2018.01.09
医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定に対する抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25449140/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月18日 決定 (再抗告審)/平成29年(医へ)第16号
医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定に対し、抗告したが棄却決定となったため、再抗告した事案において、医療観察法の目的の正当性、同法の規定する処遇及びその要件の必要性、合理性、相当性、手続保障の内容等に鑑みれば、医療観察法による処遇制度は、憲法14条、22条1項に違反するものではなく、憲法31条の法意に反するものということもできないとして、抗告を棄却した事例。
2017.12.19
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25548250/大阪高等裁判所 平成29年12月 1日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第477号
いわゆる和歌山カレー毒物混入事件で、死刑判決を言い渡され、死刑確定者として大阪拘置所に収容されている控訴人(原告)P1並びにその再審請求のために選任された再審請求弁護人である控訴人(原告)P2、同P3、同P4及び同P5が、大阪拘置所長に対し、控訴人P2らが大阪拘置所で控訴人P1と面会する際に、120分の面会を認めること、同拘置所職員の立会いのない面会を認めること,パソコンの使用を認めることを要請したにもかかわらず、同拘置所長が面会時間を60分に制限したこと、職員の立会いのない面会を許さなかったこと、パソコンの使用を認めなかったことが違法であると主張し、被控訴人(被告。国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金200万円の支払等を求め、原審は、職員の立会いのない面会を許さなかった点についてのみ違法と認め、控訴人P1の請求について、損害賠償金11万円の支払等を求める限度で、控訴人P2らの各請求について、各損害賠償金5万5000円の支払等を求める限度でそれぞれ認容し、その余の請求をいずれも棄却したため、控訴人らは、原判決中、それぞれその敗訴部分を不服として控訴した事案において、被控訴人は、〔1〕控訴人P2に対し、損害賠償金31万7540円を支払う義務を負い、〔2〕控訴人P1、同P3、同P4及び同P5に対し、それぞれ18万円の支払う義務を負うというべきであるとして、原判決を一部変更し、控訴人らのその余の請求をいずれも棄却した事例。
2017.11.28
(平成29年 3月29日東京高等裁判所(平成29年(行ス)第1号)の特別抗告審)
LEX/DB25547457/最高裁判所第三小法廷 平成29年 6月30日 決定 (特別抗告審)/平成29年(行卜)第52号
死刑確定者として東京拘置所に収容されている申立人が、相手方(国)に対し、東京拘置所長で、a弁護士(本案第1事件代理人弁護士)又はb弁護士(本案第1事件・第2事件代理人弁護士)による、申立人に対して有罪の言渡しをした確定判決に対する再審の請求の打合せを目的とする、申立人との、東京拘置所の職員の立会いのない約1時間の面会をしたい旨の申出について、東京拘置所の職員を立ち会わせた上での30分の面会しか認めなかった制限は違法であるとして、主位的に、東京拘置所長で、上記目的の面会で、東京拘置所の職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分及び面会の時間について制限をする旨の処分をすることの差止めを求めるとともに、東京拘置所長のこれらの行為に処分性が認められない場合に備えて、予備的に、東京拘置所の職員を立ち会わせ、面会の時間について制限を付して面会を許可する処分をすることの差止めを求めた本案事件の各訴えを提起した申立人が、相手方に対し、上記本案の各訴えにおいて差止めを求める各処分の仮の差止めを求め、第1審は、本件再審請求の打合せを目的とした申立人とa弁護士及びb弁護士との面会につき、本案事件の第1審判決の言渡しまで、仮に、東京拘置所の職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分をしてはならないことを求める部分の限度で理由があるとし、その限度で認容することとし、その余の主位的申立ては理由がなく、予備的申立ては不適法であるとして却下したため、双方が抗告し、抗告審は双方の各抗告を棄却したことで、申立人が特別抗告した事案において、抗告を棄却した事例。
2017.11.28
各仮の差止めの申立一部却下決定に対する各抗告事件
(平成29年 6月30日最高裁判所第三小法廷(平成29年(行卜)第52号)の原審)
