2019.07.30
LEX/DB25563291/大阪高等裁判所 令和 1年 7月12日 決定 (抗告審)/令和1年(く)第258号
被告人に対する恐喝被告事件について、地方裁判所がした接見等禁止決定に対し、刑事訴訟法81条にいう罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとはいえないから、これを取り消した上、被告人に対する接見等禁止の請求を却下する旨の裁判を求め、弁護人が抗告した事案において、接見等禁止決定に対する抗告が認容され、原決定を取消した事例。
2019.07.09
再審開始決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
(大崎事件第3次再審請求最高裁棄却決定)
LEX/DB25563156/最高裁判所第一小法廷 令和 1年 6月25日 決定 (再審請求審)/平成30年(し)第146号
請求人が、義弟を殺害したとする殺人、死体遺棄被告事件(いわゆる大崎事件)で懲役10年に処せられた確定判決について、第3次再審請求をし、原々審及び原審は再審開始の決定をしたため、検察官が特別抗告をした事案において、R鑑定にP・Q新鑑定を含むその余の新証拠を併せ考慮してみても、確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせるに足りるものとはいえないとし、R鑑定が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとした原決定の判断には刑事訴訟法435条6号の解釈適用を誤った違法があり、R鑑定及びP・Q新鑑定がそのような証拠に当たるとした原々決定の判断にも同様の違法があるといわざるを得ず、これらの違法が決定に影響を及ぼすことは明らかであり、これらを取り消さなければ著しく正義に反するものと認められるとして、刑事訴訟法411条1号を準用して原決定及び原々決定を取消し、同法434条、426条2項により更に裁判をすると、請求人が提出した新証拠は、無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるものとはいえず、同法447条1項により本件再審請求を棄却した事例。
2019.07.02
損害賠償請求事件
LEX/DB25563059/東京地方裁判所 令和 1年 5月27日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第31999号
昭和42年8月に発生した本件強盗殺人事件(いわゆる布川事件)について、逮捕及び勾留をされた上で公訴を提起され、有罪判決を受けて服役し、再審において無罪判決が確定した原告が、被告(国・茨城県)らに対し、検察官及び茨城県警所属の警察官による捜査、検察官による公訴の提起、検察官及び警察官の公判における活動並びに検察官の再審請求審及び再審における活動に違法があったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき,連帯して、損害賠償金の支払等を求めた事案において、警察官による取調べには国賠法上の違法があったとし、また、確定審の公判における警察官又は検察官の活動にも国賠法上違法なものが含まれていたとして、原告の請求を一部認容した事例。
2019.06.11
道路交通法違反被告事件
LEX/DB25570266/最高裁判所第一小法廷 令和 1年 6月 3日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第67号
被告人は、過失により、信号機の表示する赤色の灯火信号を看過してこれに従わないで、停止線を越えて普通乗用自動車を運転して進行したとして、第1審判決は、公訴事実どおりの犯罪事実を認定し、被告人を罰金9000円に処した。被告人が、第1審判決に対して訴訟手続の法令違反、量刑不当を理由に控訴し、職権で、本件公訴の提起は、道路交通法130条各号に掲げる場合でないのに、同条に掲記された手続が行われることなくされたもので無効であるから、第1審裁判所は不法に公訴を受理したものであるとして、刑訴法397条1項、378条2号により第1審判決を破棄し、同法338条4号により本件公訴を棄却したため、検察官が上告した事案において、道路交通法130条2号に当たると解するのは信義に反するなどとして、同号該当性を否定した原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、法令違反及び量刑不当を主張する被告人の控訴は理由がないから、本件控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2019.06.11
国家賠償請求事件
★「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 6月7日解説記事が掲載されました★
LEX/DB25562664/秋田地方裁判所 平成31年 3月 1日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第140号
受刑者として秋田刑務所に収容されていた原告が、服役中、秋田刑務所長から、〔1〕原告代理人のO弁護士宛の信書の発信許否の判断を長期間留保されるなどしたこと、〔2〕O弁護士から原告宛の信書について内容の検査が行われたこと、〔3〕O弁護士に対する書類の宅下願いを不許可とされたことが違法であると主張して、国家賠償法1条に基づき,被告(国)に対し、慰謝料300万円の支払等を求めた事案において、原告の請求を損害賠償金5万円の支払限度で一部認容した事例。
2019.06.04
(刑事確定記録閲覧請求不許可処分準抗告事件)
