経営・労務・法務

[経営計画] 院長先生の想いを実現する!経営計画の重要性 -1-

医業経営コンサルタント 税理士 板谷 一郎

  最近、“医療費増大”という医療経済に関する話題を耳にすることが増えてきました。平成20年度の国民医療費は約34兆円となっています。しかも、高齢化の進展や医療技術の進歩などにより、その額は毎年約1兆円規模で増加しています。昨今では、日本が世界に誇るべき国民皆保険制度の存亡の危機もささやかれるようになりました。
  そこで政府は、平成14年から平成20年までの過去4回にわたって、診療報酬のマイナス改定を行い、医療費の増加を抑制するための施策を実施してきました。

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 改定動向を見ると、この10年間で診療報酬は7.3ポイント減少(平成10年を100とすると平成20年の指数は92.7)しています。これは、特に多額の借入金を有する病医院に大きく影響しています。たとえば、10年前に20年返済の銀行借入金で病院建物を新築したものの、診療報酬のマイナス改定の影響で、この10年間で収入が減り、金融機関へ返済条件変更の申し出を余儀なくされるケースも増えています。
  人口の減少、競合病医院の増加、診療報酬のマイナス改定など、経営環境は、今後もさらに厳しくなることが予測されます。適時・適切に対応していかなければ収入は減少し、病医院の存続自体も危ぶまれる時代です。そうしたなか、健全経営を実現するためには“成り行き任せ”ではなく、院長先生の想いを込めた「経営計画」に基づいた病医院経営が不可欠となっています。
  今号から2回にわたり、経営計画の重要性や策定方法などを解説します。今号では、病医院経営における経営計画策定のメリット、役割などを説明します。

1 「経営計画」は地域ニーズや自院の役割を確認するツール

 経営計画は、単に“数字が並んでいるもの”ではありません。以下の事項を確認するツールです。
(1)    自院の地域でのポジション・役割
(2)    地域から何を求められているか
(3)    自院ができることは何か、何をしたいのか
(4)    自院の方向性、その方向はニーズに合っているか
(5)    事業として成り立つのか


 そして、院長先生の想いをスタッフや地域の人々に伝えるのが「経営計画書」です。経営計画書は、「短期経営計画(1年)」「中期経営計画(5年)」「長期経営計画(10年)」にわけられ、それぞれの役割は異なります。

  短期経営計画では、次期の目標損益、資金繰り計画を策定します。その数値は、現状の実績を踏まえ、勘定科目ごとに詳細に計画します。そして、目標達成のための行動計画を策定します。自院の存在意義や院長先生が想う理想の姿を明文化したものが病医院の理念であり、その理念をもとに次期の目標や課題を明確にし、その目標を達成するためにとるべき具体的な行動計画を文章にしてまとめます。

  中期・長期経営計画は、自院の将来の進むべき方向を示します。未来の目標を明示し、その目標達成のためにすべきことを明らかにします。数値は大まかな目標数値でも構いません。策定する上での注意点は、「売上や利益目標だけの計画になっていないか」ということです。目標を達成することで、病医院や院長先生、スタッフ、地域はどのように変わるのかが、明らかに明示されていなければ、その経営計画は文字どおり“計画倒れ”になってしまいます。

2 自院の現状把握と課題抽出が経営計画策定のメリット

 厳しい経営環境のなか、業績が伸びている病医院に共通しているのは、院長先生の想いが経営理念となり、それがスタッフに浸透し、その理念のもとに掲げられた目標を達成するための経営戦略が立てられ、それを日常の行動に落とし込んでいく――という一連の流れが、確立されていることです。理念を具現化する経営計画書に基づいた経営がなされているのです。

「計画をつくってもそのとおりに行かない」という声もあると思います。計画はあくまで目標で、現実との差異が生じるのは当たり前です。経営計画の目的は、差異が生じた原因を明らかにし、適切な対応策を講じることにあります。こうしたことから、経営計画策定の主なメリットとして、以下の3つがあげられます。
(1)    経営理念の再確認(未策定の場合は策定)。
(2)    自院の現状の課題と今後の課題の整理。
(3)    自院の将来の方向性の明確化。


 経営計画を策定し、それを実現するための具体的な「行動計画」に落とし込みます。その計画に基づいて、スタッフと一緒に動き始めたとき、組織は活性化し、業績が向上し始め、“成り行き任せ”の経営から脱却することができるわけです。

3 継続MASシステムで次期経営計画策定をサポート

 TKC会員事務所では、月次巡回監査を通じて、会計・税務処理に誤りがないかを専門的な立場から確認し、前月までの業績を院長先生に報告します。また、業績を前年同月等と比較し、異常な数値はないか、もしあればその原因は何かなどを院長先生と一緒に確認します。巡回監査による正確な業績把握は、経営計画を策定する上で重要です。現状を把握せずに、目標となる未来図を描くことはできません。策定しても“画に描いた餅”になってしまいます。

  正確な業績把握をもとに、TKC会員事務所では、「継続MASシステム」により、経営計画の策定をサポートしています。継続MASは、「医業・会計データベース(MX2)」と連動していることから、正確な月次決算をもとに、経営計画を作成することができます。

  経営計画書は、院長先生自らが作成するものですが、作成した経験がない院長先生にとっては、「どう作成すればよいかわからない」というのが本音だと思います。継続MASでは、「経営者への5つの質問」に答えるだけで、翌期の基本経営計画書を作成できます。基本計画書をベースに利益計画、資金計画へとより詳細で緻密な事業計画書を作成することも可能です。計画書を作成する過程で「経営基本方針」「重点課題」「行動計画」などの再確認、策定をすることもできます。

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(「TKC医業経営情報」2009年9月号より)

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