LEX/DB25547458/東京高等裁判所 平成29年 3月29日 決定 (抗告審)/平成29年(行ス)第1号
死刑確定者として東京拘置所に収容されている原審申立人が、原審相手方(国)に対し、東京拘置所長で、a弁護士(本案第1事件代理人弁護士)又はb弁護士(本案第1事件・第2事件代理人弁護士)による、原審申立人に対して有罪の言渡しをした確定判決に対する再審の請求の打合せを目的とする、原審申立人との、東京拘置所の職員の立会いのない約1時間の面会をしたい旨の申出について、東京拘置所の職員を立ち会わせた上での30分の面会しか認めなかった制限は違法であるとして、主位的に、東京拘置所長で、上記目的の面会で、東京拘置所の職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分及び面会の時間について制限をする旨の処分をすることの差止めを求めるとともに、東京拘置所長のこれらの行為に処分性が認められない場合に備えて、予備的に、東京拘置所の職員を立ち会わせ、面会の時間について制限を付して面会を許可する処分をすることの差止めを求めた本案事件の各訴えを提起した申立人が、相手方に対し、上記本案の各訴えにおいて差止めを求める各処分の仮の差止めを求め、第1審は、本件再審請求の打合せを目的とした申立人とa弁護士及びb弁護士との面会につき、本案事件の第1審判決の言渡しまで、仮に、東京拘置所の職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分をしてはならないことを求める部分の限度で理由があるとし、その限度で認容することとし、その余の主位的申立ては理由がなく、予備的申立ては不適法であるとして却下したため、双方が抗告した事案において、原決定は相当であるとし、双方の各抗告を棄却した事例。
2017.08.08
窃盗被告事件
LEX/DB25546108/奈良地方裁判所葛城支部 平成29年 6月19日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第4号
被告人が2度にわたりトラクターを窃取した事案において、捜査機関がGPS端末等を利用した捜査を実施しており、この捜査には令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、上記捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠は違法収集証拠として証拠排除されるべきであるから、その結果として被告人を犯人とする証拠がないことに帰するとし、被告人は無罪とする弁護人の主張に対し、各証拠がGPS捜査により直接得られた証拠と同視することはできず、この捜査と密接に関連するものとはいえず、その証拠能力を認めるのが相当であるとしたうえで、転売して換金する目的でトラクターという特殊な物品を狙った職業的犯行であり,あらかじめ運搬用のトラックを借り受け、人目につかない深夜の農村地帯で厳重な保管がなされていない被害品を窃取するという犯行態様は、計画的で手慣れていて悪質であるなどとして、懲役3年を言い渡した事例。
2017.07.25
再審請求事件(大崎事件第3次再審請求開始決定)
LEX/DB25545985/鹿児島地方裁判所 平成29年 6月28日 決定 (再審請求審)/平成27年(た)第1号
請求人が、殺人、死体遺棄被告事件(いわゆる大崎事件)で懲役10年に処せられた確定判決について、第三次再審請求をした事案において、当請求審における新証拠である鑑定及び新鑑定は、確定審、第1次再審請求及び第2次再審請求において提出された全証拠と併せて総合評価すれば、請求人の本件犯行への関与を認定した確定判決の事実認定には合理的な疑いがあるとし、再審開始を決定した事例。
2017.06.27
損害賠償請求事件
LEX/DB25545810/さいたま地方裁判所 平成29年 5月24日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第2274号
原告らが,原告A(被告が管理運営する拘置所に収容されている死刑確定者)と原告弁護士23名らとの再審請求ないし国家賠償請求訴訟等の準備を目的とする別紙面会状況表記載の253回の各面会について、拘置所の職員の立会いのない秘密面会を許さず、また、面会時間を30分に制限した拘置所長の措置が違法であると主張して、被告国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案において、拘置所長が、上記各面会の一部を除き、秘密面会を許さなかったことにつき、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったものとして、過失があったことは明らかであるとし、本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会につき、面会時間を一律に30分に制限した拘置所長の措置は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して上記各面会をした原告A及び原告弁護士らの面会の利益をいずれも侵害したものとして、国家賠償法1条1項の適用上違法となるなどとして、原告Aの請求については認容し、原告弁護士20名らの請求については、請求額を減額したうえで一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