LEX/DB25562806/東京地方裁判所 平成31年 4月23日 決定 (第一審)/平成29年(む)第83309号
逮捕監禁、爆発物取締罰則違反、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件の刑事確定訴訟記録について閲覧請求をしたところ、保管検察官がした閲覧不許可処分に対し、申立人が準抗告の申立てをした事案において、本件準抗告は、第3回公判前整理手続調書2頁13行目から3頁1行目までに関する閲覧不許可処分を取消し、検察官は、本件閲覧不許可処分を取り消した部分を、申立人に閲覧させるよう命じた事例。
2019.04.23
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25562529/広島高等裁判所 平成31年 3月28日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第203号
弁護士である控訴人(原告)が、広島拘置所に勾留されていた被告人の弁護人として接見をした際、本件拘置所の職員の行為により控訴人の接見交通権が侵害されたと主張し、本件拘置所を設置・運営する被控訴人(被告・国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等144万円の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案において、被控訴人は、本件拘置所処遇部処遇部門の上席統括矯正処遇官(第二担当)看守長が、控訴人に対し音声の再生の中断を求めたことによって、控訴人が被った損害を賠償すべき責任を負うとして、原判決を変更し、控訴人の請求につき、被控訴人に対し22万円の支払を求める限度で一部認容した事例。
2019.04.02
損害賠償請求事件
LEX/DB25570113/最高裁判所第一小法廷 平成31年 3月18日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1492号
死刑確定者として拘置所に収容されている被上告人(原告・控訴人)が、拘置所長が定めた遵守事項に違反したことを理由に同所長等から受けた指導、懲罰等の措置が違法であると主張して、上告人(被告・被控訴人・国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、原審は、被上告人の請求のうち所長又は職員の指導、懲罰等の措置の違法を理由とする各請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、所長等が、本件各行為が本件遵守事項に違反するとして、被上告人に対してした指導、懲罰等の措置は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の各請求は理由がなく、これらをいずれも棄却した第1審判決は正当であるとし、上記部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。
2019.04.02
接見等禁止の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25570108/最高裁判所第三小法廷 平成31年 3月13日 決定 (特別抗告審)/平成31年(し)第113号
傷害致死事件において、被告人が、本件で現行犯逮捕され、勾留、鑑定留置を経て起訴され、原々審は、検察官の請求により、第1回公判期日が終了する日までの間、被告人と弁護人又は弁護人となろうとする者以外の者との接見等を禁止する旨の決定をした。公判前整理手続では、主な争点は責任能力の有無に絞られ、検察官は、完全責任能力を主張するのに対し、弁護人は、飲酒と服用した薬の影響により、被告人に急性の意識障害が生じて、心神喪失又は心神耗弱の状態にあったと主張した。弁護人は、責任能力の鑑定を依頼したA医師及び被告人の妹について、罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由はなく、公判における防御の準備のため接見等を行う必要が高いとして、接見等禁止の一部解除を申請したが、職権発動がされなかったことから、主位的に原々裁判を取消して接見等禁止請求を却下し、予備的にA医師及び被告人の妹を接見等禁止の対象から除外することを求めた準抗告を申し立てたところ、原決定は棄却したため、弁護人が特別抗告を申し立てた事案において、A医師については、特段の事情がない限り、被告人が接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあるとはいえず、また、連日的な集中審理の公判に向けた準備を行う必要性が高いといえ、さらに、被告人の妹ら他の関係者についても、勾留に加えて接見等を禁止すべき程度の罪証隠滅のおそれの有無に関し、原決定が具体的に検討した形跡は見当たらないとして、原決定には、刑事訴訟法81条、426条の解釈適用を誤った違法があるとし、原決定を取消した上、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2019.03.05
医師法違反被告事件
★「新・判例解説Watch」憲法分野 解説記事が掲載されました★
LEX/DB25561598/大阪高等裁判所 平成30年11月14日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1117号
