注目の判例

民法(財産法)

2016.05.17
損害賠償請求事件(女性アイドル交際、認める判決) 
LEX/DB25542337/東京地方裁判所 平成28年 1月18日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第1759号
芸能プロダクションである原告が、原告との間で専属マネージメント契約を締結した上で原告に所属する女性アイドルであった被告甲、被告甲と交際していたファンである被告乙、に対しては、同契約の債務不履行又は不法行為に基づき、逸失利益等の損害賠償を、被告甲の父母である被告丙夫妻に対しては、信義則上の管理監督義務違反の不法行為に基づき、損害賠償を請求した事案において、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2016.05.10
債務不存在確認等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件 
LEX/DB25447923/最高裁判所第一小法廷 平成28年 4月28日 判決 (上告審)/平成27年(受)第330号
被上告人らが、死亡共済金及び死亡保険金の各請求権が上告人Y1又はAの各破産財団に属するにもかかわらず、上告人Y1が金員を費消したことは、上告人Y1において金員を法律上の原因なくして利得するものであり、また、上告人Y2には上告人Y1が金員を費消したことにつき弁護士としての注意義務違反があると主張して、上告人Y1に対しては不当利得返還請求権に基づき、上告人Y2に対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき、被上告人X1において800万円及び遅延損害金等の連帯支払を、また、被上告人X2において200万円及び遅延損害金等の連帯支払を求め(本訴請求)、上告人Y1が、上記保険金等請求権が上告人Y1の破産財団に属しないにもかかわらず、被上告人X1が法律上の原因なくその一部である1400万円を利得していると主張して、被上告人X1に対し、不当利得返還請求権に基づき、1400万円及び遅延損害金の支払を求め(反訴請求)、原審は、上記保険金等請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして、各破産財団に属することになるから、上告人Y1が本件金員を費消したことは、上告人Y1において金員を法律上の原因なくして利得するものであり、また、上告人Y1が本件金員のうち800万円を費消したことについて、上告人Y2に弁護士としての注意義務違反が認められるとして、被上告人らの本訴請求のうち上告人Y1に対する請求を認容するとともに上告人Y2に対する請求を一部認容し、上告人Y1の反訴請求を棄却すべきものとしたため、上告人Y1、同Y2が上告した事案において、当該生命共済契約及び生命保険契約はいずれも本件各開始決定前に成立し、当該生命共済契約に係る死亡共済金受取人は上告人Y1及びAであり、当該生命保険契約に係る死亡保険金受取人は上告人Y1であったから、上記保険金等請求権のうち死亡共済金に係るものは本件各破産財団に各2分の1の割合で属し、上記保険金等請求権のうち死亡保険金に係るものは上告人Y1の破産財団に属するとして、原審の判断は正当として是認することができるとし、上告を棄却した事例。
2016.05.10
立替金等請求控訴事件(安藤・間VS新潟大学) 
LEX/DB25542516/東京高等裁判所 平成28年 3月10日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第3355号
A建設の権利義務を包括的に承継した控訴人が、被控訴人に対し、主位的には、A建設において米国法人であるO社との間で、A建設を買主、O社を売主として、米国ロマリンダ大学の保有する特許技術に係る陽子線がん治療機器等について購入、導入、メンテナンス等を内容とする国立大学の陽子線がん治療センター 物品の購買・設置・メンテナンス及びライセンスに関する基本契約を締結することを前提に、被控訴人との間で、上記契約上のA建設の買主たる地位を被控訴人に譲渡すること、当該譲渡実行日までに上記契約に基づいてA建設が支払い又は負担した売買代金、費用等相当額を被控訴人がA建設に支払うことなどを内容とする合意をし、その後上記契約を締結してその地位を被控訴人に譲渡したと主張して、当該合意の補償請求権に基づき、〔1〕A建設が上記契約に基づいてO社に支払った代金(頭金)、立替金利及び送金等手数料の合計16億7932万6987円並びにこれに対する遅延損害金、〔2〕A建設が負担した費用である7493万5635円及びこれに対する遅延損害金、〔3〕本件訴訟に係る弁護士費用と訴訟提起手数料の合計額1億5442万3795円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、予備的には、被控訴人の副学長兼学長室長