2021年10月号Vol.124

【トレンドビュー】寄稿 QRコードの活用と共通納税システムの多目的利用

地方税共同機構 理事長 加藤 隆

 2021年10月から金融所得に係る個人の道府県民税(利子割・配当割・株式等譲渡所得割)の電子申告・納入が始まりました(令和2年度税制改正)。また、23年度からは固定資産税・都市計画税、自動車税、軽自動車税について共通納税システムの利用を可能にすることとされました(令和3年度税制改正)。機構では、この4税目以外の全ての地方税についても、地方団体側で対応ができ次第、共通納税システムを利用できるよう準備を進めていきます。
 収納方法については、これまでのダイレクト納付やATM、ネットバンキングなどを利用するマルチペイメントネットワーク(MPN)に加え、23年度にはクレジット納税やペイ払い等の電子マネーに対応する予定です。
 さらには地方税等の収納に活用できるほぼ全ての納付方法にも、共通納税システムで順次対応していきたいと考えています。これが実現し、後述する税以外の公金も共通納税システムで取り扱えるようになれば、現在、各地方団体で個別に行っている収納代行契約等は不要となる見込みです。

QRコードの導入

QRコードを利用することで可能になる機能

 21年6月に閣議決定された政府の『規制改革実施計画』では、地方税用QRコードの統一規格を取りまとめ、23年度課税分から活用を開始できるようにするとしました。総務省は、「地方税におけるQRコード規格に係る検討会」の取りまとめ結果を受け、23年度以降の地方税の納付書等にQRコードを付し、納税手段の利便性の向上等を図るために活用する旨、全国の地方団体に向けて6月に通知したところです。
 新しい共通納税システムでは、このQRコードも活用することとしました。地方団体の納付書には、現在コンビニエンスストア等で利用するバーコードが印刷されているものが多いと思われます。この仕様は、民間の債権(公共料金や通販など)も利用しているため将来このバーコードがどのような取り扱いになるかは未定ですが、当分の間はQRコードとバーコードとを並存させることになります。

納付用データの作成と集約

 これまで共通納税システムを利用して納付できる税は、eLTAXで申告された法人関係税、事業所税および特別徴収に係る個人住民税等に限定されていました。
 賦課税目で共通納税システムを利用できるようにするためには、原則として納付情報が地方団体から提供される必要があります。課税した地方団体や税目、税額情報を入力して納付する方法も可能ですが、チェックデジット機能が設けられていない場合、入力漏れや誤りをチェックすることが困難で誤納付の原因になります。
 また、QRコードの読み取り機能を誤納付防止のツールとして使うことは一応可能ですが、それだけでは最新の納税状況が確認できないため、二重納付は防止できません。
 今後の共通納税システムの機能拡張(口座振替処理や延滞金の自動計算等)を考慮すると、賦課情報、納付書発行情報等の全てを共通納税システム用の中間サーバ/統一納付書マスタ(仮)にアップロードしていただくことが望ましいと考えています。納入状況を随時アップデートすることで、将来的に納税証明の代用などさまざまな活用が可能になります。

地方税統一 QR コードの表記イメージ(MPN 帳票)

地方公金収納業務の合理化へ

 今後、共通納税システムは、地方税をはじめとする全ての地方公金の収納に利用できるようにしたいと考えています。
 共通納税システムを活用することで、納入済通知書(済通)の回付を廃止することを金融機関と検討していますが、将来的には(納税通知書の電子化を見据え)納付書そのものの廃止を目指します。既存の口座振替についても、(納期限、引き落し口座、税額等の)必要な情報が共通納税システムにセットされていれば指定金融機関等を通さずに直接処理が可能となり、かつ共通納税システムのダイレクト納付に対応する全ての金融機関を利用できるようになります。収納手数料についても、規模の利益により割安にできる可能性があります。
 地方税だけでなく税以外の公金についても、収納手続等の合理化の動きは波及します。各種保険料、上下水道利用料、保育料などで共通納税システムを利用して収納する場合には、地方税と同様にQRコードを活用できます。共通納税システムの納付情報ファイルを用いれば、税以外の公金についても、収納情報は済通の回付なしに地方団体へ届けられます。
 共通納税システムには、納付情報の基幹システムへの自動連係機能だけではなく、納入済情報のテキストデータのファイルダウンロードや一覧表又は単票の印刷機能も用意されています。件数が少ない公金の場合、システムの入れ替え時期までの暫定対応が必要な場合など、これらの機能を利用した手処理等も可能です。このように、いずれ全ての公金が同様な取り扱いをすることになることが想定されるため、各団体の納付書や会計システム、各業務の収入処理なども、今後の動向を見据えて対応の準備をしておくことが望ましいと考えます。

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