ユーザー事例

三菱マテリアル株式会社様

税務の効率化・一体化進める大手総合素材メーカー

三菱マテリアル株式会社

三菱グループの総合素材メーカーである三菱マテリアル。銅などの金属製錬やセメント製造を中心にグローバルかつ幅広い分野で事業を展開している。一方、同社では国内グループ会社を含めた税務の効率化・一体化も進めており、経営戦略本部経理・財務部経理室の村上紀明税務グループ長と同室の岩塚啓輔氏に、システムコンサルタントの柳町和巳税理士をまじえて話を聞いた。

──規模の大きい上場企業でありながら、具体的な業容をあまり知られていませんね。

村上紀明税務グループ長

村上紀明税務グループ長

村上 基本的には、BtoBの会社ですから、一般の方にはなじみが薄いかもしれません。おおまかには「マテリアル」という名の通り、最終消費財が必要とするいろいろな素材を提供する会社です。大別すると「セメント」「金属」「加工」「電子材料」「アルミニウム」などの分野で事業を展開しています。

──それぞれの事業を簡単に説明いただけますか。

村上 まず、セメント事業ですが、北九州に日本屈指の石灰石鉱山と工場を持っています。販売会社と生コン会社がグループ会社にあり、グループでこの事業に取り組んでいます。金属事業では、南米のチリ等から銅鉱石を購入し、瀬戸内海に浮かぶ直島やいわき市の製錬所で製錬しています。その副産物として金や銀といった希少金属が抽出されますので、それも製錬し、地金を製造しています。加工事業は、自動車部品を加工製造するための工具をつくっています。電子材料事業は、機能材料や電子デバイス、多結晶シリコンさらには自動車の窓ガラスにはる熱遮断フィルムなど化成品も開発・製造しています。アルミ事業は、主に圧延品とアルミ缶の加工ですね。たとえば、いま、みなさんのお手元にある伊藤園さんの抹茶とタリーズグループさんのブラックコーヒーのボトル缶も当社グループ製です。

──BtoCの事業も一部行われているとか。

村上 先ほど、銅鉱石を製錬する際に金や銀もとれると言いましたが、それを販売するため、東京・丸の内など全国5カ所で『ゴールドショップ』という地金や金貨のショップを開いています。現物の買い取りや販売はもちろん、資産運用の手段としての金投資(純金積立『マイ・ゴールドパートナー』)の扱いも行っています。

アルミ缶加工や"金"関連ビジネスも展開    加工事業カンパニーでは工具を製造     東谷鉱山(上)直島製錬所(下) 

国内のグループ会社を『ASP1000R』で統一中

──TKCの『ASP1000R』(法人電子申告システム)を2013年3月期から導入されています。理由は?

岩塚啓輔氏

岩塚啓輔氏

岩塚 税務に関する外部環境がめまぐるしく変わるなか、スプレッドシートなどで別表や明細を作成し、紙に出力する従来のアナログなやり方だと手間とコストがかかりすぎるというのが第一の理由です。とくに法人地方税の場合、当社では21都道府県、38市区町村への提出が必要であり、印刷、郵送など、非常に面倒でした。また、法人税、法人地方税の担当者が別だったので、数値の連絡ミスがおこるリスクや、別表をスプレッドシートで作成していたために、時間がかかる上に誤るリスクもありました。もちろん、郵送物の封入ミスのリスクもあります。それらすべてを『ASP1000R』によって解消できると考えたのです。

──なぜ、他社ではなくTKCのソフトだったのでしょうか。

岩塚 まず、対応している別表が多いこと。たとえば、当社はグローバル企業なので外国税額控除の対象ですが、『ASP1000R』はそこにも対応しています。また、スプレッドシート等の基礎資料をそのまま取り込めるCSVインポート機能がついていること。そして、クラウドシステムなので誰でもどこからでもアクセスできること。大企業への導入実績。さらに、将来的な拡張性もTKCさんを選んだ理由のひとつです。

──拡張性ですか。

岩塚 はい。現在は、当グループは基本的に単体納税です。しかしながら、将来的に事業環境が変わって連結納税に移行する可能性があります。その場合、同じ会社のシステムの方が、インターフェースや設計思想が同じなので、移行しやすくなる。単体納税と連結納税の両方の申告システムをつくっているのは日本では数社にすぎません。総合的に考慮しTKCさんにした方がいいだろうと判断しました。

