経営・労務・法務

診療科別の経営動向とその対策(10)[耳鼻咽頭科診療所] 経営環境の悪化で経常利益などが徐々に減少

専門性を高め他院との差別化が不可欠

医業経営コンサルタント 税理士 田島 隆雄

1.耳鼻咽喉科診療所の経営動向

  耳鼻咽喉科は、鼻、咽頭、喉頭、気管、口腔、食道などの疾患の治療を専門とする診療科です。主な疾患として、めまい、耳鳴り、アレルギー性鼻炎、味覚、聴覚障害、花粉症、喘息、風邪、中耳炎、慢性副鼻腔炎、喉頭がん、いびき、蓄膿症などがあります。同科が担う診療領域として、気管食道科も含んでいますが、耳鼻咽喉科のみを標榜する診療所が一般的で、その診療所件数は、診療所総数の約6.5%を占めています。

  財務的な特徴としては、他科と比べて、患者1人当たりの単価が低い一方で、医薬品費の割合が低く、医療機器への設備投資が比較的少なく、収支差額は非常に高いことなどがあげられます。設備機器としては、ネブライザー、顕微鏡、超音波洗浄器、聴力検査器、吸引機、専用X線装置などがあります。

  外来患者数は、近年の花粉症患者の増加などもあって、他科に比べて多いので、待合室のスペースを広く確保することが必要となります。その一方で、外来患者は、インフルエンザや花粉症の時期等、それぞれの季節に集中する傾向にあります。同科は、内科系呼吸器科や小児科とバッティングすることもあります。

  受療率については、地域によって若干異なりますが、比較的低い傾向にあります。1日の来院患者数を約100人と仮定した場合、4万5,000人程度の人口が必要だと思われます。したがって、人口10万人の都市であれば、診療所件数は約2.5件が適当だと想定され、既存の診療所の存在を考慮すると、なかなか新規開業が困難な診療科といえます。

2.主な指標の5年間の推移と分析

  「TKC医業経営指標(M-BAST)」の要約変動損益計算書の平成16年の数値を基準値(100%)として、その主要項目の5年間の推移を見ると図表1のとおりです。
  「医業収益」「限界利益」「経常利益」「1人当たり医業収益高(月)」を見ると、平成18年度診療報酬改定の影響を大きく受け、平成18年をピークに、それ以降、それぞれが減少傾向にあります。

  「給与費」については、平成16年から年々増加しています。また「専従者給与」の減少に合わせて、「労働分配率」も増加傾向にあります。これは、人件費の負担が経営に徐々に重くのしかかっている状況を示しています。院長所得である「経常利益」、配偶者等の「専従者給与」については、平成19年、平成20年と減少傾向にあります。

  「損益分岐点医業収益高」は少しずつ上昇しており、さらなる医業収益の増加、患者数の増加の必要性を強く示しています。これは、今後、どのような方法でより多くの患者を獲得するかという課題が秘められていることを表しています。

  「経費」については、平成19年から減少傾向にあり、厳しい経営環境にあるなか、それぞれの診療所の経費削減の努力がうかがえます。
  総じて、耳鼻咽喉科診療所を取り巻く経営環境が厳しいものに変化しつつあるということがわかります。

img_b0421_01.jpg

3.耳鼻咽喉科診療所の経営的な特徴

  厚生労働省の「医療経済実態調査」(図表2参照)によると、耳鼻咽喉科の初診患者数は、皮膚科、小児科、産婦人科に次いで4番目に多い診療科となっています。全体の延患者数の約25%を初診患者数で占めています。

  また、外来診療日数は約22.4日で、1日平均患者数は約67.5人となっています。これらの数値は、整形外科、皮膚科に次いで3番目に多い診療科となっています。これは、初診だけで治療が終了するのではなく、その後も何度か来院してもらい治療が完了するという特徴があることを示しています。つまり、患者数を増やすためには、いかに初診患者を集めるかがポイントになり、同時によりよい治療やスタッフの機敏な対応などが求められることになります。

img_b0421_02.jpg

4.課題と今後の対応策

  耳鼻咽喉科は、診療単価が低いことから、来院患者数を多く集めることが経営改善のカギとなります。
  患者層は、幼児や高齢者が比較的多く、患者は親族等に同伴してもらって来院することになります。したがって立地条件としては、交通アクセスの便利なところが望まれます。地方においては、車での移動が不可欠なことから、広い道路や広い駐車スペースが望まれます。

  また、待合室や受付時間帯の工夫も必要で、地域ニーズを適切に把握し、場合によっては高齢者を対象とした院内バリアフリーの整備なども考慮することが求められます。

  また、インフルエンザや花粉症の時期に多くの患者が集中します。診療時間帯の工夫として、この時期に限って、早朝・夜間の診療対応などの検討も必要です。

  内科系呼吸器科や小児科とのバッティングについては、診療所同士の相互の患者紹介システムの確立や診診連携の強化などで対応することが重要となります。

  他院との差別化を図るために、たとえば、アレルギー、いびき、蓄膿症などの治療に特化することや、難聴や補聴器専門クリニックにすることなど、自院の独自性や専門性を前面に出すことも必要です。また、自院の強みはホームページなどで、積極的にアピールすることが大切です。また、アレルギー性鼻炎や花粉症、インフルエンザなどの予防医療に取り組むことも昨今の大きな流れとして重要です。
 

img_b0421_03.jpg

(「TKC医業経営情報」2009年6月号より)

クリニック経営改善オンデマンドミニセミナー

クリニック新規開業オンデマンドミニセミナー

運営組織のご紹介

TKC全国会医業・会計システム研究会 (略称:TKC医会研) は、TKC全国会の中でも特に医業・会計に精通した約1,600名の会員により構成されており、約23,000件の病院・診療所の健全経営をご支援させていただいております。