被告人は、医師でないのに、平成26年7月6日頃から平成27年3月8日頃までの間、タトゥーショップで、4回にわたり、Aほか2名に対し,針を取り付けた施術用具を用いて前記Aらの左上腕部等の皮膚に色素を注入する医行為を行ったことに対し、医師法31条1項1号、医師法17条を適用し、原判決が罰金15万円に処したため、被告人が控訴した事案において、医師に入れ墨(タトゥー)の施術を独占させ、医師でない者のタトゥー施術業を医師法で禁止することは、非現実的な対処方法というべきであり、そのような医師法の解釈は合理性、妥当性を有しないといわざるを得ないとして、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例。
2019.02.26
再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25570028/最高裁判所第一小法廷 平成31年 2月12日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第584号
刑事訴訟法435条1号にいう「確定判決」とは、刑事の確定判決をいうものと解すべきであり、民事の確定判決やこれと同一の効力を有する和解調書等は含まれないとし、これと同旨の原判断は相当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2019.02.05
文書提出命令申立てについてした決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件
LEX/DB25449935/最高裁判所第三小法廷 平成31年 1月22日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第7号
抗告人が、大阪府警察の違法な捜査により傷害事件の被疑者として逮捕されたなどとして、相手方に対し国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた訴訟で、相手方が所持する本件傷害事件の捜査に関する報告書等の各写し(本件文書1、本件文書2)、並びに上記の逮捕に係る逮捕状請求書、逮捕状請求の疎明資料及び逮捕状の各写し(本件文書3)について、民訴法220条1号ないし3号に基づき、文書提出命令の申立てをした事件で、本件傷害事件の捜査は大阪府警察が担当し、抗告人は、平成27年1月に本件傷害事件の被疑者として逮捕された。その後、抗告人は、本件傷害事件について起訴され、有罪判決を受け、同判決は平成29年12月に確定した。本件各文書も、その元となる各文書(本件各原本)も、本件傷害事件の公判に提出されなかったため、原審は、本件文書1については、民訴法220条1号所定の「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき」に、本件文書2及び本件文書3については、同条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」に、それぞれ該当するとした上で、本件申立てを却下したため、抗告人が抗告した事案で、本件各原本及びその写しである本件各文書は、本件傷害事件の捜査に関して作成された書類であり,公判に提出されなかったものであるところ、本件各文書は、本件傷害事件の捜査を担当した大阪府警察を置く相手方が所持し、これらについて本件申立てがされているのであるから、本件各原本を大阪地方検察庁の検察官が保管しているとしても、引用文書又は法律関係文書に該当するものとされている本件各文書の提出を拒否した相手方の判断が、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものであると認められるときは、裁判所は、その提出を命ずることができることになると判示し、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2018.12.18
損害賠償請求事件(接見交通権一部認容判決)
LEX/DB25561606/鳥取地方裁判所 平成30年11月26日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第95号
弁護士である原告が、原告と勾留中の被告人との間の裁判所構内における接見を裁判所が許可したにもかかわらず、被告の設置運営する刑務所の職員らがこれを実施させないまま同刑務所に被告人を連れ帰ったことなどが違法であり、そのため弁護人としての接見交通権を侵害されたなどと主張して、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金の支払等を求めた事案において、裁判所構内における接見許可がされた場合に、刑務所職員は、面会の場所が戒護上の支障が生じないような設備のある部屋等かどうかに関し、裁判所と異なる見解を持ったとしても、裁判所の許可を前提として、その接見の実施に当たり、刑事収容施設法77条1項に基づく何らかの措置を執る必要があるかどうかを検討するにとどめなければならず、その接見の実施を妨げる措置を執ることは、接見配慮義務に反し、許されないものといわなければならないとし、請求を一部認容した事例。
2018.11.20
勾留の裁判に対する準抗告の裁判に対する特別抗告事件
LEX/DB25449783/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月31日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第585号
