋間動脈損傷の傷害を負わせたとして、原審は、被告人の過剰防衛の成立を認め、被告人に対し、懲役1年6月、3年間の刑の執行を猶予を言い渡したため、これに不服の被告人が控訴した事案で、被告人による暴行が、防衛の程度を超えた行為であると認めた原判決の認定、判断は、被告人の原審公判供述の信用性評価を誤り、ひいては防衛行為の相当性の判断を誤ったもので、論理則、経験則等に照らし不合理なものであり、正当防衛を否定した原判決には、事実誤認があると判断し、被告人の行為は、Aによる急迫不正の侵害に対する防衛行為として必要かつ相当なものであり、正当防衛が成立し、よって、本件公訴事実は、犯罪の証明がないから、刑事訴訟法336条により被告人に対し、無罪の言渡しをした事例。
2023.04.11
死体遺棄被告事件
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LEX/DB25572744/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第196号
被告人は、当時の被告人方において、被告人が出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室の棚上に放置し、死体を遺棄したとして、第1審判決は、死体遺棄罪の成立を認め、被告人を懲役8月、3年間執行猶予に処したが、これに対し被告人が控訴し、原判決は、被告人の行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たるか否かに関し、死体について一定のこん包行為をした場合、その行為が外観からは死体を隠すものに見え得るとしても、習俗上の葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものであれば、その行為は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するものではなく、「遺棄」に当たらないとした上で、双子のえい児の死体を段ボール箱に入れて自室に置いた行為は、本件各えい児の死体を段ボール箱に二重に入れ、接着テープで封をするなどし、外観上、中に死体が入っていることが推測できない状態でこん包したもので、葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものではなく、本件各えい児の死体を隠匿する行為であって、他者がそれらの死体を発見することが困難な状況を作出したものといえるから、「遺棄」に当たるとし、第1審判決を破棄し、懲役3月、2年間の執行猶予を言い渡したため、被告人が上告をした事案で、被告人の行為は、死体を隠匿し、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したものであるが、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められないから、刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとし、原判決は、「遺棄」についての解釈を誤り、本件作為が「遺棄」に当たるか否かの判断をするに当たり必要なその態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点からの検討を欠いたため、重大な事実誤認をしたとし、本件作為について死体遺棄罪の成立を認めた原判決及び第1審判決は、いずれも判決に影響を及ぼすべき法令違反及び重大な事実誤認があるとして、原判決を破棄し、既に検察官による立証は尽くされているので、当審において自判し、被告人に無罪の言渡しをした事例。
2023.04.04
電子計算機使用詐欺被告事件
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LEX/DB25594479/山口地方裁判所 令和 5年 2月28日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第69号 等
被告人は、A銀行の支店に開設された自己名義の普通預金口座に、山口県B町が住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金として4630万円を誤って振込入金したこと(本件誤振込金)を利用して、電子計算機を使用し、被告人口座の預金からオンラインカジノサービスの決済代行業者にその利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考え、誤って振り込まれた被告人に無関係なものであることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金についてデビットカード情報を利用して決済代金の支払委託等をすることが許されないにもかかわらず、デビットカード情報を利用し、アメリカ合衆国2万4000ドル余り相当のオンラインカジノサービスを利用し得る地位を得て、財産上不法の利益を得た行為をしたとして、懲役4年6か月を求刑された事案において、被告人がインターネットに接続した携帯電話機からA銀行の電子計算機に情報を与える行為は正当な権利行使とはいえず、電子計算機使用詐欺罪が成立するとして、被告人に懲役3年、執行猶予5年間を言い渡した事例。
