経営・労務・法務

[経営計画] 院長先生の想いを実現する!経営計画の重要性 -2-

医業経営コンサルタント 税理士 板谷 一郎

 前号では、病医院経営において、経営計画を策定する意義・役割、メリットなどについて解説しました。今号では、院長先生が実際に短期経営計画書を策定する上でのポイント、気をつけなければならないことなどについて説明します。

1 経営計画策定の5つの手順

 経営計画の作成は次の手順で進めます。
  (1)外部環境・内部環境の把握と分析→ (2)将来の進むべき方向(ビジョン)の策定し、実現のための具体的な行動計画を決定 → (3)中期経営計画の策定→ (4)短期経営計画(予算)の策定→ (5)業績検討会の開催。
 (4)の「短期経営計画(予算)の策定」は、医療法人の場合、定款にもその作成が明記され、収支予算として毎会計年度開始前に理事会および社員総会の議決を経て定めなければなりません。

2 短期経営計画(予算)の策定手順

 損益計算書は、医業収益から材料費、人件費、減価償却費、その他経費などを差し引いて利益を求めますが、経営計画書を作成する場合は、まず「目標利益」を定めます。次に人件費、経費等を予測し、そして医業収益に対する材料費比率を想定し、そこから医業収益を算定することになります。

img_b0436_01.gif図のとおり経営計画書を作成するためには、まず「次期の目標利益をいくらにするのか」「目標・目的を実現するためにはどれぐらいの利益が必要か」などをしっかり把握しなければなりません。

 ここでよく問題になるのは、利益は出ているがお金がない、いわゆる “ 勘定あって銭足らず ” の現象が起こることです。
  医療機関の場合、医療機器等の設備資金が多額になり、通常、そのほとんどは金融機関からの借入金で賄っています。その借入金の返済では、お金は出ていきますが、利益を計算する上では経費にはなりません。逆に減価償却費は経費にはなりますが、お金は出ていきません。その結果、[利益=余剰資金]とはならないわけです。仮に借入金の返済が年間1,200万円、減価償却費が400万円とすれば借入金返済のため必要最低利益は800万円(1,200万円−400万円)となります。また利益が出ると税金が発生し、税率35%とすると税金を支払う前の必要最低利益は[800万円÷(1−0.35)≒1,230万円]となるわけです。

 その他経費に含まれるものは、地代家賃、水道光熱費、支払利息など医業収益の増減に関係なく発生するもので、病医院を維持していくために必要不可欠な費用となります。これらは当期の実績を参考に翌期の金額を予測していきます。人件費は昇給率を見積り、計画に反映させます。

 材料費については、金額を入れるのではなく、医業収益に対する「率」をもとめます。なぜかというと、その他の経費とは異なり、医業収益の増減に比例して金額が変わるためです。その結果、仮にその他経費1,000万円、人件費3,600万円、材料費比率30%とすると[(1,230万円+1,000万円+400万円+3,600万円)÷(1−0.3)=8,900万円]となり、これが翌期に借入金を返済していくために必要な医業収益になります。

3 短期経営計画(予算)の策定のポイント

 医療法人では、予算の作成は必須事項で作成するものの、その後、検証がされていないケースがあります。予算は作成が目的ではありません。実績と比較し、乖離があれば現状分析を行い、目標を達成するために随時、行動計画を見直すことが重要です。

img_b0436_02.gif 「検証」は “ 検診 ” に似ています。どこか悪いところがあっても早期に発見して対策(治療)することで、健全経営(健康維持)にできます。異常値が出ているにもかかわらず放置すれば取り返しのつかないこともでてきます。検証を行うためには毎月、業績を把握できる月次決算体制が土台となります。前月の月次試算表は当月末までに作成する体制づくりが必要です。

 予算という数値目標を達成するには「行動」を起こさなければなりません。翌期の目標・重点課題を明確にし、それを文章化して具体的にどういう行動をとるのかを全職員に周知させなければ、いくら綿密な予算を立てても目標を達成することはできません。経営理念や行動計画を朝礼やミーティングの際に全員で唱和することは有効な方法です。

4 「経営者への 5 つの質問」で翌期の基本経営計画を簡単に作成

 TKC 会員事務所では、関与先医療機関の月次決算体制の構築を行い、その上で経営計画作成支援システム「継続 MAS システム」を活用し、経営計画策定のサポートを行っています。具体的には、次の5つの質問に答えてもらうことで、翌期の基本経営計画書を作成できます。
(1)     次期の目標利益
(2)     次期の医業収益の伸び率
(3)     次期の薬剤費・委託費比率
(4)     次期の給与の昇給率
(5)     次期の従事員数


  医療制度改革や診療報酬のマイナス改定など近年、病医院を取り巻く環境は以前に比べ厳しいものになりました。一生懸命診療しているのに以前より収益が下がり、将来に不安を感じておられる先生方も多いと思います。そんな逆風下でも業績を伸ばしている医療機関には必ず夢と経営計画があります。先生方の夢を実現するためのツールが「経営計画書」なのです。 

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( TKC医業経営情報」2009年10月号より)

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TKC全国会医業・会計システム研究会 (略称:TKC医会研) は、TKC全国会の中でも特に医業・会計に精通した約1,600名の会員により構成されており、約23,000件の病院・診療所の健全経営をご支援させていただいております。