注目の判例

民法(財産法)

2023.02.14
発信者情報開示請求事件
LEX/DB25572563/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 1月30日 判決 (上告審)/令和3年(受)第2050号
インターネット上の電子掲示板に原判決別紙2投稿記事目録記載の本件記事が投稿されたことによって自己の権利を侵害されたとする上告人が、本件記事を投稿した者にインターネット接続サービスを提供した経由プロバイダである被上告人に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項(令和3年法律第27号による改正前のもの)に基づき、上記権利の侵害に係る発信者情報として、被上告人の保有する原判決別紙1発信者情報目録記載〔5〕の本件情報(発信者の電話番号)等の開示を請求したところ、原審は、本件情報の開示を求める上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該権利の侵害が改正省令の施行前にされたものであったとしても、プロバイダー責任制限法4条1項に基づき、当該権利の侵害に係る発信者情報として、上記施行後に発信者の電話番号の開示を請求することができるとして、上告人は、上記施行前に本件記事の投稿によってされた自己の権利の侵害に係る発信者情報として、発信者の電話番号の開示を請求することができるとして、原判決中、上告人の原審における追加請求に関する部分は破棄し、原審の確定した事実関係の下においては、上記部分に関する上告人の請求は理由があるから、上記請求を認容した事例。
2023.02.14
損害賠償請求事件
LEX/DB25572561/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 1月27日 判決 (上告審)/令和3年(受)第968号
統合失調症の治療のため、上告人(被告・被控訴人。香川県)の設置する本件病院に入院した患者が、入院中に無断離院をして自殺したことについて、患者の相続人である被上告人(原告・控訴人)が、上告人には、診療契約に基づき、本件病院においては無断離院の防止策が十分に講じられていないことを患者に対して説明すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った説明義務違反があるなどと主張して、上告人に対し、債務不履行に基づく損害賠償を求め、原審は、平日の日中は敷地の出入口である門扉が開放され、通行者を監視する者がおらず、任意入院者に徘徊センサーを装着するなどの対策も講じていないため、単独での院内外出を許可されている任意入院者は無断離院をして自殺する危険性があることを負っていたとし、これをを怠った説明義務違反を理由とする被上告人の損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、上告人が、患者に対し、本件病院と他の病院の無断離院の防止策を比較した上で入院する病院を選択する機会を保障すべきであったということはできず、これを保障するため、上告人が、患者に対し、本件病院の医師を通じて、説明をすべき義務があったということはできないとし、本件病院の医師が、本件患者に対し、説明をしなかったことをもって、上告人に説明義務違反があったということはできないとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、上記部分に関する被上告人の請求を棄却した事例。
2022.12.27
消費者契約法12条に基づく差止等請求事件
LEX/DB25572479/最高裁判所第一小法廷 令和 4年12月12日 判決 (上告審)/令和3年(受)第987号
一審原告(適格消費者団体・上告人)が、一審被告(家賃債務保証会社・被上告人)に対し、一審被告がした賃貸人、賃借人等との間で、「住み替えかんたんシステム保証契約書」と題する契約書(本件契約書)13条1項前段、18条2項2号等の各条項が消費者契約法10条に規定する消費者の利益を一方的に害する消費者契約の条項に当たるなどと主張して、消費者契約法12条3項本文に基づき、上記各条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の各差止め、上記各条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙の各廃棄等を求めたところ、第1審判決は、契約書用紙の各廃棄することで一審原告の請求を一部認容、一部棄却したため、双方が控訴し、原判決は、一審原告の本件契約書13条1項前段に関する請求を棄却したことにより、一審原告が上告をした事案で、本件契約書13条1項前段、及び、本件契約書18条2項2号は、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たるとし、原判決主文第1項を破棄して、一審被告の控訴を棄却し、原判決中、本件契約書13条1項前段に係る請求に関する部分を主文第2項のとおり変更するとともに、一審原告の本件契約書18条2項2号に係るその余の請求に関する上告を棄却した事例。
2022.11.22
損害賠償請求事件
