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最前線レポート 画像診断に特化し医療モールの確かな診断を支える

img_b0435_01.jpg さいたまセントラルクリニック 院長 宮澤 隆仁


 PET/CT や MRI などの先端医療機器を備え、画像診断に特化したクリニックが今年6月、さいたま市にオープンした。病気の早期発見・早期治療への貢献をコンセプトにかかげる「さいたまセントラルクリニック」だ。 10 月にグランドオープンする医療モール「さいたまメディカルタウン」の中核施設として、地域医療のハブ施設としての役割を目指す。宮澤隆仁院長に開業の経緯やその狙い、今後の展望などを聞いた。

100名の医師が遠隔画像診断ダブル・トリプルのチェック体制

──画像診断に特化したクリニックというのは珍しいですが、どのような経緯で開業されたのですか。

宮澤
 さいたまセントラルクリニック自体の経営者(有限会社光峯企画管理サービス・小峯宣昭代表)は不動産業を手がけていますが、以前から医療に高い関心を持っており、患者様にとって快適でかつ究極の医療サービスを提供したいとの考えを持っていました。そこで先端技術を活用し、病気の早期発見・早期治療に貢献しようとの思いから開業したのです。私はこれまで脳外科医として30年間やってきましたが、オーナーの考えに共感し、ここに来ました。
  クリニックには、PET/CT、MRI(1.5T、3.0Tの2台)、MDCT、マンモグラフィーなどの検査機器を備えています。画像診断はいま、たいへんな勢いで進化しています。実際、現在は脳外科手術も画像診断をベースに行われています。コンピュータによるナビゲーションシステムなどがそうで、コンピュータがつくった画像が手術する場所を指示し、それに従い手術する。もちろん、職人技を必要とするような難しい手術もありますが、かなりの部分をコンピュータがナビゲートするようになってきているのです。
  脳外科分野では、ロボットを使っての手術はまだ現実的ではありませんが、消化器外科などでは少しずつ取り入れられています。これからは、画像診断をきちんと行えない病院では、先端的手術はできないようになるでしょう。
  PET/CTについては、まだ置いていない大学病院もありますが、がんの治療には不可欠なものになりつつあります。

──医師は宮澤院長1人だけですね。院長がすべての画像診断を行われるのですか。

宮澤
 私は脳外科領域の読影はできますが、その他の臓器についてはまだまだ勉強不足です。そこで、ドクターネットという会社と契約し、遠隔画像診断システムを整備しています。国内外の約100名の放射線科医とネットワークで結ばれており、画像を診断してもらっています。それぞれの放射線科医が得意分野を持っているので、高精度で的確な診断ができます。また、欧米で研究をしている日本人医師もいて、たとえば夜の8時くらいに画像を診てほしい場合、日本では難しくても、時差をうまく利用し海外の医師がみることで、数時間でレポートが届くというように迅速な対応が可能です。また、大学病院に勤務する放射線科医も当クリニックに非常勤で勤務し、画像診断のダブルチェックをしてもらっています。

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さいたま新都心駅から徒歩約10分の場所に位置するさいたまメディカルタウン

──画像診断は医師によっても見方が異なるようですが、何か留意している点はありますか。

宮澤
 医師によって診断がわかれるのは確かです。ですから二重、三重にチェックする体制をとっています。専門家の意見はもちろん尊重しますが、最終的な判断は私がします。元外科医ですから画像診断の難しさはわかっています。脳腫瘍でも典型的なものは9割で、残り1割は非常に診断の難しいものがある。そうなると治療方針が違ってきます。そういう場合は、最後は臨床医の出番になる。その意味では臨床を経験してから画像診断に入ったのはよかったと思っています。
  当院では、検査技師の存在も重要です。たとえば乳がんの場合、マンモグラフィー検査を専門にしている女性技師がいますが、一般の医師よりも詳しいくらい勉強しています。そういう技師の意見も尊重する。それでもはっきりしない時は、別の放射線科医にお願いする。それでも結論が出ない場合は乳腺外科を紹介します。
  脳外科が専門だからかもしれませんが、命にかかわるような画像は絶対に見逃さないように細心の注意をはらっています。自分の専門外でも同じです。いろいろみていくと、何か変だなと感じることがあります。仮に放射線科医が大丈夫だと言っても疑う。医学の世界は不確定要素が多いですから、「異常なし」と診断するためには慎重でなければいけません。