2017.05.16
文書提出命令に対する即時抗告事件
LEX/DB25448592/福岡高等裁判所宮崎支部 平成29年 3月30日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第4号
鹿児島県警察所属の警察官5名が、Aに対して違法な制圧行為を行い、これによりAを死亡させたとして、Aの父母である相手方らが国家賠償を求めた基本事件について、相手方らが、報道機関が制圧状況を撮影したビデオ映像である本件準文書の提出を求める文書提出命令の申立てをし、原審が、鹿児島地方検察庁検察官に対し、その提出を命ずる決定をしたのに対し、準文書の所持者である抗告人(検察官)が、即時抗告を申し立てた事案において、本件準文書の提出を拒否した検察官の裁量判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用するものであるとは認められないとして、原決定を取り消し、文書提出命令の申立てを却下した事例。
2017.05.16
LEX/DB25545342/和歌山地方裁判所 平成29年 3月29日 決定 (再審請求審)/平成21年(た)第2号
被害者P5に対する殺人事件(くず湯事件)及び被害者P6のほか66名に対する殺人、殺人未遂事件(カレー毒物混入事件)の確定判決は、請求人が犯人であると認定して有罪としたが、弁護人らが新たに提出する証拠により請求人の無罪が明らかであるから、刑事訴訟法435条6号により再審を開始する旨の決定を求めた事案において、新旧全証拠を総合して検討してみても、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生じる余地はないというべきであり、弁護人らの提出したカレー毒物混入事件に係る新証拠はいずれも刑事訴訟法435条6号にいう明白性を欠くなどとして、本件再審請求を棄却した事例。
2017.05.16
軽犯罪法違反被告事件(ビル駐輪場で立ち小便 被告に逆転有罪 「街路」に当たる)
LEX/DB25545228/大阪高等裁判所 平成29年 2月 7日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第938号
被告人が、駐輪場で、公衆の集合する場所で小便をしたとして、軽犯罪法違反で起訴され、原審が、非常階段の扉の前付近を含む上記駐輪場は、平素多数の人が集合する場所とは言えず、軽犯罪法1条26号の規定する「公衆の集合する場所」に該当せず、犯罪が成立しないとして無罪を言い渡したため、検察官が、原判決は、法令の解釈適用を誤った結果、事実を誤認したものであると主張して控訴した事案において、上記駐輪場は、軽犯罪法1条26号所定の「公衆の集合する場所」には該当しないものの、職権で判断すると、軽犯罪法1条26号所定の「街路」には該当することから、原審の訴訟手続には、検察官に対し、犯行場所に「街路」を含む訴因に訴因変更するよう促し又はこれを命じる義務があるのに、これをしないで無罪判決をした審理不尽の違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、科料9900円を言い渡した事例。
2017.05.16
軽犯罪法違反被告事件
(平成29年2月7日大阪高等裁判所(平成28年(う)第938号)の原審)
LEX/DB25545227/大阪簡易裁判所 平成28年 8月10日 判決 (第一審)/平成28年(ろ)第29号
被告人が、駐輪場で、公衆の集合する場所で小便をしたとして、軽犯罪法違反で起訴された事案において、非常階段の扉の前付近を含む上記駐輪場は、平素多数の人が集合する場所とは言えず、軽犯罪法1条26号の規定する「公衆の集合する場所」に該当せず、犯罪が成立しないとして無罪を言い渡した事例。
2017.04.11
再審請求棄却決定に対する即時抗告の決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25448574/最高裁判所第一小法廷 平成29年 3月31日 決定 (特別抗告審)/平成28年(し)第639号
