注目の判例

刑事訴訟法

2023.03.28
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
LEX/DB25572679/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 7日 決定 (異議審)/令和5年(す)第14号
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対し、被告人が弁護人を介して被告人本人作成の上告趣意書を提出したはずであり、原決定には被告人本人の上告趣意について判断遺脱があるとして、異議申立てをした事案で、弁護人が上告棄却決定後に、被告人作成の上告趣意書を裁判所に提出した事実につき、原審がした上告棄却決定に何ら判断遺脱はないとして、本件申立てを棄却した事例。
2023.03.28
(日野町事件第2次再審請求開始決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25594460/大阪高等裁判所 令和 5年 2月27日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(く)第251号
P3(平成23年3月18日死亡。事件本人)に対する強盗殺人被告事件について、同人を犯人と認め、無期懲役に処した大津地方裁判所の確定判決につき再審の開始を認めた原決定に対し、弁護人が提出した証拠等の証明力を検討しないまま、新規性のある新証拠である限り、その証明力にかかわらず全て旧証拠との総合評価に立ち入った点、及び旧証拠に対する再評価を各証拠の立証命題とは関係なく行った点において、その判断は極めて違法・不当であり、確定判決の心証形成にみだりに介入した違法があるから、これを取消し、請求人らの再審請求を棄却する旨の裁判を求め、検察官の抗告人が、即時抗告をした事案で、事件本人を本件の犯人と認めた確定判決等の事実認定には合理的な疑いが生じており、原審で取り調べられた各新証拠は、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠に当たり、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠があらたに発見されたとし、刑事訴訟法435条6号、448条1項により、事件本人について再審を開始した原決定の結論は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.02.14
検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25572567/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 1月30日 決定 (特別抗告審)/令和4年(し)第594号
申立人が、東京簡易裁判所の略式命令により終結した政治資金規正法違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録(本件保管記録)の閲覧請求をしたのに対し、本件保管記録の保管検察官が、閲覧を一部不許可とした(本件閲覧一部不許可処分)ため、申立人が東京簡易裁判所に準抗告を申し立てたという事案の特別抗告審において、本件閲覧一部不許可処分は、検察庁法12条、関係通達に基づき、東京地方検察庁に属する検察官が東京区検察庁の検察官の事務を取り扱ってしたものであると認められ、地方検察庁に属する検察官が区検察庁の検察官の事務取扱いとして保管記録の閲覧に関する処分をした場合、当該区検察庁の対応する簡易裁判所は、刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」に当たるというべきであり、東京簡易裁判所は本件準抗告の管轄裁判所でないとして、本件閲覧一部不許可処分の当否を審査しないまま、本件準抗告を棄却した原決定を取消し、本件を東京簡易裁判所に差し戻すことを命じた事例。
2022.08.09
検察官がした押収物の還付に関する処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25572270/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 7月27日 決定 (特別抗告審)/令和4年(し)第25号
司法警察員が申立人から差し押さえた申立人所有の携帯電話機等について、申立人が、刑事訴訟法222条1項が準用する同法123条1項に基づき、東京地方検察庁検察官に対して還付を請求したところ、同検察官がこれに応じず還付をしない処分をしたため、同法430条1項の準抗告を申し立てたが、棄却されたことから、特別抗告を申し立てた事案で、申立人が本件各不還付物件の還付を請求することは、権利の濫用として許されないというべきであり、本件において、これと同旨の理由により検察官のした本件各処分を是認した各原決定は相当であるとして、本件各抗告を棄却した事例。
2022.08.02
営利略取、逮捕監禁致傷、大麻取締法違反被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
LEX/DB25572262/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 7月20日 決定 (異議審)/令和4年(す)第428号