2023.03.07
貸金業法違反、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件
LEX/DB25572636/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 2月20日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第288号
東京都内に事務所を設け、株式会社Aの名称で、「給料ファクタリング」と称する取引を行っていた被告人が、(1)都知事の登録を受けないで、業として、約4か月間、969回にわたり、合計504名の顧客に対し、口座に振込送金する方法により、貸付名目額合計2790万9500円(実交付額合計2734万2120円)を貸し付け、もって登録を受けないで貸金業を営んだという貸金業法違反(同法47条2号、11条1項、3条1項)、(2)業として金銭の貸付けを行うに当たり、約4か月間、33回にわたり、前記株式会社A名義の普通預金口座に振込送金で受け取る方法により、前記顧客のうち8名から、法定の1日当たり0.3パーセントの割合による利息合計11万8074円を101万7816円超える合計113万5890円の利息を受領したという出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反(同法5条3項後段)から成る事案の上告審において、本件取引に基づく金銭の交付は、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たるとして、被告人について、(1)貸金業法違反及び(2)出資法違反の各罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の判断は相当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.02.21
強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ、準強制わいせつ被告事件
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LEX/DB25594258/大阪高等裁判所 令和 5年 1月24日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第758号
かつて発達障害児を対象とする施設の児童指導員であった被告人が、約8か月間で、同施設で知り合った発達障害のある男子児童5名を自宅で寝泊まりさせた際、Bと口腔性交をし、あるいは就寝中のAの陰茎を被告人の口腔に入れて口腔性交をし、就寝中のC、DやEの陰茎を手指で触るわいせつ行為をし、それらの機会にその様子をスマートフォンで動画撮影するなどして児童ポルノを作成し、その動画データの一部を他人に提供し、それ以外の児童ポルノである動画データをSNSに投稿して公然陳列したとして起訴され、原審は、被告人を懲役15年に処したため、被告人が控訴した事案で、原判決には、検察官が、本来、上記各事実をいずれも姿態をとらせ製造罪として起訴すべきところを、誤ってひそかに製造罪が成立すると解し、同一機会の各事実と合わせると姿態をとらせたこととなる事実を記載しながら、「ひそかに」との文言を付して公訴事実を構成し、罰条には児童買春・児童ポルノ処罰法7条5項を上げた起訴状を提出し、原判決もその誤りを看過して、同様の事実認定をしたことによる法令適用の誤り、さらには、訴訟手続の法令違反があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役13年に処した事例。
2023.02.07
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反、恐喝未遂被告事件
LEX/DB25572551/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 1月23日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第779号
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反、恐喝未遂被告事件の上告審において、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律11条2項、46条1号の憲法14条1項違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁)の趣意に徴して明らかであるなどとして、本件上告を棄却した事例。
2023.01.31
自動車運転過失致死傷被告事件
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LEX/DB25594005/仙台高等裁判所 令和 4年12月 1日 判決 (差戻控訴審)/令和4年(う)第75号
