経営・労務・法務

診療科別の経営動向とその対策(7)[皮膚科診療所] 人員削減等で「1人当り医業収益高」が改善傾向に

“時代の課題”に応じたサービス提供が求められる

医業経営コンサルタント 税理士 石川 誠

1.皮膚科診療所を取り巻く環境

  皮膚科診療所の軒数を見ると、平成8年が1万1,325軒、平成11年が1万1,953軒、平成14年が1万2,232軒、平成17年が1万2,844軒と年々増加しています。しかし、皮膚科の従事医師数は、平成14年の1万4,929人をピークに、平成16年が1万4,866人、平成18年が1万4,716人と減少傾向にあります。

  医療面を見ると、近年の生活環境の変化などに関連づけられる諸疾患の原因究明や医療提供体制の充実など、皮膚科の果たすべき役割は大きくなっています。皮膚疾患のなかでもとりわけ多くの人々が関心を持つようになったアトピー性皮膚炎の診断に関しては、学会で治療ガイドラインが作成され、加えて新しい治療薬の開発等に国民の期待が集まっています。また、遺伝子レベルでの病態解明と治療の開発についても成果が積まれており、今後さらに発展することが期待されています。

  肌荒れ、肌の衰えなどをフォローする美的器官としての医療や、若返りの医療、アンチエイジングとしての分野にも発展する可能性があります。皮膚科診療所の経営という面から考えると、「時代の課題」に対応する努力が大切となります。

2.主な指標の5年間の推移と分析

  「TKC医業経営指標(M−BAST)」の要約損益計算書の平成16年を基準(100%)として、その主要項目の5年間の推移を見ると図表のとおりです。

img_b0415_01.gif  「医業収益」「限界利益」「経常利益」「医業収益高経常利益率」「1人当たり医業収益高」のそれぞれの項目の推移が基準年度よりも上回っていれば、健全な経営状況にあることを意味します。しかし、「1人当たり医業収益高」を除いて、すべての項目が基準年度を下回っています。皮膚科診療所の経営の厳しさの現状を示しています。ただし、「1人当たり医業収益高」のみが改善傾向にあるということは、各病医院が人員削減などの経営努力を行い、改善していこうとする傾向が見てとれます。

  前述のとおり、「収益」は減少傾向にあり「材料費・委託費」が増加傾向にありますので、当然の結果として「限界利益」は減少傾向にあります。また、「給与費」は減少していますが、内訳を見ると「専従者給与」が77.2%まで抑えられており、その影響が給与費全体の94.6%という結果に現れています。

  次に医業収益と変動費、固定費の関係について分析します。参考1で全診療科の医業収益に占める5年間の材料費、変動費の割合を見ると、平均で11%となっていますが、参考2を見ると、皮膚科の変動費は6%と少なくなっています。このことから薬品材料や委託費が比較的かからない診療科といえます。結果、限界利益が94%と高い数値になっています。

img_b0415_02.gif 全診療科の固定費の5年間の平均は(参考1)、医業収益に対して51.8%となっていますが、参考2を見ると皮膚科は49.0%とその平均値を下回っています。設備投資などを比較的少額に抑えることができる診療科として、精神科に次いで低い数値となっています。その結果、経常利益率は44%と高い数値となっています。

img_b0415_03.gif

3.これからの対応策

  皮膚科診療所は、患者1人当たりの診療単価が他の診療科と比べて低いことから、どれだけ多くの患者さんを確保できるかが、健全経営の大きな決め手となります。開設地の移動が可能、あるいはこれから開業地を選定するのであれば、立地条件として、とにかく「人の集まる場所」に開設することが望まれます。

  診療時間にも工夫が必要です。たとえば、サラリーマンの水虫治療であれば、仕事の終わる夜間の時間帯に合わせて診療を行う必要があります。また、高齢社会の浸透にともない在宅医療の充実が求められており、そのなかでの褥瘡の治療、そして家族に対する指導管理なども皮膚科診療所に求められる大きな役割となっています。

  院内については、何よりも清潔管理が重要となります。たとえば、水虫などが他の患者さんに感染しないように、スリッパの殺菌などを行う機器を設置する、患者用の消毒液を備えた手洗い場を設けるなどです。

  また、プライバシーに関してナーバスな診療科でもありますので注意が必要となります。たとえば、患者さんを診察室に呼ぶときは、名前で呼ばずに受付で渡した番号札の番号で案内するなどの配慮が考えられます。診察室や処置室をカーテンで仕切るなど、患者さんの目線でその対応策を考えることが大切です。

  治療の内容に関しては、慢性的な症状の患者さんが多いことから、アトピーやアレルギーなど生活習慣の指導を含んだインフォームドコンセントが大切です。

都市部など人口が非常に多い地域では専門診療に特化して、特定の疾患の患者に焦点を合わせた専門外来を設けることも選択肢の1つです。
  冒頭でも解説したように、今後ますます新しい治療法や薬剤の開発が期待される診療科でもありますし、美容形成的なニーズも高まってくると考えられます。地域のニーズ・特性をしっかり把握するなど、時代の流れに応じた病医院経営が求められます。
 

(「TKC医業経営情報」2009年3月号より)

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