2023年7月号Vol.131

【先進事例2】市民にも職員にも優しいスマート窓口へ

かんたん窓口システム+スマート申請システム > 兵庫県伊丹市

総合政策部 デジタル戦略室 主幹 北川善也 氏 / 廣畑晃久 氏
甲 峻英 氏(デジタル庁出向)

住所
兵庫県伊丹市千僧1-1
電話
072-783-1234
面積
25.00平方キロメートル
人口
196,334名(2023年5月1日現在)
兵庫県伊丹市

市民の88%が負担軽減と評価

──『伊丹市DX推進指針』を策定し、さまざまな取り組みを進めています。

廣畑 伊丹市では、市民と職員の双方に優しい「スマート窓口」に取り組んでいます。これは〈行かなくていい〉〈書かなくていい〉〈待たなくていい〉の三つをコンセプトとするもので、昨年11月の新庁舎開庁に合わせて「書かない窓口」(18部署141手続き/2023年4月1日現在)と「オンライン申請サービス」(136手続き/同)を開始しました。これにより〝いつでも・どこでも〟手続きができるとともに、来庁して手続きを行う場合でも紙の申請書に手書きすることなく、設問に答えてタブレット上でサインをするだけと、市民の利便性向上と負担軽減を図りました。
 ただ、これにより職員の負担が増えることになっては、せっかくの取り組みも長続きしません。そこで、導入準備では単に紙の業務をデジタルに置き換えるのではなく、申請フォームの工夫や手続き上のムダの削減などを図り職員の負担軽減にも取り組みました。

 ここで留意したのは、職員の意識改革です。人口減少時代を迎えて行政手続きもDXが不可欠ですが、紙文化が根強く残る中、システムを導入するだけでは何も変わりません。それには原課と伴走することが大切で、書かない窓口の導入準備でも「これはできる」「これはなぜできないのか」などを一緒に考え、手続きを選定しました。

──スマート窓口で変わったことや、導入効果を教えてください。

廣畑 最も大きな変化は、書かない窓口により一部の部署を除いて記載台と紙の申請書がなくなったことです。また、申請書等のPDF出力によるペーパーレス化も進みました。時間削減効果については、現在、定量分析・評価を進めているところです。

北川 実は2~3月に窓口で申請された市民にアンケートを実施し、130名以上から回答を得ました。その結果、88%の方が手続きにかかる「負担が軽減した」としています。また「時間が短縮した」という方は89%となり、全ての世代に効果を感じていただいていることも分かりました。ほかにも、よくなった点として最も回答が多かったのが「手書きが不要になった」ことで、「タブレットの利用」や「手続き案内が便利」なども半数以上の方が評価しています。さらにオンライン申請の利用者アンケートでも、多くの評価の声が寄せられました。これらの分析結果を踏まえて、今後のサービス改善につなげていきたいと考えています。

──なるほど。開始前には市民視点から入念なリハーサルも行いましたね。

北川 職員がサービスに慣れていないと市民の方に迷惑をかけますし、職員自身が市民目線で課題点を見つけ、それを改善した上でサービスを開始したいと考えました。おくやみ手続きなど当初は想定通りに進まないものもありましたが、その原因を職員自身が突き止め解決策を考えることが重要です。リハーサルを重ねる中で「案内の仕方はこうすればいい」という気付きも生まれ、職員の意識改革の点でも有用な取り組みだったと感じています。
 これらの庁内準備とともに忘れてはならないのが、市民にサービスを知ってもらうことです。伊丹市では広報誌やホームページでの告知のほか、サービスの利用シーンをイメージできる動画やパンフレットも作成しました。

デジタルファーストが浸透

──新たな手続きの追加などは、どこが担当されているのでしょうか。

廣畑 基本的に原課が担当していますが、まだまだ助走段階といえ、実績を積むことで一層の利便性向上・負担軽減につながると考えています。

北川 サービス開始により、市民とともに職員もデジタル化の効果を実感し、〝デジタルファースト〟の意識が着実に浸透してきたと感じています。この変化は、オンライン申請サービスの拡充にも影響を及ぼしています。一例が「出産・子育て応援給付金」の申請で、担当課の職員が自分たちで申請フォームを作成し、オンライン申請サービスの運用を開始させました。もう一例が市民税の「無収入申告」です。件数は数十件と決して多くはありませんが、市民にとって便利で、職員も応対する労力をほかの業務に振り分けることができる点で非常に有用といえます。

──今後の計画は。

廣畑 今年度は、まずは書かない窓口のサービス定着と手続きの拡大、利用促進に注力します。また、全ての手続きをオンラインで完結できるよう「オンライン決済」を検討する計画です。現金出納は職員の業務負担も大きいことから、例えば講座・イベントの申し込みなどのオンライン申請・決済を実現することで、市民も職員も便利になります。さらに将来を見据えて、オンライン申請システムを活用した「プッシュ通知」なども検討する考えです。

 改善すべきことはまだありますが、一歩ずつ確実に進めていきます。
 DXを推進する上で、いま多くの自治体がデジタル人材の不足に悩んでいます。伊丹市も同様です。スマート窓口も、原課の理解と協力が得られたことで実現できました。新庁舎移転との並行作業は苦労も多く、変化がもたらす混乱も生じましたが、それは一過性のことです。スマートフォンと同じように新しいスタイルが常態化したら、もはや過去には戻れません。

北川 脱・紙文化が進むと、今後は行政手続きに限らず幅広い業務でDXが進んでいくことでしょう。それを支えるのは〝人〟です。進化を止めないためにも、改革を推進できる人づくりに一段と注力したいと考えています。

北川主幹(写真右)と廣畑氏(写真左)、甲 氏(写真右上)

北川主幹(写真右)と廣畑氏(写真左)、甲 氏(写真右上)

「伊丹市スマート窓口PR動画」はこちらから視聴いただけます。

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