請求人は、自宅で、当時の被告人の妻Aに対し、その鼻部付近を手のひらで押し、同人を転倒させて臀部を床に打ち付ける暴行を加え、加療約5日間を要する左臀部挫傷、鼻部打撲の傷害を負わせたとの事実で起訴され、簡裁で、罰金15万円に処する旨の略式命令を受け確定(本件確定裁判)したが、無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとして、本件確定裁判に対する再審を請求し、新証拠として、「実際には暴行を受けていないし、けがもしていないが、請求人との離婚を有利に進めるため、医師に頼んで診断書を書いてもらい、虚偽の被害届を出した」という内容のAの陳述書等を提出し、原々審は、無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したときに該当するものとはいえないとし棄却したため、請求人が即時抗告し、原審は、原々審の決定を取り消し、再審開始の決定をしたため、検察側が特別抗告した事案において、Aの証人尋問や請求人の本人尋問等を行わないまま、陳述書の信用性は相当に高いなどと評価し、陳述書等の新証拠を基にすると、Aの従前の供述や請求人の捜査官に対する自白は信用するに足りるものとはいえないと断定して、新証拠が請求人に対し無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たると判断した原審の手続には、新証拠の信用性、とりわけ陳述書の作成経緯・過程の吟味を怠った点で、審理不尽の違法があるとして、原決定を取消し、高裁へ差し戻した事例。
2017.03.21
窃盗,建造物侵入,傷害被告事件
★「新・判例解説Watch」H29.5月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています★
LEX/DB25448527/最高裁判所大法廷 平成29年 3月15日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第442号
被告人が複数の共犯者と共に犯したと疑われていた窃盗事件に関し、組織性の有無、程度や組織内における被告人の役割を含む犯行の全容を解明するための捜査の一環として、約6か月半の間、被告人、共犯者のほか、被告人の知人女性も使用する蓋然性があった自動車等合計19台に、同人らの承諾なく、かつ、令状を取得することなく、GPS端末を取り付けた上、その所在を検索して移動状況を把握するという方法によりGPS捜査が実施されたことにつき、第1審は、GPS捜査により直接得られた証拠及びこれに密接に関連する証拠の証拠能力を否定したが、その余の証拠に基づき被告人を有罪と認定し、これに対し、原判決は、GPS捜査に重大な違法があったとはいえないと説示して、第1審判決が証拠能力を否定しなかったその余の証拠についてその証拠能力を否定せず、被告人の控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠の証拠能力を否定する一方で、その余の証拠につき、同捜査に密接に関連するとまでは認められないとして証拠能力を肯定し、これに基づき被告人を有罪と認定した第1審判決は正当であり、第1審判決を維持した原判決の結論に誤りはないとし、上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2017.03.21
窃盗被告事件(窃盗 元アナウンサー 逆転無罪)
LEX/DB25448514/最高裁判所第二小法廷 平成29年 3月10日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第63号
被告人が、銀行で、客の被害女性Aが記帳台の上に置いていた現金(6万6600円)及び振込用紙2枚在中の封筒1通を窃取したとして起訴され、第1審は、(1)前日の夜、手持ちの封筒の中に振込用紙2枚とともに現金を入れたとするB(Aの母親)の証言、及び、当日の朝、出掛ける前に、上記封筒の中に現金が入っていることを確認したとするAの証言の各信用性を肯定して、Aが封筒を記帳台上に置き忘れた時点でその中に現金が在中していたとの事実を認定し、(2)同銀行に設置された防犯カメラの映像によれば、Aが封筒を置き忘れてから、行員が記帳台上に置き忘れられた封筒(現金の在中していないもの)を発見するまでの間に、封筒から現金を抜き取ることが可能であったのは、Aと同じ記帳台を利用した被告人しかいないとして、犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年、執行猶予3年を言い渡したため、被告人が控訴し、第2審は、第1審の認定を是認して、控訴を棄却したため、これに不服の被告人が上告した事案において、被告人が公訴事実記載の窃盗に及んだと断定するには、合理的な疑いが残るとし、被告人に窃盗罪の成立を認めた第1審判決及びこれを是認した原判決には、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があるとし、これを破棄し、被告人に対し、無罪を言い渡した事例(反対意見がある)。
2017.03.14