LEX/DB25593553/札幌地方裁判所 令和 4年10月19日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第295号
被告が開設し経営する被告病院において、入院治療中に死亡したP4の配偶者であるP1(令和4年7月20日に死亡し、原告がその訴訟上の地位を承継)及び子である原告が、被告に対し、〔1〕亡P4は、敗血症にり患し、急性腎不全の状態にあったから、造影剤を投与すべきではなかったにもかかわらず、造影CTを行うために造影剤を投与した注意義務違反があり、これにより急性腎不全を重篤化させるとともに、心原性ショックを生じさせ、その結果、乏尿状態となったのであるから、〔2〕大量の輸液投与をすべきではなかったにもかかわらず、これを行った注意義務違反があり、これらにより、亡P4に高カリウム血症を生じさせ、うっ血性心不全により死亡させたと主張し、被告に対し、診療契約上の債務不履行に基づき、それぞれ、損害金の支払等を求めた事案で、造影剤投与行為及び大量輸液行為によって、亡P4が死亡したとは認められず、造影剤投与行為及び大量輸液行為が注意義務違反であるとはいえないとして、原告の請求を棄却した事例。
2022.10.18
取立金請求事件
LEX/DB25572355/最高裁判所第一小法廷 令和 4年10月 6日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1462号
補償金の支払請求権を差し押さえた上告人が、被上告人(マンション建替事業の施行者)に対し、本件補償金及びこれに対する遅延損害金を供託の方法により支払うことを求めた取立訴訟で、原審は、上告人の請求を棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案で、被上告人は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律76条3項に基づく本件補償金の供託義務を負うところ、本件補償金の支払請求権に対して、上告人、北おおさか信用金庫及び近畿信用保証の各申立てに基づき、複数の差押命令が発せられ、差押えの競合が生じたのであるから、被上告人は、本件補償金について、同項及び民事執行法156条2項を根拠法条とする混合供託をしなければならないとし、被上告人は、本件供託をもって上告人に対抗することができないことになり、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、これを棄却した第1審判決を取消し、上記請求を認容した事例。
2022.10.04
賃借権不存在等確認請求控訴事件
LEX/DB25593194/東京高等裁判所 令和 3年 9月 9日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第421号
被控訴人会社との間で、本件土地につき建物所有を目的として賃貸借契約を締結している控訴人会社が、被控訴人から本件賃貸借契約には同契約を更新することなく当然に終了させる旨の合意があるなどと主張されていることから、本件賃貸借契約が借地借家法5条及び6条の適用のある賃貸借契約であることの確認を求める利益があると主張して、被控訴人との間でその確認を求め、原審が、本件の確認の訴えは即時確定の利益があるとはいえず、不適法であるとして却下したため、控訴人が控訴した事案で、本件借地権が借地借家法5条及び6条の適用を受けるものであるか否かは、本件借地権及び本件受益権の現在の財産的価格並びに本件土地及び本件建物に係る控訴人の権利関係全般に影響を及ぼす権利内容ということができるのであって、本件賃貸借契約の賃貸人である被控訴人が本件借地権につき上記各規定の適用による更新の余地を否定していることに照らせば、これにより控訴人の権利及び法的地位に危険又は不安が現存するものと評価すべきであり、その危険又は不安を除去するためには、本件の確認請求について判決をすることが必要かつ適切であると認めるのが相当であるところ、控訴人の訴えを却下した原判決は相当でないとしてこれを取り消し、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2022.09.13
損害賠償請求控訴事件、損害賠償請求附帯控訴事件
LEX/DB25593003/東京高等裁判所 令和 4年 7月 6日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第5471号 等