が被控訴人の事業の執行として被控訴人学長作成名義の本件合意に係る「損害等補償及び契約上の地位譲渡等に関する合意書」を偽造してこれをA建設に交付したことにより、A建設が上記契約を締結し、上記陽子線がん治療機器等の代金(頭金)を支払うなどの損害を被ったと主張して、不法行為の使用者責任に基づく損害賠償として上記と同額を求め、原審は、上記合意書の被控訴人学長名義部分が真正に成立したと認めることはできず、A建設と被控訴人との間で上記合意が成立したとは認められないから、控訴人の上記合意の補償請求権に基づく請求は理由がなく、また、副学長が上記合意書の被控訴人学長名義部分を偽造したという事情を知らずに上記合意書を締結し、その上で上記契約を締結するに至ったとしても、A建設代表者がそのことを知らなかったことにつき重大な過失があるから、控訴人が使用者責任に基づく損害賠償を請求することはできないなどとして、控訴人の請求をいずれも棄却し、これを不服とする控訴人が控訴した事案において、学長証明書の体裁及び内容が不自然であることに加え,学長証明書と合意書とに押印された印影が異なっているにもかかわらず、合意書の成立の真正に疑いを抱かずに何らの確認をもしなかったA建設の対応をもって、A建設には合意書の成立の真正を信じたことについて重過失があると評価する根拠とした原判決の認定は相当であり、これを不当とする控訴人の上記主張も採用できないとし、控訴人の被控訴人に対する請求はいずれも理由がなく、それらをいずれも棄却した原判決は相当であり、控訴を棄却した事例。
2016.05.10
損失填補請求事件、独立当事者参加事件
(全九州電気工事業厚生年金基金VS日本トラステイ・サービス信託銀行ほか) 
LEX/DB25530845/東京地方裁判所 平成27年 7月 3日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第32336号 等
厚生年金基金である原告が、金融機関である被告らに対し、被告らの委託を受けた証券業者が偽装等の不正を行っていたのに、これに気付かずに運用を任せ原告が運用損を被ったのは、原告との間の年金特定信託契約及び三者間合意に基づく被告らの信託事務の処理に任務懈怠(監査報告書確認義務違反、報告説明義務違反、名義登録義務違反)があったことによるものであるとして損害賠償等を求めた事案につき、任務懈怠があるというには、証券業者の運用が明らかに不当で原告に重大な損失が生ずる危険性が高いことを被告らが認識していたか又は容易に認識し得た一方、委託者である原告においてはそれを認識し得なかったのに、被告らが原告にそのことを告げなかったなどの例外的な事情が認められる場合に限られ、本件においてそのような事情は認められず、また被告らがその任務を怠った事実を認めることもできないとして、請求を棄却した事例。
2016.04.26
損害賠償請求事件(日本生命への請求棄却 顧客から詐取 元外交員に賠償命令) 
LEX/DB25542103/静岡地方裁判所浜松支部 平成28年 2月 1日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第598号
被告P12に金銭を貸し付けた原告らが、本件各貸付は被告P12の詐欺により行われたものであると主張した上で、被告P12に対しては、不法行為に基づき、被告N生命に対しては、本件各貸付の際に被告N社から契約貸付を受けたと主張する原告らが、被告P12の不法行為は雇用主たる被告N社の事業の執行の範囲に含まれると主張して、使用者責任に基づく等して、それぞれ損害賠償を求めた等の事案において、被告P12は、原告らに対し、真実は借りた金銭を原告らに伝えた用途で使う意思も、約束通り返済する具体的見込みもその能力もないのに、嘘を述べ、原告らにその旨誤信させて本件各貸付を行わせたと認定する一方、被告N社が原告らに対し、被告P12の詐欺行為について使用者責任を負うことはないと示し、原告らが被告P12が被告P13に対して有する不法行為に基づく損害賠償請求権を代位行使することは認めた事例。
2016.04.19
損失填補請求控訴事件 
LEX/DB25542150/東京高等裁判所 平成28年 1月21日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第4127号
