注目の判例

刑法

2015.07.07
業務上過失致死被告事件(山岳ガイドに有罪 北アルプス白馬岳四人遭難死)
LEX/DB25506312/長野地方裁判所松本支部 平成27年4月20日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第52号
個人で有料登山ツアーを企画、主催し、自ら登山客を引率するなどの山岳ガイド業務に従事していた被告人が、被告人が企画した有料登山ツアーの登山客である被害者らの生命及び身体の安全を確保し、遭難事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこの義務を怠り、漫然前記登山客を引率して本件登山を続行した過失により、被害者らを凍死させたとして起訴された事案において、被告人の軽率な判断により、被害者ら4名が凍死しており、被告人の刑事責任を軽視することは到底できないが、被告人の行為の客観的な悪質性の程度と主観面への刑罰的非難の度合い、更には同種事犯の量刑傾向をも考慮に入れると、被告人を直ちに服役させる必要があるとまではいえないとして、被告人に対して禁錮3年(執行猶予5年)を言い渡した事例。
2015.06.30
各傷害致死被告事件(裁判員裁判破棄 地裁差し戻し 男性客暴行死事件)
LEX/DB25506303/名古屋高等裁判所 平成27年 4月16日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第366号
被告人A及び同Bが、共謀の上、Dに対して第1暴行を加えて同人に傷害を負わせ、さらに被告人Cが、Dに対して第2暴行を加え、これらの一連の暴行によりDを死亡させたが、被告人A及び同B並びに同Cのいずれの暴行に基づく傷害によりDを死亡させたか知ることができないという公訴事実につき、原判決が、刑法207条の適用を否定し、被告人A及び同Bについては傷害罪の成立を、被告人Cについては傷害致死罪の成立を認めたため、検察官及び弁護人の双方が控訴した事案において、本件について同時傷害の特例である刑法207条の適用を否定した原判決の上記判断には、暴行と傷害との因果関係の有無を適切に判断しなかった法令適用の誤りと、暴行の機会の同一性の判断に関する事実の誤認があり、これらの誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、原審に差し戻した事例。
2015.06.23
殺人、殺人未遂、爆発物取締罰則違反、逮捕監禁致死、死体損壊被告事件(オウム真理教事件)
LEX/DB25506320/東京地方裁判所 平成27年 4月30日 判決 (第一審)/平成24年(合わ)第131号等
オウム真理教の信者であった被告人が半年足らずの間に、第1の事実(VX事件)は、共犯者との間で、被害者にVXをかけて殺害することの共謀と遂げたものと認められ、殺人未遂罪の共同正犯が成立するとし、第2の事実(假谷事件)は、死体損壊について共犯者と共謀を遂げたものと認められ、死体損壊罪の共同正犯が成立するとし、第3の事実(地下鉄サリン事件)は、共犯者との間で、サリンの可能性を含む、人が死亡する危険性の高い揮発物の毒物を地下鉄電車内で一斉に撒くという限度で、殺人の共謀を遂げたものと認められ、殺人には殺人罪及び殺人未遂罪の共同正犯が成立するとし、第4の事実(都庁爆発物事件)は、共犯者との間で、爆発物製造、爆発物使用及び殺人について共謀を遂げたものと認められ、爆発物製造罪、爆発物使用罪及び殺人未遂罪の共同正犯が成立するとし、被告人の刑事責任は有期懲役刑の量刑の範疇に収まるものではないとして、無期懲役に処した事例(裁判員裁判)。
2015.06.23
窃盗被告事件(てんかん「NCSE」の症状 万引き 無罪)
LEX/DB25506285/東京地方裁判所立川支部 平成27年 4月14日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第49号
被告人は、家電量販店において、ヘッドホン等(販売価格合計4万5530円)を窃取したとして、窃盗により起訴された事案において、行為当時、被告人は、少なくとも行動制御能力はないに等しい状態であったとの合理的な疑いが払拭できないとして、心神喪失を理由に、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2015.06.16
危険運転致死被告事件(危険運転致死 懲役7年)
LEX/DB25506269/水戸地方裁判所 平成27年 4月24日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第542号
被告人が、運転開始前に飲んだ酒の影響により前方注視及び運転操作が困難な状態で、普通乗用自動車を走行させ、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で走行させたことにより、進路前方を走行中の被害者(当時60歳)運転の原動機付自転車後部に衝突させて転倒させ、被害者に脳挫傷の傷害を負わせて死亡させた事案において、懲役7年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.06.16
