寄稿

Chance, Change and Challenge 未来を拓く。TKC会計人の新成長戦略2021──TKC全国会の結成目的を心に刻み、戦略目標を達成しよう!

TKC全国会会長 粟飯原一雄

TKC全国会会長
粟飯原一雄

 TKC全国会創設50周年の節目を迎える2021年に向かって、「KFS実践力」というTKC会員事務所の最大の強みを活かす活動が今年から本格的にスタートしました。今後8年間、「未来を拓く。TKC会計人の新成長戦略2021!」を統一テーマに掲げて、具体的活動を展開していきます。1月17日のTKC全国会政策発表会で発表したその骨子について補足いたします。
(発表内容はProFIT参照)

「戦略」は困難や障害物に立ち向かうためのもの

 TKC全国会の政策課題とこれに基づく戦略目標は、いままでにTKC全国会が経験したことのないハイレベルなものです。

 しかしそれは単なる願望ではなく、机上の数値計画でもなく、「戦略」であることを、まずご理解いただきたいと思います。

 一橋大学名誉教授の野中郁次郎教授は、「戦略は未来創造である」と言っています。つまり、われわれが持つリソースを最大限に発揮して新たな未来を創るということが本旨です。

 戦略論の世界的な権威者と言われるリチャード・P・ルメルトは『良い戦略、悪い戦略』(日本経済新聞出版社)で次のように書いています。

 「戦略とは、本来困難を克服し、障害物を乗り越えるためのものでもあり、その課題に立ち向かわないならば、戦略の意味をなさない。戦略は、既知の領域と未知の領域のはざまに存在する。他と競争しているうちに、知識の限界まで追いつめられる。そこを超えなければ先んずるチャンスはない。未知の領域に踏み出すのだから分からないことだらけだ。チャンスに危険はつきものである。既知の法則や経験に照らし、仮説を検証することが重要だ。」(著者要約)

 この度の活動は、TKC全国会がこれまで取り組んできた、中小企業の黒字決算割合の向上と決算書の信頼性向上を実現していく既知の経験である「KFS実践力」というビジネスモデルの強みを、未知の領域に活かす活動であると言えます。

 

 「成長の機会は、長期の不況にあって扉を開く。自らの強みは何か、その強みはどこに適用すべきか、自らの強みを知り、その強みに集中することによってのみ飛躍の機会が訪れる。」(著者要約)

 これはピーター・ドラッカーの言葉(『実践する経営者』ダイヤモンド社)ですが、経済環境が少しずつ回復しつつあるとはいえ、中小企業経営は厳しい状況にあります。しかし不況こそ好機、これからの8年間、TKCシステムの活用を通して「会計で経営を強くしていく」TKC会計人の強みを存分に発揮して、この困難な時代を切り拓いていきましょう。

「事務所の総合力」を重要業績評価指数(KPI)とする

 まず、2021年までの期間を次の3つのステージに分けました。

 第一ステージを本年1月から2016年までの3年間、
 第二ステージを2017年から2018年までの2年間、
 第三ステージを2019年から2021年までの3年間。

 そして各ステージごとに取り組むべき重点活動テーマと目標数値を明示しました。(KFSの各目標数値については委員会の調整を図っており、早期に決定し案内させていただきます。)

 本活動期間において重要な点は、その目標数値を実のあるものにするため、「重要業績評価指数」(KPI)として「事務所の総合力」を新たに設定させていただいたことです。

 この「事務所の総合力」の意味ですが、『TKC経営指標』の最新版によれば、KFS実践企業の黒字決算比率が54%を超えているように、関与先企業の存続と発展のためには、KFSをセットにした支援活動が不可欠てす。加えて企業の存続基盤のためのトータルリスクの指導は欠かせません。そこでトータルリスク管理の指導を含め、KFSをセットとして支援できている状態、つまり関与先企業数でカウントして、何社に対して支援できているのかというKFS実践割合を、「重要業績評価指数」(KPI)として採り入れました。この点をご理解いただきたいと存じます。

第一ステージ(2014年~2016年)『Chance』
──TKC会員事務所の総合力強化と会員数の拡大!