営利略取、逮捕監禁致傷、大麻取締法違反事件につき、上告趣意書の差出最終日に弁護人が辞任し、上告趣意書の提出がなく、刑事訴訟法414条、376条、刑事訴訟規則266条、236条、252条により定めた期間内に上告趣意書を差し出さなかったことから、刑事訴訟法414条、386条1項1号により、上告棄却の決定がされたことに対して異議申立てをしたところ、上告趣意書の差出最終日には被告人に弁護人がなかったとしても、上告趣意書差出最終日までに上告趣意書を差し出さなかったことを理由に被告人の上告を棄却したことは正当であり、本件申立てには理由がないとして、本件申立てを棄却した事例。
2022.07.19
大崎事件第4次再審請求棄却決定
LEX/DB25592704/鹿児島地方裁判所 令和 4年 6月22日 決定 (再審請求審)/令和2年(た)第1号
請求人の母親であるA(事件当時の氏名はA’)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日鹿児島地方裁判所が言い渡した有罪判決(Aに対する確定判決)及び請求人の父親であるB(平成5年10月2日死亡)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日同裁判所が言い渡した有罪判決(Bに対する確定判決)に関し、A及びBに対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したから、請求人は、刑事訴訟法439条1項4号に該当する者として、同法435条6号により各再審開始の決定を求めた事案(いわゆる大崎事件第4次再審請求)で、本件各再審請求において弁護人が提出したN鑑定、S鑑定及びQ・R鑑定を含む新証拠は、他の全証拠と併せて総合的に評価しても、各確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠とはいえず、刑事訴訟法435条6号にいう、無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらないとして、本件各再審請求をいずれも棄却した事例。
2022.05.24
情報不開示決定取消等請求控訴事件
LEX/DB25592204/東京高等裁判所 令和 4年 4月 7日 判決 (差戻控訴審)/令和3年(行コ)第171号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた控訴人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前)に基づき、処分行政庁である東京矯正管区長に対し、控訴人が収容中に受けた診療に関する別紙記載の保有個人情報の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、本件情報の全部を開示しない旨の決定を受けたことから、本件決定が違法であると主張してその取消しを求めるとともに、本件決定により精神的苦痛を受けた等として、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料及び弁護士費用相当額の支払等を求め、第1審は、被収容者の医療情報である本件情報は、開示等に係る規定の適用除外となる行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たるとし、これを開示しない旨の本件決定は適法であるとして、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は控訴し、差戻し前の控訴審も控訴を棄却したが、上告審は、被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないと解するのが相当であるとし、本件情報は上記保有個人情報に当たらないから、同法12条1項の規定による開示請求の対象となるとし、これと異なる差戻前の控訴審を破棄し、更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻しを命じた。その後、差戻後の控訴審の事案において、控訴人の請求のうち、本件決定の取消しに係る部分の訴えは訴えの利益を欠き不適法であるから却下し、国家賠償請求については一部認容し、その余の請求を棄却した内容で、第1審判決を変更した事例。
2022.05.17
退院の許可の申立て棄却決定及び入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25572117/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 2月 8日 決定 (再抗告審)/令和3年(医へ)第27号
退院の許可の申立て棄却決定及び入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する各抗告棄却決定に対する再抗告をした事案で、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)による処遇制度に関し、憲法14条、34条違反をいう点は、医療観察法による処遇制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかであるなどとして、本件抗告を棄却した事例。
2022.04.12
損害賠償請求事件
LEX/DB25591862/大阪地方裁判所 令和 4年 3月11日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第3251号