被控訴人(原審被告)医療法人との間で診療契約を締結したP3が、被控訴人医療法人の被用者であるP4医師から、被控訴人医療法人の開設する本件病院において、患者自身のがん組織を用いて作製されたワクチンによる治療を受けた際、P4医師及び被控訴人(原審被告)C社は、共謀して、P3に対し、本件治療において必要な説明をせず、また、必要な検査を実施せず、P3を死亡させたとして、P3の相続人である控訴人(原審原告)が、被控訴人医療法人に対して民法715条1項に基づき、被控訴人C社に対して民法709条に基づき、連帯して損害賠償金等の支払を求め、原審が、P4医師の説明義務違反を認め、本訴請求のうち被控訴人医療法人に対して110万円の支払等を命じ、その余の請求を棄却したところ、控訴人が原判決中控訴人敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人医療法人も原判決中同被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴した事案で、控訴人の請求(当審において請求を減縮したもの)は、被控訴人医療法人に対して270万4760円及びうち245万4760円に対する平成29年8月12日から支払済みまで年5%の割合による金員の支払を求める限度で一部認容し、その余の請求を棄却すべきであるところ、これと異なり、被控訴人医療法人に対して110万円及びこれに対する平成29年8月12日から支払済みまで年5%の割合による金員の限度で請求を一部認容し、その余を棄却した原判決は一部失当であって、控訴人の被控訴人医療法人に対する本件控訴は一部理由があるから、原判決のうち被控訴人医療法人に対する請求に関する部分を上記のとおり変更することとし(仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さない。)、被控訴人C社に対する本件控訴及び被控訴人医療法人の附帯控訴をいずれも棄却した事例。
2022.09.06
不当利得返還請求事件
LEX/DB25592784/東京地方裁判所 令和 4年 4月21日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第25492号
妹である原告が兄である被告に対し、被告が〔1〕母である亡Cの預金から引き出された使途不明金、〔2〕亡Cの葬儀に係る香典、〔3〕その遺産である不動産の賃料収入等から利得を得たが、被告の利得の法定相続分の2分の1を超える部分は法律上の原因を欠くとして、不当利得返還請求権に基づき、使途不明金に係る合計222万7500円及びうち147万5000円に対する利得が生じた最終日である平成31年3月4日から、うち60万円に対する同最終日である令和元年9月24日から、うち15万2500円に対する同最終日である同年10月8日から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、香典及び賃料収入等に係る合計87万9007円及びうち香典に係る18万円に対する訴状送達の日の翌日である令和2年10月15日から、うち賃料収入等に係る69万9007円に対する利得が生じた後の日である令和3年11月1日から各支払済みまで民法404条2項所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案において、原告の被告に対する不当利得返還請求権に基づく請求は、73万3887円及びうち11万5000円に対する訴状送達の日の翌日である令和2年10月15日から、うち61万8887円に対する令和3年11月29日付け訴え変更の申立書送達の日の翌日である同年12月3日から各支払済みまで民法404条2項所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとして一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
2022.04.26
共有持分権確認請求事件
LEX/DB25572093/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 4月12日 判決 (上告審)/令和3年(受)第919号
上告人は、本件建物の建築時に上告人及び被上告人を含む3町内会の間で本件建物をその3町内会の共有とする旨の合意がされた旨主張したが、これに対し、被上告人は、本件合意がされた事実はないから、上告人は本件建物の共有持分権を有しない旨主張したところ、第1審は、本件合意の存否が本件の争点であり、本件合意があったと認められるとして、本件請求を認容する判決をし、被上告人が控訴し、原審は、本件請求は本件建物の共有持分権が上告人自体に帰属することの確認を求めるものであるところ、権利能力のない社団である上告人が所有権等の主体となることはできないとして、本件請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、原審が、上告人の請求につき共有持分権の構成員全員への総有的帰属の確認を求める趣旨か否かについて、釈明権の行使を怠った違法があるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2022.02.22
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25591421/大阪高等裁判所 令和 3年12月15日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第281号