殺人被告事件(母親と共謀して父親を殺害 懲役4年)
LEX/DB25506270/水戸地方裁判所 平成27年 4月24日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第466号
被告人及び被告人の母は、被告人の父から長年にわたり暴力を受けていたところ、母から父の殺害を提案されたため、一度は断ったものの、被告人の妹に手伝わせるなどと母から言われたことから、母と共謀の上、父である被害者(当時46歳)に対し、母が包丁で数回突き刺した後、予め準備していた手製の刃物で被害者の左大腿部を数回斬りつけ、さらに頭頂部を1回斬りつけるなどして、殺害した事案において、懲役4年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.06.09
監禁、強盗殺人、死体遺棄被告事件(呉の少女殺害 控訴棄却)
LEX/DB25506231/広島高等裁判所 平成27年 3月30日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第176号
当時16歳の少年であった被告人が、共犯者らと共謀の上、被害者を普通乗用自動車内に監禁し、顔面等を多数回殴打するなどの暴行を加え、現金等を強取し、被告人及びBが、殺意をもって、被害者の頸部を両手で絞め付け、窒息により死亡させ、死体を遺棄した事案の控訴審において、少年法20条2項により原則的に検察官送致が義務付けられる強盗殺人を含む重大事件であり、このような事件につき例外的に保護処分を相当とする特段の事情が認められるか否かの判断に当たって、その事件の重大な事情を成す、動機や態様を重視することは何ら不当ではなく、原判決によるこれらの点についての考慮の仕方にも、特段不当とすべきものはないとし、懲役13年を言い渡した原判決を維持し、控訴を棄却した事例。
2015.06.02
殺人,殺人未遂,現住建造物等放火被告事件(兵庫県 加古川 7人殺害 死刑確定)
LEX/DB25447264/最高裁判所第二小法廷 平成27年5月25日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第729号
被告人が、自宅の東西に隣接する2軒の家屋内等において、親族を含む隣人ら8名を、順次、骨すき包丁で突き刺すなどして、7名を殺害し、1名に重傷を負わせた後、母親が現住する自宅にガソリン等をまいて放火し、全焼させた事案の上告審において、被告人の事理弁識能力及び行動制御能力が著しく低下していたとまでは認められないとする原判決は、経験則等に照らして合理的なものといえ、事実誤認があるとは認められないとし、また、量刑についても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、是認せざるを得ないとし、上告を棄却した事例。
2015.06.02
詐欺被告事件(オレオレ詐欺 見張り役 無罪)
LEX/DB25506263/京都地方裁判所 平成27年4月17日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第1470号
被告人が、被害者(当時70歳)から現金をだまし取ろうと考え、共犯者α及び名前の分からない者らと共謀の上、数回にわたって電話をかけ、息子を装い、信じ込ませ、被害者から欺いて現金1000万円を交付させたオレオレ詐欺の事案において、被告人に詐欺の故意及び共謀があったと認めるには合理的な疑いが残り、本件全証拠をもってしても、その疑いは払拭されないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2015.06.02
強制わいせつ被告事件(無罪)
LEX/DB25506191/仙台高等裁判所 平成27年3月10日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第151号
被告人は、深夜、被告人の横で寝ていた養女である被害者(当時11歳)に対して、ブラジャーやパンツの中に手を差し入れて、乳房をもんだり、陰部を触るなどの行為に及んだとの強制わいせつにより起訴され、原判決は懲役1年6月を言い渡し、被告人が控訴をした事案において、被告人の原審供述の信用性を直ちに排斥することもできないから、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に従って、被告人が公訴事実記載の罪を犯したとの証明はされていないと評価すべきであるとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2015.05.26
詐欺被告事件(元日弁連常務理事に実刑 詐欺事件)