30〜40代の受診が多い開業3か月はまずまずの手応え

──6月に開業され、その手応えはいかがですか。

宮澤
 現在はドック検診がメインです。それと近隣の病院やクリニックからの画像診断の依頼です。平均すると検診が1日5、6人。画像診断が1日10件くらいです。そのほかに、私が脳外科診療をやっていますから、外来で来られる方が5人前後います。出だしとしてはまずまずではないかと思っています。

──検診は自由診療ですね。

宮澤
 そうです。価格設定はそれほど高くないと思います。ドック(脳、心臓、一般)とレディースコース(乳がん、子宮・卵巣の検診)は52,500円(税込み)です。
  自由診療イコール予防医療です。予防医療を発展させれば、病気を防ぐことにもつながり、1人の人にかかる医療費は結果として少なくなる。そういう意味でも自由診療を発展させることは重要だと思います。保険診療と自由診療がどう両立していくのかは手探り状態ですが、自由診療を無視しては今後、医療は成り立たないのではないかと思います。医療がビジネスとして成立するかどうかという意味でここはベンチャーになりますが、その点は私も興味があります。

──患者層などに特徴はありますか。

宮澤
 きちんとしたデータはまだありませんが、脳ドックの場合は40歳前後が多いです。30代もけっこういます。レディースは30代後半から40代が中心で、乳がんを心配されている方が多いです。

──会員制の「さいたまメディカルクラブ」というのがありますね。これはどういうものですか。

宮澤
 会員になっていただくと、3大生活習慣病を徹底検査するとともに、1人ひとりに顧問医がつき、テーラーメードの医療サービスを提供します。顧問弁護士のように、何かあったときはいつでも顧問医に相談していただくことができます。プライバシーに配慮し、専用のエントランスやエレベーター、ラウンジも用意しています。現在はオープン記念ということで、個人会員50万円、法人会員100万円、年会費24万円(各税別)で募集しています。

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さいたまメディカルクラブ会員用の待合室

──さいたまセントラルクリニックは、医療モール「さいたまメディカルタウン」の中核医療施設として位置づけられるわけですね。

宮澤
 さいたまメディカルタウンが普通の医療モールと大きく違う点は、画像診断専門のさいたまセントラルクリニックがあることです。ここが中心となり、各クリニックは独立していますが、一体的なつながりをつくりたいと考えています。それが患者様へのサービスにもなります。
  一般に、開業の場合、MRIを入れたいと思ってもなかなかできません。ましてやPETなどは無理です。しかし、診療のなかにそれらの機能を入れたいと考えている医師は多い。その点でクオリティーの高い医療を目指している開業医にとっては、このモールは魅力があると思います。

──2階には6つのクリニックが入る予定ですね。

宮澤
 現在、膠原病内科のクリニックが入ることが決まっています。ほかにどのような診療科が入るかは未定ですが、整形外科、耳鼻科、特に消化器系内科や婦人科などがいいのではないかと思います。見学に来られる先生はたくさんおられますが、景気の悪化でやや躊躇されている感じを受けます。すべて入れば、入院施設のない総合病院のような形になります。画像診断用設備だけをみたら大学病院に匹敵するといってもいいでしょう。

専門医との連携を強化ハブ施設の役割目指す

──外部医療機関との連携は行っているのですか。

宮澤
 特定の病院との連携は考えていません。優秀な医者の母集団が限られてしまいます。それよりも、乳がんならこの病院のこの先生、肺がんならこの病院の先生といったようなネットワークをつくれば、よりよい医師を患者様に紹介できます。
  当院がサポートできるのは診断までなので、よい治療医を紹介できるかどうかが大切です。仮に優秀な医師が北海道にいるとしても、治療は北海道で受けてもらい、その後の画像については当院でフォローすることができます。画像のやり取りはネット上でできます。欧州では国をまたいで普通に行われていることです。
  一方で、この地域のハブ(拠点)空港のような役割になりたいと考えています。画像診断を求めている開業医は多く、そのような先生と連携するのは当然として、同時に近隣の大学病院などともネットワークをつくりたい。大病院ではMRI検査などは数週間待ちのところもありますから、当クリニックで検査を引き受ければ患者様にとっても大きなメリットにつながります。
  建物の2階に50人程度収容のラウンジがあり、画像に特化した研究会などを定期的に開くことを計画しています。そうすれば開業医の先生も大病院の先生も勉強に来られます。このように、患者様もドクターも集まるクリニックを目指しています。