刑事事件(いわゆる和歌山カレー事件)の被告人であった原告が、当該刑事事件において鑑定書を提出するなどした被告らに対し、〔1〕被告らによる虚偽の鑑定書の提出等が不法行為に該当し、〔2〕被告らによる記者会見での発言が原告の名誉を毀損するなどと主張して、共同不法行為に基づき、損害賠償金等の連帯支払を求めた事案において、本件各鑑定等が虚偽鑑定ないし偽証である違法である旨の原告の主張については、鑑定人等のその行為が著しく正義に反し、刑事裁判手続の法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情が認められないし、損害及び因果関係の観点からも原告の主張は認められないとし、また、本件記者会見に係る原告の主張についても、仮に、被告らの本件記者会見における本件説明が名誉毀損に該当する違法な行為と評価されるものであったとしても、本件訴え提起までに消滅時効が完成しており、被告らの時効の援用により、原告の被告らに対する名誉毀損を理由とした共同不法行為に基づく損害賠償請求権は消滅したといえるから、原告の主張は認められないとして、原告の請求を棄却した事例。
2022.03.29
再審請求棄却決定に対する異議申立て事件(名張毒ぶどう酒事件第10次再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定)
LEX/DB25591762/名古屋高等裁判所 令和 4年 3月 3日 決定 (異議審)/平成29年(け)第16号
亡被告人が、昭和36年3月28日、公民館において、地元住民らを構成員とする会の総会後に催された懇親会の席上で提供されるぶどう酒に、有機燐テップ製剤(農薬)を混入し、同ぶどう酒を飲んだ女性会員のうち5名を殺害したほか、12名に有機燐中毒症の傷害を負わせたとされる殺人及び殺人未遂被告事件(名張ぶどう酒事件)について死刑を言い渡した確定判決に対し、平成27年11月6日、刑事訴訟法439条1項4号に基づき被告人の妹として再審を請求し(第10次再審請求)、平成29年12月8日、名古屋高等裁判所がこれを棄却する決定をしたため、異議を申し立てた事案で、原審に提出された新証拠について無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらないとして再審請求を棄却した原決定の判断は是認できるとして、本件異議の申立てを棄却した事例。
2022.03.01
準強制わいせつ被告事件
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LEX/DB25571962/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 2月18日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1026号
外科医として勤務する被告人が、自身が執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者である女性Aが同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあることを利用し、わいせつな行為をしようと考え、病室内で、ベッド上に横たわるAに対し、その着衣をめくって左乳房を露出させた上、その左乳首をなめるなどし、Aの抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたと起訴され、第1審判決は、被告人に無罪を言い渡したが、原判決は、第1審判決には事実誤認があるとしてこれを破棄し、準強制わいせつ罪の成立を認めて被告人を懲役2年に処したため、被告人が上告した事案で、Aの証言の信用性判断において重要となるDNAの本件定量検査の結果の信頼性については、これを肯定する方向に働く事情も存在するものの、なお未だ明確でない部分があり、それにもかかわらず、この点について審理を尽くすことなく、Aの証言に本件アミラーゼ鑑定及び本件定量検査の結果等の証拠を総合すれば、被告人がわいせつ行為をしたと認められるとした原判決には、審理不尽の違法があるとして、原判決を破棄し、専門的知見等を踏まえ、本件定量検査に関する疑問点を解明して本件定量検査の結果がどの程度の範囲で信頼し得る数値であるのかを明らかにするなどした上で、本件定量検査の結果を始めとする客観的証拠に照らし、改めてAの証言の信用性を判断させるため、本件を高等裁判所に差し戻すこととした事例。
2022.02.08
損害賠償請求控訴事件、附帯控訴事件(布川事件国賠訴訟控訴審判決)
LEX/DB25591454/東京高等裁判所 令和 3年 8月27日 判決 (控訴審)/令和1年(ネ)第3124号 等
昭和42年8月に発生した本件強盗殺人事件(いわゆる布川事件)について、逮捕及び勾留をされた上で公訴を提起され、有罪判決を受けて服役し、再審において無罪判決が確定した被控訴人兼附帯控訴人(1審原告)が、控訴人兼被附帯控訴人(1審被告)らに対し、検察官及び茨城県警所属の警察官による捜査、検察官による公訴の提起、検察官及び警察官の公判における活動並びに検察官の再審請求審及び再審における活動に違法があったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、損害賠償金の支払等を求めたところ、原判決が1審原告の請求を一部認容したため、1審被告らが請求全部の棄却を求めて控訴し、他方、1審原告は、別件窃盗事件逮捕の日から確定審第二審判決の宣告の日までの逸失利益に対する再審判決が確定した日から刑事補償金が支払われた日までの確定遅延損害金の請求の認容を求めるとともに、当審において請求を拡張して附帯控訴した事案で、控訴人らの控訴及び被控訴人の附帯控訴に基づき、控訴人らは、被控訴人に対し、原判決の認容額を減額した内容で認容し、被控訴人のその余の請求を棄却し、被控訴人が当審において拡張した請求に基づき、控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して賠償金の支払を認容し、被控訴人が被控訴人が当審において拡張したその余の請求を棄却した事例。