被告人が自動車運転過失致死傷の罪で起訴された事件の差戻し審において、原判決が被告人に対し、無罪を言い渡したところ、検察官が、原判決(差戻後第一審判決)は、論理則、経験則等に反した判断をした結果、本件事故時、被告人にA車に対する動静等注視義務違反、車間距離保持義務違反がいずれも認められ、被告人に過失が認められることが明らかであるにもかかわらず、事実を誤認しているとして、控訴した事案で、被告人が動静等注視義務違反及び車間距離保持義務違反の過失により本件事故を起こしたことを認めることはできず、本件公訴事実について犯罪の証明がないとして被告人に無罪を言い渡した原判決は是認することができるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.01.24
傷害致死被告事件
LEX/DB25593970/大阪地方裁判所 令和 4年12月 2日 判決 (第一審)/令和2年(わ)第1200号
被告人は、当時の自宅浴室で、実子である被害者(当時7か月の乳児)に対し、その頸部を手で圧迫するなどの何らかの暴行を加え、同所において、同人を窒息により死亡させたとして、懲役5年を求刑され、乳児の死因が被告人の暴行による窒息死か否かが争点となった事案において、本件に現れた全証拠を詳細に検討しても、被告人が公訴事実記載の暴行を加えて乳児を窒息死させた事実につき、常識に照らして間違いないといえるほどの立証がされているとはいえないとして、被告人に対し無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2022.12.20
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件
LEX/DB25572463/最高裁判所第一小法廷 令和 4年12月 5日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第157号
被告人が、東京都内の開店中の店舗で、小型カメラを手に持ち、膝上丈のスカートを着用した女性客Aの左後方の至近距離に近づき、前かがみになったAのスカートの裾と同程度の高さで、その下半身に向けて同カメラを構えるなどしたとして、原判決は、無罪の第1審判決を破棄し、懲役8月に処したため、被告人が上告した事案において、被告人の行為は、Aの立場にある人を著しく羞恥させ、かつ、その人に不安を覚えさせるような行為であって、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作といえるから、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年東京都条例第103号)5条1項3号にいう「人を著しく羞恥させ、人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」に当たるというべきであるとし、同条例8条1項2号、5条1項3号違反の罪の成立を認めた原判断は是認できるとして、本件上告を棄却した事例。
2022.12.06
殺人被告事件
LEX/DB25572427/最高裁判所第一小法廷 令和 4年11月21日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第319号
被告人が、被告人方において、妻であるA(当時38歳)に対し、殺意をもって、その頸部を圧迫し、Aを頸部圧迫による窒息により死亡させたとした事件で、第1審判決は、被告人の実行行為性を認めた上、犯行態様は危険で悪質なものであることなどを考慮し、被告人を懲役11年を言い渡し、原判決も、殺人の事実を認定した第1審判決の判断は相当であるとして、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、Aの顔前面の血痕がないとして、本件自殺の主張は客観的証拠と矛盾するとした原判決の判断は是認できず、その判断に基づき被告人を有罪とした点には事実誤認の疑いがあり、また、その原因は、原審で十分な審理が尽くされなかったとして、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した事例。
2022.11.29
保護責任者遺棄致死、詐欺、窃盗被告事件
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LEX/DB25593462/福岡地方裁判所 令和 4年 9月21日 判決 (第一審)/令和2年(わ)第1494号 等
当時5歳の被害者の幼児が餓死した事件で、十分な食事を与えないよう被害者の母親Bに指示したとして保護責任者遺棄致死などの罪に問われた、いわゆる「ママ友」の被告人に、懲役15年を求刑された事案で、3人の子どもを愛情深く養育し幸せな家庭生活を送っていたBが、独断専行で子どもに食事を与えずに餓死させる理由は全く見当たらず、Bの生活全般を支配し、巧妙かつ悪質な手口で事件を主導したのは被告人であり、これだけの罪を犯しながら、客観的な証拠や事実関係が明らかにされても、なお不合理な弁解やBに責任を転嫁する供述を繰り返し、自らの責任に全く向き合っていないなどとして、被告人を求刑通り懲役15年に処した事例(裁判員裁判)。
2022.10.11
業務上過失往来危険、業務上過失致死被告事件
LEX/DB25593276/神戸地方裁判所 令和 4年 8月 8日 判決 (差戻第一審)/令和3年(わ)第164号