 今年からの3年間を『Chance』の期間と位置づけました。この期間は、現在動きつつあるさまざまな時代変化(中小企業経営力強化支援法の施行、国による中小企業の成長戦略、三菱東京UFJ銀行殿をはじめとするKFS実践をベースとした新たな融資制度等)を大きなチャンスと捉え、「TKC会員事務所の総合力強化と会員数の拡大」をテーマとし、重点活動を次のように設定しました。

1、TKCシステムを使って会計指導力を強化し、企業の存続発展に貢献しよう。
2、書面添付を推進し、税理士業務の完璧な履行を目指そう。
3、決算書の信頼性向上を図り、金融機関との連携を強化しよう。
4、会員数の拡大活動を強化し、組織の活性化を図ろう。

第二ステージ(2017年~2018年)『Change』
──事務所総合力を発揮し、高付加価値体制を構築!

 2017年から2018年の2年間を『Change』の期間と位置づけ、「事務所総合力を発揮し、高付加価値体制を構築!」をサブテーマといたしました。

 会員事務所の体質改善がダイナミックに行われ、高品質なサービスを提供し、顧客満足度を高めるステージにしたいと考えています。この第二ステージ以降の具体的な重点活動内容等については今後詰めてまいります。

第三ステージ(2019年~2021年)『Challenge』
──TKCブランドで社会を変える!

 2019年から2021年の3年間は、『Challenge』の期間と位置づけ、「TKCブランドで社会を変える!」をサブテーマとしました。このラストスパートの3年間は、TKC全国会創設50周年の戦略目標を実現する、仕上げの期間ですが、この時期は、「KFS実践力」をTKCブランドに昇華し、国家や地域社会、そして金融機関等から絶対の信頼と尊敬を獲得することによって、「職業会計人の職域防衛と運命打開」に向けた集大成の年にしたいと考えています。

支部の活性化が成功のカギ

 以上の戦略目標の達成は、全国の支部活動の活性化なくして不可能です。現在の支部数は、20地域会の傘下に127あり、その規模は200人超から10人未満まであり、平均80人弱です。昨年から全国支部長会議の定例開催を始めましたが、その目的は、TKC全国会の活動内容や情報をタイムリーに掴んでいただくと同時に、支部長間の交流と切磋琢磨の機会を作ることによって、会務運営におけるリーダーシップを存分に発揮できる環境を醸成することにあります。

 全米ガールスカウト連盟のCEOを以前にされたフランシス・ヘッセルバインは、その著書『リーダーの使命とは何か』(海と月社)で次のように指摘しています。

 「いかなる組織も、ひとりのリーダーではなく、多くのリーダーをもたなくてはならない。そしてそれは権限の委譲ではなく、リーダーシップの分散である。」(著者要約)と。さらに求められるリーダー像については、次のように書いています。

 「これからの組織に必要なのは、厳しい時代の計画の立て方を心得ているリーダーだ。連帯し、協力して働けるリーダー。ささいな事にこだわるより、未来を形づくる大きな事柄に力を注ぐリーダー。戦略の構築に劣らず、その戦略をどのように適用するかが重要であることを知っているリーダーだ。」(著者要約)

 これからの活動展開にあたって、心に留めおきたい言葉ではないでしょうか。

 

 振り返れば、これまで多くの先達会員が「TKC全国会の結成目的」に示された理念に従って努力を重ね、今日のTKC全国会の隆盛に尽くしてきました。

 新たな一大活動への挑戦にあたって、改めて全TKC会員が、「TKC全国会の結成目的」を心に刻み込み、TKC全国会創設50周年の記念すべき年を、国家、社会から名実ともに期待と尊敬を一身に受ける晴れやかな年とすることを切に祈る次第です。

TKC全国会の結成目的

 「TKC全国会は、わが国職業会計人の職域防衛と運命打開とを目的として開発されたTKCシステムを利用する職業会計人が、その事務所の業務水準の向上と中小企業の育成並びに存続・発展を祈願して結成した血縁的集団であり、その目指すところは、自利利他─自利とは利他をいう─の理念の実践により、確固とした職業倫理と使命感とを堅持しつつ、社会と企業の発展に貢献することにある。」

『TKC会計人の行動基準書』(改訂第四版)

(会報『TKC』平成26年2月号より転載)