控訴人が、自らの乗車していた車両と被控訴人b運転の車両との交通事故により脳脊髄液漏出症等の傷害を負い、損害が発生したと主張して、被控訴人bに対しては不法行為に基づき、被控訴人bの使用者である被控訴人会社に対しては使用者責任に基づき、連帯して損害賠償金の支払等を求め、原審は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案において、本件事故に起因して脳脊髄液漏出症が生じ、これが持続しているものと認め、控訴人に後遺している障害は、「神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」として後遺障害等級9級10号に該当するとしたうえで、本件事故時の被控訴人bには、前方を注視して自動車を運転すべき注意義務を怠った過失があり、不法行為責任を負うとし、被控訴人会社は、使用者責任を負うとして、原判決を変更し、損害賠償金の支払について請求額を減額した内容で一部認容した事例。
2022.02.08
離婚等請求本訴,同反訴事件
LEX/DB25571927/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 1月28日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1765号
平成16年11月に婚姻の届出をし、婚姻後同居し、2子をもうけたが、平成29年3月に別居するに至った夫婦の上告人と被上告人の間で、上告人が、本訴として、被上告人に対し、離婚を請求するなどし、被上告人が、反訴として、上告人に対し、離婚を請求するなどするとともに、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、原審が、被上告人の離婚請求を認容し、被上告人の慰謝料請求を120万円の限度で認容すべきものとした上で、上記120万円に対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求を認容したため、上告人が上告した事案で、離婚に伴う慰謝料として上告人が負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥るとして、改正法の施行日前に上告人が遅滞の責任を負ったということはできず、上記債務の遅延損害金の利率は、改正法による改正後の民法404条2項所定の年3パーセントであるとし、原判決中、上記部分を認容した部分を主文第1項のとおり変更し、子の監護費用の分担に関する上告については却下し、その余の上告については棄却した事例。
2022.02.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571900/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 1月18日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1518号
被上告人会社の株主であった上告人が、被上告人会社の違法な新株発行等により自己の保有する株式の価値が低下して損害を被ったとして、被上告人会社の代表取締役である被上告人Y2に対しては民法709条等に基づき、被上告人会社に対しては会社法350条等に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、本件新株発行について不法行為が成立するとして、上告人の請求のうち被上告人Y2に対する民法709条に基づく損害賠償請求及び被上告人会社に対する会社法350条に基づく損害賠償請求をそれぞれ一部認容したが、その際、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金について民法405条は適用又は類推適用されず、遅延損害金を元本に組み入れることはできない旨の判断をしたため、上告人が上告した事案で、上告審も、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は、民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることはできないとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2021.12.07
不当利得返還等請求事件(第1事件)、供託金還付請求権帰属確認請求事件(第2事件)
「新・判例解説Watch」財産法分野 令和4年2月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25591082/旭川地方裁判所 令和 3年10月 1日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第187号 等
名寄市の第3セクターの原告が、同セクターの支配人Dによって締結された被告との間の各債権譲渡契約が無効であるなどと主張して、被告に対し、【1】不当利得(民法703条)に基づいて、原告が被告から受領した金員(譲渡代金)と原告が被告に交付した金員(買戻代金)の差額556万2000円及びこれに対する遅延損害金の支払、【2】本件各供託金の還付請求権を原告が有することの確認を求めるとともに、上記【1】に係る予備的請求として、仮に各債権譲渡契約の全部が無効でないとしても、制限利率を超えて被告が買戻代金を取得した部分は無効であり、被告は悪意の受益者であるなどと主張して、不当利得に基づいて、原告被告間の取引を一連計算した上で、被告が制限利率を超えて受領した過払金及び最終取引日である令和元年5月29日までの過払利息の合計427万7751円、並びに遅延利息の支払を求めた事案(第1事件)と、被告が、原告に対し、上記各債権譲渡契約が有効であることを前提として、本件各供託金の還付請求権を被告が有することの確認を求めた事案(第2事件)で、被告は、原告に対し、196万2000円及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じ、原告と被告との間において、原告が本件供託金の還付請求権を有することを確認するとして一部認容し、第1事件に係る原告のその余の請求をいずれも棄却し、第2事件に係る被告の請求を棄却した事例。