被告人は、漁船Y丸(総トン数1.7トン)の船長として同船の操船業務に従事していたものであるが、平成29年10月14日午後8時2分頃、兵庫県淡路市α地先西防波堤南東端所在のB港西防波堤東灯台から真方位340度、約95メートル付近海上を、真針路152度、速力約20ノットで航行するに当たり、前方左右の見張りを十分に行い、自船針路上の他船の早期発見に努め、航路の安全を確認しつつ航行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、他船はいないものと軽信し、航行先である右前方に気を取られ、左前方の見張りを十分に行わず、航路の安全確認不十分のまま漫然前記速力で航行した過失により、その頃、前記灯台から真方位29度、約17メートル付近海上において、左前方から航行してきた漁船X丸(総トン数1.5トン)に気付かないまま、自船船首部を前記X丸船尾部に衝突させるなどして前記X丸の右舷船尾外板に亀裂等の損傷を与え、もって艦船の往来の危険を生じさせるとともに、自船船首部を前記X丸に乗船中のC(当時77歳)に衝突させるなどし、同人に右側頭部頭蓋冠骨折及び中頭蓋底横断骨折等の傷害を負わせ、同人を前記傷害による外傷性脳くも膜下出血及び脳挫滅・脳挫傷により死亡させたとして、業務上過失往来危険、業務上過失致死の罪で起訴され、差戻前第1審は無罪を言い渡したため、検察官が控訴し、差戻前控訴審は、本件事故発生時点において、被害船のローラー部分が前向きであったとの事実が認められないとした差戻前第1審には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして、同判決を破棄し、第1審に差戻しを命じことに対し、弁護人が上告したが、上告審は上告棄却の決定をした。その後の差戻後第1審判決の事案で、被告人は、被告船の進路前方左右の見張り等を十分行っていれば、遅くとも本件衝突の約8秒前よりも若干衝突時に近い時点(衝突位置の約85メートル手前の位置よりも若干衝突位置寄りの位置)から本件衝突までの間、被害船(その両色灯)を視認することが可能だったと認められ、被告船を一定針路かつ速力約20ノットで航行させた際の最短停止距離が約35.5メートルであったことに照らすと、前記の時点(位置)で直ちに制動(全速後進)措置を講じていれば、被害船に衝突する前に被告船を停止させることが十分に可能であったと認められ、被告人には前方左右の見張り等の注意義務を怠った過失が認められ、業務上過失往来危険及び業務上過失致死の各罪が成立することは明らかであるとして、被告人を禁錮1年2月に処し、この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予するとした事例。
2022.09.27
詐欺被告事件
LEX/DB25592804/神戸地方裁判所 令和 4年 5月11日 判決 (第一審)/令和3年(わ)第866号
新型コロナウイルス感染症の拡大により大きな影響を受けた個人事業者等に対する支援を目的として実施された国の持続化給付金制度を利用して、被告人が同給付金名目で金銭をだまし取ったとして詐欺罪で懲役3年を求刑された事案で、被告人に対しては社会内更生の機会を与えるのが相当であるので、被告人に対し、懲役1年6月に処し、執行猶予3年間を言い渡した。なお、本件公訴事実第1及び第2については、被告人が詐欺の故意を有していたとは認められず、犯罪の証明がないから、刑事訴訟法336条により無罪を言い渡した事例。
2022.08.23
準強制わいせつ被告事件
LEX/DB25593012/福岡高等裁判所 令和 4年 7月21日 判決 (控訴審)/令和3年(う)第316号
診療放射線技師である被告人が、学校敷地内に停めた胸部検診車内において、正当な胸部レントゲン検査を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあるA(当時15歳)に対し、その背後に立って脇の下から両手を回し、着衣の上からAの両胸をもみ、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたとしたて起訴され、原審は、被告人が公訴事実記載の犯行を行ったことの証明がないとして、被告人に対し無罪を言い渡したため、検察官が控訴した事案で、原裁判所の訴訟手続には、本件各証拠の特信性について必要な審理を尽くさないまま刑事訴訟法321条1項2号後段該当性を否定して証拠調べ請求を却下し、A証言の信用性を否定して無罪判決をした点に審理不尽の違法があり、この訴訟手続の法令違反が判決に影響を及ぼすことは明らかであると判断し、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2022.08.02
準強制わいせつ被告事件
LEX/DB25592514/津地方裁判所 令和 4年 5月11日 判決 (第二次第一審)/令和3年(わ)第147号