LEX/DB25506204/東京地方裁判所 平成27年3月30日 判決 (第一審)/平成25年(刑わ)第2304号等
被告人甲、乙及び丙の3名が、共謀の上、財務省等が所有する国有地等を、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構から取得できる旨うそを言い、約7か月間、購入を希望する3社から6回にわたり、売買代金の一部等の名目で合計9億4415万円の現金及び小切手をだまし取るとともに、被告人甲及び乙が、共謀の上、同様に購入を希望する1社から合計3億円の現金及び小切手をだまし取ったという各詐欺の事案において、巧妙な手口による計画性の高い職業的犯行であり、被害額の総額は巨額で、被害者らの処罰感情は厳しく、結果は重大であるなどとして、甲を懲役14年に、乙を懲役8年に、丙を懲役10年にそれぞれ処した事例。
2015.05.26
業務上過失致死傷被告事件(福知山線列車脱線事故 JR西日本元社長3人 二審も無罪)
LEX/DB25506197/大阪高等裁判所 平成27年3月27日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第1335号
福知山線における列車の脱線転覆事故について、元西日本旅客鉄道株式会社社長である被告人ら3名が、事故発生の具体的予見が可能であったとして業務上過失致死傷により起訴をされ、原判決は、被告人らに対し無罪を言い渡し、検察官の職務を行う指定弁護士が控訴をした事案において、被告人ら各人について、本件曲線において速度超過による列車脱線転覆事故が発生することを具体的に予見することが可能であったと認めるに足りる立証はないとして、各控訴を棄却した事例。
2015.05.26
強制わいせつ致死、窃盗被告事件(三重県 中三死亡 19歳少年懲役5~9年)
LEX/DB25506210/津地方裁判所 平成27年3月24日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第98号
当時18歳の被告人が、通行中の被害者(当時15歳)に対し、背後から鼻口部を手で塞ぐなどして空き地に連れ込み、着衣を無理矢理脱がせるなどの暴行を加えて同人の犯行を抑圧した上、強いてわいせつな行為をし、その際、鼻口部閉塞により、同人を窒息死させ、また、同人所有の現金約6000円を窃取したとの強制わいせつ致死、窃盗の事案において、犯情は悪質であり、事件の凶悪性や悪質性を大きく減ずる事情を見出し難く、保護処分を相当とする特段の事情は認められず、被告人を刑事処分に付すべきであるとした上、被害者が尊厳を踏みにじられ死亡したという重大な結果が生じたことなどを考慮し、被告人に対し、懲役5年以上9年以下を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.05.26
強盗致傷、詐欺、恐喝、監禁、強盗未遂、窃盗、恐喝未遂、強姦幇助、強盗、犯人隠避教唆被告事件(川崎容疑者逃走事件)
LEX/DB25506208/横浜地方裁判所 平成27年3月20日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第66号等
被告人が、共犯者と共謀の上で行った強盗致傷、詐欺、恐喝、監禁及び強盗未遂、恐喝未遂各1件並びに窃盗3件、共犯者と共謀の上行った監禁及び強盗、強姦幇助、犯人隠避教唆により起訴された各事案において、強盗致傷ないし恐喝未遂は、いずれもいわゆるオヤジ狩りに及ぼうとして起こした事件であり、態様は相当に悪質であること、各被害者が感じた精神的苦痛は無視できず、特に傷害を負った被害者は厳しい処罰感情を抱いていること、監禁及び強盗、強姦幇助の被害者の精神的苦痛が非常に大きいこと、犯行は悪らつであることなどを考慮し、被告人に、懲役11年を言い渡した事例。
2015.05.26
区分事件(監禁、強姦幇助、強盗、犯人隠避教唆被告事件)
(川崎容疑者逃走事件(部分判決))
LEX/DB25506207/横浜地方裁判所 平成27年 1月30日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第527号等-1
被告人は、共犯者と共謀の上、通行中の被害者を自動車の後部座席に無理やり乗せて走行したとの監禁、車内において共犯者が被害者を強姦し、これを知りながら同社の運転を継続したとの強姦幇助、被害者を脅迫して所持していた現金約2万4000円在中の財布1個(時価7000円相当)と、被害者にATMから引き出させた現金15万円を強取したとの強盗、検察庁川崎支部から逃走し、友人に自動車で運搬させるなどしたとの犯人隠避教唆の各公訴事実により起訴された各区分事件の事案において、被告人に対し、各公訴事実につきいずれも有罪とする部分判決を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.05.12
(山口組の元最高幹部けん銃所持 差し戻し確定へ)
LEX/DB25506118/最高裁判所第三小法廷 平成27年3月3日 決定 (第二次上告審)/平成25年(あ)第1377号