2021.12.21
脅迫被告事件
LEX/DB25571846/最高裁判所第三小法廷 令和 3年12月10日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第964号
管轄移転の請求が、訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合には、刑事訴訟規則6条により訴訟手続を停止することを要しないとし、これと同旨の原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2021.10.26
道路交通法違反被告事件
LEX/DB25571763/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 6月28日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第424号
道路交通法違反被告事件で、原判決を不服として、被告人が上告した事案において、原審の判決書には裁判長裁判官の押印がなく、これは刑事訴訟規則55条に違反するが、同判決書には同裁判官の署名及び他の裁判官2名の署名押印があり、同判決書は原判決をした裁判官3名により作成されたものと認めることができるとし、原判決の上記法令違反は判決に影響を及ぼすものとは認められないとした上で、本件は、弁護人の上告趣意は量刑不当の主張で、刑事訴訟法405条の上告理由にあたらないとして、本件上告を棄却した事例。
2021.10.12
覚醒剤取締法違反、関税法違反被告事件
LEX/DB25590627/東京高等裁判所 令和 3年 4月26日 判決 (控訴審)/令和2年(う)第1267号
被告人(オランダ国籍)が、氏名不詳者らと共謀の上、営利の目的で、みだりに、スペインのアドルフォ・スアレス・マドリード・バラハス空港において、覚醒剤約997.6gを隠し入れたスーツケース1個を同空港作業員に機内預託手荷物としてドイツのフランクフルト国際空港行きの航空機に積み込ませて同航空機に搭乗し、同空港において、本件スーツケースを同空港作業員に東京国際空港行きの航空機に積み替えさせて同航空機に搭乗し、東京国際空港に到着した同航空機から本件スーツケースを同空港作業員に同航空機の外に搬出させて日本国内に持ち込み、覚醒剤を本邦に輸入するとともに、同空港内の東京税関羽田税関支署旅具検査場において、同支署税関職員の検査を受けた際、覚醒剤を本件スーツケース内に隠し持ったまま、その事実を申告せずに同検査を受け、同検査場を通過しようとし、もって関税法上の輸入してはならない貨物である覚醒剤を輸入しようとしたが、同税関職員に発見されたため、その目的を遂げなかったとして起訴され、原判決は、懲役7年及び罰金300万円に処したため、これに不服の被告人が控訴した事案で、検察官が、答弁書において種々指摘をする内容を踏まえて、改めて検討してみても、被告人に覚醒剤輸入(関税法違反を含む。)の故意があったと認めるには合理的な疑いが残るのに、これがあったと認めて罪となるべき事実を認定した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして、原判決を破棄し、被告人に対して無罪を言い渡した事例。
2021.10.05
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25590657/福岡高等裁判所 令和 3年 9月 3日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第283号
熊本県少年保護育成条例違反の被疑事実により逮捕され、その後勾留された一審原告が、その逮捕・勾留中に一審原告の取調べを行った熊本県警察の警察官が、当該取調べに際し、〔1〕黙秘権を告知せず、かつ黙秘することが一審原告の不利益となることを示唆する発言をするなどして、一審原告の黙秘権を侵害し、〔2〕弁護人との接見内容に関する質問をしたことにより、一審原告の接見交通権を侵害し、この違法な取調べにより一審原告は精神的苦痛を被るなどの損害を受けており、一審被告は、国家賠償法1条1項に基づき、上記警察官の違法な取調べによって一審原告が被った損害について賠償義務を負うとして、一審被告に対し、同項に基づき、損害として慰謝料200万円及び弁護士費用20万円の合計220万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたところ、原判決は、一審原告の請求のうち、一部認容、一部棄却したため、一審原告及び一審被告が、それぞれ原判決中敗訴部分を不服として控訴した事案で、一審原告の請求につき、16万5000円及びこれに対する平成28年5月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとして一部認容し、その余の請求を棄却した原判決は相当であるとし、本件各控訴を棄却した事例。
2021.09.21
窃盗被告事件
LEX/DB25571712/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 9月 7日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第1号