被告人が、当時の被告人方において、実子であるA(当時14歳)が就寝中のため抗拒不能の状態であることに乗じ、そのパンティーの中に手を入れて同人の膣内に手指を挿入し、もって同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたというもので、差戻し前第一審判決は、A証言は十分な信用性があり、弁護人の主張や指摘を踏まえても合理的な疑いはないとして、ほぼ本件公訴事実どおりの事実を認定し、被告人を懲役3年6月に処したため、弁護人が控訴し、控訴審判決は、差戻し前の第一審においては、Aの公判証言の信用性を吟味するために必要な審理が尽くされていなかったと結論付け、差戻しを命じ、差戻し後の第一審の事案で、控訴審判決の指摘に基づいて証拠調べを行ったものの、控訴審が指摘していた、Aの公判証言の信用性に疑いがあることにつながる事情や見方は解消されないままであり、公訴事実記載の行為に関するAの被害供述について、その信用性に看過し得ない疑問が残るといわざるを得ないとし、差戻し前の第一審及び当審において取り調べた証拠を総合しても、被告人によるAに対する公訴事実記載の行為を立証する直接証拠であるAの被害供述の信用性には疑問が残り、他に被告人がAに対して公訴事実記載の行為に及んだことを認めるに足りる証拠はないことから、被告人が公訴事実記載の犯行を行ったと断定するには、なお合理的な疑いが残るというべきであるとして、本件公訴事実について犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをした事例。
2022.06.21
業務上横領被告事件
LEX/DB25572177/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 6月 9日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第821号
被告人は、株式会社Bの取締役兼総務経理部長として同社の経理業務を統括していたCと共謀の上、同社名義の銀行口座の預金をCにおいて同社のために業務上預かり保管中、東京都内の同社事務所において、自己の用途に費消する目的で、Cにおいて、情を知らない同社職員に指示して、上記口座から、Cらが管理する銀行口座に、現金2415万2933円を振込入金させ、もってこれを横領したとして、第1審判決は、被告人の行為は、刑法65条1項により、同法60条、253条(業務上横領罪)に該当するが、被告人には業務上の占有者の身分がないので、同法65条2項により同法252条1項(横領罪)の刑を科することとなり、その上で、公訴時効の成否について、公訴時効の期間は、科される刑を基準として定めるべきであるとし、横領罪の法定刑(5年以下の懲役)を基準として刑事訴訟法250条を適用し、公訴時効の期間は5年(同条2項5号)であるから、本件の犯罪行為が終了した平成24年7月5日から起算して、本件の公訴提起がされた令和元年5月22日には公訴時効が完成していたとして、被告人に対し、同法337条4号により免訴を言い渡したことに対し、検察官が控訴し、被告人に対する公訴時効の期間は業務上横領罪の法定刑を基準とすべきであるのに横領罪の法定刑を基準として公訴時効の完成を認めた第1審判決には法令適用の誤りがあると主張したところ、原判決は、第1審判決の認定した犯罪事実及び本擬律を前提に、公訴時効の期間は、成立する犯罪の刑を基準として定めるべきであるとし、業務上横領罪の法定刑(10年以下の懲役)を基準として刑事訴訟法250条を適用すると、公訴時効の期間は7年(同条2項4号)であるから、本件の公訴提起時に公訴時効は完成していないとして、第1審判決を法令適用の誤りを理由に破棄し、第1審判決と同旨の犯罪事実を認定して、被告人を懲役2年に処したため、被告人が上告した事案で、公訴時効制度の趣旨は、処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにあり、刑事訴訟法250条が刑の軽重に応じて公訴時効の期間を定めているのもそれを示すものと解され、処罰の必要性(行為の可罰的評価)は、犯人に対して科される刑に反映されるものということができるとし、本件において、業務上占有者としての身分のない非占有者である被告人には刑法65条2項により同法252条1項の横領罪の刑を科することとなるとした第1審判決及び原判決の判断は正当であるところ、公訴時効制度の趣旨等に照らすと、被告人に対する公訴時効の期間は、同罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑事訴訟法250条2項5号)であると解するのが相当であり、本件の公訴提起時に、被告人に対する公訴時効は完成していたことになるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2022.06.14
過失運転致死、道路交通法違反被告事件
LEX/DB25592166/大阪地方裁判所 令和 4年 3月25日 判決 (第一審)/令和2年(わ)第1120号
被告人は、平成31年2月19日午後7時21分頃、大阪府四條畷市内の道路において、普通乗用自動車を運転中、自車前方に転倒しうつ伏せに横臥していた被害者(当時86歳)を自車車底部で轢過し、同人に心臓破裂等の傷害を負わせる交通事故を起こした際、自損事故を起こしたことを認識したにもかかわらず、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったとして、懲役1年6月を求刑された事案で、本件事故につき被告人に過失があったと認定することはできず、過失運転致死については、犯罪の証明がないというべきであるから、刑事訴訟法336条により、被告人に対して無罪の言渡しをしたが、救護等義務違反の点については犯罪の証明がないが、この点は前掲関係各証拠によって優に認定できる報告義務違反の罪と観念的競合の関係にあるとして起訴されたものと認められるから、道路交通法違反の罪で、被告人に対し罰金5万円に処した事例。