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25545018/大阪地方裁判所 平成29年 2月13日 判決 (第一審)/平成28年(わ)第863号
路上での職務質問の後、最終的に警察署において被告人に捜索差押許可状が示され、採取された被告人の尿から覚せい剤が検出された事案において、証拠上被告人に覚せい剤の使用の確定的故意があったとまではいえないが、大麻取締法違反により猶予歴のある被告人が、未必的故意をもって覚せい剤を使用したといえる事案であるからその刑事責任は軽くはないし、窃盗罪による累犯前科もあるから、覚せい剤事犯の前科がないことも考慮した上での実刑判決が相当であるとし、懲役1年8か月に処した事例。
2017.03.14
詐欺、詐欺未遂被告事件
LEX/DB25545030/大阪地方裁判所 平成29年 2月 7日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第4441号
詐欺グループの一員として稼働していたとする被告人が、その役割のうち、上位者の指示を受取役へ連絡等すること、受取役から詐取金を受け取り、被告人を含む上位者に渡すこと、受取役に報酬を渡すことの各役割については、共犯者に引き継いだが、〔1〕共犯者から報告を受け、その内容を上位者に伝えること、〔2〕共犯者から詐取金を受け取り、上位者に渡すこと、〔3〕共犯者を含む受取役に対する報酬を用意し、共犯者に渡すこと、〔4〕犯行に使用する携帯電話を用意し、共犯者に渡したりすることについての役割を担っていたとして、詐欺の共同正犯として起訴された事案において、検察官の主張事実の柱となる各供述は、関係者の供述と矛盾したり、供述内容が一貫せず、供述内容自体に不自然、不合理な点が含まれるなど、信用できないとし、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2017.02.28
各窃盗被告事件(令状なしのGPS捜査は違法 証拠採用は認める)
LEX/DB25544851/東京地方裁判所立川支部 平成28年12月22日 決定 (第一審)/平成27年(わ)第470号 等
検察官請求証拠に関して、〔1〕本件各窃盗被告事件の捜査機関が、被告人らの使用車両にGPS端末を取り付け、その位置情報を取得する捜査を行っているところ、本件GPS捜査は、被告人らのプライバシー権等を侵害するから強制処分であるにもかかわらず無令状で行われていること、もしくは仮に強制処分ではないとしても任意捜査の限界を超えていることから違法であり、〔2〕犯罪予防のための警察官の権限や職責に関する警察法2条、警察官職務執行法2条、5条の規定等に照らすと、被告人らが犯行に着手する前に制止せずに泳がせていた捜査は、被告人らの弁解の機会を奪ったことや被害者救済の観点等から違法であるとして、いずれも令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、本件各証拠は,上記違法捜査によって得られた証拠及び派生的証拠であって、これらを証拠として許容することは将来における違法捜査抑制の見地からして相当でないから、証拠能力がなく、証拠として採用すべきではない旨を被告人両名の弁護人が主張した事案において、本件GPS捜査に令状主義の精神を没却するような重大な違法はないから、弁護人ら指摘の本件各証拠の証拠能力は否定されないとして、証拠の採用を決定した事例。
2017.01.31
各刑の執行猶予の言渡し取消し決定に対する各即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25448397/最高裁判所第二小法廷 平成29年 1月16日 決定 (特別抗告審)/平成29年(し)第8号
申立人(被請求人)が、(1)平成26年1月28日、窃盗罪により懲役2年・執行猶予3年を言い渡され、(2)平成27年5月14日、窃盗未遂罪により懲役1年・保護観察付き執行猶予4年を言い渡され、さらに、(3)平成28年6月から7月の間、3件の窃盗罪で、平成28年11月21日、懲役6月を言い渡された(控訴審係属中)中で、検察官が、前記(1)(2)の各刑の執行猶予の言渡し取消しを請求したところ、原々審は、前記(3)の窃盗3件と同一の事実を認定し、保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いと認め、前記(2)の刑の執行猶予の言渡しを取消し、前記(1)の刑の執行猶予の言渡しを取り消す各原々決定をしたが、各原々決定の謄本を、いずれも検察官と原々審で申立人が選任した弁護人2名のうち主任弁護人に対して送達したものの、申立人に対して送達しなかったことにより、申立人が、前記弁護人2名を原審の弁護人として改めて選任し、各原々決定に対してそれぞれ即時抗告を申し立てたが、原審が、本件各即時抗告をいずれも棄却したため、申立人が特別抗告した事案において、刑事訴訟規則34条は、「裁判の告知は、公判廷においては、宣告によつてこれをし、その他の場合には、裁判書の謄本を送達してこれをしなければならない。