──導入後の効果を具体的に教えてください。

岩塚 税額計算、申告書作成、電子申告までを一気通貫に処理することが可能になりました。国税のイータックスと地方税のエルタックスの両システムへワンクリックで一気に申告でき、とても楽になったと実感しています。もちろん、印刷費用や郵送料、作業コストなども削減されましたし、何より便利になったのは、地方税率がシステムに初期登録されていることでしょうか。『ASP1000R』に搭載されている税率マスタは、改正のつどメンテナンスされ、常に最新情報が反映されているので、われわれは何もする必要がありません。それから、システム立ち上げ時(4時間×3回)と、立ち上げ後(年2回)の柳町税理士によるフォローにも助けられています。

柳町和巳税理士

柳町和巳税理士

柳町税理士 経理室のスタッフの方々が優秀ですからね。大企業は違うなあという感じがしました。スキルの高さはもちろんですが「センス」がある。経理マンとしての感覚が優れているので、さまざまな場面で柔軟に対応できる能力をお持ちです。なかでも岩塚さんがスペシャリストとして上手にコントロールされたことで、システム立ち上げ時、あるいはそれ以降も、ほとんどトラブルはないですね。

村上 感覚という意味では、税務コンプライアンスを遵守し、正しい処理を行うという経理室の「イズム」が底流にあります。このあたりはTKCさんの精神と合致しているのではないでしょうか。

──法定調書や償却資産の申告もTKCシステムをご利用だとか。

岩塚 2014年1月から、それぞれ『e-TAX法定調書』と『e-TAX償却資産』を導入して電子申告しています。これも大きいですね。たとえば、現在、290の市区町村に対して、2100件ほどの法定調書・給与支払報告書を提出していますが、これらを紙出力して郵送するという煩雑な作業がまったくなくなりました。

──国内グループ各社にも『ASP1000R』導入を促進されているとか。

岩塚 はい。当社がTKCシステムを導入した5年ほど前は、子会社の申告書作成ツールがバラバラでした。当時は『ASP1000R』は当社のみでしたが、その後、2014年8月にほぼすべての地方自治体が電子申告に対応するようになったのを機に、国内子会社70社程度に対し同ソフトの導入を一気に推進。現在、そのうち32社が『ASP1000R』を使用しています。また、ソフトが統一されれば、経理担当者がグループ会社間で異動した際、使い方を一から勉強する必要がなくなります。

柳町 『ASP1000R』のグループへの導入が進展していくにつれ、関東圏や福島県など、私がコンサルティングを担当する企業も増えていきました。現在は、10社くらいでしょうか。物理的にこなしきれないので、TKC千葉会の若手税理士と手分けしながら対応しています。

岩塚 柳町先生にはシステムと税務の両面からアドバイスを頂けるので助かります。分からない点はメールや電話ですぐに聞けるので安心感もあります。信頼感が深まったことで、今では一部のグループ会社の税務顧問もお願いしています。

──TKCのコンサルティングサービスを先進的なスタイルで活用されているとお聞きしました。

岩塚 当社では年2回、経理担当者を集めてグループ会社向け説明会を行っていますが、一度に集められる参加者が100名で、しかも税務関連は20分程度しか説明する時間がありませんでした。そのため、札幌、秋田、東京、大阪の各会場で柳町先生などTKC会員税理士をシステムコンサルタントとして講師に招き、1対4、5人での税務説明会を開催するような仕組みを構築しました。各会社によって適用される税制はさまざまなので一律の解説では、どうしても限界がありますからね。結果として、各担当者の理解度が深まり、また、親会社と子会社のコミュニケーションが質・量ともに向上しました。

──あらためて、『ASP1000R』のご感想を。

岩塚 税制に完全準拠していることと、税務と会計の専門家であるTKC会員先生方のサポートによって正確性が向上し、安心感も増しました。また、グループとしての税務申告業務の標準化・効率化ができ、結果、担当者交代の際に、スムーズな引き継ぎができるようになりました。今後は、すべての国内子会社への『ASP1000R』導入を目指し、申告システムの統一化を進めていきたいと思っています。

会社概要
名称 三菱マテリアル株式会社 三菱マテリアル株式会社
設立 1950年4月1日
所在地 東京都千代田区大手町1-3-2
売上高 1兆3,040億円(連結2017年3月期)
社員数 2万4,859名(連結2017年3月末)
URL http://www.mmc.co.jp/

『戦略経営者』2017年12月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2017年12月現在のものです。
※掲載企業様への直接のお問い合わせはご遠慮くださいますようお願いいたします。