2021.11.30
アスベスト被害に基づく損害賠償請求事件(〔1〕事件)、承継参加事件(〔2〕事件)
LEX/DB25591046/岡山地方裁判所 令和 3年10月20日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第235号 等
過去に石綿工場において石綿を原料に含む煙突製品の製造業務に従事していた亡gの相続人である原告及び参加人b、並びに亡gの相続人である亡hの相続人である参加人c及び参加人dが、石綿含有建築材の使用について規制権限を有していた被告による石綿の粉じん規制が不十分であったために、亡gが、石綿工場において作業に従事したことにより石綿粉じんの曝露を受け、肺がんに罹患して死亡し、被告に対して国家賠償法1条1項に基づく1430万円(慰謝料及び弁護士費用)の損害賠償請求権を有していたところ、原告及び参加人らがこれを相続したと主張して、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、原告及び参加人bにつき各476万6667円、参加人c及びdにつき各238万3333円、並びに、これらに対する遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案で、参加人ら相続債権について、原告による本件訴訟提起により除斥期間経過前に権利行使されたといえるから、除斥期間の経過により消滅していないと判示し、原告及び参加人らの本件各請求を一部認容し、原告らのその余の請求を棄却した事例。
2021.11.30
詐害行為取消請求事件
LEX/DB25591036/東京地方裁判所 令和 3年 9月 8日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第14636号
T社に対して租税債権を有すると主張する原告(国)が、T社が被告銀行らとの間で本件各根抵当権設定契約を締結したことが詐害行為に該当すると主張して、国税通則法42条及び平成29年法律第44号による改正前の民法424条の規定による詐害行為取消権に基づき、被告Y1銀行に対しては、本件各根抵当権設定契約の取消し並びに本件根抵当権設定登記及び根抵当権一部移転登記の抹消登記手続を求め、被告Y2銀行に対しては、本件各根抵当権設定契約の取消し及び根抵当権設定登記の抹消登記手続を求めた事案において、T社による本件各根抵当権設定契約の締結行為は、原告との関係で詐害行為に該当するものとし、被告銀行らが、T社による本件各根抵当権設定契約の締結行為が詐害行為に該当することを認識していなかったものとは認められないとして、原告の請求をいずれも認容した事例。
2021.11.24
投稿記事削除請求事件
LEX/DB25591035/大阪地方裁判所 令和 3年10月28日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第7156号
原告(結婚情報提供サービス業等を目的とした会社)が、被告が管理運営する地図サービスの「クチコミ」欄を利用して投稿された本件記事により原告の名誉が毀損されたと主張して、被告に対し、人格権(名誉権)に基づく妨害排除請求として、本件記事の削除を求めるとともに、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報開示請求として、本件ログイン時のIPアドレス等の開示を求めた事案において、本件侵害部分が原告の名誉を毀損することが明らかであるとまで認めることはできないとして、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2021.11.16
損害賠償請求事件
LEX/DB25571787/最高裁判所第三小法廷 令和 3年11月 2日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1252号
車両を運転中に交通事故に遭った被上告人が、加害車両の運転者である上告人に対し、不法行為等に基づき、上記交通事故により被上告人に生じた身体傷害及び車両損傷を理由とする各損害の賠償を求め、上記車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権が、平成29年法律第44号による改正前の民法724条前段所定の3年の消滅時効により消滅したか否かが争点となった事案で、被上告人は、本件事故の日に少なくとも弁護士費用に係る損害を除く本件車両損傷を理由とする損害を知ったものと認め、遅くとも平成27年8月13日までに本件事故の加害者を知ったものであるから、本件訴訟提起時には、被上告人の上告人に対する不法行為に基づく上記損害の賠償請求権の短期消滅時効が完成していたことが明らかであると判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、本件車両損傷を理由とする損害賠償請求に関する部分を破棄し、上記部分に関する被上告人の請求は理由がないから、同部分につき第1審判決を取消し、同部分に関する被上告人の請求を棄却し、上告人のその余の上告を却下した事例。