厚生年金基金である原告(控訴人)が、原告との間で年金特定信託契約を締結したR信託銀行の承継人である被告(被控訴人)R銀行及び同契約に関する信託事務の処理につき被告R銀行と同一の責任を負うことを三者間で合意した被告(被控訴人)T信託銀行に対し、控訴人との間で年金投資一任契約を締結して被告らに信託財産の運用につき指示した投資一任業者であるAIJが運用実績の偽装等の不正を行っていたのに、これに気付かずにAIJに資産の運用を任せたことにより、原告が約28億6000万円の運用損を被ったのは、原告との間の年金特定信託契約及び三者間合意に基づく被告らの信託事務の処理に任務懈怠(監査報告書確認義務違反、報告説明義務違反、名義登録義務違反)があったことによるものであり、また、被告らの上記任務懈怠は、委託者である原告に対する債務不履行及び不法行為にも当たると主張して、被告らに対し、〔1〕主位的に、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として、連帯して21億円等の金員を控訴人に支払うことを求め、〔2〕予備的に、信託法40条に基づく損失填補として、上記と同額を原告の信託財産に支払うことを求めるとともに、〔3〕被告R銀行に対し、被告R銀行の信託事務の処理には重大な債務不履行があるので、原告は被告R銀行に対する信託報酬の支払義務を負わないと主張して、不当利得返還請求権に基づき、既に支払った信託報酬相当額である452万0764円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審は、被告らについて任務懈怠が認められないとして、各請求をいずれも棄却したため、原告が控訴した事案において、原告が当審において主張する監査報告書の確認義務違反及び口座管理に関する説明義務違反はいずれも認められないとし、本件請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、控訴を棄却した事例。
2016.04.19
損害賠償等請求事件 
LEX/DB25542149/東京地方裁判所 平成27年12月25日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第23164号
厚生年金基金である原告が、原告との間で年金特定信託契約を締結して信託事務の処理を受託した被告U信託銀行及び上記信託事務の処理を被告U信託銀行と共同受託した被告M信託銀行に対し、被告らが上記年金特定信託契約等に基づいて負う義務を怠ったために、原告が投資一任業者であるAIJによる運用成績の粉飾等の不正にも気付くことができないままに同社に資産の運用を任せたことにより、少なくとも32億9000万円の運用損を被ったと主張して、主位的に、信託法40条1項1号に基づき、連帯して、上記運用損の一部である30億円及びこれに対する遅延損害金を信託財産に損失填補することを求め、予備的に、債務不履行又は不法行為に基づき、連帯して、上記と同額の損害賠償金及び遅延損害金を原告に支払うことを求めた事案において、被告らが信託事務を処理するに当たりその任務を怠った事実を認めることはできないとし、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2016.04.19
根抵当権設定登記抹消登記手続等請求、 貸金請求控訴事件
(山陰合銀訴訟 山陰合同銀行が逆転勝訴) 
LEX/DB25542028/広島高等裁判所松江支部 平成28年 1月13日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第49号
本件各不動産を所有している控訴人会社らが、いずれも根抵当権者である控訴人銀行が本件各不動産について競売による差押えを申し立てた後に被担保債権である各債権を譲り受けた被控訴人会社に対し、主位的に、本件各根抵当権の設定契約の無効を主張した等の根抵当権設定登記抹消登記手続等請求、貸金請求控訴事件の控訴審において、既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、受働債権につき、期限の利益を放棄することができるというだけでなく、期限の利益又は喪失等により、その弁済期が現実に到来していることを要し、また、時効により消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには、消滅時効が援用された自働債権は、その消滅時効期間が経過する以前に自働債権と相殺適状にあったことを要すると示して、控訴人会社らによる相殺の主張を斥ける等して、原判決を取り消し控訴人会社らの請求を棄却した事例。
2016.04.12
供託金払渡認可義務付等請求事件 
LEX/DB25542292/最高裁判所第一小法廷 平成28年 3月31日 判決 (上告審)/平成27年(行ヒ)第374号
宅地建物取引業の免許の有効期間が満了した原告(控訴人・上告人)が、宅地建物取引業法25条1項に基づき供託した営業保証金につき,宅地建物取引業法30条1項に基づき取戻請求をしたところ、東京法務局供託官から、本件保証金の取戻請求権の消滅時効が完成しているとして、上記取戻請求を却下する旨の決定を受けたため、被告(被控訴人・被上告人。国)を相手に、本件却下決定の取消し及び上記取戻請求に対する払渡認可決定の義務付けを求め、原審は、原告の本件却下決定の取消請求を棄却し、本件保証金の払渡認可決定の義務付けの訴えを却下すべきものとしたため、原告が上告した事案において、原告につき宅建業の免許の有効期間が満了し本件保証金の取戻事由が発生したのは平成10年4月1日であるところ、その後原告は取戻公告をしていないため、本件取戻請求権の消滅時効は同日から10年を経過した時から進行し、本件保証金の取戻請求がされたのはその約5年6か月後である同25年9月20日であるから、本件取戻請求権の消滅時効が完成していないことは明らかであるとし、原審の判断には法令違反があるため、原判決を破棄し、本件却下決定は取り消されるべきものであり、上記義務付けの訴えは適法であり、東京法務局供託官が本件保証金の払渡認可決定をすべきであることも明らかで、原告の請求はいずれも理由があるとし、上記取消請求を棄却し上記義務付けの訴えを却下した第1審判決を取消した上、その請求をいずれも認容することとした事例。