2022.05.31
不正競争防止法違反幇助被告事件
LEX/DB25572151/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 5月20日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1135号
被告人は、火力発電システム等に係る施設又は設備を構成するボイラ、ガスタービン等の機器及び装置の研究、開発、設計、調達、製造等に関する業務等を目的とする本件会社の取締役常務執行役員兼エンジニアリング本部長として同社の火力発電所建設プロジェクト等を統括していたものであるが、同社がタイ王国ナコンシータマラート県カノム郡において遂行していた火力発電所建設工事に関して、同建設工事現場付近に建設した仮桟橋に、火力発電所建設関連部品を積載した総トン数500tを超えるはしけ3隻を接岸させて貨物を陸揚げするに当たり、本件仮桟橋は、総トン数500t以下の船舶の接岸港として建設許可されたものであったため、同郡に管轄を有する同国運輸省港湾局第4地方港湾局ナコンシータマラート支局長として、同郡において、水上輸送に関する検査、船舶検査、船舶登録、タイ領海内船舶航行法に基づく桟橋使用禁止等の権限を有していた外国公務員等であったBから許可条件違反となる旨指摘され、貨物を陸揚げできなかったことから、同社の執行役員兼調達総括部長として同社の物品調達、輸送業務を統括していたC、同社の調達総括部ロジスティクス部長として同社の輸送業務を統括していたDほか数名と共謀の上、平成27年2月17日頃、同郡内において、Bに対し、新たに接岸する船舶の種別の変更申請を行う等の正規の手続によらずに上記許可条件違反を黙認して本件はしけの本件仮桟橋への接岸及び貨物の陸揚げを禁じないなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、同国内の業者を介し、現金1100万タイバーツ(当時の円換算3993万円相当)を供与し、もって外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせないことを目的として、金銭を供与したとして起訴され、第1審判決は、公訴事実と同旨の犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年6月、3年間執行猶予に処したため、被告人は、第1審判決に対して控訴し、原判決は、被告人に不正競争防止法18条1項違反罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決は事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人には同罪の幇助犯が成立するとして、被告人を罰金250万円に処したことで、検察官、被告人の双方が上告した事案で、本件供与に関する共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、第1審判決について、論理則、経験則等に照らして不合理な点があることを十分に示したものとは評価することができず、第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、不正競争防止法18条1項違反罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決の判断は正当として是認することができ、また、記録に基づいて検討すると、被告人のその余の控訴趣意もいずれも理由がなく、第1審判決はこれを維持するのが相当であるとし、被告人の控訴を棄却した事例。
2022.05.24
窃盗(原審認定罪名・占有離脱物横領)被告事件
★「新・判例解説Watch」刑法分野 令和4年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25592203/大阪高等裁判所 令和 3年12月10日 判決 (控訴審)
被告人は、令和2年12月2日午後1時33分頃、大阪市内のパチンコ店の男子トイレにおいて、被害者保有の現金27円及び小銭入れ等33点在中のクラッチバッグ1個(時価合計約5万5977円相当)を発見し、これを占有を離れた他人の物との認識の下に、自己の用に供する目的で同所から持ち去り、占有を離れた他人の者を横領したとして窃盗により起訴されたが、原審公判で、被告人・原審弁護人は、公訴事実記載の外形的事実、すなわち被告人が前記日時場所で置き忘れられていた本件クラッチバッグを持ち去ったことは認めつつ、被告人は本件クラッチバッグを置き忘れた被害者がいまだ現実に管理支配していた状況の認識を欠いていたもので、占有離脱物横領罪の範囲でしか故意は認められないとして、窃盗罪の故意を争い、原判決は、主観的には占有離脱物横領の故意で客観的には窃盗の罪を犯したものと認め、両罪が実質的に符合する限度で軽い罪である占有離脱物横領罪が成立する旨判断し、懲役8月に処したたため、被告人が控訴した事案で、原判決は、理由不備、訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り及び量刑不当の誤りはないとし、本件控訴を棄却した事例。