被告人が、スーパーマーケットで食料品10点を窃取し窃盗の罪で起訴された事件で、第1審判決は、被告人が、本件犯行時、心神耗弱の状態にあったとして、被告人を懲役4月に処したことに対し、検察官が控訴し、原判決は、完全責任能力を認め、被告人を懲役10月に処したため、被告人が上告した事案において、被告人は行動制御能力が著しく減退していた合理的疑いが残るから心神耗弱の状態にあったとした第1審判決について、その認定は論理則、経験則等に照らして不合理であるとして、事実誤認を理由に破棄し、原審において何ら事実の取調べをすることなく、訴訟記録及び第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって、直ちに完全責任能力を認めて自判をした原判決は、刑事訴訟法400条ただし書に違反するとして、原判決を破棄し、高等裁判所に差し戻した事例。
2021.09.07
医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定に対する抗告の決定に対する再抗告事件
LEX/DB25571705/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 8月30日 決定 (再抗告審)/令和3年(医へ)第13号
アルコール依存にり患している対象者について、検察官が、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)33条1項により申立てをし、原々審は、医療観察法42条1項1号により、対象者を同法による医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定をしたが、対象者は、医療観察法による医療の必要はないか、入院によらない医療が相当であるとして、抗告を申し立てたところ、原決定は、対象者のアルコール依存について医療観察法による医療を受けさせる必要があることを理由として入院決定をした原々決定には、重大な事実の誤認があるとして、原々決定を取消し、本件を地方裁判所に差し戻す旨の決定をしたため、再抗告をした事案で、入院決定をした原々決定の判断に重大な事実誤認があるとして原々決定を取り消した原決定には、医療観察法42条1項、64条2項の解釈適用を誤った違法があるとして、医療観察法71条2項により、原決定を取り消し、対象者につき入院決定をした原々決定に重大な事実誤認があるとは認められず、それに対する対象者の抗告は理由がないことに帰するとし、原々決定に対する抗告を棄却した事例。
2021.08.10
覚醒剤取締法違反,大麻取締法違反,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件
LEX/DB25571667/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 7月30日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1763号
第1審裁判所は、本件ビニール袋が本件車両内にはもともとなかったものであるとの疑いは払拭できないから、警察官が、本件ビニール袋は本件車両内にもともとなかったにもかかわらず、これがあることが確認された旨の疎明資料を作成して本件車両に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求した事実があったというべきであり、本件薬物並びに本件薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書(本件各証拠)の収集手続には重大な違法がある旨の判断を示した上、本件各証拠の証拠能力を否定した。これに対し、原判決は、本件各証拠の証拠能力を否定した第1審裁判所の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある旨の検察官の控訴趣意をいれ、第1審判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻しを言い渡したため、被告人が上告した事案で、本件各証拠の証拠能力を判断するためには、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断する必要があるというべきであり、原判決は、本件ビニール袋がもともと本件車両内にはなかった疑いは残るとしつつ、その疑いがそれほど濃厚ではないなどと判示するのみであって、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断したものと解することはできないとし、本件各証拠の証拠能力の判断において本件事実の持つ重要性に鑑みると、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあるとして、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した事例(補足意見がある)。
2021.06.22
入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25571570/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月 9日 決定 (再抗告審)/令和3年(医へ)第5号
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による処遇制度が、憲法14条、31条、34条の規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかであるとし、本件抗告を棄却した事例。