2023年10月号Vol.132

【講演要旨】青梅市の行政サービス・デジタル化の取り組み

東京都青梅市/「自治体DX推進セミナー」事例発表

【講師】企画部 DX推進課 課長 大塚瑞樹 氏 / 市民部 市民課 課長 清水久美子 氏

住所
東京都青梅市東青梅1丁目11番地の1
電話
0428-22-1111
面積
103.31平方キロメートル
人口
129,743名(2023年8月1日現在)
東京都青梅市

 青梅市では、2022年度に『スマートローカル青梅(青梅市DX推進方針)』を策定しました。その第一歩として〈市役所に来庁しなくても、各種申請ができるような環境づくりの実現〉を掲げ、「3つの変える(行政サービスを変える・市役所を変える・地域社会を変える)」に取り組んでいます。
 このうち行政サービスを変える取り組みの一つが「書かない窓口」です。

①「書かない窓口」導入の概要

 市民課では、22年度から「行かない、待たない、書かない窓口」を推進しています。中でも書かない窓口は、市民の負担軽減や待ち時間を短縮するとともに、窓口対応の平準化を目的として、23年2月、「引越し手続オンラインサービス」と合わせてサービスを開始しました。また、6月には書かない窓口の仕組みを活用して「おくやみ支援窓口」もスタートしています。
 書かない窓口では市に合った運用を目指して、まずは市民課と保険年金課・高齢者支援課・介護保険課・障がい者福祉課・こども育成課においてスモールスタートしました。現在、住民異動に関連する届出と出生届などに関連する17手続き・30種類の申請書に対応しています。また、運用面では窓口にタブレット端末を設置せず、職員のノートパソコンからシステムを利用することで導入コストを抑制し、誰もが窓口で応対できるようにしています。
 導入にあたっては、連携する各課の協力を得ながら、①導入範囲の決定、②連携課との調整・設問の作成、③申請書類の見直し、④窓口業務フローの作成、などに取り組みました。また、市民課の窓口対応は委託職員を中心としていることから、操作研修に加えて、すきま時間に実際にシステムに触れて操作に慣れてもらう工夫もしました。

東京会場での講演風景

東京会場での講演風景

②活用の効果

 書かない窓口では、職員があらかじめ設定した質問に沿って申請内容の聞き取りを行い、異動届を作成します。聞き取った結果は「手続き案内票」として出力され、連携する各課ではこれに印字された二次元コードを読み取るだけで、申請者の氏名等が印字された申請書を作成することができます。これにより、申請書の記入にかかる市民の手間の省略や対応時間を削減するとともに、経験が浅い職員でも的確な対応ができるようになりました。
 申請件数を見ると、転入・転居届の場合、4月1日~7月末までに市民課で2,891件を受け付け、関係課への連携件数は329件となりました。連携件数が多いのはこども育成課です。
 市民の反応は、やはり書類の記入が省略されたことを歓迎する声が多く聞かれます。負担軽減の点では、手続きの種類が多い市民の方ほど時間の削減効果が上がっています。シミュレーション結果では、市民課で異動届の記入に要する時間が約2分、こども育成課では約3分短縮されました。
 職員の負担軽減ということでは、「手書きの待ち時間がなくなり対応時間が半分になった」、「崩し文字の補正や書き直しがなくなり、お客さまの気分を害さず正しい異動届が作成できる」、「一問一答で手続きを判定するので、案内漏れがなくなった」という声が挙がっています。また、書かない窓口の導入を機に申請書の書式変更や書類の統合などを行ったことで、保存書類の削減にもつながりました。

③導入の苦労点と、今後の課題

 職員からは、導入にあたり「職員間の意識差」や「業務変更に伴う調整」に苦労したという声が多く聞かれました。また、「他課の手続きも理解して進める必要があった」、「設問の決定が大変だった」などの意見もありました。
 今後の検討課題は、以下の五つです。第一が〈連携課の拡大〉で、すでに税関係や転校手続きを行う学務課等と連携に向けた打ち合わせを進めています。
 第二が〈基幹系システムへの連携〉で、業務効率化に向けた連携フローを検討する考えです。
 第三が〈かんたん窓口の活用拡大〉で、これについては窓口検討委員会から他課での活用を呼び掛けています。
 第四が〈証明書の交付申請書への対応〉で、当初はこの機能の利用を見送りましたが、市民の利便性向上の点からも早急な実現に努めます。
 最後が〈行かない窓口の推進〉で、ぴったりサービスに加えて汎用的なオンライン申請システムを導入し、キャッシュレス決済の実現も含めた手続きのオンライン化を検討しています。

④DX推進の取り組み

 DXを推進する上では、やはり管理職の意識改革が重要です。そこで今年度、市長をはじめ全管理職を対象にマインドセット研修を行いました。また、「DX推進員制度」を導入して各課から意欲のある若手職員を推薦してもらい、業務効率化や変革マインドの醸成に向けた研修を実施しています。本格的な活動はこれからですが、今後、彼らが市全体のDX推進の中核を担うことになると期待しています。
 加えて、BPRの徹底という点では、昨年度に全業務を対象に業務量調査を実施しました。その結果を踏まえてデジタル技術を活用した業務改善を進め、相談対応や企画立案など〝職員の本来業務〟のための時間創出に挑んでいます。さらにペーパーレス化や電子決裁を加速するため、内部系情報システムの最適化にも着手しました。
 取り組みはまだ始まったばかりですが、『スマートローカル青梅』に掲げた「失敗を恐れずまずはやってみる」姿勢を大切に、これからも一歩ずつ着実に進めていきたいと考えています。

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