勾留の裁判に関する準抗告決定(原裁判取消し、勾留請求却下)に対し、検察官が特別抗告した事案において、原決定が、本件勾留の被疑事実である大麻の営利目的輸入と、本件勾留請求に先立つ勾留の被疑事実である規制薬物として取得した大麻の代替物の所持との実質的同一性や、両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから、前件の勾留中に本件勾留の被疑事実に関する捜査の同時処理が義務付けられていた旨説示した点は是認できないが、いまだ刑事訴訟法411条を準用すべきものとまでは認められないとし、本件抗告を棄却した事例(補足意見あり)。
2018.11.20
損害賠償請求事件
LEX/DB25561322/東京地方裁判所 平成30年 9月19日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第21485号
死刑確定者として東京拘置所に収容されていた原告X及び弁護士である原告Aが、被告に対し、原告Xに対する信書の発信不許可処分及び面会不許可処分についての各国家賠償請求事件並びに再審請求事件の打合せを目的とする原告らの面会につき、職員を立ち会わせる措置をしてはならない旨の仮の差止めの各決定が東京地方裁判所によってされたにもかかわらず、東京拘置所長が、それらに従わなかったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ、損害賠償金の支払等を求めた事案の上告審において、行政庁である東京拘置所長が、行政事件訴訟における最も基本的な法律である行訴法の規定を把握していなかった上、原告Aによる再三の抗議にもかかわらず、行政事件訴訟法の規定の確認すら怠り、このために違法な本件各処分をしたことは、到底容認し難いものであって、行政庁に対する信頼を失墜させる異常な事態を生じさせたものといわざるを得ないから、東京拘置所長には、本件各処分をすることについて極めて重大な過失があったものというべきであるが、本件各決定に効力が生じていることを認識しながら、あえて、本件各処分をしたものとまでは認められないとし、原告らの請求を一部認容し、その余の請求をいずれも棄却した事例。
2018.11.13
接見妨害等国家賠償請求事件
LEX/DB25449764/最高裁判所第一小法廷 平成30年10月25日 判決 (上告審)/平成29年(受)第990号
拘置所に被告人として勾留されていた上告人X1及びその弁護人であった上告人X2が、上告人X1が刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容中であることを理由に拘置所の職員が上告人X1と上告人X2との面会を許さなかったことにより、接見交通権を侵害されたなどとして、被上告人に対し、慰謝料及び遅延損害金の支払を求め、被告人が保護室に収容中であることを理由として被告人と弁護人との面会を許さない措置の違法性につき、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、拘置所において刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容されていた被告人である上告人X1との面会を求める本件申出が、その弁護人である上告人X2からあったのに対し、同拘置所の職員は、本件申出があった事実を上告人X1に告げないまま、保護室に収容中であることを理由として面会を許さなかったもので、上告人X1は、本件申出の前後にわたり保護室において大声を発していたが、当時精神的にどの程度不安定な状態にあったかは明らかではなく、意図的に抗議行動として大声を発していたとみる余地もあるところ、本件申出があった事実を告げられれば、上告人X2と面会するために大声を発するのをやめる可能性があったことを直ちに否定することはできず、上告人X1の言動に係る事情のみをもって、特段の事情があったものということはできないとし、原判決中、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する部分を破棄し、特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例(補足意見あり)。
2018.10.30
殺人、商標法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(今市事件控訴審判決)
LEX/DB25561023/東京高等裁判所 平成30年 8月 3日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第983号
殺人、商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反(いわゆる今市事件)の各公訴事実のうち、原審では、殺人につき、その犯人と被告人との同一性が争われ(商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の公訴事実については、争いがなく、区分審理された)、本件殺人の公訴事実は、「被告人は、深夜、茨城県常陸大宮市内の山林西側林道で、被害者(当時7歳)に対し、殺意をもって、ナイフでその胸部を多数回突き刺し、同人を心刺通(心臓損傷)により失血死させた」という事実につき、原審検察官の指摘する客観的事実(情況証拠)のみによって被告人の犯人性を認定できるか検討し、結論として、被告人が殺害犯人である蓋然性は相当に高いものと考えられるが、客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできないとし、原判決は、被告人が検察官に行った本件自白供述につき、任意性を認めた上、本件殺人の一連の経過や殺害行為の態様、場所、時間等、事件の根幹部分に関する供述は、十分に信用することができるとし、原審関係証拠から認められる客観的事実に、同供述を併せれば、被告人が被害者を殺害したことに合理的な疑いを入れる余地はないとし、被告人を無期懲役に処したため、原審弁護人が被告人のため控訴した事案において、原判決が、自白供述の信用性の補助証拠として採用した取調べの録音録画記録媒体により犯罪事実を直接的に認定したことには訴訟手続の法令違反があり、原判示第1の殺人の日時、場所を自白供述に基づき公訴事実どおりに認定したことには事実誤認が認められ、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決を破棄した上で、当高裁は、情況証拠によって認められる間接事実を総合すれば、被告人が殺害犯人であることは、合理的な疑いを差し挟む余地なく認められ、当審で予備的に追加された訴因(殺害の日時、場所を拡張したもの)については、直ちに判決をすることができるものと判断し、被告人を無期懲役にするのが相当であるとした事例。