2016.04.05
損害賠償等請求控訴事件(新聞の実名報道訴訟 東京高裁) 
LEX/DB25542147/東京高等裁判所 平成28年 3月 9日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第5700号
原告(控訴人)が、被告(被控訴人)らに対し、被告らがそれぞれ発行する日刊新聞の朝刊に掲載された実名による原告の逮捕事実等に関する記事によって名誉を毀損され、名誉感情及びプライバシーを侵害されたとして、共同不法行為に基づく損害賠償として、2200万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、民法723条に基づき、謝罪広告をそれぞれ掲載することを求め、原判決は、原告の請求を一部認容、一部棄却したため、原告が控訴した事案において、原告の請求のうち、被告d新聞社に対する請求を110万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却すべきところ、これと異なる原判決は一部失当であり、控訴の一部は理由があるから、原判決を変更した事例。
2016.03.29
損害賠償請求事件(新入社員歓迎会の2次会でセクハラ 会社と連帯で賠償命令)
「新・判例解説Watch」H28.4下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25541909/福岡地方裁判所 平成27年12月22日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第3814号
被告会社に派遣社員として入社した原告が、同人らの新入社員歓迎会において、被告会社の従業員である被告甲と一緒にカラオケをしている際、同人から抱え上げられたことにつき不法行為が成立する旨主張し、被告甲に対しては不法行為に基づき、被告会社に対しては職場環境配慮義務違反の債務不履行又は使用者責任に基づき、慰謝料等を請求した事案において、被告甲の行為は、女性である原告の承諾なしに、突然その太腿に触れて持ち上げるというものであり、その結果、他の従業員がいる中で原告のスカートがずり上がる状態になったというのであるから、原告の性的羞恥心を害する行為であったことは明らかであり、故意に原告の人格的利益を侵害し、原告に精神的苦痛を被らせるものと評価できるから、不法行為を構成するとして、原告の請求を一部認容した事例。
2016.03.22
損害賠償請求事件 
LEX/DB25447842/最高裁判所第三小法廷 平成28年 3月15日 判決 (上告審)/平成26年(受)第2454号
更生会社であるA社の管財人である原告(控訴人・被上告人)が、A社において、被告(被控訴人・上告人)Y1により組成され被告(被控訴人・上告人)Y2の販売する仕組債を運用対象金融資産とする信託契約を含む一連の取引を行った際、被告らに説明義務違反等があったと主張して、被告らに対し、不法行為等に基づく損害賠償を求め、第1審では請求を棄却し、控訴審では、被告らが、原告に対し、共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うべきとして一部認容したため、被告らが上告した事案において、原告の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるとして、原判決中被告ら敗訴部分を破棄し、原告の控訴を棄却した事例。
2016.03.15
保険金請求本訴,不当利得返還請求反訴事件 
LEX/DB25447821/最高裁判所第二小法廷 平成28年 3月 4日 判決 (上告審)/平成27年(受)第1384号
