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MX2ですぐわかる!!病医院のコスト管理のポイント -基礎知識編-

医業経営コンサルタント 税理士 田島 隆雄


  健全な病医院経営を実現するためには、(1)患者数を増やして医業収入を上げる、(2)適切なコスト管理で無駄な経費を下げる──の大きく2つの対策があります。増患対策ばかりが重視されがちですが、それと同じぐらいコスト管理は重要なことです。今号から2回にわたり「TKC医業会計データベース(MX2)」を活用したコスト管理のあり方を解説します。第1回の今号では、コスト管理の基礎知識について説明します。

1.MX2 でのコスト管理  MX2 では、次のコスト管理を行うことができます。

(1)予実管理によるコスト管理
 「予実管理によるコスト管理」とは、費用科目の「予算」と「実績」を比較し、その差異を確認・分析するものです。予算と実績が異なっていれば、実績を予算に近づけるための対策が必要となります。 たとえば、「医薬品費」の実績(当月発生)が予算(当月予算)よりも多くなったとします。ここで「なぜ予算と実績に差異が生じたのか」を調査します。すると、在庫の見逃しで余分な仕入れをしたことが明らかになったとします。ここから、さらに「なぜ在庫を見逃したのか」という原因分析を行い、同じことが起きないような体制をつくるようにします。

img_b0419_01.jpg(2)施設別・機能別によるコスト管理
 施設別や診療科(部門)別にコスト管理をする方法です。実践することで、それぞれの費用対効果が明確になり、隠れていた不採算部門を明らかにすることもできます。

img_b0419_02.jpg(3)変動損益計算書によるコスト管理
 変動損益計算書の「変動費」「固定費」の科目分類を基にコスト管理を行うものです。たとえば、変動費については、どの科目が医業収益に対して何%を占めているか、給与費に対する労働分配率は何%かなどを測定し、その結果に応じた対応策を講じます。

img_b0419_03.jpg(4)変動費・固定費ごとのコスト管理
 変動費・固定費ごとにコスト管理を行うものです。変動費については、「変動比率(変動費 ÷ 医業収益)」の引き下げが重要となります。そのために、その方策として、たとえば、見積もり合わせや競争入札、購入ロット数、支払い条件の変更などで医薬品や診療材料などをなるべく安く購入するなどの工夫が必要です。 固定費は、発生額が固定的な性質を持っているので、メスが入れられない場合が多いようです。しかし、たとえば光熱費の電灯数、W数などの適正値の再検討により、費用発生額を抑えることも可能となります。

img_b0419_04.jpg(5)管理可能費・不能費分類によるコスト管理
  この分類は、発生費用の意識的なコントロールが可能か不可能かという区別を指します。たとえば、薬品仕入は、医師や薬局責任者などによって、仕入数量や品目、単価などをコントロールできるので管理可能費です。外注による院内清掃等は、当初の契約で支払額が定まっており、所定の費用が継続して発生するので管理不能費となります。 以下に主な管理可能費、不能費項目を示します。なお、この分類は固定費を対象としています。

管理可能費 管理不能費
消耗品費
広告宣伝費
接待交際費
研究研修費
水道光熱費
修繕費
減価償却費
貸借料・地代
保険料

2. コスト管理の実務対応

(1)スタッフ教育が重要
コスト管理は、すべてのスタッフにコスト意識を高めることが重要です。院長先生を中心に会議などを開き、消灯時間や事務用品の共有化などのルールづくりをすることが大切です。スタッフの積極的な改善案を採用する制度の導入も1つの方法です。

(2)購入決定権者等を決める
購入額に応じて最終承認者を決めておくことが大切です。たとえば、1万円以下は事務長、それ以外は院長などです。購入伺書を使用することで、事前に本当に必要かどうかを検討する機会となります。

(3)院内ルールを決定する
日々の診療が忙しいため、コスト管理は遅れがちになります。しかし、コストは毎日発生するので、どこかでコントロールしなければなりません。そこで、日常業務のなかで、コストコントロールが行われるような体制に整備することが重要です。 たとえば、消耗品、事務用品等の収納庫スペースを狭くして極力少ない量を発注する、また、高額なものの購入については、数社の見積書を提出させ、場合によっては競争入札を行うなど、院内でルール化しておくことが大切です。

3. コスト管理のルール化の効果

 コスト管理をルール化することで、以下の効果が期待できます。

  • ルール化により無駄遣いがなくなる。
  • スタッフのコスト意識が高まる。
  • 入札等により売り手の条件等を選択できる。
  • 購入時期を厳格に決めることができる。
  • 購入や消費についてチェック機能が働く。
  • 経常利益の増加に直接関係する。
  • 診療に専念できる。
  • コストの共有化で全体意識が改善される。


  コスト管理は必要なものを、必要な時に、必要な量だけ、安く買うことが要点です。これができなければ、費用の垂れ流し状態が常態化する恐れがあります。院内のコスト管理を再点検してはいかがでしょうか。
 

(「TKC医業経営情報」2009年5月号より)

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