2018.10.23
松橋事件即時抗告棄却決定に対する特別抗告棄却決定
LEX/DB25561330/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月10日 決定 (特別抗告審)/平成29年(し)第718号
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反及び火薬類取締法違反事件(いわゆる松橋事件)につき、被告人に懲役13年に処する旨の判決が言い渡され、控訴、上告をしたものの、これらが全て棄却され、刑の執行を受け終えた後、被告人の法定代理人成年後見人弁護人が、殺人被告事件について無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとして、再審を請求したところ、再審開始が決定したため、検察官が即時抗告し、即時抗告審も、再審請求審の決定の説示するとおり、巻き付けた布切れに関する新証拠及び使用された凶器に関する新証拠は、被害者殺害の事実について、被告人に無罪を言い渡すべき新規かつ明白な証拠ということができるから、再審請求審の決定には刑事訴訟法435条6号の要件充足の判断を誤ったところはないとし、即時抗告を棄却したため、検察官が特別抗告した事案において、検察官の本件抗告趣意は、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとし、本件特別抗告を棄却した事例。
2018.08.07
再審請求事件(日野町事件第2次再審請求開始決定)
LEX/DB25560764/大津地方裁判所 平成30年 7月11日 決定 (再審請求審)/平成24年(た)第1号
被告人が、かねて客として出入りしていた酒類小売販売店経営者(当時69歳)を殺害して金品を強取しようと企て、同店内で、客として飲酒した際、応対していた同女の背後からいきなり頸部を両手で絞め付け、頸部圧迫に基づく窒息により即死させて殺害した上、同女所有の現金5万円及び手提金庫等を強取したとして起訴され、第1審判決は無期懲役を言い渡し、第2審判決も第1審判決に違法はないとして控訴を棄却し、上告審でも上告棄却したことで、有罪を確定した強盗殺人事件で、被告人である申立人が再審請求をしたが、申立人の自白は、その任意性に疑いはなく、信用性も十分あり、さらに、申立人が犯人であることを示すいくつかの間接事実が存在し、また、申立人のアリバイは成立せず、その他、申立人が犯人ではないことを示す事情は存在せず、確定判決の認定した犯罪事実は優に認められ、その他、弁護人の主張をすべて検討しても、これを覆すことはできないとして、再審の請求を棄却したため、申立人が抗告したが、申立人の死亡により終了した。その後、再度、申立人の遺族が請求人として再審請求をした事案において、当審で取り調べた各新証拠が確定審の審理中に提出されていたならば、被告人を本件犯行について有罪と認定するには、合理的な疑いが生じたものと認められ、本件再審請求は、刑事訴訟法435条6号所定の有罪の言渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したときに該当するとして、再審を開始する決定をした事例。
2018.07.17
検察官による証人等の氏名等の開示に係る措置に関する裁定決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25449567/最高裁判所第二小法廷 平成30年 7月 3日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第170号
検察官は、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときには、条件付与等措置も代替開示措置もとることができず、さらに、検察官は、条件付与等措置によっては加害行為等を防止できないおそれがあるときに限り代替開示措置をとることができるとし、裁判所は、検察官が条件付与等措置若しくは代替開示措置をとった場合、加害行為等のおそれがないとき、被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき、又は検察官が代替開示措置をとった場合において、条件付与等措置によって加害行為等を防止できるときは、被告人又は弁護人の裁定請求により、決定で、検察官がとった措置の全部又は一部を取り消さなければならないとし、裁定請求があった場合には、検察官は、裁判所からの意見聴取において、刑事訴訟法299条の5第1項各号に該当しないことを明らかにしなければならず、裁判所は、必要なときには、更に被告人又は弁護人の主張を聴くなどすることができるということができ、裁判所の決定に対しては、即時抗告をすることができるとし、刑事訴訟法299条の4、299条の5は、被告人の証人審問権を侵害するものではなく、憲法37条2項前段に違反しないとした事例。