亡Aの子である上告人が,Aが老人デイサービスセンターの送迎車から降車した際に負った傷害により後遺障害が残ったと主張して、被上告人に対し、上記送迎車に係る自動車保険契約の搭乗者傷害特約に基づき、後遺障害保険金の支払を求め(本訴)、上記特約に基づきAに入通院保険金を支払った被上告人が、その金員の支払について法律上の原因がなかったと主張して,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記金員の返還を求め(反訴)、原審は、上告人の本訴請求を棄却し、被上告人の反訴請求を認容したため、上告人が上告した事案において、Aは本件特約に基づく入通院保険金及び後遺障害保険金の各請求権を有しているとはいえないから、上告人の本訴請求を棄却し、被上告人の反訴請求を認容すべきものであるとし、原審は、上記事故が老人デイサービスセンターの職員が安全配慮義務を怠ったことから発生したものであるとして直ちに本件における運行起因性を否定しており、この点の説示に問題はあるが、結論自体は是認することができるとし、上告を棄却した事例。
2016.03.15
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」H28.5中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25447798/最高裁判所第三小法廷 平成28年 3月 1日 判決 (上告審)/平成26年(受)第1434号
認知症に、り患したA(当時91歳)が旅客鉄道事業を営む会社である第1審原告の駅構内の線路に立ち入り第1審原告の運行する列車に衝突して死亡した事故に関し、第1審原告が、Aの妻である第1審被告Y1(当時85歳)及びAの長男である第1審被告Y2に対し、本件事故により列車に遅れが生ずるなどして損害を被ったと主張して、民法709条又は民法714条に基づき、損害賠償金719万7740円及び遅延損害金の連帯支払を求め、第一審では、第一審原告の請求に対し、第1審被告Y1及びY2に損害賠償責任を負うと判断しため、第一審被告らが控訴し、控訴審では、第1審被告Y1に損害賠償責任を負うと判断しため、第一審被告及び第一審原告の双方が上告した事案において、第1審被告Y1及びY2は、精神障害者であるAの法定の監督義務者に準ずべき者に当たるということはできないとし、民法714条1項に基づく損害賠償責任が否定された事例(意見及び補足意見がある)。
2016.03.15
損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件(障害者、交通事故で後遺症、二審でも保険金支払い命令)
LEX/DB25542032/東京高等裁判所 平成28年 1月20日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第2315号 等
車いすで交差点を通行中の原告(被控訴人)に被告(控訴人)P1が運転する普通乗用自動車が衝突した交通事故について、原告が、被告P1に対し、民法709条又は自動車損害賠償保障法3条に基づき、損害賠償金460万2674円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、被告P1との間で自動車損害賠償責任保険の契約を締結していた被告(控訴人)損害保険会社に対し、自動車損害賠償保障法16条1項に基づき、損害賠償金75万円の支払を求め、原審は、被告P1に対し、414万0140円及びこれに対する遅延損害金の各支払を、被告損害保険会社に対し、被告P1と連帯して75万円の支払をそれぞれ命じ、原告のその余の請求を棄却したため、原判決を不服とする被告らが、原判決中被告ら敗訴部分を取り消し、同取消部分に係る原告の請求をいずれも棄却することを求めそれぞれ控訴した事案とともに、また、原告も、被告P1に対し、原判決中原告敗訴部分を取消し、同取消部分に係る原告の請求を認容することを求めて附帯控訴した事案において、原判決は正当として是認することができるとし、被告らの各控訴及び原告の附帯控訴はいずれも棄却した事例。
2016.03.08
損害賠償請求事件(第1事件、第2事件)(笹子トンネル事故 中日本高速に賠償命令)
LEX/DB25541926/横浜地方裁判所 平成27年12月22日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第1819号 等
平成24年12月2日に山梨県大月市の中央自動車道笹子トンネル上り線で天井板が崩落し、9名が死亡した事故に関し、ワゴン車に乗って当該トンネルを通行中に当該事故により死亡した被害者5名の遺族である原告らが、土地工作物である当該トンネルの管理に瑕疵があり、被告NEXCO及び被告中日本HEの被用者らには過失もあったと主張して、当該トンネルを占有管理する被告NEXCOに対しては民法717条1項又は民法715条1項に基づき、当該トンネルの保全点検等の業務を受託していた被告中日本HEに対しては、民法715条1項に基づき、連帯して上記「請求」どおりの当該事故による各損害額及びこれらに対する遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案において、原告らの被告NEXCO、及び、被告中日本HEに対する各損害賠償請求権(被告らの各債務は共同不法行為として不真正連帯債務の関係にある。)を一部認容した事例。
2016.03.08