指定暴力団の元最高幹部の被告人Yが、組員2人と共謀しけん銃と実弾を所持していたとして起訴された銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件において、高等裁判所が、無罪を言い渡した第一審判決を破棄し、差し戻したため、被告人が上告した事案において、上告趣意のうち、憲法39条違反をいう点は、検察官の上訴は同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではなく、また、憲法37条1項違反をいう点は、記録に照らし、本件の審理が著しく遅延したとは認められないから、いずれも前提を欠き、その余は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとし、上告を棄却した事例。
2015.05.12
(北海道苫小牧市女性死亡 傷害致死罪が成立)
LEX/DB25506125/最高裁判所第二小法廷 平成27年1月21日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第1190号
被告人が、被害者から自らの殺害行為を嘱託されたが、被告人は同嘱託を傷害の嘱託と理解して、被害者の頸部をバスローブの帯で締め付けた上、浴槽の水中に被害者の顔面を鎮める暴行を加えて、被害者を死亡させたとされた傷害致死被告事件の上告審において、被告人に適用される罰条を刑法202条後段のみであるとして懲役1年2月、執行猶予3年を言い渡した原々審の判決に対して、検察官及び被告人の双方が控訴して、被告人には傷害致死罪が成立するとして懲役2年執行猶予4年を言い渡した原審判決を妥当として、弁護人らの上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらないとして、上告を棄却した事例。
2015.05.07
有印私文書偽造・同行使、詐欺、業務上横領被告事件(元米子市職員 業務上横領 第一審破棄)
LEX/DB25506083/広島高等裁判所松江支部 平成27年3月6日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第30号
被告人は、米子市役所の職員として高齢者である被害者の財産を管理していた際、預かっていた現金のうち30万円余を着服したとの業務上横領、被害者の死亡後、同人名義の銀行口座に入金された年金について、銀行窓口の職員を欺罔して15万円余を詐取したとの有印私文書偽造・同行使、詐欺被告事件において、原判決は懲役2年の実刑を言い渡し、これに対し、被告人が控訴をした事案において、事実誤認の主張は排斥したが、原判決の言渡し後に被害弁償を行ったこと、被害者相続人が被告人に対して寛大な処分を望んでいること、保釈中に正社員として就職したこと等を考慮し、被告人に対し、懲役2年6月、執行猶予5年を言い渡した事例。
2015.05.07
業務上過失傷害(変更後の訴因は業務上過失致死傷)被告事件
(古本屋 本棚倒壊 経営者有罪(控訴審))
LEX/DB25506075/札幌高等裁判所 平成27年3月5日 判決 (控訴審)/ 平成26年(う)第202号
訴外会社の取締役として、同社が経営する古書店の業務全般を統括するとともに、同店内にいる客の安全のため、同店内に設置された書棚の転倒や倒壊を確実に防止する措置を講じるべき業務に従事していた被告人が、各陳列棚の転倒による書棚の倒壊を確実に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、営業を続けた過失により、書棚に加わった軽度の外圧等によって、全ての陳列棚を転倒させて書棚を倒壊させ、客である甲(当時14歳)及び乙(当時10歳)に対し、その身体を書棚と書棚との間に挟ませて傷害を負わせ、乙を死亡するに至らせたとの業務上過失致死傷被告事件により、原審において有罪判決を受け、被告人が事実誤認を理由に控訴をした事案において、控訴を棄却した事例。
2015.04.28
公務執行妨害、傷害、大麻取締法違反、あへん法違反、覚せい剤取締法違反被告事件
(大阪府警 違法捜査 無罪)
LEX/DB25506069/大阪地方裁判所 平成27年3月5日 判決 (第一審)/ 平成26年(わ)第2715号等
被告人は、警察官から職務質問及び所持品検査を受けた際、同警察官に対し、右手で顔面をひっかき、その左上腕及び左母指付近にかみつくなどし、その職務の執行を妨害するとともに、加療約1週間を要する傷害を負わせ、大麻、覚せい剤、あへんを所持したとの事案において、被告人の行為は正当防衛であり、プライバシー侵害の程度の高い違法な所持品検査をした上、強度の有形力行使をしたもので、令状主義の精神を没却するような重大な違法があるから、このような違法行為に密接に関連する証拠を許容することは、将来の違法捜査抑制の見地から相当でないとして、証拠請求された品の証拠能力を否定し、被告人に無罪を言い渡した事例。