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──総額20億円を投じられているそうですが、今後それをどう回収していくかも課題になりますね。

宮澤
 第一に画像診断の質を高め、受診者数を増やすことが重要です。それから保険診療でも、質の高い画像診断をして近隣の開業医や病院の先生から信頼されるようにして件数を増やしていく。同時に、モールのクリニックと協力して、このメディカルタウンに患者様や受診者様が集まるようにする。この3つに力を入れていく考えです。メディカルタウンにはコンシェルジュがいます。彼女らと連携し合い、皆様が喜ぶようなサービスを提供していきたいと思っています。

──当面の目標などはありますか。

宮澤
 最終目標として、PETが1日8人、MRIは1日40件を目指したいですね。このエリアは医療施設が少ないのでニーズは十分あると考えています。
  一方で、ニーズに対応するために、マネジメントやスケジュール管理の改善も必要になってきました。現在、放射線技師が5人、臨床検査技師が3人、看護師が5人います。みんなそれぞれクオリティーは高いのですが、連携面の課題が見えてきました。たとえば検診が10件重なる、さらに保険診療でMRIの患者様が入ってくるなどすると、タイムスケジュールのやり繰りがたいへんになります。それに応じて看護師やコンシェルジュが患者様を案内したり、検査したり、説明したりしなければならない。従来は紙上で管理していましたが、それでは済まなくなっており、新たにコンピュータで管理できるソフトをつくっているところです。

首都圏からも患者を呼び込む若い人にも脳ドック検診を勧めたい

──今後の展望についてお聞かせください。

宮澤
 まず地域の住民の方々、そして、外部の他の医療機関に当院の存在を知ってもらい、利用していただくことです。それに加えて、検診は年にせいぜい1回ですから、範囲を広げて首都圏、東京、神奈川、千葉などからも来てもらえるような質の高い医療サービスを提供できるようにしたい。
  それと、脳ドックについては若い人に勧めたいですね。というのも、先天的な病気の恐れもあるからです。脳血管奇型は子どもの時から持っている人もいます。20歳くらいのときに一度脳ドックをやっておくと、問題があれば治療に入れるし、なくてもデジタルデータは保存できますから、40〜50歳になって脳ドックを再び受けて若年時の検査結果と比較することができます。

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より精度の高い診断と、短い検査を可能にするPET/CT

  最近、妊婦が突然意識をなくして救急車で運ばれたものの、受け入れ先が見つからず脳内出血で亡くなるという事故が起きています。こうしたケースのほとんどは先天的な脳の病気を持っているのです。妊娠中に循環血液量が増えたりすると血圧も上がり、出血する確率が高くなります。疾患の存在を事前に知っていれば、脳外科医のいる病院にあらかじめ入院するなどの対処ができます。しかし、残念ながら、一般の方はそういうことをご存知ありません。たとえば、20歳になった記念に脳のMRI検査を受けるというのもよいと思います。MRIはリスクもないし、5万円程度で済みますので、これは重要な自己投資です。がんの怖さはみなさん知っていますが、脳のことは歳をとらないと心配しない。もっと自分の身体に興味をもってもらいたいですね。これから積極的に啓蒙していきたいと考えています。
  ほかに、大使館への営業なども考えています。在日外国人の方は言葉の問題もあり医療面で心配を抱いています。私はドイツに留学していたのでその不安がよくわかります。幸い私は多言語環境に慣れているので、外国人のお役に立てると思います。

(平成21年8月19日/ライター田之 上信/「TKC医業経営情報」2009年10月号)

PROFILE
宮澤 隆仁(みやざわ・たかひと)

昭和54年順天堂大学医学部卒。順天堂大浦安病院脳神経外科助手、防衛医科大学校脳神経外科講師などを経て、現在に至る。平成元年から2年間、独マックスプランク神経病研究所で脳虚血研究を行う。

医療法人峯昭会さいたまセントラルクリニック
さいたま市大宮区天沼町2−759
TEL:048−658−3741(代) FAX:048−658−3740

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