損害賠償請求控訴事件(園児うつぶせ死 施設側に賠償命令) 
LEX/DB25541894/大阪高等裁判所 平成27年11月25日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第2923号
控訴人らが、被控訴人Rが設置し、同社から営業譲渡を受けたとする被控訴人Aが設置運営していた認可外保育施設Kに対し、月極保育契約に基づき、控訴人らの長男であるP12を預けたところ、P12が、本件施設のベビーベッド上にうつ伏せ寝の体位で放置された結果、鼻口部が閉塞して窒息死したとして、被控訴人Rの代表者である被控訴人P4、被控訴人Aの代表者である被控訴人P3らに対し、共同不法行為に基づき、被控訴人A及び被控訴人Rに対し、使用者責任又は債務不履行に基づき、被控訴人大阪市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償を求めた事案の控訴審において、本件控訴に基づき、原判決中、被控訴人Aらに関する部分を変更しつつ、被控訴人大阪市が、本件施設設置者に対し、改善勧告を行わなかったなどの規制権限の不行使が、国家賠償法1条1項の適用上違法とまではいえないとして、被控訴人大阪市に対する請求を棄却した事例。
2016.03.01
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」 解説記事が掲載されました
LEX/DB25506535/横浜地方裁判所 平成27年 7月15日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第1591号
被害車両運転の亡Aの相続人である原告(Aの妻及び長女)らが、加害車両運転の被告に対し、〔1〕Aが被告の惹起した交通事故後に続いて行われたI中央病院の脊椎後方固定術による出血性ショックで死亡したが、両加害行為は共同不法行為に該当する旨主張し、損害填補額を控除した残額1030万6342円、〔2〕仮に共同不法行為が認められないとしても、Aが本件事故により傷害を受け、1671万9538円の損害を被った旨主張して、不法行為に基づき、同金額の内金である1030万6342円、〔3〕並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、原告らの請求は、本件事故による傷害により原告が被った損害8万2418円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとして、一部認容した事例。
2016.02.23
損害賠償請求事件(クワガタ誤配送で死ぬ 日本郵便に賠償命令)
LEX/DB25541710/大阪地方裁判所 平成27年10月30日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第3767号
原告が、被告との間で、クワガタムシをゆうパックで運送することを委託する契約を締結したところ、被告が、同ゆうパックの送り先を誤り、配達希望日時までに配達できず運送を遅延したことによって、クワガタムシが死滅し荷物が毀損したと主張し、被告に対し、前記運送契約の債務不履行に基づき、死滅したクワガタムシの代金相当額の支払を求めた事案において、請求を一部認容した事例。
2016.02.02
損害賠償請求事件(NHK逆転勝訴 台湾統治番組訴訟)
LEX/DB25447710/最高裁判所第一小法廷 平成28年 1月21日 判決 (上告審)/平成26年(受)第547号
被告(被控訴人・上告人。日本放送協会)が、番組内で、1910年の日英博覧会において、台湾南部高士村のパイワン族の男女24名が展示され、そのうちの1人の娘である原告(控訴人・被上告人)Xは今も悲しいと述べているなどと報道されたことにより、名誉やプライバシーが侵害されたとする原告Xやその他の台湾人等のほか、知る権利を侵害されたなどとする視聴者など総勢1万0335人の一審原告らが、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償の支払いを求め、第一審では請求を全部棄却し、原告Xを含む42名が控訴し、第二審では第一審判決を変更し、当該番組について原告Xに対する名誉毀損による不法行為の成立を認め、原告の請求を一部認容したため、被告が上告した事案において、当該番組を見た一般の視聴者が、原告Xの父親が動物園の動物と同じように扱われるべき者であり、その娘である原告X自身も同様に扱われるべき者であると受け止めるとは考え難く、したがって当該番組の放送により原告Xの社会的評価が低下するとはいえず、当該番組は、原告Xの名誉を毀損するものではないとし、当該番組について名誉毀損による不法行為の成立を認めた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中被告敗訴部分は破棄を免れず、原告Xの請求を棄却した第1審判決は正当であり、上記部分につき原告Xの控訴を棄却した事例。