2021.11.02
損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
LEX/DB25590788/福岡高等裁判所宮崎支部 令和 3年9月15日 判決 (控訴審)/平成31年(ネ)第96号 等
亡患者の相続人である被控訴人(一審原告)らが、控訴人(一審被告)が運営する本件病院に入院していた亡患者が死亡したことについて、本件病院の医師には輸液過剰にならない限度での大量かつ相当な輸液を実施すべき注意義務等の違反があり、又は、本件病院の看護師には患者の容体急変時点で直ちに当直医に連絡すべき注意義務の違反があり、これらの注意義務違反により患者は死亡したと主張し、控訴人に対し、不法行為(使用者責任)又は債務不履行による損害賠償を求め、原審は、被控訴人X1の請求について、1309万1244円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で,被控訴人X2並びに被控訴人X3の各請求ついて、それぞれ704万5621円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求をいずれも棄却したことに対し、当事者双方が上記各敗訴部分を不服として、控訴人が本件控訴を、被控訴人らが本件各附帯控訴をした事案で、被控訴人らの請求はいずれも棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であって、控訴人の控訴は理由があるから、原判決中、控訴人敗訴部分を取消して、同取消部分につき被控訴人らの請求をいずれも棄却し、被控訴人らの各附帯控訴は理由がないから、いずれも棄却した事例。
2021.11.02
損害賠償請求事件
LEX/DB25590816/神戸地方裁判所 令和 3年 8月31日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第1764号
消費生活協同組合である原告が、被告の実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」に係る補助金の交付事業に関し加盟店登録の登録申請を行ったところ、被告は、当初、原告のような消費生活協同組合についても加盟店として登録する旨の方針を示していたにもかかわらず、本件事業開始の直前に至って上記方針を撤回し、原告を加盟店として登録しないものとしたことは、原告と被告との間に形成された信頼関係を不当に破壊するものであって国家賠償法上違法であり、これにより、原告は、本件事業開始に向けて拠出した費用相当額の損害を被ったと主張して、被告(国)に対し、同法1条1項による損害賠償請求権に基づき、損害金合計2765万6640円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、原告の加盟店登録の対象であるとの信頼については、法的保護に値する利益に当たると認められ、被告が、農協・生協等の加盟店登録要件に関して、課税所得要件に加えて売上高等の事業規模に関する事情を考慮する方針に変更したことは、原告の上記信頼を不当に破壊するものとして、原告との関係において国賠法上違法であるとし、原告の請求は、被告に対し、損害金合計1186万5852円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
2021.10.05
制汗スプレー衣服変色損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25590658/東京高等裁判所 令和 2年 9月 3日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第476号
控訴人(原告)が、被控訴人(被告。化粧品等の製造及び販売等を業とする株式会社)に対し、被控訴人が製造販売するスプレータイプの本件制汗剤等を使用したことにより控訴人が着用した各肌着が変色するという被害を受けたとして、製造物責任法3条に基づき、各肌着の購入代金相当額の損害金1万2652円、債務不履行に基づき、本件制汗剤等の購入代金相当額の損害金3324円の合計1万5976円の支払を求め、原判決は、本件制汗剤等の使用と各肌着の変色との間に相当因果関係があると認めるに足りず、控訴人に損害が生じたとも、控訴人と被控訴人の間に契約関係があるともいえないとして、控訴人の請求を全部棄却したため、控訴人は、これを不服として、控訴した事案において、本件制汗剤等の使用と本件各肌着の変色との間に相当因果関係を認めるには十分ではないと判示し、控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。