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。」と規定しているところ、刑の執行猶予の言渡し取消し請求において、同条により刑の執行猶予の言渡し取消し決定の謄本の送達を受けるべき者は、検察官及び猶予の言渡しを受けた者(被請求人)であり、また、同謄本が、被請求人の選任した弁護人に対して送達されたからといって、被請求人に対する送達が行われたものと同じ法的な効果は生じないと解するのが相当であるとし、原決定を取り消し、各原々決定の謄本が申立人に対して送達された後、各即時抗告に対する判断が行われるのが相当であるから、各事件を原裁判所である高等裁判所に差し戻しを命じた事例。
2017.01.17
損害賠償請求事件
LEX/DB25544474/大阪地方裁判所 平成28年12月 9日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第363号
原告が、大阪府警察署の留置施設に収容されていた際、警察官が原告を違法に留置保護室に収容しようとしたこと、警察官から暴行を受けたこと、防衛のために警察官に暴力を振るったにもかかわらず、警察官が内容虚偽の調書を作成し、公務執行妨害、傷害の事実で起訴された上、警察官が刑事裁判の公判期日において偽証をしたことによって精神的損害を被ったと主張し、被告大阪府に対し、国家賠償法1条に基づき、慰謝料等の支払を求めるとともに、上記公務執行妨害、傷害の捜査を担当していた検察官が故意に警察官に内容虚偽の供述調書を作成させたか又は必要な捜査を怠り、公判を担当していた検察官が故意に警察官に偽証させたか又は必要な注意義務を怠り、それによって精神的損害を被ったと主張し、被告国に対し、国家賠償法1条に基づき、被告大阪府と連帯して、慰謝料等の支払を求めた事案において、巡査長による違法な暴行があったとは認めらず、巡査長が原告を留置保護室に収容しようとしたことが違法であったとはいえないとし、また、副検事及び検事の行為が国家賠償法上違法ではないとしたが、大阪府警察の警察官が、巡査長及び巡査に働きかけるなどして両名の供述とは一部異なる内容が記載された供述調書を作成したことについては、被告大阪府は、原告に対し、慰謝料を支払う義務を負うとし、請求額を減額したうえで、認容した事例。
2016.12.27
殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25448338/最高裁判所第一小法廷 平成28年12月19日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第1856号
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事実により、第1審裁判所は、第1回公判期日で、弁護人により、被告人が精神疾患に罹患していることを理由に公判手続の停止の申立てがされ、第2回公判期日以降、公判手続の停止に関する審理が行われ、第7回公判期日で、被告人が心神喪失の状態にあると認め、刑事訴訟法314条1項により、その状態の続いている間、公判手続を停止する旨決定した後、被告人の勾留の執行を停止する旨決定し、被告人は、措置入院を受け、被告人の入院治療はその後も続けられ、第1審判決まで約17年間にわたり公判手続が停止された審理経過を経て、第1審判決は、被告人について、非可逆的な慢性化した統合失調症の症状に脳萎縮による認知機能の障害が重なっており、訴訟能力はなく、その回復の見込みがないとし、公訴棄却の判決を言い渡したが、検察官が控訴し、原判決も、第1審判決と同様、被告人が訴訟能力が欠けており、その回復の見込みがないとしたいと判断した上で、公訴を取り消さない判断をした検察官の裁量を合理的でないと断定することはできず、検察官が公訴を取り消さないことが明らかに不合理であると認められる極限的な場合に当たるとはいえないとし、本件公訴を棄却した第1審判決は、刑事訴訟法338条4号の解釈適用を誤り、不法に公訴を棄却したもので、第1審判決を破棄し、第1審裁判所に差し戻しを言い渡したため、弁護人が上告した事案において、被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後、訴訟能力の回復の見込みがなく公判手続の再開の可能性がないと判断される場合、裁判所は、刑事訴訟法338条4号に準じて、判決で公訴を棄却することができると判断し、これと異なる解釈に基づいて、公訴棄却を言い渡した第1審判決を破棄した原判決には、刑事訴訟法338条4号の解釈適用を誤った違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるとして、原判決を破棄し、本件公訴を棄却した第1審判決は正当であり,第1審判決には不法に公訴を棄却した誤りがある旨主張する検察官の控訴も理由がないとし、控訴を棄却した事例(補足意見がある)。